「開発風景を撮影させてください」
そう言われた時、正直戸惑いました。
エンジニアとして、コードを書いている姿をカメラに収められることへの抵抗感。でも、後にこのドキュメンタリー撮影が、私のエンジニアとしての成長を大きく後押ししてくれました。
今回は、伝統工芸×AIエージェントプロジェクト「GIF Techcraft」の開発を通じて、カメラが回る開発現場やメディアを通して発信することで学んだ「エンジニアがビジネスで成長するための5つの視点」をシェアします。
プロジェクトの詳細や技術的な内容については、他の記事で紹介しているので、今回は「ビジネス視点での成長」に焦点を当ててお伝えします。
プロジェクトの背景
今回のプロジェクトは、伝統工芸が抱える「アイデアの枯渇」と「試作リスク」という課題を最新テクノロジーで解決するプロジェクトです。
AIエージェントとデジタル試作を活用し、純銀ぐい呑み「手影(TEKAGE)」をクラウドファンディング開始わずか5日間で目標達成しました。
開発風景は最初から最後までドキュメンタリーとして撮影され、その動画が公開されています。カメラが回ることで、普段意識していなかった自分の課題や成長の瞬間が、はっきりと見えるようになりました。
自身を客観視する
👀①自分の仕事を「魅せる力」を身につける
カメラが回ることで見えた課題
開発風景を撮影されることで、最初に気づいたのは「自分の仕事を説明できない」ということでした。インタビュー時の質疑応答、コードを書いている時、何を考えているのか、なぜその判断をしたのか、それを言葉にすることができませんでした。
カメラの前で説明を求められると、技術的な詳細に逃げがちでした。「このAPIを使っているから」「このライブラリが便利だから」という説明では、プロジェクトの価値やビジネスへの貢献が伝わりません。
また、開発の風景をドキュメンタリーで撮られるだけでなく、さまざまなメディアに挑戦しました。
- Qiitaでテックブログを書く
- LT会で登壇する
- 著名エンジニアと対談する
- 記者向けメディア発表会を行う
これらを通して、ユーザーの反応を直接見ることになりました。自分が作ったものに対する率直な意見を聞くのは、正直緊張や恐怖心、ワクワクもありました。
私たちの取り組みに対して、興味を持ってくれる人、私の伝え方不足での失敗、ビジネス視点・テクノロジー視点での意見/アドバイス。様々な声をいただくことができました。結論、もっと技術面も深めようと努力したり、自信につながることが多く、このプロジェクトを推進していって本当に良かったと思う場面が多かったです。
学んだこと
エンジニアの仕事は、技術的な実装だけではありません。その技術がどのような価値を生み出すのか、ビジネスにどう貢献するのかを説明できることが重要です。
カメラが回ることで、自分の仕事を「見せる力」、つまり可視化して伝える力が必要だと痛感しました。
実践的なTips
-
日々の作業を言語化する習慣をつける
何をしているのか、なぜそれをしているのかを1日1回、短くまとめる -
技術的な説明をビジネス価値に変換する練習
「APIを実装した」→「ユーザーの操作を3秒短縮できる機能を追加した」 -
振り返りの時間を設ける
週に1回、自分の仕事を振り返り、価値を言語化する
👀②失敗を記録し、振り返る習慣を身につける
カメラが回ることで見えた課題
ドキュメンタリー撮影では、失敗も含めてすべてが記録されました。浅草での街頭インタビューでユーザー理解の難しさを痛感した瞬間、クラウドファンディング未達成の期間、AI精度チューニングが思うように成功しない日々、リーダーが弱音を吐く瞬間。
これらの失敗は、撮影されていなければ、きっと記憶の隅に追いやられていたでしょう。でも、動画として残ることで、失敗の瞬間を振り返り、そこから学ぶことができました。
恥を知れ、ということですね。
学んだこと
失敗を記録し、振り返る習慣が、エンジニアの成長を加速させます。カメラが回ることで、失敗を隠すことができず、向き合わざるを得なくなりました。また、当時では気づけなかった第三者視点で自身の言動を振り返ること。その結果、失敗から得られる学びが明確になりました。
技術的な失敗(バグ、パフォーマンス問題など)もログをたどって解決する道のりと似ているなと感じました。ビジネス的な失敗(ユーザー理解の不足、市場とのギャップなど)に向き合う機会はとても貴重で、当時のアイデアやそのために取り組んだことを記録し、振り返り、次のビジネスで同じ失敗をしないための行動ができることが重要です。
実践的なTips
-
失敗を記録する習慣をつける
日記やメモに、失敗したこととその理由を書く -
定期的に振り返る時間を設ける
週に1回、失敗から学んだことをまとめる -
失敗を共有する文化を作る
チームで失敗を共有し、学びを深める -
デジタル試作で失敗のリスクを下げる
実物を作る前に、デジタルで試行錯誤する
👀③ユーザー視点を常に意識する
カメラが回ることで見えた課題
本プロジェクトの現時点の結果として顕著にわかることがありました。
アプリを使用するユーザー(職人)はアプリを自由自在に扱い、AIデジタル商品を生み出すことができました。
ですが、その先のユーザーである伝統工芸商品を購入するユーザーが少なかったことがわかります。
特に、富裕層にアプローチできず、価格の問題が浮き彫りになってしまいました。次はこの課題と向き合う必要があります。
技術的には問題なく動いていた、アプリユーザーは満足していたのに、最終的なユーザーには響かなかった。技術的な完成度と、ビジネス的な価値は別物だと痛感しました。
学んだこと
エンジニアは、技術的な実装に集中しがちです。でも、ビジネスで成長するためには、エンドユーザー視点を常に意識することが重要です。
カメラが回ることで、POPUPストアでのユーザーの反応が記録され、後から振り返ることもできました。その結果、ユーザー視点の重要性が、頭ではなく体感として理解できました。
実践的なTips
-
ユーザーインタビューを定期的に行う
技術的な実装の前後で、ユーザーの声を聞く -
市場とのギャップを早期に発見する
小さな規模で試販売やテストを実施する -
ユーザーの課題を言語化する
技術的な解決策ではなく、ユーザーの課題を先に理解する -
フィードバックループを構築する
ユーザーからのフィードバックを開発に反映する仕組みを作る
👀④異なる専門性を持つ人と協働する力
カメラが回ることで見えた課題
このプロジェクトでは、職人さんと協働しました。職人さんは「言葉にならない感覚」でものを作ります。「この角度がいい」「この厚みがちょうどいい」という感覚的な判断を、技術的な言語に変換する必要がありました。
カメラが回ることで、このコミュニケーションの難しさが、はっきりと記録されました。エンジニアとして、技術的な言語で説明しようとしましたが、職人さんの感覚的な言語とは、なかなか噛み合いませんでした。
学んだこと
エンジニアがビジネスで成長するためには、異なる専門性を持つ人と協働する力が必要です。技術的な言語だけでなく、感覚的な言語、ビジネスの言語、ユーザーの言語など、様々な言語を理解し、橋渡しする力が重要です。
カメラが回ることで、このコミュニケーションの過程が記録され、後から振り返ることができました。その結果、デジタル試作を活用した意思疎通など、具体的な方法を見つけることができました。
実践的なTips
-
異なる専門性を持つ人とのコミュニケーションを意識する
技術的な言語だけでなく、相手の言語で話す -
デジタル試作を活用した意思疎通
言葉で説明できない感覚を、デジタルで可視化する -
失敗を共有する文化を作る
異なる専門性を持つ人と、失敗を共有し、学びを深める -
価値観の違いを理解する
技術的な正しさと、ビジネス的な正しさは異なることを理解する
👀⑤プロジェクト全体を見る
カメラが回ることで見えた課題
ドキュメンタリー撮影では、プロジェクト全体の流れが記録されました。アイデア発案から、ユーザーインタビュー、デジタル試作、実物制作、クラウドファンディングまで、すべてが1つのストーリーとして記録されていました。
カメラが回ることで、自分の仕事がプロジェクト全体のどこに位置しているのかが、はっきりと見えるようになりました。技術的な実装だけに集中していた時は、プロジェクト全体の流れが見えていませんでした。
学んだこと
エンジニアがビジネスで成長するためには、プロジェクト全体を見る視点が必要です。技術的な実装だけでなく、アイデアから販売までの全体の流れを理解し、自分の仕事がどのように価値を生み出すのかを意識することが重要です。
カメラが回ることで、プロジェクト全体のストーリーが記録され、後から振り返ることができました。その結果、技術的な成功をビジネス成果に繋げる方法が、明確になりました。
実践的なTips
-
プロジェクト全体の流れを理解する
アイデアから販売までの全体の流れを把握する -
自分の仕事の位置づけを意識する
自分の仕事が、プロジェクト全体のどこに位置しているのかを理解する -
ビジネス成果を意識する
技術的な実装だけでなく、ビジネス成果を意識する -
ストーリーを語る練習をする
プロジェクト全体のストーリーを、わかりやすく説明する練習をする
ドキュメンタリー動画の見どころ
今回のプロジェクトの開発過程は、ドキュメンタリーとして記録され、前編・後編の2本の動画として公開されています。
【前編】プロジェクトの立ち上げと試行錯誤
0:00 プロローグ
0:45 伝統工芸の本質を取り戻す
2:15 不器用な職人へのヒアリング
4:30 AIエージェント開発スタート
6:20 浅草で外国人リサーチ
8:40 価格という壁
10:15 前編エンディング
【後編】AIデジタル試作と成功への道
00:00 イントロダクション
00:51 新機能「海外消費者AI」
02:27 職人の技と感覚をAIに学習させる
04:17 開発の苦悩、生成AIのクオリティ向上と技術的課題
06:46 最終ユーザーヒアリング、引き渡し当日
08:51 職人によるAI創作
12:46 メディア発表会
14:22 浅草クラウドファンディングイベント
16:49 クラウドファンディング結果
動画を見ると、この記事で紹介した5つの視点が、より具体的に、よりリアルに理解できると思います。ぜひ、動画もご覧ください。
前編: https://youtu.be/Z2xyZd-9R3o
後編: https://youtu.be/J5zrnrzctNs
まとめ
カメラが回る開発現場で学んだ、エンジニアがビジネスで成長するための5つの視点を紹介しました。
- 自分の仕事を「魅せる力」を身につける
- 失敗を記録し、振り返る習慣を身につける
- ユーザー視点を常に意識する
- 異なる専門性を持つ人と協働する力
- プロジェクト全体を見る
これらの視点は、技術的なスキルとは異なる、ビジネスで成長するためのスキルです。カメラが回ることで、これらのスキルの重要性が、頭ではなく体感として理解できるようになりました。
エンジニアとして、技術的なスキルを磨くことは重要です。でも、ビジネスで本当に成長するためには、これらの視点も必要です。この記事が、エンジニアとしての成長のヒントになれば幸いです。
最後に
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ドキュメンタリー動画も、ぜひご覧ください。動画を見ると、この記事で紹介した5つの視点が、より具体的に、よりリアルに理解できると思います!






