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AI技術者なら「できません」と言えますか?――実例から考える偽物のAI技術者を見分ける方法

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Last updated at Posted at 2026-08-15

最近、「AI技術者」「AIエンジニア」という肩書きをよく見かけるようになりました。

生成AI、機械学習、LLM、RAG、Transformer……。

AIに関する技術は急速に広がっています。

しかし、私は一つ気になることがあります。

その人は、本当にAI技術を理解しているのでしょうか?

ここでいう「偽物」とは、AIを使ったことがない人のことではありません。

生成AIを仕事で活用することも立派なスキルです。

私が問題にしたいのは、

«AI技術者を名乗りながら、予測や機械学習の基本的な考え方を理解していない人»

です。

そして、私が実際に遭遇したいくつかの事例を振り返ると、AI技術者を見分けるための重要なポイントが見えてきました。


1. AI技術者としての経歴があるのに、評価基準を知らない

以前、AI技術者としての経歴があるという人と話す機会がありました。

そこで機械学習について話をしていたのですが、モデルの評価基準について十分な説明ができませんでした。

さらに話をしていくと、シグモイド関数も知らない。

では画像認識か?、それも違うらしい。

では、数値予測か?しかし、小数点にきっちりした業界にいたらしい。その上で丸め誤差を知らないのはおかしい。

もちろん、シグモイド関数を知らないことだけを理由に、

「この人はAI技術者ではない」

と断定するつもりはありません。

AIにもさまざまな専門分野があります。

しかし、

  • AI技術者としての経歴がある
  • 機械学習について話している
  • ところがモデルの評価について説明できない
  • 基本的な関数についても知らない

となると、私はその「AI技術者」という肩書きについて疑問を持ってしまいます。

重要なのは、どれだけAI用語を知っているかではなく、自分が扱っている技術の基礎を理解しているかです。


2. 「予測にはどのくらいデータが必要ですか?」

別の場面で、こんな質問をしました。

«「予測をさせる場合、最低限どのくらいのデータが必要ですか?」»

これに対して返ってきた答えは、

«「いっぱいあればいい」»
(お前何年待つ気やねん)
でした。

確かに、データが多いことが有利になるケースはあります。

しかし、これは予測を仕事として考える場合の回答にはなっていません。

予測するなら、

  • 何を予測するのか
  • どのくらい先を予測するのか
  • データの粒度は何か
  • 季節性はあるのか
  • トレンドはあるのか
  • どの程度の精度が必要なのか
  • どの程度の過去データが必要なのか
  • いつまでに予測を実用化する必要があるのか

などを考える必要があります。

そして、「いっぱい必要です」と言われたら、次の質問が出てきます。

«「では、いつまで待てばいいんですか?」»

「いっぱい必要」という答えでは、プロジェクト計画を立てることができません。

データが必要なら、

どのくらい必要なのか。なぜ必要なのか。いつまでに集められるのか。

まで考える必要があります。


3. 「1か月予測をしたい。でもデータは2か月半しかない」

さらに、もっと印象に残っている事例があります。

ある数量について、1か月分の予測をしたいという話がありました。

しかし、その時点で利用できるデータは、2か月半程度しかありませんでした。

私は、その条件では難しいと考えました。

予測対象の性質を考えると、本来必要だと考えたデータ期間は6年程度(当時の私の技量での判断)でした。

もちろん、6年待つというのは現実的ではありません。

そこで私は、

«「本来は6年程度必要だが、6年は長すぎる。最低でも半分の3年程度は必要ではないか」»

と考え、3年という数字を提示しました。

これは「3年あれば絶対に十分」という意味ではありません。

本来必要と考えた期間から大幅に妥協した、現実的な落としどころです。

ところが、返ってきたのは、

«「3年は待てない」»

というものでした。

もちろん、3年待てないという事情は理解できます。

問題は、その次です。

«「では、どういう条件なら予測できますか?」»

という話にならなければいけません。


4. AI技術者の仕事は「無理なものを魔法で可能にすること」ではない

3年待てない。

これは立派な制約です。

ならば、そこからAI技術者の仕事が始まります。

例えば、

  • 予測期間を変更する
  • 必要な精度を下げる
  • 予測対象を変更する
  • 類似する過去データを探す
  • 外部データを利用する
  • 別の統計モデルを検討する
  • 予測ではなく別の方法で意思決定する

など、問題そのものを再設計する必要があります。

ところが、

«「3年は待てない」»

と言いながら、

«「でも1か月の予測はしてほしい」»

では、技術的な条件が成立していません。

ここで技術者が言うべきなのは、

«「その条件では難しいです。では、条件をどこまで変更できますか?」»

です。

AI技術者は魔法使いではありません。

存在しないデータを、AIだからといって過去から取り出すことはできません。


5. 本物のAI技術者は「できません」と言える

私は、ここが一番重要だと思っています。

本物のAI技術者は、「できません」と言えます。

何でも「できます」と答える人が優秀なのではありません。

むしろ、

«「そのデータでは、その精度は保証できません」»

«「その条件では予測できません」»

«「その期間では季節性を評価できません」»

«「その要求を実現するには、別のデータが必要です」»

と言えることが重要です。

そして、そのうえで、

«「ただし、この条件ならできます」»

と代替案を提示する。

これこそがAI技術者の仕事なのではないでしょうか。


6. 私が考える「本物のAI技術者」

では、本物のAI技術者とは何でしょうか。

私は、次のような人だと思っています。

  • 分からないことを分からないと言える
  • できないことをできないと言える
  • データが足りなければ、それを指摘できる
  • 無理な要求に対して、別の解決策を提案できる
  • 自分の判断に根拠を持っている

これらは、最新のLLMを知っているかどうかとは少し違います。

AI技術者だからといって、すべてのAI技術を知っている必要はありません。

しかし、自分が担当する問題について、

「何が分かっていて、何が分からないのか」

を把握している必要があります。


7. AI時代だからこそ「分からない」が重要になる

生成AIを使えば、専門的な文章を簡単に作れるようになりました。

機械学習について説明する文章も書けます。

コードも生成できます。

専門用語も大量に出せます。

だからこそ、

「それらしく説明できる人」と「本当に理解している人」の区別が難しくなっています。

AIに答えを作らせること自体は悪くありません。

問題なのは、その答えを検証できないまま、自分の知識だと思い込んでしまうことです。

AIが賢くなればなるほど、

AIを使える人よりも、AIの答えを検証できる人の価値が高くなる

のではないでしょうか。


8. AI技術者を見分けるには、難しい質問はいらない

私は、AI技術者を見分けるために、難しい質問をする必要はないと思っています。

例えば、

«「この予測には、どのくらいのデータが必要ですか?」»

と聞いてみる。

そして、

«「なぜですか?」»

と聞く。

さらに、

«「そのデータが用意できなかったらどうしますか?」»

と聞く。

最後に、

«「納期の都合で、必要なデータを集めることができません。どうしますか?」»

と聞く。

ここで、

「AIならできます」

と答える人。

一方で、

「その条件では難しいです。では、要求を変更できるところを探しましょう」

と答える人。

私は、後者をAI技術者として信用します。


9. 「偽物」を吊るし上げたいわけではない

ここまで「偽物のAI技術者」という強い言葉を使いました。

しかし、私は誰かを個人的に攻撃したいわけではありません。

AI技術者を名乗るために、何が必要なのか。

AI技術者を採用するとき、何を見ればいいのか。

AIに仕事を任せるとき、誰を信用すればいいのか。

それを考えたいのです。

AI技術者に必要なのは、AI用語の暗記ではないと思います。

問題を正しく理解すること。

データの限界を理解すること。

できないことを、できないと言うこと。

そして、

できないと言ったうえで、何ならできるのかを考えること。


最後に

AIはどんどん賢くなっています。

だからこそ、人間側にも新しい能力が必要になると思います。

AIが出した答えを、そのまま信じるのではない。

自分自身が、

«「これは本当にできるのか?」»

と考える。

そして、できないなら、

«「できません」»

と言う。

私は、これがAI時代のAI技術者にとって、とても重要な能力だと思っています。

本物のAI技術者は、何でも「できます」と言う人ではない。

「この条件ではできません」と言ったうえで、「では、何ならできますか?」を考えられる人です。

AIがどれだけ進歩しても、この部分だけは人間に残っていてほしいと思います。

余談:経歴を作る人

さらに余談ですが、世の中にはもっと豪快なことをする人もいるらしい。

「自分で企業を作ってしまい、その企業に自分が所属して、そこでSEとして仕事をしていたことにする」という方法です。

つまり、

「SEとして○年の経験があります」

と言われたとき、その「会社」が本当に第三者から仕事を受けていたのか、というところまで確認しないと、経歴だけでは何も分からない。

もっとも、これは会社を作ること自体が悪いという話ではありません。

実際に顧客を持ち、システムを作り、納品し、運用していたのであれば、立派な実務経験です。

問題は、「会社が存在したこと」と「そこで実務経験を積んだこと」は別の話だということです。

そして、さらに驚く話として、宗教法人の作り方まで知っているらしい。

ここまで来ると、

「この人はいったい何を作る能力がある人なのだろう?」

という、別の興味が湧いてきます。

会社を作る能力。
肩書きを作る能力。
経歴を作る能力。

しかし、技術者として本当に問われるのは、そういう「外側」を作る能力ではありません。

目の前のデータや要件を見て、

「これは分かりません」
「この条件ではできません」
「この結果には根拠がありません」

と言えるかどうかです。

経歴はいくらでも作れる。
しかし、技術的な問題に対する回答までは、肩書きだけでは作れない。

結局、私がこの記事で言いたかったのは、そういうことなのかもしれません。

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