前書き
私のこれまでの経験と思っていることについて記載しております。
本記事は、品質保証やQAについて考える中で生まれた疑問を整理している連載の一つです。
この連載について
品質保証プロセスの改善やQAの役割について考える中で、いくつかの疑問を持つようになりました。
記事一覧
- QAは品質を保証しているのか?
- レビューは品質を保証しているのか?
- AI時代にQAが保証するものは何か?
- レビューの価値は学習ではないか?
- プロセスは思考を設計しているのか? ← 今回
前回の記事では、
「レビューの価値は不具合検出だけではなく、学習にあるのではないか」
ということについて考えました。
レビューを通じて共有されるのは、成果物の修正方法だけではありません。
考え方や観点、判断の背景も共有されています。
今回はその続きとして、
「私たちはレビューを通じて何を学んでいるのだろうか」
という視点から考えてみたいと思います。
はじめに
品質保証プロセスや開発プロセスを整備するとき、私たちは多くの場合、
- 何をするか
- いつ実施するか
- 誰が実施するか
- 何を成果物として残すか
を定義します。
例えば、
- 要求レビューを実施する
- 設計レビューを実施する
- テスト設計を実施する
といった内容です。
これはプロセスとして自然な形だと思います。
しかし最近、少し気になることがあります。
それは、
「品質を生み出しているのは、本当にその行動なのだろうか」
ということです。
品質はどこから生まれるのだろうか
品質の高い成果物を作る人とそうでない人には違いがあります。
もちろん経験や知識の差もあります。
しかし、それ以上に大きいのは、
「どのように考えているか」
ではないかと思うことがあります。
例えば要求分析であれば、
- 利用者は誰か
- どのような誤解が起きるか
- 異常系は十分に考慮されているか
を考えている人がいます。
設計であれば、
- 将来変更に耐えられるか
- 保守しやすいか
- 責務分離は適切か
を考えている人がいます。
同じ成果物を作っているように見えても、その背景には異なる思考があります。
そして品質は、その思考の結果として現れているのかもしれません。
プロセスは行動を定義している
一般的なプロセスは行動を定義します。
レビュー手順書には、
- レビューを実施する
- 指摘事項を記録する
- 修正結果を確認する
といった内容が書かれています。
しかし、
- なぜその観点で見るのか
- どのようなリスクを想定するのか
- 何を考えるべきなのか
までは書かれていないことが多いように感じます。
もちろん、開発標準や設計ガイドラインなどに記載されていることはあります。
しかし日々の実務の中で参照される手順書レベルになると、行動中心になりやすいように思います。
その結果、
プロセスは守られている。
しかし品質向上にはつながらない。
そんな状況も起こり得るのではないでしょうか。
一方で、良い手順は単なる作業手順ではないようにも感じています。
例えばレビュー手順の中に、
- 利用者視点で考える
- 異常系を確認する
- 将来変更を考慮する
といった観点が含まれている場合があります。
これは単なる行動ではなく、考えるための補助線とも言えます。
そう考えると、プロセスは思考を直接管理しているわけではなく、品質につながる思考を支援しているのかもしれません。
レビューで見ているのは成果物だけなのか
ここで、前回の記事で考えたレビューの話に戻ります。
私はレビューを行う際、成果物だけを見ていたわけではありませんでした。
指摘をするときには、
「なぜそう考えたのか」
を説明するようにしていました。
また、作成者に対しても、
「なぜそのように考えたのか」
を聞くことがありました。
今振り返ると、レビューしていたのは成果物だけではなく、
その成果物を生み出した思考だったように思います。
経験のあるレビュアであれば、成果物を見ながら、
「こういう考え方をしたのだろうな」
と想像することもあります。
レビューは成果物を確認する活動です。
しかし実際には、成果物を通して思考を見ているのかもしれません。
本当に確認したいことは何だろうか
もし品質が思考から生まれるのであれば、レビューで本当に確認したいことも変わってきます。
確認したいのは、成果物そのものだけではなく、
「この成果物は十分な思考を経て作られたか」
なのかもしれません。
例えば、
- リスクを考慮したか
- 利用者視点で考えたか
- 将来の変更を想定したか
- 他の選択肢を検討したか
そうした思考の痕跡が成果物に現れているか。
それを確認することがレビューの価値の一つなのではないでしょうか。
レビューとは、不具合を見つける活動であると同時に、
十分な思考が行われたことを確認する活動でもあるのかもしれません。
プロセスが扱うべきもの
ここで最初の問いに戻ります。
プロセスは思考を設計しているのでしょうか。
私自身、まだ答えは持っていません。
ただ最近は、
「思考を設計する」
というよりも、「品質につながる観点や問いを提供する」
ことが重要なのではないかと感じています。
良い手順は、単にやることを並べたものではありません。
どの順番で考えるか。
何を見落としやすいか。
どの観点を持つべきか。
そうした思考の補助線を含んでいます。
品質の高い成果物を作る人は、品質の高い思考をしています。
そして良いプロセスは、その思考を強制するのではなく支援しているのかもしれません。
おわりに
今回の記事では、
「プロセスは思考を設計しているのか?」
という問いについて考えてみました。
品質保証プロセスは成果物や行動を定義します。
しかし品質そのものは、成果物を生み出す思考から生まれているようにも感じます。
もしそうであれば、私たちは成果物だけを見ているのではなく、
その背後にある思考の痕跡も見ていることになります。
レビューとは成果物の確認なのでしょうか。
それとも、成果物を通じた思考の確認なのでしょうか。
また、良いプロセスとは行動を定義するものなのでしょうか。
それとも、品質につながる問いや観点を提供するものなのでしょうか。
まだ答えはありません。
ただ最近は、そんなことを考えています。
皆さんの現場では、品質を生み出しているのはプロセスでしょうか。
それとも、その背後にある考え方でしょうか。
ぜひ皆さんの考えも聞いてみたいと思います。