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そのMac、動画再生で「損」してるかも?M-series Media Engineの知られざる真実

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はじめに

「MacBook買ったし、これで動画編集もストリーミングもバッチリでしょ」

そう思って意気揚々とYouTubeを開いたあなた。4K動画を再生しながら、ふと気づく。なんかファンが回ってる。え、こんな軽い作業で?

実はその現象、あなたのMacが「損な再生」をしている可能性がある。

今日は、Apple Silicon Macに搭載されている「Media Engine」について、ちょっと不安になる話と、その後でホッとする話をしよう。

Media Engineって何者?

まず基本から。M-seriesチップには、CPUやGPU、Neural Engineと並んで「Media Engine」という専用ハードウェアが載っている。

これは動画のエンコード(書き出し)やデコード(再生)を、CPUやGPUに頼らず専用回路でブン回す仕組み。料理に例えるなら、何でも作れる万能シェフ(CPU)に皿洗いまでやらせるんじゃなくて、皿洗い専門のスタッフ(Media Engine)を雇うようなものだ。

Appleの公式スペックによると、対応コーデックは以下の通り。

  • H.264(お馴染みのアレ)
  • HEVC / H.265(4K時代の主役)
  • ProRes / ProRes RAW(プロ向け)
  • AV1(M3以降でデコードのみ)

ここまで聞くと「なんだ、完璧じゃん」と思うかもしれない。

でも、ちょっと待ってほしい。

不穏な影:あなたのMacが対応していないコーデック

VP9という名の「見えない敵」

YouTubeで4K動画を観たことがあるだろうか。

実は、YouTubeの高画質動画の多くは「VP9」というコーデックで配信されている。Googleが開発した、H.264より高効率なやつだ。

で、ここからが怖い話。

AppleのMedia EngineはVP9に対応していない。

「え、じゃあYouTubeの4K動画どうやって再生してるの?」

答えは単純。CPUがソフトウェアデコードで頑張ってる。

つまり、せっかくの省電力設計が台無し。動画を観てるだけなのにバッテリーがゴリゴリ減る。ファンが回り出す。MacBookが温かくなる。これ、全部VP9のせいかもしれない。

AV1の「半分だけ」問題

「でもM3やM4はAV1に対応してるんでしょ?」

半分正解で、半分不正解。

M3以降のチップは確かにAV1をサポートしている。でも、デコード(再生)だけ。エンコード(書き出し)には対応していない。

NetflixやYouTubeがAV1で配信してくる分には、ハードウェアアクセラレーションでサクサク再生できる。でも自分でAV1形式の動画を書き出したい? 残念、CPUでえっちらおっちらソフトウェアエンコードするしかない。

これ、映像制作をやってる人にはかなり痛い。

世代格差という現実

さらに厄介なのが、M-seriesチップの世代によって、Media Engineの性能が全然違うこと。

M1 Proでは「ProRes encode/decodeエンジン」が1基。M1 Maxでは2基。M1 Ultraでは4基。同じ「M1」の名前を冠していても、中身は別物だ。

これ、購入時に気づかない人も多いんじゃないだろうか。

「M1 MacBook Air買ったけど、M1 Pro搭載のMacBook Proと同じでしょ?」

残念ながら、動画エンコードの速度は雲泥の差。無印M1にはProResエンジンが載っていないモデルもある。Final Cut Proで4K ProRes素材をゴリゴリ編集するなら、その差は歴然と出る。

アプリが対応してない問題

そしてもう一つ。ハードウェアがあっても、アプリが対応してなければ意味がない。

Final Cut ProやCompressorはもちろん最適化されている。でもサードパーティのアプリはどうか?

DaVinci Resolveは? Premiere Proは? HandBrakeは?

実際、一部のアプリでは「Faster Encode」を選んでもハードウェアエンコーダーを使っているかどうか、明確にわからないケースがある。設定画面に「Hardware Acceleration」のトグルがあっても、実際に効いているか確認する手段が限られていたりする。

ここで深呼吸。本当に困る人は限られている

さて、ここまでたっぷり不安を煽ってきた。でも、正直に言おう。

ほとんどの人は、気にしなくていい。

理由その1:H.264とHEVCで十分カバーできる

VP9に対応していなくても、YouTubeはH.264でも配信している。実際、Safariで観る場合はH.264やHEVCで再生されることが多い。

つまり、Safariユーザーなら、VP9問題はほぼ無縁。Chromeを使うからVP9が降ってくるのであって、ブラウザを変えれば解決する話だったりする。

理由その2:AV1エンコードが必要な場面は稀

「自分で動画を書き出す」人のうち、「しかもAV1形式で」という人はどれくらいいるだろうか。

YouTube投稿者? H.264かHEVCで十分。YouTubeが勝手にトランスコードしてくれる。

映像制作のプロ? 納品形式はProResかH.264がほとんど。クライアントに「AV1で納品して」と言われることは、まずない。

AV1エンコードが本当に必要なのは、自前でストリーミングサービスを運営するような、かなりニッチな層だけだ。

理由その3:ソフトウェアエンコードも言うほど遅くない

M-seriesチップのCPUは優秀だ。ソフトウェアエンコードになったところで、Intel時代のMacと比べれば圧倒的に速い。

あるベンチマークでは、M3 MaxのソフトウェアによるAV1エンコードがM1 Maxより約40%速かったという報告もある。世代が上がるごとに、「ハードウェア非対応」の痛みは軽減されていく。

理由その4:ストリーミング視聴は快適そのもの

Netflix、Disney+、Amazon Prime Video。これらのサービスがAV1配信を始めても、M3以降ならハードウェアデコードで省電力再生ができる。

むしろ、AV1デコード対応のおかげで、同じ画質でもデータ量が減り、バッテリー持ちが良くなるというメリットがある。Appleが公式に「ストリーミングサービスの省電力再生をさらに延長」と謳っているのは、これが理由だ。

結論:知っておくべきだが、焦る必要はない

Media Engineの「穴」は確かに存在する。VP9非対応、AV1エンコード非対応、世代間格差。これらは事実だ。

でも、その「穴」が実生活に影響する人は限られている。

もしあなたが「4K ProRes素材を毎日何時間もエンコードする映像プロダクション」なら、M4 MaxやUltraを選ぶべきだし、世代ごとのMedia Engineの仕様を細かくチェックする価値がある。

でも「YouTubeを快適に観たい」「たまにiMovieで家族動画を編集したい」という一般ユーザーなら、無印M1でも十分すぎる。むしろ、Intel MacからM-seriesに乗り換えるだけで、動画周りの快適さは劇的に向上する。

大事なのは、自分のユースケースを把握しておくこと。

そして、「Media EngineがすべてのコーデックをカバーしているわけではないMacの Media Engine、実はけっこう優秀なのだ。

参考情報

本記事の執筆にあたり、以下の公式情報を参照した。

Apple公式 - M2発表プレスリリース(2022年6月)

"The media engine includes a higher-bandwidth video decoder, supporting 8K H.264 and HEVC video. Apple's powerful ProRes video engine enables playback of multiple streams of both 4K and 8K video."

(Media Engineには高帯域幅のビデオデコーダーが含まれており、8K H.264およびHEVCビデオをサポート。AppleのパワフルなProResビデオエンジンにより、4Kおよび8Kビデオの複数ストリーム再生が可能。)

Apple公式 - M3発表プレスリリース(2023年10月)

"All three chips in the M3 family also have an advanced media engine, providing hardware acceleration to the most popular video codecs, including H.264, HEVC, ProRes, and ProRes RAW. And for the first time, the media engine supports AV1 decoding, enabling power-efficient playback of streaming services to further extend battery life."

(M3ファミリーの3つのチップすべてに高度なMedia Engineが搭載されており、H.264、HEVC、ProRes、ProRes RAWなど最も一般的なビデオコーデックにハードウェアアクセラレーションを提供。そして初めて、Media EngineがAV1デコードに対応し、ストリーミングサービスの省電力再生でバッテリー寿命をさらに延長。)

Apple公式 - MacBook Pro スペック

Media Engine仕様として、以下が明記されている。

  • Hardware-accelerated H.264, HEVC, ProRes, and ProRes RAW
  • Video decode engine
  • Video encode engine
  • ProRes encode and decode engine
  • AV1 decode(M3/M4世代)

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