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# 歩行時の加速度をスマホで計測してWaveAxisで解析してみた〜早歩きvsゆっくり歩きの振動を比較〜

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Last updated at Posted at 2026-05-04

はじめに

「早歩きは健康に良い」とよく言いますが、足への衝撃はどうなのでしょうか?
今回はスマホの加速度センサーを使って歩行時の振動を計測し、自作の振動解析WebアプリWaveAxisで解析してみました。

使用した装備はこちら。

  • デバイス:iPhone 15
  • アプリ:Phyphox(無料)
  • ズボン:リーバイス 501 ブラック(ポケットがしっかりしていてスマホが安定する)
  • スニーカー:アディダス スーパースター(クッション控えめなフラット系)

リーバイス501のポケットは深くてしっかりしているため、計測中にスマホがずれにくく、意外と計測向きです。スーパースターはフラットソールなので、余計なクッションに邪魔されない素直な衝撃データが取れたかもしれません(言い訳ではありません)。


計測方法

Phyphoxの「gを含まない加速度」モードで計測しました。
スマホをズボンの左前ポケットに入れ、画面が自分に向く向きで固定。

各軸の方向はこちら:

  • X方向:左右
  • Y方向:上下
  • Z方向:前後

image.png

サンプリング周波数:100 Hz

一定距離を「ゆっくり歩き」と「早歩き」の2条件で計測し、PhyphoxからCSVにエクスポート。それをWaveAxisに読み込んで解析しました。


WaveAxisについて

今回使用したWaveAxisは筆者が開発している振動解析WebアプリのProプランです。

  • CSVを読み込んで時系列波形・PSD・パワースペクトルを即座に表示
  • データはブラウザ内で処理されるためサーバーに送信されない(業務データも安心)
  • 無料版はこちら → https://waveaxis.vercel.app/
    👇アップデートしました!
    https://waveaxis-pro.vercel.app
    ランダム振動の生成やProプランへのアップデートができます。

計測設定はこちら:

項目 設定値
サンプル数 1024
窓関数 Hann
オーバーラップ 50%
平均化 あり

解析結果

時系列波形

image.png

image.png

ゆっくりと早歩きを比べると、波形の「トゲ」の大きさが明らかに違います。
Y方向(上下)の時系列波形を見ると、定期的に鋭いスパイクが現れています。これは左足が地面に接地した瞬間の衝撃です。スマホが左ポケットに入っているため、左足着地のタイミングで特に大きな応答が出ています。

このピーク数を数えることで、ケイデンス(歩調)を算出できます。最初の1回目はポケットに入れた時の波形なのでカウントしていません。

ゆっくり 早歩き
計測時間 27.67 秒 19.93 秒
左足着地ピーク数 23 回 20 回
左足ケイデンス(片足) 23÷27.67×60 ≒ 50 歩/分 20÷19.93×60 ≒ 60 歩/分
総ケイデンス(両足換算) 100 歩/分 120 歩/分

歩行は周期運動であるため、基本周波数(1秒あたりの周期数)に60を掛けることで1分あたりの歩数(ケイデンス)に換算できます。
左足のピーク数を2倍することで両足のケイデンスが求まります。一般的な歩行ケイデンスの目安(普通歩行:100〜120歩/分、早歩き:120〜140歩/分)とほぼ一致しており、波形のピークカウントが実際の歩調を正しく捉えていることが確認できます。


PSD(パワースペクトル密度)

image.png

image.png

本記事では主にPSD(パワースペクトル密度)を用いて評価しています。PSDは周波数帯域あたりのエネルギー分布を示すため、異なる条件間の比較に適しています。
両条件ともに基本周波数とその高調波列がきれいに現れました。

ゆっくり 早歩き
基本周波数(Y方向) 1.85 Hz 2.24 Hz
ケイデンス換算 約111歩/分 約134歩/分

PSDのピーク周波数から求めたケイデンスも、波形のピークカウントから求めた値と概ね一致していますが、PSDから求めた値の方がやや高く出ています。これはピーク検出のしきい値や、歩行周期の揺らぎ、FFTの周波数分解能などの影響と考えられます。

また基本周波数の整数倍(2倍、3倍…)にもピークが並んでおり、歩行という周期的だけど完全な正弦波ではない運動の特徴がスペクトル上に表れています。


スペクトログラム

image.png

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PSDが「周波数ごとのエネルギー分布」の平均像だとすれば、スペクトログラムはそれが時間とともにどう変化しているかを一枚の図で見せてくれます。

早歩きとゆっくりのスペクトログラムを比べると、いくつかの違いが読み取れます。

低周波帯(0〜5 Hz)のエネルギー強度

最も目立つのはこの帯域の色の違いです。ゆっくり歩きは黄色〜オレンジが安定して広がっているのに対し、早歩きは赤〜濃いオレンジが帯状に現れています。PSDで確認した「早歩きの方がパワーが高い」という結果が、スペクトログラム上でも視覚的に一目瞭然です。

高周波成分の違い

ゆっくり歩きでは15 Hz以上はほぼ青(エネルギー小)ですが、早歩きでは10〜20 Hz帯にうっすら黄色がかった領域が残っています。これは踵接地の衝撃成分が高周波側まで広がっていることを示しています。衝撃が鋭くなるほどスペクトルが広帯域に広がるという振動工学的な特徴と一致しており、heel strike由来と考えられる高周波成分の増加が示唆されます。


上下方向(Y方向)の比較まとめ

指標 ゆっくり 早歩き
最大加速度 20.83 m/s²(約2.1 G) 41.58 m/s²(約4.2 G)
RMS 3.74 m/s² 6.19 m/s²
基本周波数 1.85 Hz 2.24 Hz
ケイデンス(PSD) 約111歩/分 約134歩/分
ケイデンス(ピークカウント) 約100歩/分 約120歩/分

考察

早歩きで最大加速度が2倍になった

最も驚いたのがこの結果です。早歩きの上下方向の最大加速度は約4.2 G、ゆっくり歩きの約2倍に達しました。

この衝撃増大の主な原因は「速く動いている」というよりも、早歩きになるほど踵から強く接地する(heel strike)傾向が強まるためと考えられます。リーバイス501のポケットに入ったiPhoneが正直に記録してくれました。

「早歩きは膝に悪い」のか?

正直に言うと、このデータだけで結論を出すのは難しいです。

加速度が2倍だと聞くと「じゃあ膝へのダメージも2倍?」と思いたくなりますが、実際の膝への負荷は筋肉による衝撃吸収や関節の角度など、スマホの加速度計では捉えきれない要素に大きく左右されます。

ただ一つ言えるのは、着地の衝撃は確かに大きくなっているということ。
「早歩きは健康に良い」は多くの研究で支持されていますが、それはフォームが伴っての話かもしれません。踵からドスドス叩きつけるように早歩きするより、ミッドフット気味にソフトに接地しながら速度を上げる歩き方の方が、衝撃を抑えられる可能性があります。

スーパースターのフラットソールで計測した今回の結果は、クッション性の高いランニングシューズとはまた違う数値になるはず。靴を変えて同じ計測をしてみるというのも面白い実験になりそうです(続編があるかもしれません)。


まとめ

  • スマホ+Phyphox+WaveAxisで歩行の振動解析が手軽にできる
  • 時系列波形のピークカウントとPSDのピーク周波数、2つの方法でケイデンスを算出でき、両者は概ね一致した
  • 早歩きでは上下方向の最大加速度がゆっくり歩きの約2倍(約4.2 G)
  • スペクトログラムでも早歩きの衝撃エネルギーが広帯域に広がっている様子が視覚的に確認できた
  • 「早歩きは健康に良い」はフォーム次第で変わってくるかもしれない
  • 次は靴を変えて比較してみたい(アディダス スーパースター vs クッション系スニーカー)

使用ツール・環境

ツール 用途
iPhone 15 + Phyphox 加速度計測・CSV出力
WaveAxis Pro 時系列・PSD・スペクトログラム解析
リーバイス 501 ブラック スマホの安定固定(重要)
アディダス スーパースター 素直な衝撃データの取得(たぶん)
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