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前書き

私のこれまでの経験と思っていることについて記載しております。
本記事は、品質保証やQAについて考える中で生まれた疑問を整理している連載の一つです。

この連載について

品質保証プロセスの改善やQAの役割について考える中で、いくつかの疑問を持つようになりました。

記事一覧

  1. QAは品質を保証しているのか?
  2. レビューは品質を保証しているのか?
  3. AI時代にQAが保証するものは何か?
  4. レビューの価値は学習ではないか?
  5. プロセスは思考を設計しているのか?
  6. 良い思考はどのように伝わるのか? ← 今回

前回の記事では、
「品質は成果物そのものではなく、その背後にある思考から生まれているのではないか」
ということについて考えました。

もしそうであれば、次に気になることがあります。
その思考はどのように伝わるのでしょうか。

今回はそのことについて考えてみたいと思います。

はじめに

レビューの場で、
「なぜそのように考えたのですか?」
と質問することがあります。

また、「私はこう考えたので、この指摘をしました」と説明することもあります。

レビューというと成果物の確認や不具合の発見をイメージしがちですが、私自身は以前から、考え方を共有することも重要だと感じていました。

なぜなら、成果物の修正方法だけを伝えても、次に同じような場面になった時に応用できないからです。

しかし最近、「そもそも思考は簡単に伝わるものなのだろうか」という疑問を持つようになりました。

私自身が感じていた違和感

私がテスト設計を学び始めた頃、テスト技法や手順については教わりました。

しかし、「どのように考えれば良いのか」については、あまり教わった記憶がありません。
もちろん書籍や研修の中には説明があります。

しかし実際の業務の中では、

  • なぜその観点を選んだのか
  • どのようなリスクを考えたのか
  • なぜそのテストケースが必要なのか

といった考え方は、個人の経験に委ねられているように感じました。

そのため、自分がレビューする立場になった時には、成果物の修正だけではなく、考え方も伝えたいと思うようになりました。

正解を教える方が楽である

しかし、考え方を伝えることは簡単ではありません。

レビューであれば、「ここを修正してください」と言えば数分で終わることがあります。

一方で、
「なぜその設計になったのですか?」
「どのような観点で考えましたか?」
という対話を始めると、長時間になることがあります。

実際、通常30分程度で終わるレビューが、2〜3時間になったこともありました。

それでも私は、考え方を共有する価値があると感じていました。
なぜなら、その場だけの修正ではなく、次回以降の判断につながる可能性があるからです。
ただし、これは大きなコストを伴います。

そのため、多くの現場では成果物の修正に留まり、思考の共有まで踏み込めないこともあるように思います。

思考は会話だけでは伝わらない

さらに難しいのは、考え方を説明したからといって、それがそのまま相手に伝わるわけではないことです。
その場では理解したように見えても、次の案件では同じ指摘が発生することがあります。

私自身、思考の伝承は会話だけでは成立しにくいと感じています。
会話は共有のきっかけにはなります。しかし、それだけでは定着しません。

経験や実践を通じて初めて、自分の考え方として取り込まれていくのではないでしょうか。

思考が伝わるために必要なこと

では、思考が伝わるためには何が必要なのでしょうか。

最近は、
「前提を揃えること」
が重要なのではないかと考えています。

例えば、

  • 品質とは何か
  • この活動の目的は何か
  • なぜこのプロセスを実施するのか

といった前提が揃っていない状態では、同じ言葉を使っていても理解が一致しません。

また、

  • プロセス理解
  • 品質観
  • 目的意識

といった共通基盤があることで、初めて思考の共有が成立するように感じています。
心理的な安心感も大切ですが、その前に同じ土俵で会話できる状態が必要なのかもしれません。

思考は成果物に残るのだろうか

ここで一つ疑問があります。

私たちは成果物を見て、

「この人はこう考えたのだろう」

と想像することがあります。

しかし、それは本当に正しいのでしょうか。
もしかすると、成果物から思考を読み取っているのではなく、自分自身の経験を投影しているだけなのかもしれません。

一方で、要求分析資料やアーキテクチャ検討資料、設計検討のメモなど、中間成果物には思考の痕跡が残ることがあります。完成した成果物だけでは見えない判断過程が、そこには存在します。

思考を共有するためには、最終結果だけではなく、その途中経過を共有することも重要なのかもしれません。

レビューは共通基盤を作る場なのかもしれない

ここまで考えてきて、レビューの見方が少し変わってきました。
レビューは不具合を見つける場でもあります。

しかしそれだけではなく、考え方を共有し、前提を揃え、共通基盤を作る場でもあるのかもしれません。
最初は時間がかかります。

しかし共通基盤が形成されると、長い説明をしなくても意図が伝わるようになります。

レビューとは成果物を改善する活動であると同時に、思考を共有する活動でもあるのではないでしょうか。

おわりに

今回の記事では、

「良い思考はどのように伝わるのか?」

について考えてみました。

品質につながる思考は重要です。
しかし思考そのものを直接伝えることは簡単ではありません。

そのためには、

  • 前提を揃えること
  • 共通基盤を作ること
  • 思考の途中経過を共有すること

が必要なのかもしれません。

ただし、それでも一つ疑問が残ります。
個人の中で共有された思考は、どのように組織へ残されるのでしょうか。

次回は、

「良い思考はどのように組織知になるのか?」

について考えてみたいと思います。

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