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木を見る西洋人と森を見る東洋人:オブジェクト指向設計に潜む「認知」と「哲学」の境界線

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​1. はじめに

​エンジニアとして設計業務に従事していると、「オブジェクト指向」という概念が驚くほどスムーズに腹落ちする時と、逆に「なぜこんなに回りくどい捉え方をするのか」と違和感を覚える瞬間に遭遇します。
​この違和感の正体を探るヒントが、認知心理学者リチャード・ニスベット氏の著書『木を見る西洋人、森を見る東洋人』(ISBN 978-4478910184)にあります。本作では、西洋と東洋における「世界の捉え方」の根本的な違いが論じられています。
​本稿では、オブジェクト指向分析設計開発を単なる技術論としてではなく、人文学・哲学の文脈から再定義し、私たちがモデリングの際に行っている「思考の正体」を解き明かします。

​2. なぜオブジェクト指向分析設計開発は西洋でしか生まれなかったのか

​結論から言えば、オブジェクト指向分析設計開発という思想は西洋の歴史的・文化的背景が影響している可能性があります。
​現に、『オブジェクト指向方法論の世界:比較と解説』(ISBN 49313356184)(P.129)という書籍にはOMT、OOSA、OOSE、boochをはじめとする設計手法が登場しますが、それらの系譜をたどっていくと、調べた範囲ではあるが、すべてが西洋で生まれ、東洋からは生まれていないことがわかります。

手法
OMT アメリカ
booch アメリカ
OOSE(=Jacobson/UIアプローチ) スウェーデン
Eiffel/OOSC フランス
Coad Yourdon アメリカ
CRCカード アメリカ
Fusion アメリカ
Shlaer Mellor アメリカ
Martin Odell(=Ptech) イギリス/アメリカ
MERODE(ビジネスモデルアプローチ) ベルギー
OORASS/OOram ノルウェー
HOOD イギリス
GOOD アメリカ
OOSD(=Colbert) アメリカ
SOMA(Coad Yourdon後継) スイス
OSMOSYS スイス/イギリス?
Texel アメリカ・イギリス
OBA チェコ?
MOSES イギリス?
ROOM カナダ
SDM ドイツ
RCM イギリス
Wirfs-Brock(CRC・RDD) アメリカ

その根拠は、前述の『木を見る西洋人、森を見る東洋人』(P.159)に記された認知プロセスの差にあります。
​「分類」の西洋、「関係」の東洋
​書籍では子供に「牛・鶏・草」を見せ、「丸で牛とどちらか一つを囲むならどちらか?」と質問する実験が紹介されています。

地域 解答 意味 解説
西洋的な回答 歩くよ、寝るよ、食べるよ 共通の動作に着目し、カテゴリー(クラス)で分類します
東洋的な回答 牛は草を食べるから 対象間の関係性(メッセージング)に着目します

​また、上空で向きを変える風船について、

地域 解答 解説
西洋的な回答 彼(風船)がそっちに行きたかった 対象に意思や文脈を投影します
東洋的な回答 上空で風が変わった 対象間の関係性(メッセージング)に着目します

周囲が不機嫌な中で一人だけ笑顔の人物に対しても、

地域 解答 解説
西洋的な回答 本人が笑っているから幸せだ 個体の表現のみを評価します
東洋的な回答 幸せそうだけど、何か様子がおかしい 全体の場(コンテキスト)から判断します

​対象を周囲から切り離し、それ自体を「独立した実体」として分析し、内部に属性を閉じ込める――。このカプセル化や責務の分離という思想は、西洋哲学との類似性が見られるように思います

​3. クラス図の抽出とアリストテレス哲学

​UMLのクラス図を作成する際、私たちは無意識に「目の前の具体的な対象」から「共通する本質」を抜き出す作業を行います。このプロセスは、古代ギリシャの哲学者アリストテレスが提唱した**「形相(エイドス)」**の概念と驚くほど酷似しています。
​実体と形相の類似性
​アリストテレスは、個別の物体には、そのものをそのものたらしめている「形相(本質・設計図)」が宿っていると考えました。
​アリストテレスの視点: 目の前にある「個別の机」は、その背後にある「机という形相(型)」を具現化したものである。
​オブジェクト指向の視点: メモリ上の「個別のインスタンス」は、設計時に定義した「クラス(型)」を具体化したものである。
​属性や操作を定義する行為は、アリストテレスが『カテゴリー論』で試みた分類学の現代版といえます。私たちはモデリングを通じて、図らずも数千年前の哲学者と同じ視座で世界を解体しているのです。

アリストテレスのカテゴリー論(十範疇)

範疇 内容
実体 モノそのもの
数・大きさ
性質 色・能力
関係 親子・大小
場所 どこにあるか
時間 いつか
状態 姿勢・配置
所有 持っているもの
能動 作用する
受動 作用される

Coad手法のクラス抽出法

Coad 意味
有形物 現実のモノ
役割 人やシステムの役目
事象 イベント
相互作用 通信・関係
場所 ロケーション
組織 集合・構造
仕様 ルール・定義

​4. 進化と多様性:OOPにおける「振る舞い」の再定義

​西洋的な分類(継承)に基づいた開発が、実際の生物(オブジェクト)の多様性にどう対応するかを具体例で見てみましょう。
​「動物」という基底クラスから「人」「牛」「鳥」を派生させ、共通メソッドを定義します。
​「食べる」メソッドのオーバーライド

対象 動作
一般的な咀嚼・消化処理を書きます
進化の過程で胃を4つ持ちました。4つの胃を直列に通過させ、微生物の力を借りて分解し、再び口に戻して噛み直す(反芻)という特殊な多段階消化プロセスを実装します
​鳥(鳩・カモ) 軽量化のため歯がありません。小石を飲み込み、砂嚢(さのう)という器官の中で小石を利用して咀嚼する選択を取りました
ゴキブリ 胃(前胃)にキチン質という歯のような構造。咀嚼と消化を胃で同時に行う

​「排泄」メソッドの多態性(ポリモーフィズム)
​環境や制約によって、内部実装(ロジック)は劇的に変化します。

対象 動作
​哺乳類 アンモニアを尿素に変え、液体として排泄します
鳥類 飛行のために極限まで軽量化を図りました。水分を保持して重くなるのを防ぐため、尿を固形(尿酸)にして糞と一緒に排泄します。

「繁殖」メソッドの特殊解

対象 動作
​一般 やることをやる
カマキリ 条件によって繁殖中にオス捕食が起こることがある
シャケ 川で外部繁殖、その後、ほぼ全個体が死亡
クマノミ 環境でオス⇄メス変化、その群れにいる一番大きな個体がメスになる(こわい。。。)
チョークバス 両性具有で交代(数十秒単位で)で繁殖する
カタツムリ 成長の過程で右巻き、左巻きが発生し、右巻きと左巻きがあうと、位置があわない
シオマネキ 繁殖アピールで片側のはさみが巨大化
ジャイアントパンダ ・繁殖力が低い・繁殖期が短い

クマノミの生態は長年議論になっていた「場」はオブジェクトか?という問いに一つの回答を出したと思います。

​「寝る」メソッドの特殊解

対象 動作
​人間や牛や鳥 「静止して寝る」という共通処理を親クラスから継承できます
マグロ 泳ぐことでエラに酸素を送り込む「衝突強制換気」という呼吸法をとるため、静止すると窒息します。そのため、以下のいずれかの仮説に基づいた特殊な振る舞いを記述する必要があります

マグロの睡眠の仮説

仮説 動作
半球睡眠説 片方の脳を休ませながら、もう片方の脳で泳ぎ続ける(非同期並列処理のような振る舞い)
落下・遊泳説 水面まで泳ぎ上がり、重力を利用して沈降しながら一時的に脳を休ませる(バッチ処理的な間欠動作)
群れや流れに乗る休息 自分で推進しなくてもよい状態、海流に乗って省エネ移動、エネルギー消費を下げる
脳の「局所休息」に近い状態 脳全体がオフになる「人間型睡眠」とは違い、活動パターンの低下としての“睡眠様状態

​このように、共通するインターフェースを保ちつつ、生存戦略上、特殊化が必要な部分だけを変更する。これこそがOOPの醍醐味です。

5. UML前夜の群雄割拠:90年代「オブジェクト指向4大手法」のメタモデルとプロセスを徹底解剖する(暫定版)

私たちが普段当たり前のように使っているUML(Unified Modeling Language)。しかし、1990年代前半のオブジェクト指向界隈は、各々の思想を掲げた方法論(メソドロジー)が乱立する、まさに「大航海時代」でした。

今回、UML誕生直前の貴重な比較資料(オブジェクト指向システム開発)をベースに、当時の4大手法(Shlaer & Mellor / OMT / Coad & Yourdon / Booch)の思想、用語、基盤、そして開発プロセスの違いを徹底解析しました。

コード(実装)の制約に縛られがちな現代だからこそ、彼らが「現実世界をどう切り取ろうとしたか」という狂気的なまでのモデリング思想は、ドメイン駆動設計(DDD)やクリーンアーキテクチャに通じる強烈な気づきを与えてくれます。

5.1. 用法・メタモデルの相違:各手法は何にフォーカスしたか

同じ「オブジェクト指向」であっても、手法によって使用する用語(メタモデル)には明確な差異がありました。これは手法ごとの「システムの捉え方の重心」を表しています。

図:各手法の用語(用法)の相違

概念 Shlaer & Mellor OMT Coad & Yourdon Booch
クラス オブジェクト クラス クラス クラス
属性 属性 属性 属性 フィールド
メソッド プロセス・モデル 操作 (Operation) サービス (Service) 操作 (Operation)
メッセージ イベント 事象 (Event) メッセージ接続 メッセージ
インスタンス インスタンス インスタンス オブジェクト オブジェクト
階層 上位型-下位型 スーパークラス-サブクラス Gen-Spec 上位クラス-下位クラス
全体-部分 関連付けオブジェクト 集約 Whole-Part using関係
継承 関連付けオブジェクト スーパークラス/サブクラス Gen-Spec 上位クラス/下位クラス

比較から読み取れる各アプローチの傾向

  • Shlaer & Mellor(データモデリング志向):
    クラスという抽象概念よりも「現実世界のオブジェクト(実体)」を重んじる傾向があります。「継承」や「全体-部分」といった構造も、リレーショナルデータモデルのように「関連付けオブジェクト」という均質な関係性で表現しようとする特徴があります。
  • Booch(豊かなモデル表現・設計志向):
    「フィールド」や「using関係」といった、プログラミング言語(特にC++やAda)の実装やメモリ配置を意識しやすい用語が見られます。単なる設計特化というわけではなく、システムを精緻に表現するための極めて豊かな語彙を持っていた手法です。

5.2. 仕様化プロセスの違い:オブジェクトを見つけた「次の一手」

オブジェクトを検出した後にどのような手順でモデリングを進めるか(仕様化プロセス)にも、各手法の個性が見られます。

図:3大手法の仕様化プロセス

手法 第一歩(構造の定義) 次のステップの傾向
Shlaer & Mellor 1. オブジェクト検出
2. [属性]の定義
まずオブジェクトの中身(属性)を定義し、オブジェクト仕様書を固めてから階層や関連を定義していく、堅牢なボトムアップ的アプローチ。
OMT 1. オブジェクト検出
2. [関連]の定義
オブジェクトを見つけたら、まず名詞同士の「つながり(関連)」を優先して結び、全体のコンテキストを定義するアプローチ。
Coad & Yourdon 1. オブジェクト検出
2. [構造]の定義
発見後、即座にGen-Spec(継承)やWhole-Part(集約)といった構造に落とし込む。オブジェクト指向言語とのマッピングが直感的なアプローチ。

5.3. ドキュメント体系と各手法の「特徴と課題」

システムを「構造(静的)」「関連(動的)」「メソッド(機能)」の3つの視点からどう文書化するか。当時の比較表から、それぞれの強みと課題が浮き彫りになります。

図:4大手法の特徴と課題(要約)

手法 強い特徴と評価された点 当時の主な課題
Shlaer & Mellor オブジェクトの関係表現が豊富。ドキュメント体系(情報構造図など)が非常にしっかりしている。 メソッド表現が弱く、オブジェクト指向設計(OOD)への繋がりが明確になりにくい。
OMT 動的モデル(Statechartの採用など)の構築手順が確立しており、分析〜設計の統合性が高い。 手法の習得コストが高く、分析フェーズの充実に比べると設計フェーズの記述が相対的に弱い。
Coad & Yourdon 言語ベースの意味モデルであり、OODへの繋がりがスムーズ。プロセスが軽量で自由度が高い。 動的モデルの表現がシンプルであるため、複雑なシステムの仕様化においては具体性に欠ける面がある。
Booch 主要な言語をカバーし、設計・実装に必要なほとんどの図(クラス図、タイミング図など)を描ける表現力。 仕様化(分析)のプロセスが明確に規定されておらず、分析フェーズのサポートが薄い傾向がある。

※注釈:OMTの動的モデルが高く評価された背景には、デヴィッド・ハレルが提唱した「Statechart(状態遷移図)」をいち早く取り入れた事実が大きく寄与しています。

5.4. 歴史的結末:UMLという「標準化」への道

これらの手法は、最終的に**UML(Unified Modeling Language)**という一つの規格へと収束していきます。

しかし、これは「優れたものが自然に残った(進化論)」という単純なストーリーではありません。1990年代後半、オブジェクト指向技術の普及に伴い、ツールベンダーや開発現場から「表記法(モデリング言語)の統一」を求める強い産業的・市場的要経が高まりました。

その結果、OMG(Object Management Group)による標準化プロセスのもと、主要な手法の提唱者たち(スリーアミーゴスと呼ばれるジェームズ・ランボー、グラディ・ブーチ、イヴァー・ヤコブソン)がRational社に結集します。

  • OMT手法 からは「オブジェクト図」や「Statechart」といった統合的なビューを。
  • Booch手法 からは、設計フェーズに耐えうる表現力豊かな「クラス図」などの記法を。
  • (本記事には未登場ですが)OOSE手法 からは「ユースケース」の概念を。
  • (本記事には未登場ですが)CRCカード手法 は昔から擬人化法と言われています。しかしこの手法はデザインパターンや継承はきわめて苦手です。

UMLは、各手法が持っていた「強い特徴」を産業的な合意のもとで統合し、標準言語として策定されたという歴史的背景を持っています。

5.5. まとめ

「オブジェクト指向分析・設計」とは、決して単一の正解があるわけではなく、「分析(現実世界をどう捉えるか)」「設計(構造をどう整理するか)」「実装(言語にどう落とし込むか)」のどこに比重を置くかによって姿を変えるアプローチ群です。

当時の手法が抱えていた「現実世界の複雑な関連をどう表現するか」「動的な振る舞いをどう可視化するか」という悩みは、現代のドメイン駆動設計(DDD)やクリーンアーキテクチャの実践においても、依然として私たちエンジニアに問いかけてくる本質的なテーマだと言えるでしょう。

6. 「木」に固執するリスクと「森」の視点

​しかし、西洋的な「木を見る(個を見る)」視点だけでは、優れたシステムは構築できません。ここで重要になるのが、東洋的な「森を見る(関係性を見る)」視点です。
​エンジニアがしばしば陥る罠に、クラス単体の設計(木)に完璧を求めるあまり、システム全体の「相互作用(森)」を見失うというものがあります。
​木を見る設計: クラス図は美しいが、各オブジェクトがどう連携してビジネスロジックを実現するかが見えていない。
​森を見る設計: シーケンス図を重視し、オブジェクト間のメッセージングの流れを最適化する。
​優れたオブジェクト指向設計とは、西洋的な「厳格な個の定義」を行いながら、同時に東洋的な「コンテキスト(文脈)と場の把握」を両立させることにあるのではないでしょうか。

​7. 結び:二つの視点を行き来する

​オブジェクト指向設計は、西洋哲学の「実体論」という強力な武器をソフトウェアの世界に持ち込みました。
​しかし、真に柔軟で堅牢なシステムを作るためには、西洋的な「分析」によって切り分けられたパーツを、東洋的な「統合」の視点でもう一度繋ぎ合わせる必要があります。マグロが酸素を取り込むために独自の睡眠をとるように、あるいは鳥が飛ぶために排泄の仕組みを特化させたように、オブジェクトもまた、置かれた環境(コンテキスト)との関係性の中でその振る舞いを決定します。
「木」を定義し、「森」を描く。
この二つの認知モードを自覚的にスイッチすることこそが、アーキテクトに求められる真のメタ認知スキルであると私は考えます。

8.歴史

ChatGPTに歴史を聞いてみました。意外なことに、GUIの開発が最初だったらしいです。

オブジェクト指向の本質は「認知に合わせた状態の再分割」

オブジェクト指向の起点は理論ではなく、Xerox PARC(1973年)におけるGUIの発明でした。

GUIの登場により、画面上で同時に変化する多数の状態(ウィンドウ、入力、選択など)を扱う必要が生まれたそうです。

その結果、従来の手続き型では限界があり、

人間の認知に合わせて“状態の単位を作り直す”

という発想が必要になったそうです。

これを実現する方法の一つがSmalltalkであり、オブジェクト指向の原型となったらしいです。

9. なぜ、今、記事を書いたのか?Anthropic Mythosへの期待

OOPを正確に理解する為には3年(ただし、実践者に従えば3ヶ月)が必要とします。『UMLによるオブジェクト指向モデリング セルフレビューノート』(ISBN 4886487440)(P.155)に記載されたとおりです。その間いろいろなところで論争が巻き起こっており、その流れに乗りたくなかった、心の疲弊を防いだのです。時代は変わりました、現在のAIでもある程度の精度で評価できるようになりました。私はAIに鋭い問いを繰り返しました、そして、この文章を作成することができました。状況は落ち着いたと考え記事を書いてみました。そして、Anthropic Mythosです。Anthropic Mythosは検証型AIです、彼がどのような構造なのかを解析してもらうのがいまから楽しみです。

10. 私が本当に欲しかったもの

オブジェクト指向を学び始めてから、私は本位田さんがまとめられたオブジェクト指向方法論の比較表を見る機会がありました。

その比較表から感じたのは、「どの方法論も完璧ではない」ということです。それぞれに長所と短所があり、得意とする対象も異なっていました。

一方で、当時主流だった手続型開発にも、システムの大規模化や複雑化に対応する限界が見え始めていました。だからこそ、多くの研究者が新しい方法論を提案し続けていたのだと思います。

私は自然に、「では、どうすればもっと良い方法論になるのだろう」と考えるようになりました。

しかし、そのような議論をしようとしても、現実にはなかなかできませんでした。

  • 「この手法が標準だから」
  • 「○○先生が提唱した方法だから」
  • 「昔からこうしているから」

という空気があり、さらに専門家やコミュニティの門を叩いても、十分な議論ができる機会はほとんどありませんでした。

私が知りたかったのは、「どの方法論が正しいか」ではありません。

「別の方法論の長所を取り入れれば、もっと良くできないのか。」
「入手できない方法論はどんな長所があるのか。」
「分析設計の妥当性の指標は何か?」

そうした議論です。

最近、1980年代から1990年代初頭のオブジェクト指向方法論を調べ直してみると、当時はCoad&Yourden法、booch法、OMT法、Shlaer Mellor法、OOSE法、など、多くの方法論が提案されていました。また、分析(OOA)、設計(OOD)、プログラミング(OOP)だけでなく、見積り、品質評価、要求工学など、さまざまな方向から研究が行われていました。

オブジェクト指向は最初から完成されたものではなく、多くの研究者が議論し、試行錯誤しながら発展させてきた技術だったのです。

そして、ようやく気付いたことがあります。

私が求めていたのは「答え」ではありませんでした。

一緒に考え、反証し、改善案を検討できる相手だったのです。

現在は生成AIの登場によって、その環境が大きく変わりました。

ChatGPT、Gemini、Grok、Claudeなど、それぞれ異なる視点を持つAIと対話し、自分の仮説を検証したり、反証を求めたり、文献を整理したりできます。

もちろん、最終的な判断は人間が行う必要がありますし、AIの回答も鵜呑みにはできません。しかし、「この考え方に穴はないか」「別の視点はないか」と何度でも議論できる環境が、個人にも手に入るようになりました。

振り返ると、私が本当に欲しかったのは「最適な方法論」ではなく、「方法論をより良くするために自由に議論できる環境」だったのだと思います。DDDの理解も進めようと思います。

これからも、過去の方法論を単に紹介するだけではなく、「なぜ生まれたのか」「どのように発展できるのか」という視点で調べ、考え続けていきたいと思います。

ある一つの注目点:昔話

昔話は認知モデルの化石なのか?

最近、「東洋人は森を見て、西洋人は木を見る」という認知の違いについて考えていました。
しかし、「東洋」「西洋」という言葉だけでは少し曖昧です。
そこで、各地域で語り継がれてきた昔話を観測してみることにしました。
ここでの目的は文化の優劣を論じることではありません。
昔話には、その社会が子供たちに伝えたかった価値観が残っているのではないか。
その仮説を観測してみます。

観測方法

今回は以下の二点に注目しました。

  • 主人公はどのような人物か
  • 最後に何が守られるのか

観測結果

文化圏 主人公 最後に守られるもの
日本 普通の人 共同体
中国 賢者・修行者・官僚 秩序
ヨーロッパ 王子・英雄 個人の成功
アフリカ 動物・共同体の一員 生存知識
アメリカ 開拓者・挑戦者 挑戦と開拓

日本

桃太郎、浦島太郎、鶴の恩返しなどでは、特別な英雄よりも普通の人が主人公になることが多く見られます。

そして最後に守られるものは個人の成功よりも、

  • 家族
  • 約束

といった共同体の安定です。ただし、日本はその他の外国と違い、外国の昔話も積極的に読まれているという疑問も同時に存在します。

中国

西遊記や白蛇伝などを見ると、

  • 修行
  • 知恵
  • 秩序

が重要な役割を果たします。

個人の勝利というより、
社会や世界の秩序が回復されることが結末になりやすいように見えます。

ヨーロッパ

シンデレラやジャックと豆の木などでは、

  • 試練
  • 冒険
  • 成長

が中心になります。

最後には主人公自身の成功が描かれます。
共同体よりも個人の物語として読むことができます。

アフリカ

アナンシの物語などでは動物が頻繁に登場します。

重要なのは強さではなく、

  • 知恵
  • 工夫
  • 生き残る方法

です。

物語は共同体の中で生きるための知識を伝える役割を持っていたのかもしれません。

アメリカ

アメリカの民話には、

  • ポール・バニヤン
  • ペコス・ビル
  • ジョニー・アップルシード

などがいます。
彼らは王子ではありません。
開拓者です。
物語の中心にあるのは、

  • 新しい土地を切り開く
  • 困難へ挑戦する
  • 自力で道を作る

という価値観です。

本当に東洋と西洋なのか?

ここで一つ疑問があります。

私は日本人ですが、

  • ジャックと豆の木
  • シンデレラ
  • アラジン
  • 西遊記

を知っています。

つまり現代人は一つの文化だけで育っているわけではありません。

むしろ複数の文化圏の認知モデルを同時に学習しているとも考えられます。

まとめ

昔話を観測していて思ったのは、

昔話は娯楽であると同時に、その社会が子供たちへ伝えたかった価値観の保存装置なのではないか、ということです。

もしそうであれば、

昔話は単なる物語ではありません。

その文化の認知モデルが化石として残ったものなのかもしれません。

もちろんこれは一つの仮説です。

しかし、昔話を並べてみると、文化ごとに主人公や結末の傾向が異なって見えるのは興味深い観測結果でした。

もう一つの注目点:ゲームでも見える東洋・西洋の違い ― 主人公・関係性・選択肢の観測フレーム ―

本記事は文化論の断定を目的としません。
また「東洋と西洋はこう違う」という単純化を結論とするものでもありません。

ここでやるのはあくまで一つの試みです。

ゲームという共通フォーマットを通して、
東洋・西洋で“強く出やすい設計思想の違い”を観測できるか?

という問いです。

評価ではなく観測として整理します。

観測フレーム

以下の6軸でゲームを見ます。

項目 意味
主人公 プレイヤーは誰として扱われるか
仲間 関係性が中心か
明確な敵か、構造的問題か
守るもの 何が動機になるか
自由度 選択肢の広さ
結末 収束型か分岐型か

Atari・初期アーケード

Asteroids
Missile Command

項目 観測
主人公 ほぼ存在しない
仲間 なし
明確(物体・弾)
守るもの 生存・スコア
自由度 低い
結末 スコア更新

観測

この段階では「物語」というより、
行動そのものをゲーム化している
段階に見えます。

日本RPG系の観測

Dragon Quest
Final Fantasy IV
Mother

項目 観測
主人公 固定人物
仲間 非常に重要
明確
守るもの 世界・日常
自由度 低〜中
結末 収束型(物語完結)

観測

共通して目立つのは
仲間(関係性)の比重が非常に大きい
という点です。
戦闘や目的よりも、「誰と旅をするか」が設計の中心にあります。

欧米RPG系の観測

Ultima IV
Wizardry
Fallout
Baldur's Gate

項目 観測
主人公 プレイヤー主体・作成型
仲間 補助〜重要
明確よりも構造的・複雑
守るもの 生存・倫理・自己
自由度 高い
結末 分岐型(選択依存)

観測

特徴的なのは
プレイヤーの選択そのものが中心にある
という点です。
「誰と仲間になるか」よりも
「どう行動するか」の比重が大きい傾向があります。

任天堂系(設計思想として別軸)

The Legend of Zelda: Breath of the Wild
Animal Crossing: New Horizons

項目 観測
主人公 固定 or プレイヤー
仲間 軽〜中
ある場合とない場合が極端
守るもの 世界 / コミュニティ / 体験
自由度 極めて高い
結末 非固定(プレイ継続型)

観測

ここでは物語よりも
遊びそのものの設計
が中心にあるように見えます。

比較まとめ

観測を横に並べると次のようになります。

東洋RPG的傾向 西洋RPG的傾向
主人公 固定人物 プレイヤー主体
中心要素 関係性(仲間) 選択(意思決定)
明確 構造的・曖昧
自由度 中程度 高い
体験 物語収束型 分岐・自己生成型

仮説(断定ではない)

この観測から言えるのは次のような仮説です。

東洋系のゲームは「関係性の設計」に比重が寄りやすい
西洋系のゲームは「選択と結果の設計」に比重が寄りやすい

ただしこれは傾向であり、例外は多く存在します。

重要な例外

例外はむしろ本質を示します。

The Legend of Zelda → 日本だが高自由度
Wizardry → 欧米だが仲間重視
Minecraft → 国分類不能
Grand Theft Auto V → 物語と自由度の混合

おわりに

本記事は結論を出すものではなく、

ゲームという共通フォーマットを使った観測の試み

です。

重要なのは分類ではなく、

何を増やそうとしているか
何を中心に設計しているか
何をプレイヤーに体験させているか

という視点です。

東洋・西洋という二分法ではなく、
「設計思想の違いとして何が見えてくるか」を今後も観測していくことで、より精度の高いモデルが作れる可能性があります。

観察者として

私は長い間、オブジェクト指向やUMLを観察してきた。
今は
「なぜ人によって理解が違うのか」
を観察している。
同じ本を読んでも解釈は異なる。
同じ技術を学んでも重視する点は異なる。
ある人はコードを見る。
ある人は設計を見る。
ある人は組織を見る。
ある人は顧客を見る。
それぞれが見ているものは違う。
そして、その違いは必ずしも誤りではない。
経験した成功や失敗によって、見える景色が変わるからである。
私は以前、それを教義化と呼んでいた。
しかし最近は少し違うのではないかと思い始めている。
人は教義を守っているのではなく、
その教義の奥にある何かを守っているのではないか。
成功体験かもしれない。
組織の安定かもしれない。
責任の所在かもしれない。
あるいは調和かもしれない。
ここで私は別の問いにたどり着いた。
知恵とは何だろうか。
知識なら本に書ける。
技術なら学習できる。
しかし知恵は少し違う。
同じ知識を持ちながら、異なる判断をする人がいる。
その差はどこから生まれるのだろう。
私はもう答えを急がないことにした。
歴史を見れば、人間の認識が変わるには長い時間がかかる。
世代が変わることもある。
環境が変わることもある。
そして本人が変わることもある。
今の私は、何かを証明する人ではなく、観察する人でありたい。
観測し、考え、議論できる場を増やしたい。

発見

・DDDはシステムよりの考え方
・テーブルマナーや離席の東洋と西洋
西洋、低額:先に支払い???
西洋、高額:後払い、離席時にハの字を作る
日本:利便性重視?
日本+離席:私物があるかどうか???時間がどのくらい経過???
・あいさつで東洋と西洋と犬と猫
犬:けつの匂いをかぐと急にだまる(すべてを理解する?)???
西洋:簡素、疎通確認????
東洋:状態の通知や交換???
猫:視覚と鼻の突き合わせ????

今の問

・動物の食事の頻度
・昆虫を食べる植物と普通の植物と海の植物
・猫の目
・トカゲ
・タコ
・オジキソウ
・ラフレシア
でChatGPTと議論をしています

​執筆協力:Gemini, ChatGPT


すみません。こんなAIの時代が来るとは思わず、ほとんどの本を捨ててしまいました。当時調べていたことをうろ覚えだったり探しながら本を買いなおしたりと、正確さを重視しようと思います。


参考文献

リチャード・E・ニスベット『木を見る西洋人、森を見る東洋人』

オブジェクト指向方法論の世界:比較と解説

ジョン・ラカメラほか『オブジェクト指向開発の落とし穴』

アリストテレス『カテゴリー論』

オブジェクト指向システム開発

オブジェクト指向入門 第2版 原則・コンセプト

オブジェクト指向入門 第2版 方法論・実践

UMLによるオブジェクト指向モデリング セルフレビューノート

[復刻版]オブジェクト指向ソフトウェア工学OOSE ――Use Caseによるアプローチ――

憂鬱なプログラマのためのオブジェクト指向開発講座

シュレイアー・メラー法によるオブジェクト・モデリング

UML2.0仕様書 2.1対応

Java言語で学ぶデザインパターン入門

増補改訂版 Java言語で学ぶデザインパターン入門 マルチスレッド編

オブジェクト指向方法論OMT モデル化と設計

オブジェクト指向プログラミング入門 第2版 新装版

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