はじめに
最近、もんじゃが美味しい街での技術勉強会に呼ばれることが増えてきました。
若手エンジニアさん達が物理サーバの蓋を開けて、おそるおそるメモリやライザーカードを挿してる姿を見ると色々と教えられるものがありますね。初心忘れるべからず。
さて、サーバ側でどれだけHA組もうがNICチーミングしようが、現場で一番怖いのは 「出口のルーターが1個死んだら全部落ちる」 というドハマリ構成です。
勉強会で若手さんに向けた・・何かいい手頃で実践的な冗長化ネタはないか…?
CiscoのStackだのAlliedのVCSだのも良いですが、教科書通りの構成ではつまらない。
ふと作業場の棚を見やると、検証用で転がっていた YAMAHA RTX1300(奇跡的に2台揃ってる!)。
最近では10G回線を引いたご自宅ガチ勢
界隈でも人気の機器ですね。
倉庫から古いYAMAHA機材もかき集めて、今日は若手エンジニアさん達と一緒に「VRRP」と戯れてみましょう。
1. 箱庭トポロジ
ラッキングして配線して…なんて大げさなラックを組む必要はありません。転がってるSWとPC、あとはルーターが数台あれば箱庭環境の完成です。
今回は拠点Aの出口となるLAN1側(10.10.10.0/24)に RTX1300 を2台並べて、VRRPで冗長化を仕込みます。
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仮想IP (VIP):
10.10.10.254(これが端末側のデフォルトGWになる) -
RTX1300-1 (主系 Master / Priority: 200):
10.10.10.11 -
RTX1300-2 (副系 Backup / Priority: 100):
10.10.10.12
2. VRRPとは
VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol) は、業界標準(RFC 3768等)のルーター冗長化プロトコルです。
ざっくり言うと、「2台のルーターで1つの影武者IP(仮想IP: VIP)を共有する仕組み」 です。
普段は威張っている Masterルーター が通信を通し、そいつが倒れた瞬間、陰で控えていた Backupルーター が「よし俺がやる!」とVIPを引き継ぎます。
これのおかげで、PCや通信機器側のGW設定を変えずに、裏で回線迂回を完了させられるという現場の強い味方です。
3. YAMAHAのマニュアルを見てみましょう
YAMAHAのVRRP仕様やコマンドの細かい挙動は、毎度おなじみRTproの公式ドキュメントを穴があくほど読みましょう。現場作業前にここを読み込んでおくのがハマらないコツです。
⚠️参考
Ciscoの感覚で「IP SLAが死んだらPriorityをサクッと下げて……」なんてスマートな設定を妄想しているそこの玄人さん?!
YAMAHAの世界にそんなお洒落な仕組みはありません(luaで作りこまない限り)。しっかり読んでおきましょう……!
4. config基本形と初期状態
コンフィグを入れていく前に、これまでのYAMAHAルーター検証やHA構成のステップについて知りたい方は、ぜひ過去の現場検証記事も合わせてチェックしてみてください。
それでは、現場でパパッと叩く基本コンフィグを作っていきましょう。
ip lan1 vrrp でVIPとプライオリティを仕込みます。
また、今回は上位回線(lan2)が切れたらVRRPも道連れで落とす ip lan1 vrrp shutdown trigger も入れてみます。
RTX1300-1 (主系) Config & ステータス
ip route 10.20.20.0/24 gateway 10.30.30.21
ip lan1 address 10.10.10.11/24
ip lan1 vrrp 110 10.10.10.254 priority=200
ip lan1 vrrp shutdown trigger 110 lan2
ip lan2 address 10.30.30.11/24
show status vrrp を叩いて、ちゃんと1台目が Master を掴んでいるか確認します。
RTX1300-1# show status vrrp
LAN1 ID:110 仮想IPアドレス: 10.10.10.254
現在のマスター: 10.10.10.11 優先度: 200
自分の状態: Master / 優先度: 200 Preempt 認証: NONE タイマ: 1
よし、1台目がドヤ顔でMasterになってますね![]()
RTX1300-2 (副系) Config & ステータス
ip route 10.20.20.0/24 gateway 10.40.40.22
ip lan1 address 10.10.10.12/24
ip lan1 vrrp 110 10.10.10.254 priority=100
ip lan2 address 10.40.40.12/24
2台目側は控え選手(Backup)としてじっと待機させます。
RTX1300-2# show status vrrp
LAN1 ID:110 仮想IPアドレス: 10.10.10.254
現在のマスター: 10.10.10.11 優先度: 200
自分の状態: Backup / 優先度: 100 Preempt 認証: NONE タイマ: 1
平常時パケット流れるルートはこんな感じです。きれいに主系を通ってますね。
5. Active系(物理回線抜き)
さあ、お待ちかねの 「物理LAN回線断
テスト」 です!
「誰かが誤ってLANケーブル引っ掛けた」とか「天井裏のネズミ
がlan2ケーブルをかじった」という事故を再現してみましょう。
RTX1300-1のlan2からLANケーブルを「えいっ」と抜いてみます。
コンフィグに仕込んだ shutdown trigger が発動し、lan2が落ちると同時にLAN1側のVRRPも連動してシャットダウンします。
コンソールで確認してみましょう。
抜き去った後のログ・ステータス確認
RTX1300-1(主系):
RTX1300-1# show status vrrp
(表示なし:VRRPが道連れシャットダウン)
RTX1300-1# show status lan2
...
PORT9 : Auto (Link Down)
狙い通り!LAN2のLink Downに巻き込まれてVRRPが息の根を止めました![]()
RTX1300-2(副系):
RTX1300-2# show status vrrp
LAN1 ID:110 仮想IPアドレス: 10.10.10.254
現在のマスター: 10.10.10.12 優先度: 100
自分の状態: Master / 優先度: 100 Preempt 認証: NONE タイマ: 1
主系からのハロー(VRRPアドバタイズ)が途絶えたので、2台目が「主系が倒れた!俺が立つ!」とばかりに一瞬で Master へ昇格!![]()
これで通信は副系経由へ自動迂回されます。
6. 自動戻し(Preempt)のお話
YAMAHAのRTXルーターは、デフォルトで Preempt(横取り・自動切り戻し) が「有効」になっています。
復旧作業として、抜いていた lan2 のケーブルをカチッと挿し直してみましょう。
lan2 がリンクアップすると、RTX1300-1 の VRRP も目を覚まします![]()
RTX1300-1 の Priority(200)は RTX1300-2(100)より強いので、Preempt機能によって「主役復帰だ、そこをどけ!」と言わんばかりに Master を横取り(切り戻し)します。
Pingを打ち続けていると、1〜2発程度落とすだけで勝手に元ルートへ戻る様子が確認できます。
次回は?
今回は準備体操代わりに、一番シンプルな物理断トリガーによるVRRP切り替えをやってみました。
しかし、実際の現場は 「LANポートの電気的なリンクは生きているのに、上位のONUや光回線の先が死んでいる」 という状態が一番厄介です。
次回は、そんなケースで役立つ 「IP Keepalive(トラッキング機能)を使った監視連携」 等をご紹介しようと思います。つづく。



