この記事の対象読者
- 最新のAIモデル動向をキャッチアップしたい方
- ChatGPTを仕事で活用している方
- AIツール選定の判断材料が欲しいビジネスパーソン
この記事を読むとわかること
- GPT-5.2の3つのモデルバリエーションと使い分け
- 「Code Red」騒動の真相
- 競合モデルとの立ち位置
TL;DR(3行まとめ)
- OpenAIが2025年12月11日にGPT-5.2を発表、有料プランから順次ロールアウト中
- 「Instant」「Thinking」「Pro」の3種類で用途別に最適化
- Gemini 3への対抗策として前倒しリリース、ただしコーディングではClaude Opus 4.5がまだ優勢
12月11日、ついに来た
いや、早すぎない?
つい先月GPT-5.1が出たばかりなのに、もうGPT-5.2である。OpenAIさん、息切れしてませんか?と心配になるレベルのハイペース。でも、この急ぎっぷりには理由がある。
そう、Google Gemini 3である。
11月にGoogleがGemini 3をリリースして、ベンチマークでトップを総なめにしちゃったものだから、OpenAI社内では「Code Red(緊急事態)」が発令されたらしい。Sam Altman氏が内部メモで号令をかけ、元々12月下旬予定だったGPT-5.2のリリースを前倒ししたというわけだ。
なんというか、AIの世界って本当に油断できない。
GPT-5.2、3つの顔を持つモデル
今回のGPT-5.2、面白いのは3つのバリエーションで出てきたこと。
1. GPT-5.2 Instant
「とりあえず速く答えて」派向け
情報検索、文章作成、翻訳など、日常的なタスクに最適化されたモデル。考え込まずにサクッと返してくれる。ちょっとした調べ物や下書き作成なんかはこれで十分だろう。
2. GPT-5.2 Thinking
「ちゃんと考えてほしい」派向け
コーディング、長文ドキュメントの分析、数学、計画立案など、複雑な構造化作業に強い。OpenAI曰く「everyday professional use(日常的な業務利用)に最適」とのこと。
GDPvalという44種類の職業の知識ワークタスクを測定するベンチマークで、業界プロフェッショナルの70.9%に勝った、もしくは引き分けたという。法律文書、エンジニアリング図面、看護ケアプランなど、ガチの業務成果物での評価だ。
3. GPT-5.2 Pro
「最高精度で頼む」派向け
難しい問題に対して最大限の精度と信頼性を追求したハイエンドモデル。ここぞという時の切り札的な存在。
OpenAI CPO(Chief Product Officer)のFidji Simo氏はこう語っている:
"We designed 5.2 to unlock even more economic value for people. It's better at creating spreadsheets, building presentations, writing code, perceiving images, understanding long context, using tools and then linking complex, multi-step projects."
(訳:GPT-5.2は人々にさらなる経済的価値をもたらすよう設計しました。スプレッドシート作成、プレゼン作成、コード作成、画像認識、長文理解、ツール活用、そして複雑なマルチステッププロジェクトの統合がより優れています)
出典: OpenAI公式発表
気になる利用条件とAPI
ChatGPTでの利用
有料プラン(Plus、Pro、Go、Business、Enterprise)から順次ロールアウト中。まだ見えない人は少し待とう。
ちなみにGPT-5.1は3ヶ月間「レガシーモデル」として残るので、すぐに使えなくなるわけではない。
APIでの利用
開発者向けには即日利用可能:
| モデル | API名 | 用途 |
|---|---|---|
| GPT-5.2 Thinking | gpt-5.2 |
推論重視タスク |
| GPT-5.2 Instant | gpt-5.2-chat-latest |
速度重視タスク |
価格はGPT-5.1より高いが、他のフロンティアモデルよりは安いとのこと。GPT-5.1、GPT-5、GPT-4.1はAPIで当面廃止予定なし。
「Code Red」の真相
The Informationの報道によると、Altman氏の内部メモには「Code Red」という表現が使われ、ChatGPTの品質改善に全社のリソースを集中させる指示が出されたという。広告導入などの予定も一時ストップ。
背景には、ChatGPTのトラフィック減少とGoogleへの市場シェア流出への懸念があったようだ。Gemini 3がLMArenaのリーダーボードでほとんどのベンチマークでトップを取ったことが決定打になった。
ただし、Altman氏自身はCNBCの取材に対し「Gemini 3の影響は当初恐れていたほどではなかった」「1月までにはCode Redを解除できる見込み」と語っている。
強がりなのか本音なのかは、まあ、神のみぞ知る。
出典: CNBC報道
競合との比較:コーディングはまだClaude優勢
ここで気になるのが競合との立ち位置だ。
コーディングに関しては、SWE-Bench Verifiedというソフトウェアコーディング能力を測るテストで、Anthropic Claude Opus 4.5がGPT-5.2より高スコアを出している。
これに対してOpenAIは「SWE-Bench Verifiedは汚染耐性、難易度、多様性、産業的関連性の点でSWE-Bench Proに劣る」と反論している。まあ、負けてる側が言うとちょっとアレな感じではあるが。
一方、推論や複合タスクでは、NotionやBox、Shopify、Zoom、Harveyなどのパートナー企業がGPT-5.2の性能を高く評価しているとのこと。
要するに「何をやりたいかで選べ」ということだろう。
出典: TechCrunch報道
画像生成は?
残念ながら、今回のリリースに新しい画像生成モデルは含まれていない。
Googleの「Nano Banana Pro」(Gemini 3 Pro Image)が8月以降バズりまくっているのに対し、OpenAIはちょっと後れを取っている感がある。
Altman氏の「Code Red」メモでも画像生成は優先事項として挙げられていたらしく、1月に画像機能を強化した新モデルが出る予定という報道もある。公式には未確認だけど。
Microsoft 365 Copilotにも即日投入
地味だけど見逃せないのが、Microsoft 365 Copilotへの即日投入。
MicrosoftとOpenAIのパートナーシップは健在で、Word、Excel、PowerPoint、TeamsなどでGPT-5.2が使えるようになる。Copilot Studioでも、GPT-5.1で動いていたエージェントは自動的にGPT-5.2にアップグレードされるとのこと。
エンタープライズ向けの囲い込みという意味では、この動きはかなり強力だ。
まとめ:AI戦争、年末に激化
GPT-5.2のリリースで、2025年末のAI競争はさらに熱を帯びてきた。
ポイントを整理すると:
- スピード重視 → GPT-5.2 Instant
- 複雑な業務タスク → GPT-5.2 Thinking
- 最高精度 → GPT-5.2 Pro
- コーディング特化 → Claude Opus 4.5がまだ強い
- マルチモーダル総合力 → Gemini 3が現状トップ
正直なところ、どれか一つを選んで「これが最強!」と言い切れる時代ではなくなった。用途に応じて使い分けるのが賢い選択だろう。
個人的には、OpenAIが「Code Red」からどう巻き返すのか、そして1月に出ると噂される画像生成強化モデルがどんなものになるのか、引き続き注目していきたい。
参考リンク
- OpenAI公式発表:Introducing GPT-5.2
- CNBC:Sam Altman expects OpenAI to exit 'code red' by January
- TechCrunch:OpenAI fires back at Google with GPT-5.2
- Microsoft 365 Blog:Available today: GPT-5.2 in Microsoft 365 Copilot
- Axios:OpenAI updates ChatGPT after rise of Google Gemini
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