AIがコードを書く時代へ
はじめに
ここ数年、個人開発のやり方は大きく変わりました。
特に Codex や ChatGPT などの生成AIを中心にした開発 は、個人でも「小規模なチームのような速度」で開発できる環境を作り出しています。
僕は現在、
- ChoreRights(ダンス振付IP管理プラットフォーム)
- IP Connect(音声・映像クリエイティブIPの取引基盤)
という2つのプロダクトを開発しています。
どちらも “権利 × クリエイターエコノミー × AI × Web3” を軸にしたプロダクトで、
市場規模も技術領域も大きい分、個人で開発するには本来かなりの負担がかかるはずです。
しかし、僕の開発体制はとてもシンプルです。
AIがコードを書き、僕がレビューする
コードを書くのは ほぼすべて AI(Codex)。
設計・要件定義・アーキテクチャ比較などの思考部分の大半も ChatGPT に任せています。
僕は PM(プロダクトマネージャー)として、
- 方向性の決定
- AI出力のレビュー
- プロダクトの意思決定
に集中する開発スタイルです。
このシリーズの第1回では、以下を紹介します。
- なぜ AI 主導の開発スタイルにしたのか
- ChoreRights / IP Connect の開発背景
- Codex × ChatGPT を中核にしたワークフローの全容
- どこまで AI に任せているのか
プロダクト紹介:ChoreRights と IP Connect
このシリーズで扱う2つのプロダクトの概要を簡単に紹介します。
ChoreRights
ダンサーや振付師が 振付を知的財産として登録・管理・契約できる プラットフォームです。
これまで曖昧だった「振付の権利」を明確化し、
商用利用(CM、MV、イベント)やAI学習データとしての利用契約を管理できる仕組みを作っています。
IP Connect
ChoreRightsの仕組みを拡張し、
音声・動画・ボイス・振付など、クリエイティブIP全般を管理・契約できる Web3×AI プラットフォーム です。
音声の権利管理市場は急速に拡大しており、
AI音声時代だからこそ「正規のデータ利用契約」を簡単に結べる環境が必要です。
なぜピボットしたのか?
最初は「ダンスIPの権利管理」に絞っていましたが、
AIの急成長により 音声・映像IPの権利市場の方が圧倒的に大きい ことが分かりました。
ChatGPT に市場分析と競合調査を依頼し、
- TAM
- SAM
- 各国の権利管理構造
- 類似企業のビジネスモデル
を比較した結果、
ChoreRights → IP Connect へ事業範囲を拡張した方が成長性が高い
という結論に至りました。
このピボット判断プロセスにも AI を深く活用しており、
その詳細は第2回以降で解説します。
Codex × ChatGPT が中心にある開発スタイル
AI主導の開発スタイルは、従来の開発手法とは本質的に異なります。
典型的な従来型の個人開発:
「仕様を考える → 設計する → コードを書く → デバッグする → テストする → PR → デプロイ」
このフローのうち、8割以上をAIが担当できる 時代になりました。
僕のワークフローは次の通りです。
Step 1:要件定義(ChatGPT)
• 課題の明確化
• ユーザーストーリー作成
• BDD(振る舞い駆動開発)
• 競合調査
• MVP定義
すべて ChatGPT が生成します。
Step 2:アーキテクチャ設計(ChatGPT)
• Supabase を軸にしたDB構造
• Prisma のモデル設計
• RLS(Row Level Security)
• API構造(Next.js Route Handler)
これらもAIが提案し、比較表を出し、最終決定を行います。
Step 3:コード生成(Codex)
ここからが最も明確な特徴です。
Codex がコードを100%書きます。
僕はただレビューし、必要に応じて軽微な修正を加えるだけです。
生成対象は:
• Next.js フロントエンド
• Route Handler / API
• Supabase CRUD
• Prisma schema
• Edge Functions
• NextAuth
• UIコンポーネント(shadcn + v0.dev)
です。
Step 4:PR作成(Codex)
AIが branch 作成 → 実装 → PR 作成まで行います。
僕は Approve するだけ。
Step 5:テスト生成(ChatGPT)
• Jest
• Playwright
• Supabase のテスト
これもほぼ自動生成。
Step 6:デプロイ(Vercel / GitHub Actions)
VercelまでのDeployは、現在手動でやっているが、将来的には以下のように進めたい。
• CI/CDの設定をAIが作成
• Docs SHA gating(仕様とコードのズレ防止)もAIが構築
AI主導開発のメリット(実感ベース)
実際にこの体制にすると何が変わるのか?
メリットは3つです。
1. とにかく速い(3〜5倍)
人間が書くより圧倒的に速い。
2. 仕様ズレがほぼ発生しない
RAGで仕様書を読み込み、常に最新状態でコード生成されるため。
3. 個人でも“チームのような開発速度”になる
PMとしての判断に集中できる。
まとめ
AI主導の開発は「未来の話」ではありません。
すでに実務で十分に成立し、
個人開発でもスタートアップでも強力に機能します。
ChoreRights / IP Connect を通して実践したこの開発スタイルは、
個人でも “高速かつ正確に” プロダクトを育てられる強力な方法です。
この記事は「導入回」です。
次回以降は、実際の開発工程をすべて公開していきます。