はじめに
デザインをしていて、「なんだか素人っぽい」「情報の優先順位がバラバラに見える」と悩んだことはありませんか?
その原因の多くは、「色の増やしすぎ」にあるかもしれません。
「色は3色に絞れ」という格言は、単なる美学ではありません。
そこには、ユーザーに迷いを与えないための明確なロジックがあります。
今回は、つい忘れがちな配色の本質と、その構成について整理します。
なぜ「3色」に絞るのか
🧠 認知負荷を最小限にする
人間が一度に処理できる情報の数には限りがあります。
色が多いと、脳は「どの色が重要なのか?」「この色の意味は何か?」を無意識に解析しようとして疲弊してしまいます。
色を3色に絞ることで、ユーザーは「何が背景で、どこが重要か」を瞬時に理解できるようになります。
👁️ 視線誘導のコントラストを最大化する
すべてがカラフルな状態では、視線の「フック」が生まれません。
色数を絞ることは、数学的に「特定の1色が持つコントラスト比を際立たせる」行為です。
色が少ないからこそ、特定の1色が持つパワーが最大化されます。
黄金比「60:30:10の法則」
配色を考える際、最も美しく安定すると言われているのがこの比率です。
ただ色を3つ選ぶのではなく、それぞれに明確な「役割」を与えることが成功の鍵です。
もともとは「空間を最も心地よく見せる定石」として長年愛されてきたもので、現在ではデザインを支えるフレームワークとしても使用できます。
| 役割 | 比率 | 構成の詳細 |
|---|---|---|
| ベースカラー | 60% | 背景や余白。全体の「空気感」を作り、視覚的なノイズを消す。 |
| メインカラー | 30% | ブランドの象徴。情報の骨組み(見出しや主要要素)を作る。 |
| アクセントカラー | 10% | 行動喚起(CTA)。最も視線を集めたい場所だけに使う。 |
この比率を守ることで、「90%の脇役が、残り10%の重要な情報を際立たせる」という完璧なバランスが生まれます。
🔗 参考:Googleが推奨する「3つのキーカラー」
Googleのデザインガイドラインでは、3つのキーカラー(Primary / Secondary / Tertiary)からUI全体の配色を構築する手法が体系化されています。
つい忘れがちな「構成」のポイント
3色の比率を守っていても、なぜかデザインがまとまらない。そんな時に見直したい、つい忘れがちな調整のコツです。
1. ベースカラーの「白」を微調整する
ベースカラー(60%)には、清潔感のある完全な白(#FFFFFF)が選ばれることが非常に多いです。
ただ、もし「メインカラーが浮いて見える」「色が馴染まない」と感じたときは、ほんの少しだけ色を混ぜてみてください。
メインカラーの成分を数%含んだオフホワイトやライトグレーにするだけで、3色のまとまりがグッと良くなる場合があります。
2. メインカラーの「役割」を再定義する
メインカラー(30%)を「色を塗る場所」としてあちこちに散らしてしまうと、視線が分散してしまいます。
メインカラーは装飾ではなく、「ここが情報の構造(見出しや枠組み)ですよ」という目印として優先順位の高い場所に集中させる。
これだけで、ユーザーが次に読むべき場所がはっきりします。
3. アクセントカラーの「余白」を確保する
アクセントカラーは、10%以下の「孤独」な状態が最も効果を発揮します。
「目立たないから」と範囲を広げすぎると、それはメインカラーの役割に近づいてしまい、肝心のクリックしてほしい場所が埋もれてしまいます。
アクセントカラーを際立たせるために、あえて周囲を他の2色でシンプルに保つ。
この「引き算」が大切です。
「3色じゃ足りない」と感じたときは
どうしても色を増やしたくなった時は、色相(赤、青、黄色など)を増やすのではなく、「トーン(明度・彩度)」を調整してみてください。
同じ青色でも、薄い青と濃い青を使い分ける
グレーのバリエーションを増やす
これらは視覚的には「同じ色の仲間」として認識されるため、脳の学習コストを上げずに、情報の優先順位を整理できます。
🔗 参考:Googleのカラーシステム
この「役割で色を分ける」考え方は、Googleの Material Design でも体系化されています。
メイン、セカンダリ、アクセント(補色)という定義は、モダンなUI設計の標準となっています。
エンジニアにとっても「3色」はメリットがある
色を絞るメリットは、見た目だけでなく、実装やチーム開発の現場にも波及します。
💻 カラー変数の定義が明確になる
--color-base, --color-main, --color-accent のように役割で変数を管理しやすくなります。「この色は何に使うもの?」という曖昧なコミュニケーションが減り、CSSのメンテナンス性が向上します。
💻 デザインの意図がコードに乗りやすい
ルールが徹底されていると、エンジニアもコンポーネント化(共通化)の判断がしやすくなります。
💻 アクセシビリティ対応の簡略化
色数が限定されていれば、コントラスト比のチェック範囲も絞られます。誰にとっても読みやすいUIをコードレベルで担保しやすくなるのは大きな利点です。
まとめ : デザインは「引き算」の思考
配色とは、単に「色を塗る作業」ではなく、「情報の重要度を整理する作業」そのものです。
色を3色に絞るという制約は、表現を狭めるためのものではなく、伝えたいことを研ぎ澄ませるためのプロセスに他なりません。
- ベースが、ノイズを排して全体の土台を整える。
- メインが、コンテンツの構造を直感的に伝える。
- アクセントが、迷いなくユーザーの行動を後押しする。
この3つの構成が重なり合ったとき、デザインは「なんとなく綺麗」という感覚を超え、ユーザーを迷わせない「論理的に正しい」ものへと進化します。
「色がまとまらない」と感じたときこそ、一度色を捨てて、このシンプルな構成に立ち返ってみてください。
引き算の先にある情報の解像度を、きっと実感できるはずです。
番外編 : 配色に迷った際に設計に役立つツール🛠️