止められるようになった。でも「止めた案件」が山になった
今回は、運用で不具合の負債がたまってしまった話。
0. 状況:パイロットは成功した。次に来たのは「止めた案件の山」
現場
「止められるようになったんです。……でも、止めすぎて進まなくなりました」
上層
「止めるのはいい。でも、いつまで止めるの?数字が落ちるよ」
テラ
「止められるようになったのは前進です。今は“調整の段階”ですね。
ただ、止めたあとのルールが無いので、“止めた案件”が積み上がっています」
上層
「で、どう直すの?」
テラ
「気合いの話じゃなく、止めた案件に“出口”を作ります。
『期限/担当/再開条件』の3点を必ず付けます」
1. よくある悪い例:止めた理由はあるのに、次が無い
現場
「この件、ちょっと怖いので止めました」
上層
「で、いつ再開できるの?」
現場
「……分からないです。だれが決めるかも……」
テラ
「いまの止め方は“判断としては正しい”です。
でも、止めたまま置くと腐ります。」
テラ
「止めた案件は、24時間以内に次の形にします。
『再開する/止める/別のやり方で進める』のどれかです」
現場
「24時間って短くないですか?」
テラ
「24時間で“解決”しろ、じゃありません。
24時間で“次の形にする”だけです」
2. テラが入れるルール:止めた案件の「3点セット」
テラ
「止めた案件には、これを必ず書きます。無いなら“止め”にしない」
3点セット(必須)
- 期限:いつまでに「再開/停止/別ルート」のどれかにするか
- 担当:必ず1人(やることは“解決”ではなく、次へ動かすこと)
- 再開条件:何がそろったら再開できるか(ログ、影響範囲、回避策、決める人)
上層
「止めた人が責任取るの?」
テラ
「責任を押し付ける話じゃないです。交通整理です。
担当は“進めるための情報をそろえる人”。責めません」
現場
「なるほど……“止めたあとに戻せる”のが目的なんですね」
テラ
「そうです。止めるのは目的じゃありません」
3. 会話ログ:テンプレで「再開/停止/別ルート」に落とす
ケースA:情報が足りない → 再開(条件がそろったら進める)
現場
「ログがなくて原因が見えないので止めます」
テラ
「“再開条件”を書きましょう。
**『これがそろったら再開』**でいいです」
再開条件(例)
- 影響ユーザーIDを10件集める
- エラーの内訳が取れる
- 再現手順を1本作る
テラ
「担当は◯◯さん。期限は明日10時。
明日10時にそろっていたら再開。そろわなければ、停止か別ルートにします」
(翌日)
現場
「ログ取れました。特定条件だけでした。回避策もあります」
テラ
「じゃあ再開です。範囲を絞って進めましょう」
ケースB:影響が大きい・回避できない → 停止(止める)
現場
「決済で二重課金の兆候。再現は不安定だけど怖いです」
上層
「でも止めると数字が……」
テラ
「止めないほうが損失が大きいです。ここは止めます」
停止にする条件(例)
- 金銭/個人情報/全ユーザーに触れる
- 回避策がない
- 監視で見つけにくい/復旧に時間がかかる
テラ
「ロールバック案と、告知文と、復旧手順までセットで出します。
止めたあとに戻れる状態にします」
ケースC:全停止は痛い → 別ルートで進める(止めずに守る)
現場
「新UIが不安。止めたい気もするけど、全停止は痛いです」
テラ
「二択にしないで、別ルートにしましょう」
別ルート(例)
- 新UIを10%だけ出す(段階的に出す)
- 監視を足す
- 異常が出たら即オフできる手順を用意
上層
「それなら影響も抑えられる」
テラ
「“止めるか進むか”だけにしないのがコツです」
4. 最後の歯止め:止めた案件が増えすぎないようにする(上限)
現場
「でも止めた案件がまだ多いです。みんな怖がって止めちゃう」
テラ
「ここで上限を決めます。
止めた案件が一定数を超えたら、新しいことを始めない」
現場
「止める対象が増えたら……?」
テラ
「だから“止めた案件の総量”を先に制御します。
増えたら進みが遅くなるのが見えるようになります」
最後に:Before / After
Before(止めた案件が腐っていた)
- 止めた案件:38件(期限なし/担当あいまい/再開条件なし)
- 平均放置:7.2日
- 「止めた理由」だけが残り、次に進めない
- 割り込み:週6件
- 体感:進捗が止まり、「止める=正しい」が強化された
After(止めた案件が“次へ動く状態”になった)
- 止めた案件:38件 → 11件(24時間以内に動く)
- 平均放置:7.2日 → 0.8日
- 2週間の内訳
- 再開:17件(情報がそろって進めた)
- 停止:6件(損失が大きいものを先に止めた)
- 別ルート:4件(段階的に進めた)
- 割り込み:週6件 → 3件
- 体感:止めることが目的ではなく、止めても戻れる運用が定着した
テラの締め
「止めるのが目的じゃない。止めても戻れるのが目的です」
