前回、前々回と勉強会用途でYAMAHA RTX1300を使ったVRRP(HA構成)の検証記事を書いたところ、思いのほか多くの方に読んでいただけたようでありがたい限りです。
きっと、個人ユース、企業ユース、多くのところで動いているのでしょう。
「YAMAHA、やっぱり良いルーターだなあ」と再認識したわけですが、今回は第3回として、RTX1210/1220世代からガラッと作りが変わった LAN周りの新機能(フレキシブル LAN/WAN ポート) や LAG(リンクアグリゲーション) 、現場の運用監視で欠かせないsyslog・SNMP設定といった単体機能の使い勝手を実機で確かめたものをご紹介できればと思います。
1. フレキシブル LAN / WAN ポートってどうよ?
従来のRTX830なんかだと、物理ポートは「WAN×1、LAN×4」みたいに固定されていて、小規模な拠点ルーターならそれで十分足りました。ただ、現場で「NAS用に別セグメント切りたい」「物理的にポートを分離したい」なんて要件が出たときは、YAMAHA伝統のLAN分割機能を使ってやりくりをしていたわけです。
これがRTX1300では刷新され、 「フレキシブル LAN / WAN ポート」 という機能に生まれ変わりました。
最初は「今までのLAN分割と何が違うんだ?」と少し戸惑いますが、慣れてしまえば頭の中でスッと置き換えられます。
基本は大事なので、まずはRT Proの公式仕様をチェックしておきましょう。
https://www.rtpro.yamaha.co.jp/RT/docs/flexible-lan/index.html
2. さっそくフレキシブル LAN / WAN ポートを設定してみる
今回の検証用に組んだ基本Configがこちらです。(後述するLAGの設定も含まれています)
※検証環境の都合上、lan2 は上位のインターネット環境へDHCPで抜ける構成にしています。
RTX1300-1# show config
# RTX1300 Rev.23.00.17 (Fri Oct 3 09:45:39 2025)
login user admin *
user attribute admin administrator=2
console columns 4096
console lines infinity
console prompt RTX1300-1
ip route default gateway dhcp lan2
ip keepalive 1 icmp-echo 10 5 dhcp lan2
lan flexible-port lan1=1-2 lan2=9 lan3=10 lan4=3-4 lan5=5-8
ip lan1 address 192.168.90.254/24
ip lan2 address dhcp
ip lan2 nat descriptor 200
ip lan4 address 192.168.100.254/24
lan link-aggregation static 1 lan1:1 lan1:2
lan link-aggregation static 2 lan4:3 lan4:4
ip filter 500000 restrict * * * * *
nat descriptor type 200 masquerade
nat descriptor address outer 200 primary
telnetd host any
dns host lan1 lan4
dns server dhcp lan2
dns server select 500201 dhcp lan2 any .
dns private address spoof on
httpd host lan1
statistics traffic on
CLIでいうと、以下の1行がフレキシブルポートのキモになります。
lan flexible-port lan1=1-2 lan2=9 lan3=10 lan4=3-4 lan5=5-8
RTX1300はハイエンドなRTX35xx系とは違ってWeb GUIが使えるのも良いところですね。画面を開いてみるとこんな感じです。
めちゃくちゃカラフル!アライドテレシスのGUIっぽさも少し感じますが、VLANやセグメントごとに色分けしてくれるのは直感的で凄く分かりやすいです。
GUIからポチポチ設定するのもかなりお手軽です。現場の好みに合わせてCLIと使い分けられますね。
💡 少しだけ迷いどころ!
ちょっと頭を悩ませるのが、筐体前面の物理シルク印刷です。
前面パネルには、
- ポート 1~8 ➔ LAN1
- ポート 9 ➔ LAN2
- ポート 10 ➔ LAN3
とバッチリ印刷されています。設定上でこの論理割り当てを変えてしまうと、後から現地に来たエンジニアさん達が混乱する原因になりかねません。
ここはもう「そういう仕様だ」と割り切って、現場ではテプラを貼るなどして綺麗にポートラベルを作っておくのが優しさでしょうか。
3. LAG(リンクアグリゲーション)を組んでみる
複数の物理線を束ねて帯域拡張や冗長化を図るLAG。方式はStaticとLACPがありますが、今回はStaticで組んでみます。
LAG自体はRTX1210/1220時代からありましたが、RTX1300のフレキシブルポートと組み合わせる際にちょっとした注意点があります。
※Static LAGは RTX1300 Rev.23.00.04 以降で対応しています。
参照:ヤマハ公式:リンクアグリゲーションの設定(Static)
ドキュメントを読むと、ここが最大のポイントです。
LAN 分割機能、ポート分離機能、ポートミラーリング機能との併用が可能である。ただし、LAN 分割機能またはポート分離機能と併用する場合は、 分割または分離したスイッチポートと同一のセグメントに属するポートのみ を集約させることができる。
つまり、例えば2つのLAG(グループ1とグループ2)を作りたい場合、
lan link-aggregation static 1 lan1:1 lan1:2
lan link-aggregation static 2 lan4:3 lan4:4
と設定するには、あらかじめフレキシブルポート側でも同じグループとしてポートを括っておく必要があります。
lan flexible-port lan1=1-2 lan2=9 lan3=10 lan4=3-4 lan5=5-8
この「フレキシブルポートの定義」と「LAGの定義」を整合させるのが設計上のキモというわけですね!
実機でLANケーブルを抜いて切り替えテストしてみた
実際にLAGを組んだ状態で、1秒間隔のPingを打ちながらケーブルを1本ずつ抜き差ししてみました。
- lan1.1 抜去
- lan1.1 挿入(戻し)
- lan1.2 抜去
- lan1.2 挿入(戻し)
試験結果ログを見ると、①の1本目を抜いた瞬間に1パケット(Request timed out)落ちた程度で、すぐに残った1本へ通信が迂回されました!この程度の瞬断で済むならば及第点と言えるでしょう。
(※回線切り替え時のミリ秒単位の測定なんかは専用の試験機が必要になりますが、その話はまたの機会に。)
4. ダッシュボードの使い勝手
コマンド屋さんはCLIだけで完結させがちですが、拠点管理や現地スタッフへの引き継ぎを考えるとWeb GUIのダッシュボードも馬鹿にできません。
こんな感じで lan1 lan2 lan4 それぞれのトラフィック流量をリアルタイムかつビジュアルに確認できます。
個人的に「おっ、使えるな」と思ったのが、NATセッション数をガジェットとしてダッシュボードに出せる点です。
「なんか通信が重いんだけど……」と現地から連絡が来たときに、セッション溢れが起きていないか一目で把握できるのは運用保守においてかなり便利ですね。
5. syslog 設定とファシリティ変更
コンプラ重視の時代。最近のは流石にまじめな書きっぷりになってしまいましたが、昔のRT ProのFAQページは語り口がフランクで読んでいて面白いですね。
ヤマハ公式:Syslogとは?
外部のsyslogサーバーへログを飛ばす設定は、これまでのRTXシリーズと変わらずシンプルです。
RTX1300-1# syslog host ?
入力形式: syslog host ホスト名...
説明: SYSLOGを送信するホストを設定します
RTX1300-1# syslog host 192.168.100.1
RTX1300-1# syslog info on
RTX1300-1# syslog notice on
RTX1300-1# syslog debug on
ファシリティ(Facility)を変更してみる
統合ログサーバーなんかで「YAMAHAルーターからのログは local0 で受けたい」といった指定がある場合は、ファシリティ番号を変更します。
参照:SYSLOG ファシリティの設定
現場でよく使うファシリティ番号のおさらい:
| キーワード | ファシリティ番号 | 説明 |
|---|---|---|
| kern | 0 | カーネルメッセージ |
| user | 1 | ユーザーレベルメッセージ(デフォルト) |
| 2 | メールシステム | |
| daemon | 3 | システムデーモン |
| auth | 4 | セキュリティ/認証メッセージ |
| local0 | 16 | ローカル利用 0 |
| local1 | 17 | ローカル利用 1 |
| local2 | 18 | ローカル利用 2 |
今回は試しにファシリティ番号を 16(local0)に変更してみます。
RTX1300-1# syslog facility ?
入力形式: syslog facility ファシリティ番号
説明: SYSLOGのファシリティを設定します
デフォルト値: user
RTX1300-1# syslog facility 16
受信側のsyslogデーモンやWiresharkでパケットを拾ってみると、しっかり Facility: LOCAL0 (16) として解釈されて飛んでいることが確認できました!
6. SNMP設定(TrapとPolling)
ネットワーク監視において、syslogとSNMPはセットで導入する超定番コンビです。
- syslog(プッシュ型): 「リンクダウンした」「ログイン失敗した」等のイベントをリアルタイム通知
- SNMP(プル&プッシュ型): 「CPU・メモリ使用率」「ポートごとのトラフィック」等のステータス定期取得(Polling)&重大障害時のTrap送出
SNMPの細かいパラメータはGUIからいじれないので、CLIから投入します。
今回はコミュニティ名を hogehoge_com123、監視サーバーを 192.168.100.1(ルーター側の送信元IPを 192.168.100.254 に固定)として設定しました。
snmpv2c host 192.168.100.1 hogehoge_com123
snmpv2c community read-only hogehoge_com123
snmpv2c trap host 192.168.100.1 trap hogehoge_com123
snmpv2c trap community hogehoge_com123
snmp local address 192.168.100.254
snmp trap enable snmp all
snmp sysname RTX1300-1
snmp syslocation Yokosuka
snmp trap link-updown separate-l2switch-port lan1 on
snmp trap link-updown separate-l2switch-port lan2 on
snmp trap link-updown separate-l2switch-port lan4 on
💡 ポイント:ポート毎のLink Up/Down Trap
YAMAHAは他社(Cisco等)に比べてTrap制御のフラグが細かく分かれいる点が注意ポイントです。例えば・・
snmp trap link-updown separate-l2switch-port lan1 on
snmp trap link-updown separate-l2switch-port lan2 on
snmp trap link-updown separate-l2switch-port lan4 on
参照:LAN インタフェースの各ポートのリンクUp/Downトラップ設定
これを明示的に入れておかないと、L2スイッチ機能(フレキシブルポート)で分割した個別の物理ポートが切れた際にTrapが飛ばないケースがあります。「デフォルトで on にしておいてくれればいいのに……」と現場では思いつつ、大量ログ対策というYAMAHA作り手さんの配慮なのかもしれません。
動作確認:Trap送出とSNMP GET
実際にLANケーブルを抜抜してTrapの具合を確認してみます。
監視サーバー側でしっかりポートダウンのSNMP Trap(v2c)を受信できました!
続いて、監視サーバー側から標準MIB(sysName や sysLocation)をSNMP GETしてみます。
設定した通り RTX1300-1 や Yokosuka という文字列がバッチリ取得できました。これで監視装置への登録準備も万全ですね。
● まとめ&参考リンク
RTX1300は単に「10G(SFP+)に対応した」というだけでなく、フレキシブルLAN/WANポートによって設計の柔軟性が上がった印象です。
HA構成(VRRP)だけでなく、今回紹介したLAGやSNMP/syslog周りもよく使うところかと思います。少しお高くなってしまいましたが、自宅や会社に入れるのにも良いルーターではないでしょうか。










