製造業における購買戦略の整理と設計:在庫・発注・資材の最適化をどう進めるか
最近、ある製造業系の購買部門で、資材調達コストの継続的な削減を目的とした構想整理と複数プロジェクトの横断設計に関わる機会がありました。
業務改善や仕組み構築に関心のある方向けに、「どういう考え方で整理していったのか」を中心にまとめてみます。業界やテーマが近い方の参考になればうれしいです。
背景と目的
この企業の購買部門では、調達コストを前年比10%以上削減するという中期目標が掲げられていました。
これを達成するために、単発の改善ではなく「調達構造そのものを見直すプロジェクト」を立ち上げ、以下の3テーマが並行して走る体制となりました。
構想フェーズで整理した3つのアプローチ
1. 発注点数の削減と購買ロットの最適化
2. 需要予測を活用した前倒し購買判断
3. 在庫情報のリアルタイム取得と発注判断の自動化
これらをそれぞれプロジェクトに分解すると、以下のようになります。
各プロジェクトとその目的
プロジェクト名 | 主な狙い | 手段 | 担当する役割 |
---|---|---|---|
資材仕様統合と発注数削減 | バラつきのあるサイズ・規格を統一して発注数とSKU数を削減 | 吸収可能な資材を代表仕様に再定義 | 仮説立案〜検証ロジック設計を担当 |
需要データ活用と発注前倒し | 将来の需要見込みを使って発注タイミングを最適化 | 顧客からの予告情報(内示)を基にした購買設計 | ユーザーヒアリングと活用方法の再定義を担当 |
在庫可視化とセンサー連携 | 現場に行かずに在庫状況を把握し、欠品/過剰リスクを減らす | 重量センサーデバイス(SmartMat)導入 | システム要件整理と分析項目の洗い出しを担当 |
担当した範囲の整理
① 資材仕様の集約ロジック策定
資材間で「どこまで仕様を吸収・統合できるか?」を判断するために、以下のようなステップでロジックを構築しました:
- 【命題】類似資材の吸収可能性を“仕様面”と“寸法面”から評価できるか?
- 【仮説】同一厚み・切り出し可能・指定材以外であれば代表化可能
- 【検証】使用予定データと組み合わせて切り出し係数ベースで吸収可能性を判定
→ 各資材を「代表サイズ/配下資材/対象外」に分類し、発注対象を再構成する検証を担当。AIとロジックフローを確定させて、Python/AIで集計をするという感じ。
② 在庫可視化PJ:センサーデバイス導入に向けた要件整理
重量センサーを使って、以下のような情報をリアルタイムで取得する構想を担当:
- 総重量 → 個数変換(基準重量で割る)=在庫数量のリアルタイム管理
- 発注点到達時にアラート通知を出すような仕組みを実装。
- 各SKUの回転率や安全在庫量の動的計算
- 中長期データの蓄積後は、BIツールなどを使ったダッシュボード化を検討
実際にセンサーを設置するのは物理現場ですが、「どれを記録対象とし、発注判断につなげるには記録データのどの要素が必要になるか」という要件面の整理をはじめています。
③ 内示データ活用のためのヒアリングと活性化設計
別部門(営業・製造)で扱っていた「受注予告データ」を購買でも活用するため、以下のような検討を実施:
- 現状の受注予告制度・データ精度の棚卸し
- どの粒度・単位で内示を見ると購買判断に使えるか?
- どういう風に活用するか
- 活用精度を改善するための“評価ロジック”も視野に入れて検討
最終的な全体構造の整理(戦略的つながり)
[仕様集約ロジック] ← 発注はこの前提で進行
↑
[在庫情報(SmartMat)] ← リアルタイム在庫数と発注点管理
↑
[内示情報] ← 数か月先の使用量を予測
↓
[必要発注数の判断]
- 「どれくらい必要か?」は在庫+内示
- 「どう買うべきか?」は集約ロジックで判断
- この2軸で発注最適化を支援
これから
プロジェクトは始まったばかりで、まだKickoffできていないサブプロジェクトもあります。
これからどのようにアプローチしていくかの検討にはなりますが、中期目標の戦略立案に対する具体的なプロジェクト構想の提案という意味では、PMOとしてまずはスタートできそうだなという感じです。
一方で、これから具体的な要件策定を進めていくことになるので、その中で悩んだことや課題解決法についてはまた書いていければなとおもってます
お読みいただきありがとうございました!
類似の構想支援や業務設計を行いたい方、ご興味のある方はお気軽にコメント・DMください。