GitLab Duo Foundational Agents を試す――5 つの専門エージェントの使いどころ
シリーズ:GitLab Duo を職種別に使い倒す ⑨【上級編】
対象:GitLab Duo の基本機能を使い始めて、さらに踏み込みたい人
動作確認バージョン:GitLab 18.8 以降(CI Expert は 19.0 GA)
これは「上級編」です
このシリーズの①〜⑧では、毎月付与される Included Credits の範囲で体験できる機能を紹介してきました。
この記事で紹介する Foundational Agents は、それらとは一線を画します。
1 回の実行で 12 クレジット以上消費することがあります。
Premium ユーザー(月 12 クレジット)は1 回の実行で月の全量を使い切る可能性があります。Ultimate ユーザー(月 24 クレジット)でも、複雑なタスクを数回試すだけで Included Credits が尽きます。
注意:Included Credits の付与量はプロモーション期間中の特典です。将来変更される可能性があります。最新情報は GitLab 料金ページ をご確認ください。
そのため、この記事は以下のいずれかに該当する方を対象としています。
- Monthly Commitment Pool を購入済み、または購入を検討している
- Temporary Evaluation Credits(30日間の無料評価クレジット)を申請済み
- Included Credits に余裕があり、思い切って試してみたい
クレジットの調達方法については、記事の末尾にまとめています。
Foundational Agents とは
Foundational Agents は GitLab 18.8 で GA になった、ドメイン特化型の AI エージェントです。汎用の GitLab Duo Agent とは異なり、それぞれの専門領域のワークフロー・フレームワーク・ベストプラクティスを深く理解しています。
現在提供されている 5 つのエージェントはこちらです。
| エージェント | 対象プラン | ステータス | 刺さるペルソナ |
|---|---|---|---|
| Planner | Free / Premium / Ultimate | GA | PM、テックリード |
| Security Analyst | Ultimate のみ | GA | QA、アーキテクト |
| Data Analyst | Free / Premium / Ultimate | GA | テックリード、PM |
| CI Expert | Premium / Ultimate | Beta | 開発・コーディング、テックリード |
| Permissions Assistant | (各エージェントページ参照) | GA | 開発・管理者 |
注意
Security Analyst は Ultimate プランのみ利用可能です。Premium・Free では使えません。
CI Expert は現在 Beta ステータスで、GitLab 19.0 でフィーチャーフラグが撤廃されました。
起動方法(共通)
5 つのエージェントはすべて同じ手順で起動できます。
GitLab UI の場合
- GitLab の任意のページを開きます
- 右サイドバーの 「Duo Chat」アイコンをクリックします
- チャットウィンドウ上部の 「Add new chat」ドロップダウンを開きます
- 使いたいエージェントを選択します
VS Code の場合
- 左サイドバーの 「GitLab Duo Agent Platform」アイコンを選択します
- 「Chat」タブを開きます
- 「New chat」ドロップダウンから使いたいエージェントを選択します
前提条件
Foundational Agents がデフォルトで有効になっていない場合は、グループまたはインスタンスの設定から有効化が必要です。Settings > GitLab Duo > Change configuration > Foundational agents から設定できます。
Planner Agent:PM・テックリードの計画業務を変える
Planner Agent は、RICE・MoSCoW・WSJF などのフレームワークを使った優先度付け、イニシアチブのエピック分解、依存関係の分析、スプリント計画、バックログ管理、ステータスレポートの生成などに対応しています。GitLab 19.0 では To-do 管理、GitLab 19.1 では Orbit 連携(グラフベースクエリ)も追加されました。
こんな場面で使う
スプリント計画の支援
このバックログのイシューを RICE フレームワークで優先順位付けしてください。
対象ラベル: ~priority::1, ~priority::2
イニシアチブの分解
このエピック(URL を挿入)を、実装に必要なフィーチャーと
ユーザーストーリーに分解してください。
MVP の定義
このフィーチャー(URL を挿入)の MVP バージョンを定義してください。
デッドラインに間に合わせるために削除できるスコープも提案してください。
ステータスレポートの生成
このマイルストーン(URL を挿入)の進捗サマリーを、
リーダーシップ向けのエグゼクティブサマリー形式で生成してください。
ブロッカーと緩和策も含めてください。
バックログ管理
6 ヶ月以上更新されていないステールなイシューを見つけてください。
重複や類似のイシューがあれば合わせて指摘してください。
To-do 管理(GitLab 19.0〜)
このイシュー(URL を挿入)に To-do を追加してください。
注意点
イシューにコメント履歴が多い場合(約 100 件超)、コメント内容が不完全になることがあります。また、ワークアイテム間のリンク関係の作成は現在できません(/relate クイックアクションをコメントで追加するワークアラウンドがあります)。
Security Analyst Agent:脆弱性管理を本格化する(Ultimate のみ)
Security Analyst Agent は、脆弱性のトリアージ・リスク評価・誤検知の識別・コンプライアンス管理・セキュリティレポートの生成・修正計画の作成などに対応しています。EPSS スコア・CVE データ・到達可能性分析を解釈して、文脈に即したセキュリティガイダンスを提供します。
注意:Security Analyst Agent は GitLab Ultimate のみ利用可能です。
こんな場面で使う
脆弱性の優先度付け
このプロジェクトの Critical 脆弱性をすべて表示して、
EPSS スコアと到達可能性をもとに優先順位を付けてください。
誤検知の一括処理
到達不能コードとしてマークされた依存関係スキャンの
誤検知をすべて dismiss してください。
修正計画の生成
次のスプリントで対応すべき Critical・High の脆弱性について、
修正計画を作成してください。
イシューの自動作成
確認済みの High 脆弱性に対して、
最近のコミッターをアサインしたイシューを作成してください。
コンプライアンスレポート
現在のセキュリティ状況について、
セキュリティレビューボード向けのサマリーを生成してください。
QA・アーキテクトへの活用示唆
⑦「テスト・QA」の記事で紹介した SAST False Positive Detection(1 クレジット = 1 回)と比べると、Security Analyst Agent はより包括的な脆弱性管理のワークフロー全体をカバーします。個別の誤検知確認には SAST False Positive Detection を、プロジェクト全体のセキュリティ状況の把握には Security Analyst Agent を使い分けるのが効率的です。
Data Analyst Agent:数字で語るプロジェクト管理
Data Analyst Agent は GitLab Query Language(GLQL)と Orbit を使ってデータを取得・分析し、プロジェクトやグループに関する洞察を提供します。GitLab 18.11 で GA になりました。
こんな場面で使う
チームのアウトプット確認
@username が今月取り組んだ作業を一覧にしてください。
MR・イシューの集計
今月マージされた MR の数と、作成者別の内訳を教えてください。
トレンド分析
今四半期のバグ作成数のトレンドを教えてください。
先月と今月を比較してください。
GLQL クエリの生成
自分にアサインされているオープンイシューを表示する
GLQL クエリを作成してください。
イシューページに埋め込んで使いたいです。
期限超過の監視
現在期限を過ぎているイシューを表示してください。
注意点
100 件を超えるデータセットでは集計結果が不完全になることがある既知の問題があります。また、ワークアイテムやダッシュボードへの直接出力はできません。生成された GLQL クエリをコピーして GitLab Flavored Markdown が使えるページに貼り付けて使います。
CI Expert Agent:CI/CD パイプラインの専門家(Premium / Ultimate・Beta)
CI Expert Agent は .gitlab-ci.yml の作成・デバッグ・最適化に特化したエージェントです。GitLab 18.10 で Beta として導入され、GitLab 19.0 でフィーチャーフラグが撤廃されました。
こんな場面で使う
パイプラインをゼロから作成する
Node.js プロジェクト向けに、テストと Docker ビルドを含む
CI/CD パイプラインを作成してください。
パイプラインのデバッグ
以下のジョブログを分析して、失敗の原因を教えてください。
(ジョブログをここに貼り付ける)
キャッシュの最適化
現在の .gitlab-ci.yml を確認して、
ビルド時間を短縮するためのキャッシュ設定を提案してください。
needs を使った並列化
このパイプラインで `needs` キーワードを使って
ジョブを早期に開始できる箇所を教えてください。
概念の説明
`cache` と `artifacts` の違いを教えてください。
いつどちらを使うべきか具体例で説明してください。
開発・コーディング系エンジニアへの活用示唆
⑥「開発・コーディング」の記事では Code Suggestions や Duo Chat を紹介しましたが、CI/CD の設定に詰まったときは CI Expert Agent が最も的確な回答を返します。.gitlab-ci.yml の既存ファイルを貼り付けて「最適化してほしい」と聞くだけで、実用的な改善案が得られます。
クレジット消費の目安と準備
Foundational Agents は複数のモデルコールを実行するため、1 回の実行で消費するクレジットが大きくなります。
| エージェント | 1 回あたりの消費目安 | 備考 |
|---|---|---|
| Planner | 5〜15 クレジット | タスクの複雑さによる |
| Security Analyst | 10〜20 クレジット | 分析対象の規模による |
| Data Analyst | 3〜10 クレジット | クエリの複雑さによる |
| CI Expert | 3〜10 クレジット | パイプラインの規模による |
Included Credits で試す場合
月の Included Credits に余裕があれば、シンプルな質問を 1〜2 回だけ試すことはできます。ただし、複雑なタスクを繰り返し試したい場合は、追加のクレジットを用意することをおすすめします。
追加クレジットを用意する方法
Temporary Evaluation Credits(推奨)
GitLab Sales チームに連絡すると、30 日間有効の無料評価クレジットを申請できます。チーム単位での評価に向いています。
申請先:https://about.gitlab.com/sales/
Monthly Commitment Pool の購入
本格的に使い始めたら、Monthly Commitment Pool の購入を検討しましょう。年間または複数年契約で購入でき、毎月一定量のクレジットが付与されます。
注意:Monthly Commitment Pool を購入すると、On-Demand 課金も自動的に有効になります。予期せぬ課金を防ぐために、Customers Portal で On-Demand Credit Cap を設定することを強くおすすめします。
どのエージェントから試すか
迷ったら、自分の職種に近いエージェントから試してみましょう。
| 職種 | まず試すエージェント | 理由 |
|---|---|---|
| PM・スクラムマスター | Planner | バックログ整理や優先度付けで即効性がある |
| テックリード | Planner → Data Analyst | スプリント計画 → チームの生産性分析 |
| 開発・コーディング | CI Expert |
.gitlab-ci.yml の作成・最適化 |
| QA・セキュリティ担当 | Security Analyst(Ultimate のみ) | 脆弱性トリアージの自動化 |
| アーキテクト | Security Analyst(Ultimate のみ) | プロジェクト全体のセキュリティ状況把握 |
まとめ:Foundational Agents は「次のステップ」
①〜⑧で紹介した機能で GitLab Duo の基本的な価値を体験した後、さらに踏み込んだ自動化と分析を求めるときが Foundational Agents の出番です。
- Planner:計画業務の質と速度を上げたい PM・テックリードに
- Security Analyst:脆弱性管理を体系化したい QA・アーキテクトに(Ultimate のみ)
- Data Analyst:数字でチームの状況を把握したいテックリード・PM に
- CI Expert:CI/CD パイプラインの作成・最適化を効率化したい開発者に(Beta)
クレジット消費が大きいからこそ、「何を達成したいか」を明確にしてから使うのが Foundational Agents を上手く使うコツです。
シリーズ一覧
- ① GitLab Duo、契約してるのに使っていない人へ(エンジニア全般向け)
- ② チームに GitLab Duo を展開する前に読む記事(テックリード向け)
- ③ 「AI ツール、試したけど定着しなかった」人が GitLab Duo を使い始める方法(中堅エンジニア向け)
- ④ コードを書かない PM こそ GitLab Duo を使うべき理由(PM向け)
- ⑤ 巨大コードベースの全体把握に GitLab Duo が効いた(設計・アーキテクト向け)
- ⑥ 手が止まらない開発フローを GitLab Duo で作る(開発・コーディング向け)
- ⑦ QA エンジニアが GitLab Duo でテスト工数を削減した話(テスト・QA 向け)
- ⑧ エラーログをそのまま貼るだけ——Duo 活用の障害切り分け術(テクニカルサポート向け)
- ⑨ GitLab Duo Foundational Agents を試す(上級編)← この記事
GitLab Credits の詳細な仕様については 公式ドキュメント をご参照ください。
Foundational Agents の詳細は 公式ドキュメント をご参照ください。