GitHub Enterprise Cloud トライアル導入ガイド
GitHub Enterprise Cloudのトライアルは、エンタープライズレベルの開発環境を実際に体験できる貴重な機会です。本記事では、トライアルのセットアップから各機能の導入まで、実践的な手順を解説します。
1. トライアルの全体像
GitHub Enterprise Cloudトライアルには、以下の3つの主要コンポーネントが含まれています。
- GitHub Enterprise Cloud本体: エンタープライズアカウント管理、組織の統合管理
- GitHub Advanced Security: コードセキュリティの高度な機能群
- GitHub Copilot Business: チーム向けAIコーディング支援
2. Part 1: トライアルのセットアップ
2-1. トライアルの内容を理解する
トライアル期間中、期間終了後に何が起こるかを事前に把握しておくことは重要です。
2-2. トライアルに申し込む
GitHubでEnterprise Cloudトライアルを検索し、画面の指示に従って登録します。
登録時の重要なポイント:
- エンタープライズアカウント名の決定(後から変更可能ですが、計画的に命名することを推奨)
- 管理者アカウントの設定
- 初期組織の構成
3. Part 2: GitHub Enterprise Cloudのセットアップ
Enterprise Cloudの基盤となる設定を行います。この段階では、エンタープライズアカウントと組織の構造を確立します。
3-1. セットアップの主要タスク
-
エンタープライズアカウントの構成
- エンタープライズポリシーの設定
- 組織の作成と管理
- メンバーの招待
-
組織の設定
- チームの構造化
- リポジトリのアクセス制御
- 組織レベルのポリシー設定
-
認証とセキュリティ
- SAML SSOの設定(必要に応じて)
- 二要素認証ポリシー
- IPアドレス許可リスト
3-2. エンタープライズ構造の例
4. Part 3: GitHub Advanced Securityのセットアップ
Advanced Securityは、コードの脆弱性を早期に発見し、セキュリティリスクを最小化するための機能群です。
4-1. 主要機能
- Code scanning: コードの脆弱性を自動検出
- Secret scanning: 認証情報の漏洩を防止
- Dependency review: 依存関係の脆弱性を分析
4-2. セットアップの流れ
4-3. 実装のベストプラクティス
-
段階的な展開
- まず重要度の高いリポジトリから開始
- チームごとにフィードバックを収集
- 全体展開前に設定を最適化
-
Code scanningの設定例
name: "コードスキャン"
on:
push:
branches: [ "main", "develop" ]
pull_request:
branches: [ "main" ]
schedule:
- cron: '0 9 * * 1' # 毎週月曜日9時
jobs:
analyze:
name: 解析
runs-on: ubuntu-latest
permissions:
actions: read
contents: read
security-events: write
strategy:
fail-fast: false
matrix:
language: [ 'javascript', 'python' ]
steps:
- name: リポジトリのチェックアウト
uses: actions/checkout@v4
- name: CodeQLの初期化
uses: github/codeql-action/init@v3
with:
languages: ${{ matrix.language }}
- name: 自動ビルド
uses: github/codeql-action/autobuild@v3
- name: CodeQL解析の実行
uses: github/codeql-action/analyze@v3
5. Part 4: GitHub Copilot Businessのセットアップ
Copilot Businessは、3つの段階に分けて設定を進めます。各段階で異なる役割の担当者が関与します。
5-1. セットアッププロセス
5-2. エンタープライズレベルでの設定
エンタープライズ管理者が実施する初期設定です。
主要な決定事項:
- Copilotの使用ポリシー
- コード補完の提案に関するガイドライン
- データの取り扱いポリシー
- ライセンスの配布戦略
設定手順:
- エンタープライズ設定でCopilot Businessを有効化
- 使用ポリシーの設定
- パブリックコードに基づく提案の許可/不許可
- 組織へのライセンス配布権限の設定
- 組織の選択またはライセンスの直接割り当て
5-3. 組織レベルでの設定(オプション)
組織オーナーが組織単位でCopilotを有効化する場合の手順です。
組織オーナーの作業:
- 組織設定からCopilot Businessを有効化
- 組織内のチームまたは個人へのシート割り当て
- 組織固有のポリシー設定
5-4. 個人ユーザーレベルでの設定
シートを割り当てられたユーザーが、自分のアカウントでCopilotを有効化します。
ユーザーの作業:
- 組織からシートが割り当てられたことを確認
- 個人アカウント設定でCopilotを有効化
- IDEへのCopilot拡張機能のインストール
- Visual Studio Code
- JetBrains IDE
- Neovim
- その他のサポート対象エディタ
6. トライアル期間中の評価ポイント
6-1. Enterprise Cloudの評価項目
- エンタープライズアカウントでの一元管理の効率性
- 組織とチームの構造化の柔軟性
- 監査ログとコンプライアンス機能
- SAMLベースの認証統合(該当する場合)
6-2. Advanced Securityの評価項目
- Code scanningによる脆弱性検出の精度
- Secret scanningの誤検知率と実用性
- Dependency reviewによるリスク可視化
- セキュリティアラートの対応ワークフロー
6-3. Copilot Businessの評価項目
- コード補完の品質と関連性
- 開発速度への影響
- チーム全体での生産性向上
- エンタープライズポリシーの適用状況
7. よくある質問と対処法
7-1. セットアップ時の注意点
Q: トライアル期間終了後のデータはどうなりますか?
A: トライアル期間終了後も、アカウントとデータは保持されます。ただし、Enterprise Cloud固有の機能へのアクセスは制限されます。有料プランへの移行をスムーズに行うため、期間終了前に計画を立てることを推奨します。
Q: 既存の組織をエンタープライズアカウントに移行できますか?
A: はい、既存の組織をエンタープライズアカウントに移行することが可能です。ただし、事前に移行計画を立て、メンバーへの周知を行うことが重要です。
Q: Advanced Securityの機能は全リポジトリで有効化すべきですか?
A: 段階的なアプローチを推奨します。まず重要なリポジトリから始め、チームのフィードバックを基に設定を最適化してから、全体展開を行います。
8. まとめ
GitHub Enterprise Cloudトライアルは、エンタープライズレベルの開発環境を体験し、組織のニーズに合致するか評価する絶好の機会です。本ガイドで示した手順に従い、計画的にセットアップを進めることで、トライアル期間を最大限に活用できます。
各機能の詳細なドキュメントを参照しながら、実際の開発ワークフローに組み込んで評価することをお勧めします。トライアル期間中に十分な検証を行い、本番導入に向けた確実な判断材料を得てください。