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【オンプレF5】AWS/GCP世代に送る、物理BIG-IPが起動しなくても生存する独立管理チップ「AOM」の概要とiシリーズ設定手順

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Last updated at Posted at 2026-06-27

はじめに

AWSのマネージドELB(ALB/NLB)やGCPのCloud Load Balancingなど、クラウド全盛の時代において、F5 BIG-IPを「物理ハードウェア(オンプレミス)」で触る機会は減っているかもしれません。

しかし、ミッションクリティカルなインフラやデータセンターの現場では、圧倒的なスループット、パケット処理性能、そして高度なトラフィック制御のために、今でも物理のF5 BIG-IPなどの専用アプライアンスが第一線で活躍しています。

クラウドであれば「インスタンスの停止・起動」や「コンソール接続」はWebコンソールから数クリックですが、オンプレミスの物理筐体がフリーズしたらどうするでしょうか?

夜中にデータセンターへ緊急入館の申請を出して、重い腰を上げて現地に駆けつけ、ラックの裏に回って電源ケーブルを物理マニュアルで引き抜く……なんて泥臭い現地作業は、できれば避けたいですよね。

今回は、オンプレF5の運用ノウハウとして絶対に欠かせない、独立管理プロセッサ 「AOM(Always On Management)」 の概要と、iシリーズにおける設定手順をご紹介します。
(rシリーズはまた別途)


1. クラウドにはないオンプレの壁を破る「AOM」とは?

AOM(Always On Management)とは、BIG-IPのメインCPUやTMOS(基本OS)とは完全に独立したハードウェア上で動作する管理用プロセッサです。サーバーの世界でいう「iLO」「EXPRESSSCOPE」「iRMC」のような、アウトオブバンド(OOB)管理機能をインフラエンジニアに提供します。

クラウド環境(BIG-IP Virtual Editionなど)では、ハイパーバイザーやクラウド基盤側がコンソールや電源を制御してくれるため、AOMを意識することはありません。これこそが**「オンプレの物理F5ならでは」**の必須知識となります。

なぜAOMが必要なのか?(ユースケース)

  • TMOSフリーズ時の命綱: 設定ミスや高負荷でメインOS(TMOS)へのSSHやWebUIが完全にハングアップした場合でも、AOMが生きていればリモートから筐体へアクセスできます。
  • リモート電源操作: データセンターへ駆けつけることなく、リモートから本体の強制電源OFF/ON(Cold Boot)やリブートを実行できます。
  • 遠隔コンソール接続: シリアルコンソールサーバー(コンソールターミナル)の空きポートが枯渇していても、AOMにSSHすればそのままホストのシリアルコンソール画面を奪取できます。

2. 【重要】iシリーズにおけるネットワークの挙動

一般的な物理サーバーの感覚だと「AOM専用の物理LANポートが筐体背面にあるはず」と思いがちです。

しかし、現行のiシリーズ(i2000, i4000, i5000シリーズ等)におけるAOMは、本体の「MGMT(管理)物理ポート」を共有する仕様になっています。
aom.jpg

  • 物理ポートは1つだけ: 前面の MGMT ポートにLANケーブルを1本挿します。
  • IPアドレスは2つ必要: 内部のスイッチング構造により、その1本のケーブルの中に「TMOS用管理IP」と「AOM用管理IP」の2つの独立したIPアドレスを共存させます。(iシリーズの場合。rシリーズはまた別途。)

⚠️ 運用の注意点
物理ポートを共有しているため、AOMに割り当てるIPアドレスはTMOSのMGMTポートと同じサブネットから払い出すと効率的でしょう。


3. iシリーズでのAOM設定手順

3-1.先ずはIPアドレスの設定から

AOMのIPアドレスを設定する方法はいくつかあります。

  • 前面タッチパネル
  • CLIコマンド(F5-aom-config)
  • aom直接接続~問い合わせ形式での入力

今回はaom直接接続~問い合わせ形式での入力 をご紹介します。
 

  • TMOSにシリアルコンソールケーブルよりrootユーザでCLIログインします。
bigip4600-1 login: root
Password:
Last login: Sat Feb  7 03:53:59 on ttyS0
[root@bigip4600-1:Active:Disconnected] config #
  • エスケープキーEsc を押した後に ( を押下し、AOMモードに入ります。
  • Nを選択し、AOMとして利用したいIPアドレス、サブネット、Gateway(必要あれば)を指定します。
AOM Command Menu:
B --- Set console baud rate
I --- Display platform information
P --- Power on/off host subsystem
R --- Reset host subsystem
N --- Configure AOM network
S --- Configure SSH Server
A --- Reset AOM
Q --- Quit menu and return to console


Enter Command: N

AOM management network configurator
Use DHCP (Y/N)? N
IP address (required)    : 192.168.1.77
Netmask (required)       : 255.255.255.0
Gateway (optional)       : 192.168.1.254

configuring.................................
configured 192.168.1.77 / 255.255.255.0 / 192.168.1.254
  • 無通信断タイムアウト設定を設定したい場合はSを押下します。
    ※今回は検証環境のためタイムアウト 0(無制限)にしていますが、本番環境に投入する際は、セキュリティ要件やセッション残留防止のため、PJ設計指定のタイムアウト値(600秒など)を必ず設定してください。作業後にセッションが残りっぱなしになるのは御法度です。
Enter Command: S

Enter SSH session idle timeout (0 for no timeout, or 30-86400 seconds): 0
  • 設定確認はIを押下します。
Enter Command: I

Host subsystem information:
    Chassis Part Number       : 200-0390-03 REV A
    Chassis Serial Number     : f5-****-****
    Product Part Number       : ESS-0001-01 REV C
    Product Serial Number     : ess*********
    Power status              : on

Firmware versions
    AOM Firmware Version (1)  : 8.0.14 (Active)
    AOM Firmware Version (2)  : 6.4.12
    AOM Bootloader Version    : 3.2
    AOM Firmware Build Date   : Mar  4 2019 14:19:48 PST
    CPLD version              : 0x26
    LCD Application Version   : 3.00.107.00.0
    LCD Bootloader Version    : 2.01.082.00.0

AOM Management Network Configuration
    IPv4 Address              : 192.168.1.77 (Static)
    IPv4 Address Subnet Mask  : 255.255.255.0
    IPv4 gateway              : 192.168.1.254
    MAC Address               : f4:**:**:**:**:**
    SSH session idle timeout  : No Timeout

Power Supply #1 Status        : Present
    Product Part Number       : PWR-0334-02
    Product Serial Number     : ************


Power Supply #2 Status        : Not Present


LCD Status                    : Present
    Product Part Number       : SUB-0675-07 REV A
    Product Serial Number     : ************

3-2.次にユーザ設定

AOM操作時にrootやadminをそのまま利用したい場合にはその限りではありませんが、今回はaomというユーザを作成してみたいと思います。
構築後の保守運用フェーズを見据えて、rootを使い回さずに作業者用のアカウント(aomユーザー)を作成し、さらにAdvanced Shellを有効化して、最小限のAOM権限だけを aom_setup_user で付与することも可能です。

ユーザ名とPWを入力します。shellを使うユーザになりますので、Advanced shellを有効にしておきます。
image.png

aomユーザが作成出来たら、TMOSにシリアルコンソールケーブルよりaomユーザでCLIログインします。
(rootにaomログイン権限与えたい方はrootで入ってください。適宜読み替えを。)

Kernel 3.10.0-862.14.4.el7.x86_64 on an x86_64
bigip4600-1 login: aom
Password: 
Last login: Sat Jun 27 06:21:43 on ttyS0

aom_setup_user コマンドで、ユーザに対して外部からAOM経由で入る際の権限を与えます。

[aom@bigip4600-1:Active:Disconnected] ~ # aom_setup_user ?
Usage: /bin/aom_setup_user [options]
           -d disable AOM user
           -e enable AOM user
           -l list AOM user
           -o overwrite and enable AOM user, necessary to change/overwrite the existing AOM username
 /bin/aom_setup_user will prompt for the the AOM username and password to configure.
[aom@bigip4600-1:Active:Disconnected] ~ # aom_setup_user -o
Enter username:aom
Enter Password: 
Confirm Password: 
AOM username  aom successfully set and enabled.  Note that the AOM network must be configured via the AOM menu.
[aom@bigip4600-1:Active:Disconnected] ~ # 

3-3.試験をしましょう

AOMのIP(例:今回は192.168.1.77)にIP疎通性を確認します。
image.png

teratermやputty等のアプリからSSH接続します。
image.png

今回はaomユーザで入ります。(AOMはキーボードインタラクティブでなくとも入れます。)
image.png

エスケープキーEsc を押した後に ( を押下すれば、aomモードに入れます。
image.png

AOMモード遷移後。
image.png

Pを押下すると、電源制御です。off/onの制御が可能です。(数秒待っているとタイムアウトします。気持ち素早く入力を。)
image.png

まとめ

クラウド上のロードバランサーであれば、L1/L2の物理レイヤーやハイパーバイザー側はブラックボックスとして基盤側に担保されています。しかし、オンプレミスの物理インフラを預かる我々にとっては、 「TMOSが完全にハングした物理筐体を、現地に駆けつけることなく、いかにデスクから遠隔で生存確認し、安全に火入れ(再起動)し直せるか」 という泥臭い物理制御のノウハウこそが、運用の生死を分けます。

概要設計書作成等の上流工程では見落とされがちですが、シリアルコンソールサーバーのポート枯渇や、夜間のデータセンター(DC)緊急入館のハードルの高さを知っている現場(工事屋)からすれば、AOMはまさに命綱。
「万が一のインシデントに備えて必ずMGMTのIPと一緒に、AOMもセットで備えておく」 ことも安全な施工と同じレベルで重要と考えています。


情報元ソース(F5公式ドキュメント)

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