はじめに
SOC(Security Operations Center)では、
AIを搭載した新しいセキュリティツールが次々と導入されています。
しかし現場では、次のような声をよく耳にします。
ツールを入れたのに運用が楽にならない
アラートが減らない、むしろ増えた
結局人が疲弊している
本記事では、なぜ新しいツール(AI含む)だけではSOCの課題は解決しないのか、
そして 本当に改善すべきポイントはどこか を現場目線で整理します。
1. ツールは「責任の曖昧さ」を解決できない
多くのSOCの問題は、技術ではなく 責任分界の不明確さ にあります。
よくある例:
このアラートは誰が対応するのか
誤検知かどうか誰が判断するのか
システムオーナーへの連絡は誰が行うのか
これらが定義されていない状態では、
どんなに高性能なツールを導入しても、
ノイズをより速く生み出すだけ です。
AIはアラートを分類することはできますが、
「誰が責任を持つか」を決めることはできません。
2. 壊れたプロセスは、良いツールでさらに悪化する
プロセスが壊れている状態とは、例えば以下です。
トリアージフローが曖昧
エスカレーションルートが未定義
SLAや優先度の基準がない
この状態で新しいツールを追加すると、
混乱をそのままスケールさせる結果 になります。
AIベースのSOCツールは特に、
「可能性のあるインシデント」を多く検知し
アラート量を増加させ
高度なチューニングと文脈理解を要求します
プロセスが整っていなければ、
AIは 混乱を加速させる増幅装置 になってしまいます。
3. AIは最終判断を代替できない
AIが得意なこと:
ログの相関分析
異常検知
重要度の推定
一方で、AIができないこと:
ビジネス影響の理解
組織としてのリスク許容度判断
インシデント時の最終意思決定
SOC業務は ツール作業ではなく判断作業 です。
プロセスが信頼されていない環境では、
AIの判断結果も信頼されません。
4. 本当にSOCを改善するのは「地味な作業」
実際にSOCを改善するのは、次のような取り組みです。
明確なランブックの整備
アラート種別ごとの責任者定義
シンプルで再現可能な運用フロー
定期的なプロセスレビュー
どれも地味ですが、最も効果があります。
プロセスが安定して初めて、
ツールが価値を発揮し
AIが負荷を減らし
自動化が安全に使えるようになります。
まとめ
AIはSOC運用を変えていきます。
しかし、人が定義しないものをAIが直すことはできません。
SOCがうまく回っていないとき、
「次に導入すべきツールは何か」ではなく
「今日、何の判断が曖昧か」を問い直すべきです。
まずプロセスを直す。
その上で、ツールとAIを活かしましょう。