はじめに
光ファイバーを選定するとき、「OM3とOM4は何が違うのか」「OM5を選べば将来も安心なのか」と迷うことがあります。
OM1、OM2、OM3、OM4、OM5は、いずれもマルチモード光ファイバーの分類です。ただし、OM番号が大きいほど、すべての用途で優れているという意味ではありません。
実際の通信性能や伝送距離は、次のような条件によって決まります。
- 使用する光トランシーバー
- 通信規格
- 動作波長
- 光ファイバーのモード帯域幅
- 光ファイバーの長さ
- コネクターや融着接続による損失
- リンク全体の損失予算
この記事では、OM1〜OM5の基本的な違いと、実際に光ファイバーを選ぶときに確認すべき項目を整理します。
OM1〜OM5とは
OMは、マルチモード光ファイバーを表す分類です。
一般的なコア径とクラッド径は次のとおりです。
- OM1:62.5/125 µm
- OM2:50/125 µm
- OM3:50/125 µm
- OM4:50/125 µm
- OM5:50/125 µm
ここで、前半の数値がコア径、後半の数値がクラッド径です。
OM1だけは、一般的に62.5 µmのコアを持ちます。一方、OM2以降は50 µmのコアが一般的です。
ただし、コア径だけで通信性能を判断することはできません。特にOM3、OM4、OM5では、レーザー光源に適した屈折率分布やモード帯域幅が重要になります。
OM1〜OM5の比較
| 種類 | 一般的なサイズ | 850 nmでの代表的な帯域指標 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| OM1 | 62.5/125 µm | OFL帯域幅 200 MHz・km | 旧世代のマルチモード光ファイバー |
| OM2 | 50/125 µm | OFL帯域幅 500 MHz・km | 50 µmコアの標準的なマルチモード光ファイバー |
| OM3 | 50/125 µm | EMB 2,000 MHz・km以上 | VCSELなどのレーザー光源に適した光ファイバー |
| OM4 | 50/125 µm | EMB 4,700 MHz・km以上 | OM3より高いモード帯域幅を持つ光ファイバー |
| OM5 | 50/125 µm | EMB 4,700 MHz・km以上 | 複数の短波長を利用する広帯域マルチモード光ファイバー |
OFLはOverfilled Launchの略で、比較的広いモードを光ファイバーへ入射したときの帯域指標です。
EMBはEffective Modal Bandwidthの略で、VCSELなどのレーザー光源を使用した場合の実効モード帯域幅を表します。
OM1やOM2ではOFL帯域幅が示されることが多く、OM3以降ではレーザー光源を前提としたEMBが重要になります。
OM1の特徴
OM1は、62.5/125 µmのコア径を持つマルチモード光ファイバーです。
古い建物や既存の構内配線で使用されていることがあります。1GbEなどの通信で利用できる場合もありますが、通信速度が高くなるほど伝送距離は短くなります。
10GBASE-SRでは、OM1の伝送距離は一般に約33 mが目安です。
そのため、既存設備でOM1が使われている場合は、次の項目を確認する必要があります。
- 現在使用している通信規格
- 光トランシーバーの仕様
- 必要な伝送距離
- リンク全体の損失
- 将来的な通信速度の計画
OM1だから使用できないと決めつけるのではなく、具体的なトランシーバーの仕様と照合して判断します。
OM2の特徴
OM2は、50/125 µmのコア径を持ち、OM1より高い帯域幅を備えています。
10GBASE-SRでは、OM2の伝送距離は一般に約82 mが目安です。1GbEでは、1000BASE-SXを使用した場合に約550 mが参考値として示されることがあります。
ただし、これらは光ファイバーの種類だけで保証される距離ではありません。光トランシーバーの送信出力、受信感度、コネクター損失なども含めて確認する必要があります。
既存のOM2配線を継続して利用する場合は、現在の配線距離と将来必要になる通信速度を比較することが重要です。
OM3の特徴
OM3は、50/125 µmのレーザー最適化型マルチモード光ファイバーです。
850 nmにおけるEMBは、一般に2,000 MHz・km以上です。VCSELを使用する短距離の高速通信で利用されます。
代表的な伝送距離の目安は次のとおりです。
- 10GBASE-SR:最大300 m
- 40GBASE-SR4:最大100 m
- 100GBASE-SR4:最大70 m
OM3は、データセンター内のサーバー接続やスイッチ間接続などで使用されてきました。
一方で、同じOM3でも、実際に使用できる距離は通信規格や光モジュールによって変わります。「OM3なら必ず300 m通信できる」と考えるのではなく、使用する光モジュールのデータシートを確認してください。
OM4の特徴
OM4も50/125 µmのレーザー最適化型マルチモード光ファイバーです。
850 nmにおけるEMBは、一般に4,700 MHz・km以上で、OM3より高いモード帯域幅を持ちます。
代表的な伝送距離の目安は次のとおりです。
- 10GBASE-SR:最大400 m
- 40GBASE-SR4:最大150 m
- 100GBASE-SR4:最大100 m
OM4は、OM3と同じ通信規格をより長い距離で使用したい場合や、リンク損失に余裕を持たせたい場合に検討されます。
ただし、OM4に交換すれば通信速度そのものが上がるわけではありません。通信速度は、スイッチ、光トランシーバー、規格、伝送方式によって決まります。
OM5の特徴
OM5は、WBMMF(Wide Band Multimode Fiber)とも呼ばれる広帯域マルチモード光ファイバーです。
OM5は、850 nmだけでなく、850 nmより長い複数の短波長を利用することを想定して設計されています。
代表的な帯域指標は次のとおりです。
- 850 nm:EMB 4,700 MHz・km以上
- 953 nm:EMB 2,470 MHz・km以上
OM5の850 nmにおけるEMBは、OM4と同じ水準です。そのため、850 nmの単一波長を使用する一般的なSRトランシーバーでは、OM5に交換しただけでOM4より長距離になるとは限りません。
OM5の主な特徴は、複数の短波長を利用するWDM、特にSWDM(Shortwave Wavelength Division Multiplexing)との組み合わせを考えやすい点にあります。
ただし、SWDMを利用するには、光ファイバーだけでなく、送受信側のトランシーバーも対応している必要があります。
次のような構成では、OM5の特性を活用できる可能性があります。
- 複数の短波長を利用する光伝送
- 既存の光ファイバー芯数を抑えたい構成
- データセンター内の短距離高速通信
- 将来的にWDM方式を検討している構成
反対に、単一波長のトランシーバーだけを使用する場合は、OM5の特性を十分に活用できない可能性があります。
通信規格ごとの伝送距離
以下は、マルチモード光ファイバーを使用した場合によく参照される距離の目安です。
| 通信規格 | OM1 | OM2 | OM3 | OM4 | OM5 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1000BASE-SX | 約275 m | 約550 m | 要仕様確認 | 要仕様確認 | 要仕様確認 |
| 10GBASE-SR | 約33 m | 約82 m | 300 m | 400 m | 400 m級 |
| 40GBASE-SR4 | - | - | 100 m | 150 m | 150 m級 |
| 100GBASE-SR4 | - | - | 70 m | 100 m | 100 m級 |
表の数値は代表的な参考値です。
実際の設計では、次の条件によって使用可能な距離が変わります。
- 使用する光トランシーバーの規格
- 送信出力と受信感度
- 光ファイバーの帯域幅
- コネクターの挿入損失
- 融着接続による損失
- MPO/MTPコネクターの端面状態
- 温度や曲げによる影響
- リンク全体の損失予算
また、40GBASE-SR4と100GBASE-SR4は、同じマルチモード光ファイバーを使用できる場合でも、伝送距離は異なります。
通信速度だけを見て距離を判断するのではなく、通信規格単位で確認する必要があります。
OM4とOM5はどちらを選ぶべきか
OM4とOM5を比較するときは、単純に「新しいOM5のほうが高性能」と判断しないほうが安全です。
OM4を検討しやすいケース
- 850 nmのSRトランシーバーを使用する
- 10GBASE-SRや40GBASE-SR4を使用する
- 既存のデータセンター配線と互換性を重視する
- 伝送距離と損失予算がOM4の仕様内に収まる
OM5を検討しやすいケース
- 複数の短波長を利用する予定がある
- SWDMなどのWDM方式を検討している
- 光ファイバーの芯数を抑えたい
- 送受信機器がOM5の波長条件に対応している
単一波長の850 nm通信だけを使用する場合、OM4とOM5の距離差が小さいことがあります。
OM5を選ぶときは、光ファイバーの仕様だけでなく、将来使用する可能性のあるトランシーバーや伝送方式も確認しておく必要があります。
光ファイバー選定の手順
光ファイバーを選定するときは、次の順番で確認すると判断しやすくなります。
1. 通信規格を決める
まず、10GBASE-SR、40GBASE-SR4、100GBASE-SR4など、使用する通信規格を決めます。
同じOM4でも、通信規格が変われば伝送距離も変わります。
2. 光トランシーバーを確認する
次に、使用する光トランシーバーの仕様を確認します。
確認項目の例:
- 対応する光ファイバー
- 動作波長
- 最大伝送距離
- 必要な芯数
- コネクター形状
- 送信出力
- 受信感度
- 最大許容損失
3. 既存配線の種類を確認する
既存の配線を利用する場合は、ケーブルに表示されたOM分類を確認します。
表示が分からない場合は、施工記録、配線台帳、試験成績書などを確認します。
コア径が異なる光ファイバーを混在させると、接続損失や結合効率に影響する可能性があります。
4. リンク損失を計算する
光ファイバーの長さだけでなく、コネクターや融着点による損失も加算します。
簡単な考え方は次のとおりです。
リンク損失
= 光ファイバーの損失
+ コネクター損失
+ 融着接続損失
+ その他の余裕
計算したリンク損失が、光トランシーバーの最大許容損失を超えないことを確認します。
5. 将来の拡張を考える
将来的に通信速度を上げる予定がある場合は、現在の通信だけでなく、次の更新計画も確認します。
10Gから25Gまたは100Gへ移行する可能性
MPO/MTP接続への移行
WDM方式の採用
光ファイバー芯数の削減
配線ルートの追加や変更
将来計画が明確でない場合は、必要以上に高いグレードを選ぶのではなく、現在の要件と更新時期を分けて考えるほうが現実的です。
よくある誤解
OM番号が大きいほど、すべての用途で優れている
OM4やOM5が、すべての用途でOM1やOM2より適しているとは限りません。
既存設備との互換性、必要距離、光モジュール、予算などを含めて判断する必要があります。
OM5なら850 nmで必ずOM4より長距離になる
OM5の850 nm EMBは、一般にOM4と同じ4,700 MHz・km以上です。
OM5の特徴は、複数の短波長を利用するための広帯域特性にあります。単一波長の850 nm通信だけで、常にOM4を上回るわけではありません。
光ファイバーを交換すれば通信速度が上がる
光ファイバーをOM3からOM4へ交換しても、接続している光トランシーバーが10G対応であれば、通信速度は10Gのままです。
通信速度を変更するには、スイッチのポート、トランシーバー、通信規格、対向機器のすべてを確認する必要があります。
40Gと100Gは同じ距離で使用できる
同じマルチモード光ファイバーを使用できる場合でも、40GBASE-SR4と100GBASE-SR4では代表的な伝送距離が異なります。
通信規格ごとの仕様を確認せずに、距離だけを流用するのは危険です。
コネクターの種類とOM分類は同じ意味である
LC、MPO、MTPなどはコネクターや接続方式を表します。
一方、OM1〜OM5は光ファイバーの分類です。
たとえば、OM4のLCデュプレックスケーブルや、OM4のMPOマルチファイバーケーブルがあります。コネクター形状と光ファイバーの種類は、別々に確認する必要があります。
まとめ
OM1〜OM5は、マルチモード光ファイバーの分類です。
大まかな違いは次のとおりです。
OM1:62.5/125 µmの旧世代マルチモード光ファイバー
OM2:50/125 µmの標準的なマルチモード光ファイバー
OM3:レーザー光源に適した50/125 µm光ファイバー
OM4:OM3より高いモード帯域幅を持つ光ファイバー
OM5:複数の短波長を利用する広帯域マルチモード光ファイバー
光ファイバーを選ぶときは、OM番号だけで判断してはいけません。
次の項目を順番に確認することが重要です。
通信規格
光トランシーバーの仕様
動作波長
必要な伝送距離
既存配線の種類
リンク損失
コネクターと接続方式
将来の拡張計画
特にOM4とOM5を比較する場合は、850 nmの単一波長通信なのか、複数波長を利用するWDM方式なのかを明確にする必要があります。
参考サイト
FS.com:「OM1、OM2、OM3、OM4、OM5、OS1/OS2の違い・用途・規格と光コネクタの研磨方法について解説」
https://www.fs.com/jp/blog/what-is-om1-2-3-4-5-4793.html
Fluke Networks:「OM1 vs OM2 vs OM3 vs OM4 vs OM5 Fiber」
https://www.flukenetworks.com/knowledge-base/copper-testing/om1-om2-om3-om4-om5-and-os1-os2-fiber
Corning:「Wide Band Multimode Fiber (OM5)」
https://www.corning.com/content/dam/corning/catalog/coc/documents/brochures/LAN-2031-AEN.pdf
IEEE 802.3
https://www.ieee802.org/3/