以下は、2025年6月12日にArmin Ronacher氏が自身のブログ「Agentic Coding Recommendations」で紹介した内容の日本語要約である。
📌 概要と前提
- 主に Claude Code(Sonnetモデル)を月額100ドルのMaxサブスクリプションで使用し、エージェントにタスクを任せて成果を待つスタイル。インターフェースやIDEでの直接操作は最小限にすることで効率化を図っている。
- このアプローチは時代の流れに弱く、継続的な進化があることを念頭に置いている。
基本設定
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権限許可チェックを無効化 (
--dangerously-skip-permissions
) して、エージェントに自由に操作させる。 -
MCP(Multi‑Channel Protocol) は必要時のみ使用。たとえばブラウザ自動化では
playwright-mcp
を利用し、データベースには直接psql
を使う場面も。
言語選択の理由
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バックエンドには Go を推奨:
- コンテキスト管理が明確
- テストの高速実行・キャッシュ対応
- 簡潔さ・構造的インターフェース・エコシステムの安定性と互換性
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Pythonはその「魔法」によりエージェントには複雑すぎると評価されている。
フロントエンドスタック
- Tailwind CSS + React(tanstack query/router)+ Vite を使用。
- ファイル名に「$」が含まれるとエージェントが誤操作することがあると指摘。
ツールの心得
- 何でもツールになり得る:シェルスクリプト、ログ、MCPサーバーなど。
- 高速で明瞭な応答が重要。プロセスが遅いとエージェントの効率が落ちる。
- エラーメッセージは明確に、混乱を避ける。
- 補助ツール(Makefile やログキャプチャ)を整備し、エージェントが自律的に動ける環境を整える。
速度と可観測性
- エージェントに 即時にコードを試せる仕組み を提供することが重要。
- ログ出力は「十分な情報 + 簡潔さ」を両立すべき。
- エージェントが生成ツールを自ら立ち上げられるように、迅速、軽量な構成が求められる。
安定性と依存性管理
- エコシステムは 後方互換性があり、変動が少ないものが望ましい。
- ライブラリのバージョンアップは控えめにし、急激な変更は避ける。
- 依存を極力減らし、自前コードで補う姿勢を推奨。
コードの簡潔さ
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「動けば良い」というダンプな実装が最も使える。
- 説明的な関数名、不要な継承やトリッキーな仕組みを避ける。
- SQLはプレーンSQLで。ORMの複雑すぎる抽象化よりも明快さ優先。
- 権限チェックなどは明確でエージェントが把握しやすい場所に配置。
並列実行の促進
- 複数エージェントを 並列に動かせる構成 が効率化につながる。
- ファイルシステムやデータベースの状態共有を工夫し、並行処理を可能にする。
リファクタリングを仕事に合わせて
- コード量がある程度増えたら、コンポーネント抽出やリファクタリング を検討。
- エージェントにコードの質を維持させるには、適切なタイミングで構造的改善が必要。
✅ コア原則まとめ
- シンプルさ:余計な複雑さを省く
- 安定性:エコシステムや依存関係は揺るがず
- 可観測性:出力 (ログ等) を明瞭かつ簡潔に
- 並列処理:複数エージェントで効率向上
これらの原則により、エージェントを活用した開発(“agentic coding”)は単に速度を上げるだけでなく、より保守性に優れた質の高いコードを実現できる。今後も進化が続く領域だが、まずはこれらを土台として試してみる価値がある。