はじめに
物理サーバーから仮想化、そしてクラウドへとインフラの主役が完全に移り変わった今もなお、業務の根幹を担うシステムがオンプレミスであり続ける深い理由があります。
認証基盤(Active Directory / LDAP / RADIUS)、基幹業務系(ERP / 会計 / 生産管理)、電子カルテ、行政情報システム──これらは、セキュリティポリシー・法規制・既存システムとの密な依存関係から、クラウドへの移行が困難もしくは非推奨とされるケースが依然として多く存在します。
こうしたシステムに共通するのは、「止まることが許されない」「データを失うことが許されない」「遠隔地にバックアップを持たなければならない」 という三重の厳しい要件で、それらを満たそうとすると、従来のサーバー・ストレージ・ネットワークを個別に組み合わせる構成では、管理の複雑化やコストの肥大化を招きがちです。
こうした「オンプレミスのジレンマ」を打破し、インフラをソフトウェアの力でシンプルに再定義するのがNutanixのHCIプラットフォームです。この記事では、先ほどの要件にどう応えるかを機能レベルで解説するとともに、これからインフラエンジニアを目指す方にとってNutanixを学ぶことの意味と価値についても掘り下げていきます。
目次
- Nutanixとは?
- ミッションクリティカルシステムに求められる要件
- 隔地バックアップ要件とNutanixの対応機能
- 基幹・認証システム運用で活きるNutanixの主要機能
- 業種別・実使用事例
- 実際の構成例
- インフラエンジニア志望者がNutanixを学ぶ価値
- 学習ロードマップ
- まとめ
Nutanixとは?
Nutanixは、サーバ・ストレージ・ネットワーク仮想化を1つのソフトウェアスタックに統合したHCIプラットフォームです。従来の3-tier構成(サーバ+SANストレージ+ネットワーク機器の個別調達・管理)を大幅に簡素化します。
【従来の3-tier構成】
[物理サーバ群] ──FC/iSCSI── [SANストレージ]
│
[ネットワーク機器]
※それぞれ別ベンダー・別管理ツール・別保守契約
【Nutanix HCI構成】
[Nutanixノード] × N台(各ノードにCPU/メモリ/SSD/HDDを内蔵)
│
AOS(Acropolis OS)がソフトウェア定義で全リソースを統合管理
Prism(GUI/API)で一元運用
主要コンポーネント
| コンポーネント | 役割 |
|---|---|
| AOS(Acropolis OS) | 分散ストレージ・クラスタ管理の中核OS |
| AHV(Acropolis Hypervisor) | Nutanix純正ハイパーバイザー(KVMベース) |
| Prism Element | クラスタ管理GUI |
| Prism Central | 複数クラスタを一元管理するコントローラ |
| Flow Network Security(FNS) | マイクロセグメンテーション機能(旧称:Flow) |
| CVM(Controller VM) | 各ノード上に常駐し、分散ストレージのI/Oを制御する管理VM |
データローカリティ:基幹システムに特に効く特性
Nutanixの重要な特性として 「データローカリティ(Data Locality)」 があります。VMが動作するノードのローカルSSDに、そのVMのデータを優先的に配置することで、ストレージアクセスのレイテンシを極小化します。
【3-tier構成でのI/Oパス】 【NutanixのData Locality】
VM VM
│ │
▼ ネットワーク(複数ホップ) ▼ ローカルアクセス
NIC ──→ TORスイッチ ──→ SANスイッチ CVM
│ │
▼ ▼
ストレージ 同一ノードのNVMe/SSD
コントローラ
│
▼
ディスク
レイテンシ:数ms〜数十ms レイテンシ:数百μs〜数ms
(ホップ数に比例して積み重なる) (ほぼディスク性能そのまま)
大量データのバッチ処理・月次決算処理・ERPの同時アクセスなど、I/O性能が直接業務スループットに影響する基幹システムで特に効果を発揮します。
ミッションクリティカルシステムに求められる要件
認証基盤・基幹業務系・電子カルテ・行政システムなどに共通する厳しい運用要件を整理します。
可用性要件
認証基盤が停止すればログイン不能・業務全停止、基幹ERPが落ちれば受発注・生産・決算が止まるという深刻な業務影響があります。
- RTO(目標復旧時間): 数分〜数十分以内
- RPO(目標復旧時点): 直前または数分以内
- ノード障害・サイト障害に対する多重冗長性
パフォーマンス要件
基幹システムはスループットと低レイテンシが直接業務品質に影響します。
- バッチ処理・月次決算など大量データ処理に耐えうる安定したI/O性能
- ERP・DBの同時アクセスに対する低レイテンシストレージ応答
- 業務ピーク時でも性能劣化しないスケーラビリティ
セキュリティ・コンプライアンス要件
- 個人情報保護法・ISMSへの準拠
- データの国内保管義務(クラウド利用を制限するケース)
- ネットワーク隔離・ラテラルムーブメント(横移動)の防止
- 監査ログの長期保管
隔地バックアップ要件
BCP(事業継続計画)の観点から、地震・洪水などの広域災害に備えて、物理的に離れた拠点へのデータ複製・バックアップが必要です。
| 分野 | 関連法令・規制 | 隔地要件の概要 |
|---|---|---|
| 金融 | 金融庁 システム管理基準 | 勘定系・基幹システムは別拠点バックアップが実質必須 |
| 医療 | 医療情報システムの安全管理ガイドライン | 電子カルテ等は遠隔地保管を推奨 |
| 官公庁 | 政府情報システムのセキュリティ評価制度(ISMAP) | 国内保管・冗長化が要件化される場合あり |
| 製造業 | ISMS (ISO 27001) / 事業継続マネジメント | BCP計画の一環として要求されることが多い |
隔地バックアップ要件とNutanixの対応機能
Nutanixはこの要件に対応する複数の機能を標準またはオプションで提供しています。
1. Nutanix Disaster Recovery(旧称:Leap)
Nutanix DR は、クラスタ間でのDR(災害対策)レプリケーションと自動フェイルオーバーを実現する機能です。※現在はPrism Centralに統合されており、従来は「Leap」と呼ばれていました
[本番サイト] [DRサイト(隔地)]
Nutanixクラスタ A ──非同期レプリケーション──→ Nutanixクラスタ B
基幹VM・認証VM群 スタンバイVM群
RPO: システム重要度に応じて柔軟設定 Recovery Planで自動起動
RPOの柔軟性がポイント: Nutanix DRは、システムの重要度に応じてRPOを段階的に設定できます。
| モード | RPO | 主な用途 | 前提条件 |
|---|---|---|---|
| 非同期レプリケーション | 1時間〜 | 重要度中程度のシステム | VPN接続 |
| NearSync | 1分〜15分 | 基幹系・認証基盤など | 安定した帯域 |
| Metro Availability(同期) | 0分(RPO=0) | 最高度ミッションクリティカル | 専用線+低レイテンシ |
【DR モード別 RPO とデータ損失イメージ】
障害発生
│
▼
────●──────────────────────────────────▶ 時間軸
↑ ↑ ↑ ↑
障害点 1時間前 15分前 0秒前
(Async) (NearSync) (Metro)
Async :最大1時間分のデータが失われる可能性あり
NearSync:最大1〜15分分のデータが失われる可能性あり
Metro :データ損失ゼロ
主な機能:
- Protection Policy: VMやボリュームグループに対してスナップショット・レプリケーションのスケジュールを設定
- Recovery Plan: フェイルオーバー時のVM起動順序・ネットワーク設定を事前定義し、ワンクリックで復旧させる
- Test Failover: 本番系に影響を与えずにDR訓練が可能(隔離ネットワーク上でテスト復旧を実施)
# Protection Policyの設定例
protection_policy:
name: "CoreSystem-DR-Policy"
schedules:
- recovery_point_objective: 15m # NearSync:RPO 15分
retention_local: 48 # ローカル保持: 48スナップショット
retention_remote: 336 # リモート保持: 14日分
remote_cluster: "DR-Site-Osaka"
2. Metro Availability(同期レプリケーション)
最高度のミッションクリティカルシステム向けに、RPO=0を実現する同期レプリケーション機能です。2サイト間でストレージを同期し、どちらのサイトが停止しても即座に継続稼働します。
[サイトA] ←── 同期書き込み ──→ [サイトB] ※サイト間のネットワークレイテンシは5ms以下を推奨
↘ ↙
[Witnessサーバ(第三拠点)]
※スプリットブレイン発生時の判定役
3. Nutanix Files + Objects(データバックアップ)
基幹システムのDBダンプや監査ログをオブジェクトストレージに保管する構成も可能です。
- Nutanix Objects: S3互換オブジェクトストレージをオンプレミスに構築。WORM(Write Once Read Many)設定で改ざん防止にも対応
- Nutanix Files: SMB/NFSファイルサーバ機能
4. AOS スナップショット機能
Nutanixの分散ストレージ(DSF: Distributed Storage Fabric)は、クラッシュ整合性スナップショットをVM停止なしに取得できます。
- スナップショットはリダイレクトオンライト方式(RoW: Redirect-on-Write) で実装
- 一般的なコピーオンライト(CoW)と異なり、「元データを読んでからコピー」という処理が不要なためI/Oオーバーヘッドが小さい
- 任意の時点へのロールバックが可能
- クロスクラスタへの手動・自動送信にも対応
📌 RoWとCoWの違い(補足):
CoW(Copy-on-Write)は書き込み時に元データを別領域にコピーしてから新データを書く方式。RoWは元ブロックはそのままにして新しいブロックへ書き込み、ポインタだけ切り替える方式です。Nutanixは後者のRoWを採用することで、スナップショット取得中のI/Oパフォーマンス低下を最小限に抑えています。基幹DBのように常時高負荷なシステムでの定期スナップショット取得に特に有効です。
基幹・認証システム運用で活きるNutanixの主要機能
冗長性:分散アーキテクチャとHA(High Availability)
Nutanixのデータは RF(Replication Factor) によって複数ノードに分散保存されます。
RF2(標準): 1ノード障害まで耐えられる(最低3ノードで構成)
RF3: 2ノード同時障害まで耐えられる(最低5ノードで構成)
[Node1] [Node2] [Node3] [Node4] [Node5]
↑ ↑ ↑ ↑ ↑
各ノードのCVMがデータを分散して保持(RF3の場合、3コピー)
💡 小規模環境向けの選択肢: コスト優先の小規模環境では 2ノード構成(Witness付き) も選択肢に入ります。ただし物理ノード障害時にはVMが別ノードで再起動(HA機能による自動復旧) されるため、そのダウンタイムを許容できるかを設計段階で確認することが重要です。
ノード障害時の挙動:HAとライブマイグレーションの違い
物理ノードが故障した場合、メモリ上のデータは消失するため、VMは他ノードで再起動(HA: High Availability) されます。※VMwareのHAと同様の動作
稼働中のVMをダウンタイムなしに移動する「ライブマイグレーション(vMotion相当)」とは根本的に異なります。
【ライブマイグレーション(計画的メンテナンス時)】
ノードのメンテナンス時 → VMをメモリごと別ノードに無停止で移動
※Nutanix AHVでも対応済み
【HA(突発的な物理障害時)】
ノードが突然故障 → メモリ内容は失われ、別ノードでVMが再起動
※ストレージデータはRFにより保護される
※SLA設計ではこの再起動時間(通常数分)をRTOに含めること
パフォーマンス:データローカリティとストレージの階層化
前述のデータローカリティに加え、Nutanixは インテリジェントなデータ階層化(Tiering) も自動で行います。
【ホットデータ(頻繁アクセス)】 → ローカルSSD(NVMe/SSD)に常駐
【ウォームデータ(中程度アクセス)】 → クラスタ内SSDに分散
【コールドデータ(低頻度アクセス)】 → HDD or Nutanix Objects(オブジェクトストア)に自動移動
これにより、基幹DBのインデックスや頻繁に参照されるマスタデータは常にSSD上に保持され、バッチ処理や月次決算処理の速度向上に直結します。
特に Oracle・SQL Server・PostgreSQL などのRDBMSはディスクI/Oのレイテンシ値が極めて重要であり、ランダムリードの遅延が数ms変わるだけでトランザクション処理能力に大きな差が出ます。ネットワーク越しにSANへアクセスする3-tier構成と、足元のSSDへ直接アクセスできるNutanixの差は基幹DBにおいて最も顕著に現れます。
セキュリティ:Flow Network Security(マイクロセグメンテーション)
基幹システム・認証基盤はサイバー攻撃の最優先標的です。ランサムウェアなどによる**ラテラルムーブメント(横移動)**──一つのVMに侵入後、同一ネットワーク内を横断して感染拡大する攻撃──を防ぐことが特に重要です。
Flow Network Security(FNS)は、ハイパーバイザーレベルのファイアウォールをソフトウェアで実現します。
【FNS なし(従来)】 【FNS あり(Nutanix)】
┌──────────────┐ ┌──[壁]──┐ ┌──[壁]──┐
│ 業務VM 感染VM │ │ 業務VM │ │ 感染VM │
│ ↓ ✅ │ └────────┘ └────────┘
│ 認証VM ERPVM │ ↓ ✅ ↓ ❌ブロック
│ ↓ ✅ │ ┌──[壁]──┐ ┌──[壁]──┐
│ その他VM ←感染 │ │ 認証VM │ │ ERP-VM │
└──────────────┘ └────────┘ └────────┘
※VLAN分離だけでは
同一セグメント内を自由に横移動 各VMを個別の壁で囲み
(ラテラルムーブメント) 許可したポート以外はすべて遮断
[感染VM(業務端末系)]
│
↓ FNS ポリシーで制御
│
✅ 許可: ポート389(LDAP)/636(LDAPS)/88(Kerberos)のみ → [認証VM(AD)]
✅ 許可: ポート1521(Oracle)のみ → [基幹DB-VM]
❌ 拒否: 上記以外のVM間通信はすべてブロック
❌ 拒否: 基幹VM同士の不正横断通信もブロック(East-West制御)
物理ファイアウォールに依存せず、VM単位・カテゴリ単位でポリシーを定義でき、ランサムウェアの感染爆発を初期段階で食い止める効果があります。
運用効率:Prismによる一元管理
Prism Central は複数のNutanixクラスタ(本番・DRサイト)を1つのUIで管理できます。
- リソース使用率・アラートを管理するダッシュボード
- REST APIによる自動化(Ansible / Terraform連携)
- Prism Pro:リソース予測・異常検知
# Prism Central API の使用例(Python)
# 基幹VMの一覧を取得して監視スクリプトと連携する例
import requests
api_url = "https://prism-central:9440/api/nutanix/v3/vms/list"
headers = {"Content-Type": "application/json"}
payload = {"kind": "vm", "filter": "vm_name==ERP-DB-Primary"}
response = requests.post(api_url, json=payload,
headers=headers,
auth=("admin", "password"),
verify=False)
print(response.json())
ライフサイクル管理:LCM(Life Cycle Manager)
AOS・AHV・ファームウェアのアップデートをローリング方式でノンストップ適用できます。基幹・認証システムのメンテナンスウィンドウ短縮に直結します。
ADのレプリケーション機能との「使い分け」
Active Directory自体がアプリケーションレベルのマルチマスター複製機能(ADレプリケーション)を持っています。NutanixのDR機能とは以下のように使い分けることが現場では一般的です。
【ADレプリケーション(アプリケーションレベル)】
用途: 同一または隣接セグメントでのDC冗長化
仕組: ADデータベース(NTDS.dit)の変更を自動同期
RPO: 数秒〜数分(レプリケーション間隔に依存)
限界: ストレージやVMレベルの障害・OSクラッシュには対応不可
【Nutanix DR(インフラレベル)】
用途: 広域災害・サイト全断への対応
仕組: VM・ストレージ丸ごとを別拠点にレプリケーション
RPO: NearSyncなら1分〜15分、非同期なら1時間〜
強み: OS・ストレージ含めた完全復旧が可能
🏗️ 設計のポイント: ADの高可用性はADレプリケーション(複数DC構成)で担保し、広域災害対策はNutanix DRで対応するという二層構造が最も堅牢な設計です。
業種別・実使用事例
🏦 金融機関:勘定系・認証基盤の隔地DR
課題: 金融庁のシステム管理基準に基づき、勘定系システムと連携する認証基盤(AD)は別拠点でのデータ保全が実質必須。従来の3-tier構成では本番・DR両拠点の維持コストと運用工数が課題だった。
Nutanix採用の効果:
- 本番(東京)・DR(大阪)をNutanix DR(NearSync)で接続し、RPO 5分・RTO 30分を達成
- Prism CentralによるDR拠点の一元管理で、担当者2名体制での全国拠点管理を実現
- Test Failover機能で年2回のDR訓練を、業務時間中に本番影響なく実施できるように
🏥 医療機関:電子カルテ連携の認証・基幹システム
課題: 電子カルテシステムと認証基盤(AD / RADIUS)が密に連携しているため、どちらが停止しても診療業務が停止。厚労省ガイドラインに基づく遠隔地バックアップも求められていた。
Nutanix採用の効果:
- RF3構成(5ノード)で院内クラスタの耐障害性を強化
- Nutanix DRにより、系列施設の別棟サーバ室へのレプリケーションを実現(専用線不要、VPN経由)
- Flow Network SecurityでRADIUS・ADサーバを業務端末VLANから隔離し、ランサムウェアのラテラルムーブメントを抑止
🏭 製造業:グローバル生産管理・基幹ERP
課題: 海外工場を含む生産管理システム(ERP)をオンプレミスで運用。旧来の3-tier構成ではストレージ性能がボトルネックとなり、月次決算・MRP(資材所要量計画)の夜間バッチ処理に時間がかかっていた。また、災害時の復旧手順が複雑で、BCPとしての実効性に疑問があった。
Nutanix採用の効果:
- データローカリティによりERP-DBのI/O性能が向上し、夜間バッチ処理時間を大幅に短縮
- Nutanix DR(NearSync)による大阪拠点の自動待機系を構築。従来2日かかっていた復旧手順をRecovery Planによるボタン操作で数時間以内に短縮
- 本社IT部門がPrism CentralでリモートからDR設定・監視を一元管理
- LCM(Life Cycle Manager)により、工場ERP稼働中のファームウェア更新をノンストップで実施
🏛️ 官公庁・自治体:LGWAN接続系認証・行政システム
課題: 総合行政ネットワーク(LGWAN)接続環境での認証基盤・住民情報系システムは、インターネット分離要件のためクラウドへの移行が困難。老朽化した3-tier構成の更改とBCP対応が急務だった。
Nutanix採用の効果:
- オンプレミスのまま最新インフラに更改、LGWAN分離要件に完全準拠
- 庁舎間(本庁↔出張所)でのNutanix DRレプリケーションによりBCP計画を策定・承認
- 専任IT担当者が少ない自治体でも、Prismのシンプルな管理UIで運用継続が可能に
実際の構成例
構成:本番サイト(東京)+ DRサイト(大阪)
【東京:本番サイト】
Nutanixクラスタ(4ノード RF2)
├─ VM: ERP-DB-Primary(Oracle / SQL Server)
├─ VM: AD-Primary-01(Windows Server 2022)
├─ VM: AD-Primary-02(冗長DC)
├─ VM: RADIUS-01
└─ Prism Element
↓ Nutanix DR(NearSync、RPO=5〜15分)
【大阪:DRサイト】
Nutanixクラスタ(3ノード RF2)
├─ VM: ERP-DB-Standby(スタンバイ)
├─ VM: AD-Standby-01
├─ VM: RADIUS-Standby
└─ Prism Element
【管理】
Prism Central(東京またはクラウド)
├─ 両サイトのクラスタを一元管理
├─ Recovery Plan による自動フェイルオーバー定義
└─ 月次DR訓練をTest Failoverで実施(本番無影響)
従来構成との比較:
| 比較項目 | 従来構成(3-tier × 2サイト) | Nutanix構成(2サイト) |
|---|---|---|
| 管理ツール数 | 5〜8種類(vCenter / SAN管理 / バックアップ等) | 1〜2種類(Prism Central + バックアップ) |
| DR設定工数 | 高(手動スクリプト・個別設定が多数) | 低(Recovery Planで自動化・GUI設定) |
| 物理設置スペース | 大(サーバ+SAN筐体+SW) | 小(ノード筐体のみ) |
| ノード1台あたりのスペック要件 | 比較的低め | CVMのリソース消費があり、やや高め |
| RPO設定の柔軟性 | 製品依存(設定変更が煩雑) | NearSync等で1分〜1時間を柔軟に設定可能 |
| インフラ管理の操作体系 | 製品ごとに分散・複数スキルが必要 | Prismに統一 |
インフラエンジニア志望者がNutanixを学ぶ価値
「失敗を許さない」設計思想が身につく
基幹・認証システムを支えるインフラは、安定性と回復性がどこまでも求められます。Nutanixを通じてこの設計思想を学ぶことは、単なる製品操作スキルにとどまらず、「どこが壊れたらどうなるか」を常に考えるエンジニアとしての技術選定眼と責任感を養うことに直結します。
現代インフラの「縮図」が一気に学べる
Nutanixは内部でKVM(仮想化)・分散ストレージ・SDN・RESTful APIを組み合わせています。1つのプラットフォームを深く理解することで、現代インフラ全体の知識が体系的に身につきます。
Nutanix学習で得られる知識ツリー
Nutanix
├── 仮想化(AHV = KVMベース)
│ └── ライブマイグレーションとHAの挙動の違い
├── 分散ストレージ(DSF)
│ └── RoW方式スナップショット / データローカリティ / Erasure Coding
├── ネットワーク(Flow Network Security / IPAM)
│ └── マイクロセグメンテーション / ラテラルムーブメント防止
├── 運用自動化(Calm / REST API)
│ └── Infrastructure as Code / Terraform / Ansible
└── DR / バックアップ(Nutanix DR / NearSync / Metro)
└── RPO/RTO設計 / BCPの考え方 / ADレプリケーションとの使い分け
市場価値が高い
Nutanix認定資格(NCP: Nutanix Certified Professional)は、国内のインフラエンジニア求人市場で評価が高まっています。※特に官公庁や金融・医療分野での需要が高い
また、BroadcomによるVMware買収後のライセンス体系変更を受け、多くの企業が「VMwareからの移行先」を真剣に検討しています。
そのため、Nutanix AHVへの移行スキルや移行後の運用設計ができるエンジニアは、今後数年にわたって極めて高い市場価値を持つこととなり、VMwareの知識を持ちながらNutanixを学ぶことは投資対効果の高いスキルアップの一つといえます。
無料の学習環境が充実
| リソース | 内容 |
|---|---|
| Nutanix University | 無料のオンライン学習プラットフォーム(英語・一部日本語) |
| Nutanix .NEXT Community | ユーザーコミュニティ・フォーラム |
| Community Edition(CE) | 個人PC上に構築できる無償評価版(仮想ネスト環境も可) |
| Test Drive | ブラウザからすぐ試せる無料デモ環境(登録不要) |
オンプレミスの知識がそのままクラウドへ接続する
Nutanix Cloud Clusters(NC2) を使えば、オンプレミスのNutanixで運用しているVMをAWS・Azure・GCP上に移行・延伸させることができます。オンプレミスで習得したNutanixの操作体系・設計思想が、クラウド上でもそのまま活きる点は他のオンプレミス技術にはないアドバンテージです。マルチクラウド・ハイブリッドクラウド設計の実践スキルへのキャリアパスとしても有望です。
学習ロードマップ
【STEP 1:前提知識の習得】(3~6ヵ月)
├─ 仮想化の基礎(KVM / VMware の仕組み)
├─ ストレージ基礎(RAID / LUN / NFS / iSCSI)
├─ ネットワーク基礎(VLAN / ルーティング / ファイアウォール)
└─ OS基礎(Windows Server:AD/DNS、Linux:基本コマンド)
【STEP 2:Nutanixのハンズオン】(2〜3ヶ月)
├─ Nutanix University:「Nutanix Foundation」コース受講(無料)
├─ Community Editionを自宅/クラウドに構築
├─ Prism操作・VM作成・スナップショット取得
└─ Nutanix DRのレプリケーション設定を試す
【STEP 3:資格取得】(6ヵ月~1年)
├─ NCA(Nutanix Certified Associate):入門資格
└─ NCP-MCI(Multi-Cloud Infrastructure):実務向け主要資格
【STEP 4:応用・設計スキル】
├─ REST API / Calm(Infrastructure as Code)
├─ Flow Network Security(ラテラルムーブメント防止ポリシー設計)
├─ DR設計:NearSync / Metro Availability の使い分けとBCP策定
├─ ADレプリケーション × Nutanix DR の二層構造設計
└─ NC2(Nutanix Cloud Clusters)でハイブリッドクラウドへ展開
etc・・・
まとめ
オンプレミスの基幹・認証システムにNutanixを採用する最大のメリットは、高可用性・隔地DR・性能・セキュリティ・運用効率を単一プラットフォームで実現できる点にあります。
特に以下のような組織・要件に適しています。
- 法規制・セキュリティポリシーによりオンプレミス維持が必要な金融・医療・官公庁
- BCP対応として隔地へのデータ複製・フェイルオーバーが必須な基幹ERPや認証基盤
- 限られたインフラ担当者数で複数拠点を管理する必要がある組織
- ランサムウェア対策としてラテラルムーブメント防止を強化したい環境
一方で、CVMのリソース消費を考慮したハードウェア選定、NearSync / Metro Availabilityの適切な使い分け、ADレプリケーションとNutanix DRの二層設計など、導入前に設計を丁寧に行うことが成功の鍵です。
インフラエンジニアを目指す方にとって、Nutanixは「仮想化・ストレージ・ネットワーク・自動化・DR設計」を横断的かつ実践的に学べる優れた題材です。ぜひCommunity Edition等で触れてみてください。
参考リンク
- Nutanix公式ドキュメント
- Nutanix University(無料学習)
- Nutanix Community Edition
- Nutanix Disaster Recovery(DRソリューション)概要
- Nutanix Flow Network Security
- Nutanix Cloud Clusters(NC2)
- Nutanix Test Drive(ちょっと触ってみたい方向け)
📝 本記事はNutanix AOS 6.x系の機能をベースに記載しています。ヴァージョンによって機能名・UI等が異なる場合があります。また、業種別事例は一般的な導入パターンを基にした参考例であり、特定企業・団体の情報ではありません。