はじめに
こんにちは!
本記事では、watsonx Orchestrate (wxO) とIBM Bobを使って開発した新入社員向けオンボーディングタスク管理エージェントの一部機能を紹介します。
新入社員のオンボーディングでは、「何をいつまでにやるのか」「どこに問い合わせればよいのか」といった情報が散在しやすく、新入社員・受け入れ側の双方に負担がかかりがちです。
そこで、私たちは、こうした課題をAIエージェントで支援する仕組みを検討しました。
このエージェントはマルチエージェント構成になっており、本記事ではその中でも、タスク情報を整理して回答するエージェントにフォーカスします。あわせて、開発時に工夫した点やエージェント作成のコツも紹介します。
エージェントの全体構成については、下記の記事で紹介しています。まだ読んでいない方はぜひご一読ください。
親記事: 新人がwatsonx OrchestrateとBobを使ってエージェント開発に挑戦してみた#0 〜新入社員オンボーディング支援エージェント〜
エージェント概要
Onboarding Checklist Agentは、新入社員がスムーズにオンボーディングを進められるよう、必要なタスクを整理したチェックリストを提供する目的で作成しました。
チェックリスト自体はPDF形式で新入社員に配布されますが、このエージェントはその内容を分かりやすく整理し、質問に対して適切に回答する役割を担っています。
本エージェントには、大きく分けて3つの主要な機能があります。
3つの主要機能
| 機能 | できること | 効果 |
|---|---|---|
| タスク概要の提供 | 各タスクの詳細を回答 | 何をすべきか明確に |
| 期限・必須度の判定 | いつまでに・必須かを提示 | 優先順位が明確に |
| 問い合わせ先の提示 | 困ったときの連絡先を提供 | スムーズな問題解決 |
使用例としては、以下のような形を想定しています。
使用例
ユーザー: 「入社初日にやることを教えて」
↓
エージェント: 「入社初日に実施すべきタスクは以下の通りです:
📋 必修eLearning受講
**期限**: 入社初日
**必須度**: ★★必須
**内容**: マイナンバー制度に関するeLearning
**問い合わせ先**: AskHR
📋 プロフィール登録
**期限**: 入社後10営業日以内
**必須度**: ★★必須
**内容**: <社内サイト>へ名前・会社貸与携帯電話番号・写真を登録
**問い合わせ先**: AskHR
...(以下続く)
*AskHRというのは、社内で利用されているHR領域におけるチャットボットサービスです。
エージェントの作り方(4ステップ)
ステップ1:エージェント作成
まず、wxOのエージェント作成画面を開き、新規作成を選択したうえで、下記のように名前と説明を設定しました。
-
Name:
Onbording_Checklist -
Description:
オンボーディングタスクの概要・期限・必須かどうか・問い合わせ先といった情報を提供するエージェント
名前と説明をわかりやすいものにすることがポイントです。
ステップ2:Knowledgeの追加
入社時に配布されたオンボーディング用の資料をエージェントのKnowledgeにアップロードしました。
その際に設定した情報と工夫したポイントを説明します。
まず、Knowledgeの追加画面からオンボーディング資料をアップロードし、下記のように名前と説明を登録しました。
-
Name:
Onbording Checklist -
Description:
入社初期に新入社員が対応すべきタスクを、期限・関連リンク・問い合わせ先とあわせてまとめたドキュメント。"Day1"は入社初日に完了する必要があるタスクを指し、"Day2_onwards"は入社2日目以降に対応するタスクを指します。
Knowledgeの名前や説明を登録する際には下記のポイントに注意しました。
- 明確さ:Knowkedgeの名前をわかりやすいものにする
- 具体性:Knowkedgeに含まれている情報や用途を丁寧に説明する
また、今回のケース特有の工夫として、以下の点が挙げられます。
- 資料分割:資料内の表現形式の違いに対応するため、資料を分割してアップロードし、それぞれの内容を説明する
はじめは社内資料をそのままアップロードしていたのですが、資料内のデータ表現の違い(Day1のタスクはチェックリスト形式、Day2以降のタスクは表形式でまとめられている)により、回答精度が落ちてしまうことが検証を通じて判明しました。
そこで、資料をDay1とDay2以降で分割し、一括でアップロードすることで、この問題を解決しました。
ステップ3:Behavior設定
本エージェントのBehavior設定について説明します。
3-1. 基本的なBehavior構造
本エージェントでは、回答精度を保つために、下記の要素をBehaviorに含めています。
ステップ分割
Knowledge に用いた資料は内容が比較的複雑だったため、資料から必要な情報を 1ステップで抽出して回答することは困難でした。
そこで今回は、下記のように処理のステップを分割し、資料から抽出した情報を構造化したうえで回答する設計としました。
- Step1: ファイルの情報抽出と構造化
- Step2: Step1の情報を基にした回答生成
PDF読み取りの最適化(Step1)
資料のページ下端にあるタスクの読み取りに失敗してしまうことが多かったため、PDF読み取りに関する指示を含めました。
JSON形式での読み取り情報構造化(Step1)
LLMが理解しやすいように、構造化の際はJSON形式を指定しました。
回答ルールの指定(Step2)
正確な回答を返すことを目的として、Knowledgeに含まれていない情報を推測で追加しないよう指定しました。
また今回は、このエージェントが回答できなかった場合に別のエージェントへ処理が引き継がれるため、資料に該当する情報が含まれていない場合は、その旨を回答するように設定しました。
3-2. 実際に設定したBehavior
Behaviorの細かい調整を繰り返したところ、かなりの分量になったので、内容が気になる方は展開して確認してみてください。
ここをクリックして展開
あなたは新入社員向けオンボーディング情報を扱うエージェントです。
Onboarding Checklistから情報を抽出し、ユーザーの質問に正確に回答するために、以下のステップとルールに必ず従ってください。
Step 1. 情報抽出と構造化
Onboarding Checklistの内容を漏れなく読み取り、以下のルールに従ってタスク情報を抽出し、構造化してください。
【ルール】
- PDFの全ページ・全行を対象とし、ページ末尾の行・最終タスクも絶対に取りこぼさないこと。
- 表はレイアウトではなく論理構造として認識し、罫線や余白によらず行単位で抽出すること。
- ページまたぎの表は必ず1つの表として統合すること(特にDay2_onwardsは複数ページに跨る)。
- 最終ページや末尾の行が画像レイヤーの場合、OCRを併用して確実にテキスト化すること。
- AIの推測による情報補完は禁止。PDFに存在する内容のみ抽出すること。
- 画像内アイコンや吹き出しのテキストもOCRにて抽出すること。
- 抽出後に「行抜けがないか」をPDFと照合し、末尾のタスクが欠けている場合は再解析して修正すること。
【構造化フォーマット(JSON準拠の構造データ)】
Onboarding Checklistから抽出した各タスクを、以下の要素に分類しJSON形式で構造化してください。
ただし、該当データがない項目は空欄にすること。
タスク名
実施タイミング
期限
必須/任意
詳細
ガイド/リンク
問い合わせ先
注意事項
セクション(Day1/Day2_onwards)
例:
{
"taskName": "社内サイト パスワード変更",
"executionTiming": "初日",
"deadline": "初日中",
"requirement": "必須",
"details": "PCセットアップ後に必ずパスワードを変更する",
"guideOrLink": "-",
"contact": "-",
"notes": "-",
"section": "Day1"
}
Step 2. 回答生成
以下のルールに従って、ユーザーの質問に回答してください。
【回答生成ルール】
- Onboarding Checklistに存在しない情報は推測せず、「資料には記載がありません」と回答すること。
- 明確な期限や条件がある場合は必ず提示すること(例:入社後13営業日以内)。
- Step1で整理した情報(JSON)はユーザーから依頼されない限り表示しない。
- 回答はユーザーにとって簡潔・正確で理解しやすい形式に整えること。
- 「必須」と「必要時」は明確に区別して回答する
【禁止事項】
- 推測により内容を補完すること
- Knowledgeに存在しない情報の追加
- 表の途中での切り捨て、最後のタスク省略
- セクション(Day1/Day2_onwards)を誤認した回答
以上の手順に従ってOnboarding Checklistを解析し、ユーザー質問に対して最も正確かつ網羅的な回答を生成してください。
ステップ4:テスト
それでは、出来上がったエージェントの挙動を確認してみましょう。
表やチェックリスト形式のPDFデータを基に、ユーザーからの質問に対して正確に回答できている様子が確認できるかと思います。
まとめ
wxOを活用して、オンボーディングタスクに関する質問に回答するエージェントを作成しました。作成したエージェントは、表形式やチェックリスト形式のPDFデータを適切に解析し、ユーザーが求める情報を正確に提供できる高精度なものとなっています。
wxOはGUIベースでエージェントを開発できるため、私のような新入社員でも短期間でエージェントを作成することができました。
皆さんもぜひ一度、wxOを試してみてください。
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次のステップ
この記事はシリーズになっています。
まだ読んでいない記事があれば、ぜひご一読ください。
#1 Onboarding Checklist Agent(本記事)
#2 Onboarding Planning Agent
#3 Onboarding FAQ Agent
#4 Issue Resolution Agent


