はじめに
こんにちは.だいみょーじんです.
この記事は,自作OSアドベントカレンダー2025の24日目の記事として公開したものです.
今回は,2025年12月の11日と12日の2日間,2025 TRON Symposiumに行ってきたので,印象に残った展示や公演の内容を書き残そうと思います.
講演
組み込みシステム特化型AIアシスタント
最近はバイブコーディングなどのAIを活用した新しいプログラミング手法が出てきました.
そこで,μT-Kernelプロジェクト全体を学習したAIエージェントにより,組み込み開発においてもAIを活用した開発ができるようになります.
TRONの知識を持ったAIに仕様書や指示を投げ,検索から始まり,調査,コーディング,ブラッシュアップ,最終的なコードや仕様書の出力まで,10分程度の思考時間でできるそうです.
現段階のAIは,C言語のスキルは十分で,RTOSに関する情報収集や応用スキルはあるが,架空のAPIを呼び出そうとしたり,周期的なタスクの中で待ちに入ってしまうようなコードを出してしまうというような落とし穴もあるらしいです.
しかし,AIはちゃんとした入力を与えれば,ちゃんとした出力が出てくるとのことなので,使い方次第といったところでしょうか.
また,東洋大学情報連携学部におけるAIと教育に関する話もありました.
AIは学生に対して学習格差を拡大させる力として働きます.
単純なC言語の演習だとAIでできてしまうので,いきなり応用に取り組むようなカリキュラムを組むそうです.
ファーストペンギン精神の継承
これは今回のTRON Symposiumの最後の講演で,ざっくりこんな話でした.
ファーストペンギンはなぜ最初に海に飛び込んだのか?
それは変なペンギン「変ギン」だったからだ.
AIはあらゆる情報を満遍なく学習していて,正解を出すことができるが,欠落が欠けている.
人間は時間空間上で経験の偏りを持ち,欠落を持ち,特異解を出せる.
AI時代に正解を出す能力の価値は下がり,変な答えを出す能力の価値が上がる.
ファーストペンギンを育てたいという思いが東洋大学情報連携学部の始まりだった.
この話を聞いて,とりあえず近い将来における人間とAIの関係性をなんとなくイメージできました.
ファーストペンギンと言うと聞こえはいいが,実際には生贄ペンギンかもしれないなんて言う話もありましたが,AIが進化していく中で自分自身が人間としてどうありたいかを考えるきっかけになりました.
セミナー
TrustZone対応μT-Kernelでセキュアプログラミング
TRONのRTOSである「μT-Kernel 3.0」のセキュリティ対策についてのお話でした.
セキュアと非セキュア,特権と非特権という2ビット4種類の動作モードが存在し,各モードそれぞれにスタックポインタがあります.
例えばセキュア実行中に非セキュア割り込みが起きた時に,セキュア側のレジスタの内容が非セキュア側に漏洩しないようにスタックに待避してゼロクリアするなどのセキュリティ機能について学びました.
無駄にセキュアなLチカなどの面白い応用例がありました.
展示
超漢字
パーソナルメディア株式会社の超漢字は,多くの漢字を扱える特徴を持つOSです.
「渡辺」の「辺」の字の数百種類の字体が展示されていました.
しかも,ただ複数の字体が並んでいるだけでなく,その字を構成する各部品ごとにいくつかのパターンの集合があり,それらの直積集合のうち実際に使用例のある文字が登録されています.
そのため,文字を構成する部品単位でパターンが管理されており,そのデータを使った字体検索などができるようになっていました.
MiteMiru盛土
株式会社パスコのMiteMiru盛土は,衛星写真で土地を監視し,建物やソーラーパネルの建設などの土地利用状況の変化を見たり,土砂崩れにつながるような危険な盛土を検出するサービスです.
定期的に同じ場所を衛生で撮影し,その写真からAIおよび目視で土地改変を検出するそうです.
まず,こんなサービスがあるということを初めて知りました.
災害の多い日本では特に需要がありそうです.
衛生技術が強いパスコならではのサービスだと思いました.
歩行空間のバリア情報整備
株式会社パスコは,国土交通省の「歩行空間ナビ・プロジェクト」に参画しています.
地図情報,写真,点群データを活用し,勾配,段差,幅員などの歩行空間データを提供しています.
AIを使って写真から歩行者用信号機,階段,エレベータを自動抽出する検証が特に面白かったですね.
特に身体障害者やベビーカーを押している人にとっては,市街地でも通行困難な場所も多いので,ユーザにあわせた最適な経路案内などに応用できそうです.
まとめ
今回始めてTRONのイベントに参加し,少しOSから逸れる話題も多かったですが,せっかくなのでアドベントカレンダーの記事として書き残すことにしました.
TRON Symposiumは,去年「AI✕TRON」というテーマで開催されたそうで,今年は「TRON✕AI2」というテーマで開催されました.(同じやないかい)
普通に生活していてもAIの進化が感じられますが,このイベントではTRONの組み込み開発をAIにやらせる話があったり,講演中に音声をリアルタイムに文字起こし,翻訳,変換してスライドの脇に表示するツールを使っていたり,AIの進化を目にしました.
特に講演で使われていた自動文字起こしは,出力済みの日本語に対して,文脈に応じ後から変換を修正したり,より読みやすい文章に発言を改変したりという調整をリアルタイムで実行していて,すごいなあと思いました.
私自身来年からTRON関係の仕事をするので,現在のTRONプロジェクトの内部とその周辺で何が起きているか,なんとなく掴めました.
そして,そもそもオープンでやる意味ってなんなのか?AIが進化していく中で自分は何がしたいのか?いろいろと考えるきっかけになりました.
また,これからTRONがIoT領域でやりたいこととして,「セキュリティ本能」を実装し,エッジノードが中央の頭脳に接続できない時,反射で対処するという構想があるそうで,なかなか面白そうな未来像を描けそうです.
来年も今年と同じテーマで開催するそうなので,ぜひ来年も見に行きたいと思います!