AIシステムにおける信頼性の問題は、いまだに「精度」や「確率的な信頼度」で語られることが多いですが、実運用・事故対応の文脈では、それだけでは不十分です。
本当に厄介なのは、異常やトラブルが起きたあとに「当時の判断を検証できない」ことです。
私はこれを Responsibility Evaporation(責任の蒸発) と呼んでいます。
なぜ既存の監視・検証では足りないのか
現場では、こんな状態が起きます。
- スコアは出ている
- ログは残っている
- しかし……
- そのログは事後生成ではないか?
- 本当に同じロジックで実行されたのか?
- 入力データは改ざんされていないか?
こうした問いに、数学的に YES / NO を返せない。
この時点で、説明責任・監査・稟議の場ではアウトになります。
ADIC-Audit とは何か
ADIC(Audit of Drift in Context)は、モデルの性能を良くするための仕組みではありません。
「その実行が、当時その条件で行われた」ことを第三者が検証できる形で固定するための監査フレームワークです。
特徴は以下の通りです。
-
決定論的構造
ヒューリスティックな信頼度や確率評価に依存しない -
文脈付きドリフト監査
単なる数値変動ではなく、ロジック構造の逸脱を監査 -
監査提出可能な成果物
人が読むことができ、かつ数理的に裏付けられたログを自動生成
いわば、計算過程そのものの 「数学的台帳(Mathematical Ledger)」 を作ります。
実装例:電力需要データでの監査
現在、このフレームワークを 電力需要データ(2024年1月〜4月) に適用しています。
この分野では、
- 予測ミスのコストが高い
- 事故後に説明不能になるリスクが致命的
という背景があり、「動いたか」ではなく「説明できるか」 が問われます。
今回公開しているページでは、
- ADIC-Audit の構造
- 実行時に自動生成される監査成果物
- 第三者検証を前提とした設計
をまとめています。
プロジェクトページ
🔗 ADIC-Audit Framework(技術概要・構成)
https://ghostdrifttheory.github.io/ghostdrift-adic-audit/
🔗 AI説明責任プロジェクト(プロジェクト概要)
https://www.ghostdriftresearch.com/%E8%A4%87%E8%A3%BD-adic-1
おわりに
AIを「信用できそうか」で判断する時代は終わりつつあります。
これから必要なのは、事故が起きたときに何を提出できるか、その一点です。
ADIC-Audit は、推測ではなく 監査可能性(Auditability) を基準に AIシステムを評価するための実装です。