はじめに
こんにちは、限界ちゃん🐹です。
アドカレ企画「Yuruvent」12日目の担当として、今年のセキュリティキャンプ全国大会の参加レポートを書かせていただきます。
私は今年、チューターとして参加しました。受講生ではなく、支える側として関わったことで見えた景色がいろいろあったので、今回はチューター目線の話を中心にまとめてみようと思います。
各講義の詳細な内容に触れるのではなく、
「チューターって実際どんなことをしているの?」
「支える側に回って何を感じたの?」
といった部分をメインに書いていきます。
チューターになったきっかけ
昨年、私は受講生としてセキュリティキャンプ全国大会に参加しました。その経験は、自分の専門分野を深めたいという強い動機づけとなり、以降の活動方針にも大きな影響を与えました。
そんな背景があり、今年はチューターとして参加する機会をいただきました。
受講生として得た学びを「今度は還元する側になりたい」という気持ちがあった一方で、「チューターとして本当に貢献できるのか?」という不安も正直ありました。それでも参加を決めたのは、セキュリティキャンプというコミュニティが本当に好きで、関わり続けたいと思ったからです。
今年担当したのは Cクラス(脅威解析) です。
講義内容の詳細は公式ページにまとまっているので、興味があればこちらをどうぞ
チューターって実際なにをするのか
チューターの業務は表面的には「質問対応」がメインと思われがちですが、実際に教育側(サポート側)に回ってみると実際の役割はそれよりずっと広く、深いものでした。
教育における支援とは、単に答えを渡すことではなく「受講生が自分のペースで学び、主体的に成功体験・新たな学びを経験できる環境を整えること」が本質だったと気づきました。
事前準備よりも観察力が問われる
セキュリティキャンプでは、受講生に当日までの事前課題がありますが、チューター側では「当日の講義内容を事前に細かく把握しておく」という準備は必須でありません。(ここは色々事情があるようです)
実際に、講義資料や演習内容は当日や講義直前に共有されるケースが本当に多かったです。結果的にキャンプ中に初めて内容を把握するという状況がよくありました。
そのため、チューターとしての事前準備というよりは
- どんな内容でも対応できる柔軟性を持っておく
- そのための自分の基礎知識を整理しておく
- 受講生のつまずきを見つける観察力を磨いておく
という構えのほうが重要でした。
受講生のときは「チューターは全部わかっていてサポートしてくれる」と思っていましたが、実際にチューターをやってみて、チューターも受講生とほぼ同じタイミングで内容を理解しながら動いているという現実です。だからこそ事前の深い予習ではなく、当日の空気を読み、受講生の反応を見て動けることがとても大切でした。
静かなクラスとどう向き合うか
セキュリティキャンプでは各クラスが少人数で構成されますが、その中でも脅威解析クラスは「おとなしい」という印象を持たれやすいのかなと感じています。ぶっちゃけ、実際去年受講していたときにも、見学者だった方から「脅威解析クラスは他のクラスより静かだよね。」という風に言われました。これは決して批判ではなく、扱う内容の性質上、集中が生まれやすいという特徴を表した言葉だと思っています。今年チューターとして現場に戻ってみて、私はこの指摘が正しかったと実感しました。
チューターとしての悩み
静かな環境では集中がしやすい一方で困っていても自分から声を上げにくいという面があります。
- 「質問していい空気か迷う」
- 「自分だけつまづいているように見えるのが嫌」
- 「集中を邪魔したくない」
こうした心理的なハードルは特に脅威解析のような内省的な作業が多い講義で起こりやすいのかなと感じました。
実際に「大丈夫?困っていない?」と声をかけても「大丈夫です」とreflex的に帰ってくることも多かったです。
この状況でサポートの質を上げるためには、ただ待つのではなくこちらからのアプローチの精度を上げることが必要でした。
サポートのアプローチ
そんな中でアプローチの方法を変えるために意識したのは、「学習の主体性を奪わずに、必要な支援だけを差し込む」 という視点でした。
①具体的に聞いて進捗を可視化する
抽象的な問いかけ(「大丈夫?」)だと引っ込んでしまう受講生も多いため、声のかけ方をもっと具体的に変えました。
「どこまで進んでる?」
「このログは出せた?」
こうしたチェックポイント形式だと自然に会話が始まり、実はつまずいていた部分が浮き上がってきます。
②小さな安心を先に渡す
困っているときほど「自分は間違っていないか」が一番気になると思ったので、「手を奪わず、安心だけ」を渡す声掛けを意識しました。
「その方向性で合ってるよ」
正解は言わずに、進むべき方向だけ提示することで、少しは動きが変わったんじゃないかと思っています。
③さりげないヒントを出す
答えを直接言うと受講生の成功体験を奪ってしまうため、ヒントは必要最小限に留めました。ヒントを出すときの基準は、受講生が自分で「気づいた」と思える余白を残すこと。このバランスが一番難しかった部分です。
④チャットを盛り上げて、発言のハードルを下げる
講義中はどうしても静かになってしまいがちでした。内容が分析中心であるうえ、集中して作業する時間が多い講義なので、手を止めて発言するのが難しくなるのだと思います。
そこで、声は出さなくても文字なら負担が少ないという発言の入口をつくるために、チャットを積極的に動かしました。こうした小さな工夫を積み重ねた結果、最初は静かだった講義中のチャットに徐々に質問や意見が流れ始めました。講義の集中を妨げずに、自然に発言を促す方法として、チャット活性化は非常に有効だったと思っています。
講義時間外でも続くサポート
チューターの役割は、講義中の技術サポートだけではありません。
講義時間外でも、翌日の授業に安心して取り組めるようにさまざまな支援を行っていました。そのひとつが夜間の環境トラブル対応です。
ある受講生の環境が正常に動作しなかったため、もう一人のチューターと協力し、夜遅い時間まで原因調査を行うことがありました。
キャンプ会場とホテルの距離やスケジュールの関係で体力的にはなかなか大変でしたが、環境が整わないまま翌日の講義を迎えてしまうと、受講生の理解度やモチベーションに大きく影響してしまいます。そのため、講義外での環境整備はとても重要なサポートのひとつでした。
また、技術的なフォローだけでなく、翌日の講義内容や必要な準備を整理してクラス全体に共有することも行っていました。
- 翌日の講義テーマ
- 事前にやっておくべき準備(VM起動・資料確認・SSHの動作チェック)
- 健康チェックなどの提出物の案内
こうした情報を夜のうちにまとめて伝えておくことで、受講生が「明日は何をすればいいんだっけ?」と不安になることを減らし、スムーズに学習へ入れる状態を作ることができました。
講義中の対応だけを見ると、チューターの仕事はシンプルに見えるかもしれませんが、実際には 翌日の学びが滞りなく進むように環境と情報を整えるという裏側の支援が大きな割合を占めていると思います。
ほかにも...
初めてのLTしたよ
今年はチューターとして支える側に回った一方で、自分自身もキャンプではじめてのLT(Lightning Talk) に挑戦しました。
タイトルは
「78歳おばあちゃん、root権限を奪取する」
技術的な内容を、おばあちゃんが挑戦するという設定で話すというちょっとユーモア寄りの構成にしてみました。
難しい話を難しく話すのではなく、「どうすれば聞いている人が楽しめるか」を意識した結果、この形に落ち着きました。当日は思った以上に笑ってもらえて、「面白かった」「発想が良かった」と声をかけてもらえたのがすごく嬉しかったです。緊張はしたけれど、話す側に回る楽しさ を知れた瞬間でもあって「またLTしてみたいな」と素直に思いました。
夜のお散歩したりサンリオ行ったり...
講義やサポートとは別に、業務時間外の時間もいろいろと楽しい思い出がありました。夜にチューター同士で軽く散歩したり、近くにあったサンリオピューロランドへ講師やチューターで行ってみたり。(もちろん完全に業務時間外です!)
技術の話ばかりしていたはずなのに、こういう時間だけは一気にゆるい空気になって、チューター同士・講師との距離がぐっと縮まった瞬間でもありました。
キャンプって、講義や演習だけじゃなくて一緒に過ごした時間そのものが思い出になるんだなと感じた場面でもあります。
さいごに
セキュリティキャンプでチューターとして過ごした時間は、技術的な学びだけでなく「支える側としてどう動くか」を考える貴重な経験になりました。
去年は受講生として背中を押してもらい、今年はチューターとして誰かの学びを支える立場になったことで、キャンプの見え方が大きく変わりました。そして、セキュリティキャンプという場が自分はやっぱり好きだなと改めて思います。
またどこかのタイミングで、何らかの形でもう一度関われたら嬉しいです😌