はじめに
こんにちは、限界ちゃん🐹です。アドカレ企画「Yuruvent」22日目を担当しています。
みなさんはゲーム好きですか?
私はゲーム大好きです。その中でもバイオハザードシリーズがお気に入りです。広いマップを歩き回って、ログを読んで「またこの企業、またやばいことしてる!」とツッコミながら進めるのが楽しくて、何作も繰り返しプレイしてきました。そんなふうに何作もプレイしているうちに、バイオハザードって、ゾンビの話というより大規模なセキュリティ事故の話なのでは?と思うようになりました。
ウイルスの管理ミス、内部の裏切り、情報統制のずさんさ、事故対応の遅れや隠蔽体質などなど...振り返ってみると、バイオハザードの世界で起きていることは現実のセキュリティ事故とかなり重なる部分があると気づきました。
この記事では、バイオハザードの物語をベースに、もしアンブレラ社が現実の企業だったら何が問題だったのか?をセキュリティの視点を絡めてゆるく考えていきます。
セキュリティの専門知識がなくても、「こういう考え方もあるんだな」「なんかリアルにありそう…」と感じてもらえるような内容を目指しています。
難しい解説というより、ゲームの記憶を思い出しながら読めるような、そんな読み物として楽しんでもらえたら嬉しいです。
バイオハザードってなに?
バイオハザードは、カプコンが手がける人気ホラーゲームシリーズです。
ゾンビやクリーチャーが登場することで有名ですが、実は「ただ怖いゲーム」ではありません。このシリーズが描いているのは「巨大企業が危険な技術を扱いきれずに暴走し、社会全体を巻き込むまでに至る構造的な崩壊」です。
アンブレラ社という存在☔
物語の中心にいるのがアンブレラ社です。表向きは世界的な製薬企業として成功し、医療やバイオテクノロジーの分野で高く評価されていました。しかし裏では人間の身体や生命に大きな影響を与えるウイルスの研究開発を、秘密裏に進めていました。
この企業の問題は、「危険な研究をしていた」という事実そのものよりも、それを制御できると思い込んでいた姿勢にあると感じます。
バイオハザードの物語は、どう始まるのか
アンブレラ社は世界各地に研究施設を設け、T-ウイルスをはじめとした生物兵器の研究と保管を行っていました。しかし、管理体制は決して十分とは言えず、内部での不正や情報漏洩が黙認され、異常の兆候も放置されがちでした。やがてある施設で事故が発生し、ウイルスが外部に漏れ出します。その感染は徐々に街全体へと広がり、「ラクーンシティ事件」と呼ばれる大規模な災害へとつながっていきます。
つまり、ゾンビがあふれる世界は「突然始まった恐怖」ではなく、長年積み重なってきた判断ミスと管理不全が限界を超えた結果として描かれているのです。
なぜこの物語はホラーなのか
バイオハザードの恐怖は、ただゾンビに襲われるからではありません。ゲームを進めていくと、研究者が残したログや、匿名のメモ、後悔に満ちた手紙などが出てきます。それらから見えてくるのは、最初から想定されていたような「制御された計画」ではなく、現場の混乱、命令無視、隠蔽、判断の遅れが連鎖した結果としての崩壊です。
この「じわじわと分かってくる組織の崩れ方」こそが、バイオハザードの持つ本当の怖さだと思っています。
なぜセキュリティの話になるのか
ここまでを踏まえると、バイオハザードの物語は「危険な技術を扱う組織が、統制や判断を誤り、やがて社会全体に深刻な被害を与える」という流れを描いていることが分かります。
そしてこれは、現実のセキュリティ事故や組織不正ともよく似た構造を持っているのかなと思っています。
だからこそ、バイオハザードを「ただのフィクション」としてではなく、セキュリティの教訓が詰まったケーススタディとして読み解くことには意味があると思うのです。
アンブレラ社が行っていたセキュリティ対策🛡️
実を言うと、アンブレラ社は決して無防備な企業だったわけではありません。彼らなりに危険な技術を扱う組織として、一定のセキュリティ対策を整えていたことが作中からも見えてきます。ただ、その対策は十分に設計されていたとは言えず、実行面での脆弱性が多く残されていました。
封じ込めを前提とした物理設計とアクセス制御
多くの研究施設では、感染事故や生物兵器暴走のリスクに備え、物理的な封鎖・隔離機構が導入されていました。
- シャッターや隔離扉により、特定区画を閉鎖し、ウイルスや対象生物の移動を物理的に制限
- エアロックや気圧差を利用した構造設計で、空気感染のリスクを軽減
- 認証システム(パスコード、カードキー、生体認証)によるアクセス制御により、重要区画への侵入は制限されていた
設計そのものは封じ込めの基本を踏まえており、初期段階では有効に機能していた例もあります。
緊急時の破棄・封鎖プロトコル
アンブレラ社の一部研究所には、感染拡大や実験失敗時の最終手段として施設そのものを破壊・封鎖するためのプロトコルが存在していました。
- 自己破壊装置や自爆シーケンスにより、施設の完全消去を可能に(REmake、RE2など)
- 危険レベルに応じて段階的に封鎖区画を拡張・全体閉鎖するトリガーを備えていた研究所も存在
- 一部施設では封鎖・消去の手続きが自動化されていたが、多くの場合は手動操作に依存していた
これらの措置は、ウイルスの性質がとても危険であることを認識していた証拠でもあります。しかし、運用の実効性という点では多くの施設で「起動の遅れ」や「権限者の不在」により、結果的に封じ込めに失敗しています。
監視・通報インフラの整備
物語の中ではアンブレラ社の職員が定期的にログやメモ、音声記録を残していたことが確認できます。このことから、施設内ではある程度の監視・記録・通報インフラが整備されていたと考えられます。
- 監視カメラ・端末ログによる職員の行動履歴の取得
- 異常の報告・共有チャネル(職員同士のメモ、所長や本部宛の報告)
- ウイルス検知や警報の視覚/聴覚アラートシステム
しかし、これらの情報は組織の上層部で意思決定に反映されないまま放置されていた例が多く、実質的には「記録は残っていたが、それを活かすガバナンスがなかった」と言える状態でした。
警備員や研究員による巡回・初期対応
施設によっては、所内の安全を守るために専任の警備担当や管理職が巡回し、異常を監視していたという描写もありました。例えば、
- ルーチンによる巡回、研究対象の定期モニタリング
- 施設内トラブル発生時の通報手順や初動対応フローの一部明文化(劇中ログなどより推察)
ただし、内部通報が無視されるケースや、管理者が現場を把握しきれていない描写も目立ち、この仕組みは機能していたとは言い難いという印象が強く残ります。
では、なぜアンブレラ社は失敗してしまったのか?
ここまで見てきたように、アンブレラ社は決して無策だったわけではありません。
封じ込めを前提とした施設設計、緊急時の封鎖・破棄プロトコル、監視や通報の仕組みなど、セキュリティ対策そのものは作中に明確に存在していました。
それにもかかわらず、ウイルスの漏洩は防げず、被害は街全体へと拡大していきました。問題だったのは「対策がなかったこと」ではなく、それらが機能する前提条件が崩れていたことにあります。
アンブレラ社の失敗を分解すると、大きく3つの構造的な問題が見えてきます。
① リスクのある技術を「成果」として優先してしまった
アンブレラ社は、ウイルスや生物兵器といった技術を「企業としての競争力」や「軍事的な利用価値」という観点で評価していました。しかし、これらの技術は一度制御を失えば、被害の規模や拡散速度を人間がコントロールできない性質を持っています。本来であれば、成果や価値よりも制御不能になった場合の影響を基準に扱うべき対象でした。
バイオハザードの物語の中では、危険性が認識されていながらも研究が継続され、「まだ大丈夫」「完全に失敗したわけではない」という判断が積み重なっていきます。このリスク評価の甘さが、後戻りできない状況を生んだ要因のひとつだと言えます。
② 人の判断に依存しすぎる運用設計だった
アンブレラ社の施設には、封鎖や破棄のための仕組みが用意されていました。しかし多くの場合、それらは人の判断や手動操作を前提としていました。物語の中では、
- 重要な操作を一人の研究者や管理者が単独で実行できる
- 異常を認識していても、判断を先送りできてしまう
- 内部者の裏切りや隠蔽によって、仕組みそのものが無効化される
といった場面が繰り返し描かれています。
これは、「人は必ずミスをする」「悪意を持つ可能性がある」ことを前提にしていない設計だった、ということです。結果として、個人の判断ひとつで組織全体が致命的な方向へ進んでしまう構造が残っていました。
③ 異常を検知しても、意思決定につながらなかった
アンブレラ社の施設では、ログ、メモ、音声記録などを通じて、現場の異常が記録されていました。つまり「何も分かっていなかった」わけではありません。
それでも事故を止められなかったのは、その情報が組織としての判断や行動に結びつかなかったからです。
- 報告が上層部に届かない
- 届いても、誰が判断するのかが曖昧
- 判断が遅れ、その間に状況が悪化する
このように、情報は存在していたのに、
意思決定の回路が機能していなかったことが、被害を拡大させました。
小さな失敗が、止められない崩壊につながった
アンブレラ社の失敗は「ひとつの大きなミス」ではなく、小さな判断ミスや運用上のほころびが積み重なった結果として描かれています。
セキュリティ対策は存在していたけれど、それを必ず機能させるための設計とそれを動かす組織の判断力が噛み合っていなかったから、封じ込めは間に合わず、被害は組織の外へと広がっていったのだと思います。
もし、🐹がアンブレラ社にいてセキュリティ担当としてアドバイスできたなら
アンブレラ社は確かに一定のセキュリティ対策を講じていました。ですが、それは「存在していた」というだけで運用の仕組みや判断の構造が追いついていなかったのが問題でした。
仮に🐹がセキュリティ担当としてアンブレラ社に関わっていたとしたら、どういう風にアドバイスをしたか考えて書いてみました。
①技術資産を「価値」ではなく「危険度」で分類・管理する
アンブレラ社では、ウイルスや生物兵器が競争力の源泉として扱われていました。でも本来こうした技術は、成果物ではなくリスク資産として管理すべきです。
- 技術ごとの感染力・拡散性・変異性をもとにリスクスコアを設定し、封じ込め優先度を定量化
- リスクに応じて「物理的封じ込め」「遠隔操作での破棄」「無人管理」などの手段を段階的に設計
- 軍事転用や外部展開を判断する際は、リスク評価委員会による第三者レビューを義務化
価値を生むかどうかではなく、最悪の影響をどれだけ小さくできるかで意思決定する必要があればよかったと思います。
②特権操作は「個人」ではなく「構造」で止める
物語中では、研究者や幹部が単独で重要操作を実行し事故の引き金になる場面が何度も描かれます。これは「人を信じすぎた設計」の結果だと思っています。
- 重要操作(生物兵器の解放、ウイルス搬出など)は2人以上の同時認証(dual control)がないと実行できないようにする
- 管理者/監査者/実行者の権限を分離し、職務分離(SoD)を導入
- 操作ログは改ざん検知付きの監査基盤に自動記録し、外部からもリアルタイムに監視可能な体制を整備
これは、「悪意がなくてもミスは起こる」「ミスがあってもなるべく止められる」設計をするというセキュリティの基本に立ち返る話になるんじゃないかと思っています。
③異常検知が組織の意思決定に必ずつながる構造に
アンブレラ社の現場では、何らかの異常や兆候に気づいていた形跡が残っています。でも、その情報が届いていなかった/届いても動かなかったという構造こそが問題でした。
- 異常が発生したとき、現場からの匿名通報チャネルを確保し、情報が本社と独立したラインでも届くようにする
- 「重大リスクを報告した職員の評価が下がらない」ように、内部通報者保護制度を制度的に明文化
- 一定条件(ログ異常、アクセス逸脱、封じ込め失敗)が満たされた場合は、自動で封鎖・停止に入るフェールセーフ機能を設計
ここで重要なのは、人が判断する前に仕組みが自律的に危機を制御できるようにしておくことです。
④事故を「前提」とした即応フローと訓練の定着
T-ウイルスのような危険物を扱う組織にとって、「事故は起きない前提」ではなく「起きる前提」で動くことは基本中の基本だといえると思います。
- 施設ごとに初動対応手順(感染拡大・漏洩・暴走など)を明文化し、従業員が常に確認できるようにしておく
- 年に数回、封じ込めシナリオに基づいた模擬訓練を実施
- 検疫ライン/通信遮断/エリア封鎖/自爆手続きなどを含め、「人の判断なしに作動する自動遮断構成」を標準化する
アンブレラ社のような高リスク研究施設では、人が判断して動く余裕はないことを前提に「最悪の想定から逆算した設計と訓練」が必要だったはずです。
おわりに
アンブレラ社の失敗は技術そのものが危険だったからではなく、それを制御するための仕組みや判断プロセスが組織として機能していなかった点にあると考えています。仮に、リスクを前提に設計されたセキュリティの考え方が組織に根付いていたら、ラクーンシティの悲劇は避けられた可能性もあったのではないでしょうか...?
(もちろん、アンブレラ社が進めていた非倫理的な研究を肯定する意図はありません!!)
バイオハザードはフィクションですが、描かれている組織の失敗や判断ミスの構造は、現実のセキュリティインシデントと驚くほど似ているとおもいます。「対策があっても機能しない」「人が止められない」そんな状況がどうして生まれるのかを、ゲームの物語を通して読み解くことで、セキュリティについてより実感をもって考えることができました。
この記事では、説明不足な部分やバイオファンから見れば「ツッコミどころ」のある内容もあったかと思います。また私自身もセキュリティを勉強中の立場であり、よりアンブレラ社に対して適切な視点や深い分析ができる方もいると思います。それでも、この記事が「セキュリティ」と「バイオハザード」の両方に興味を持つきっかけになってくれたら嬉しいです。
ちなみに、新作タイトル『バイオハザード REQUIEM(バイオハザード9)』が2026年2月27日(金)に発売予定だそうですよ!興味のある方は、ぜひそちらもチェックしてみてください!

