元利均等方式の利息計算(1) - ローンの公式の導出 の続きです。
前回の記事で、ローン(分割払い)の月々の返済額を計算する公式を解説しました。もう一度載せておきましょう。
- $x$: 月々の返済金額
- $s$: 月利。実質年率15%なら12で割って1.25%
- $a$: 最初に借りた元金額
- $n$: 返済回数
$$
x = \frac{as}{1-(1+s)^{-n}}
$$
この公式を元に、式変形をしていくことで、派生公式を作ることができます。有用と思われるものをまとめていきます。
n回払いの利息合計
分割払いの場合、利息の合計を公式でざっくり概算することができます。
冒頭のローンの公式は、 n回払いでx円ずつ毎月支払っていくと、ぴったり利息+元金を払い終わる ということです。つまりxにnを掛ければ支払い総額が出るわけですから、そこから元金を引けば、差分が利息の総額ということになりますね。
- $f$: 利息の合計
$f = nx - a$ を展開して、
$$
f = nx - a = \frac{nas}{1-(1+s)^{-n}} - a
$$
※実際のロジックでは日割していたり、小数点以下の四捨五入/切り捨てなど細かい仕様があるため、完全に合致するわけではありません。
ちなみに、ローンの公式はExcelやSpreadsheetではPMT関数として組み込まれていましたが、この利息合計は CUMIPMT という関数で計算ができます。
=-CUMIPMT(月利, 分割回数, 元金, 1, 分割回数, 0)
利息合計は元金の何%になるのか (アドオン率換算)
利息の合計の公式を、両辺$a$で割ると、元金と利息合計の比率になります。
- $r$: アドオン率
$$
r = \frac{f}{a} = \frac{ns}{1-(1+s)^{-n}} - 1
$$
実質年率は利息が高いのか安いのかを比較しやすいのですが、具体的な利息総額がいくらになるのかはパッとわかりにくいです。
一方、 元金に対してr%が利息である
と表示する方式をアドオン方式と呼びます。貸金業法や割販法では実質年率での表示を義務付けており、どの事業者も実質年率で利息を表示しています。
しかし、アドオン方式は利息をイメージしやすいメリットがあります。
たとえば、1%の実質年率で35年の住宅ローンを組んだとき、利息がいくらになるのか?
と言われると、とても計算が難しそうですよね。この公式に当てはめると…
- n = 420 (35年 x 12ヶ月)
- s = 0.0008333... (1%/12)
$$
r = \frac{420 \times 0.0008333...}{1-(1+0.0008333...)^{-420}} - 1 = 0.1855999...
$$
ということで、元金のおおよそ18.6%ぐらいが利息総額
になるとわかります。これならだいぶ利息についてイメージがつきやすいのではないでしょうか。
アドオン率 (事業者によっては割賦係数(かっぷけいすう)などと呼んでいることもあります)は、支払いの回数nと、実質年率だけで決まるため、事前に計算して表にしておくことで、利息の感覚がよくわかるようになります。
ExcelやSpreadsheetでは、CUMIPMT関数に現在価値=1として入力すると、アドオン率を計算できます。こんな感じでしょうか。結果は負の数で出てくるので、マイナスをつけて打ち消しておくとわかりやすいです。
=-CUMIPMT(月利, 分割回数, 1, 1, 分割回数, 0)
アドオン率の計算例
せっかくなのでいくつかアドオン率の換算表を書いておきます。
住宅ローンを35年(420回払い)で組む場合の実質年率からアドオン率の対応表
実質年率 | アドオン率(利息総額は元本の何%?) |
---|---|
0.10% | 1.76% |
0.20% | 3.55% |
0.40% | 7.18% |
1.00% | 18.56% |
1.50% | 28.60% |
仮に5000万円を実質年率1.5%で借りたら、総額1429万円ぐらい利息を払わないといけないわけですね。
一般的なクレジットカードでの分割払い回数からアドオン率の対応表
クレジットカードによって分割払いの実質年率は様々なので、ここでは13%, 15%, 18%の3パターンで計算してみました。
分割回数 | 年率13% | 年率15% | 年率18% |
---|---|---|---|
3 | 2.17% | 2.51% | 3.01% |
5 | 3.27% | 3.78% | 4.54% |
6 | 3.83% | 4.42% | 5.32% |
10 | 6.05% | 7.00% | 8.43% |
12 | 7.18% | 8.31% | 10.02% |
18 | 10.61% | 12.29% | 14.85% |
20 | 11.76% | 13.64% | 16.49% |
24 | 14.10% | 16.37% | 19.82% |
36 | 21.30% | 24.80% | 30.15% |
クレカの分割払いはカード契約さえできていれば特に購入時は審査などなく気軽に利用できますが、その分、年率が高いですよね。
実質年率に関する初歩的な誤解として、「実質年率15%ということは、1年に渡って返すと元金の15%ぐらいの利息を取られるんじゃないか」というものがあります。実際は毎月返している分もっと安くなるので、22ヶ月ぐらいでおおよそアドオン率 = 実質年率になります。
金融業界に身をおいていれば、この辺のテーブルを暗記しておくと格好いいかもしれませんね。
個人的には15%10回払いはアドオン率7%で覚えやすいので、説明のサンプルとしてよく使います。