はじめに
僕は地方の小さな SIer にいることもあり、請負による受託開発の経験しかありません。勉強のために他の契約形態について調べてみました。
改訂履歴
- 2026/05/28 : 初版公開。
請負契約とは
請負契約とは「成果物を完成させること」で報酬を受け取る契約形態です。IT 業界では、発注されたシステムや機能を開発・納品する受託開発でよく使われます。請負契約では「完成責任(仕事の完成義務)」があるため、見積の精度やスケジュール管理が重要になります。
請負は民法第 632 条で定義されています。
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
自社(受注側)のメリット
- 高い利益率を狙える可能性がある。
- 発注者の直接的な指揮命令を受けないため、アサインや進め方の自由度が高い。未経験者やジュニアメンバーを実務に投入しやすく、育成機会としても活用できる。
- 技術資産が社内に蓄積される。
自社(受注側)のデメリット
- 納期や品質に対する責任が重い。納品物に不具合があった場合、修補や損害賠償などを求められる「契約不適責任(旧:瑕疵担保責任)」を負う。
- 仕様変更の影響を強く受ける。
- 検収完了まで売上にならず、キャッシュフローが不安定になりやすい。
準委任契約とは
準委任契約とは「業務を行うこと」に対して報酬が支払われる契約形態です。請負契約のような成果物の完成責任はなく、開発支援や保守運用などでよく利用されます。IT 業界では SES の多くがこの形態だと言われています。
準委任契約では完成責任がない代わりに、受注側には「善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)」があります。善管注意義務とは、簡単に言うと「専門家として適切に業務を行う義務」です。当然の話かと思いますが、ちゃんと仕事をしないと、職務怠慢などで法的責任を追求される可能性があるということです。
また民法改正(2020 年施行)により、準委任契約には従来の「稼働時間に対して支払われるタイプ(履行割合型)」だけでなく「成果に対して支払われるタイプ(成果報酬型)」も正式に認められるようになりました。
準委任は民法第 656 条で定義されています。
この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
自社(受注側)メリット
- 稼働時間ベースの契約(履行割合型)の場合、収益が安定しやすい。
- 仕様変更や業務範囲の変動に対して、稼働時間や契約の範囲内で柔軟に対応できる。
- 完成責任がないため、請負契約と比べてリスクが低い。
- チーム単位での契約設計により収益調整がしやすい(ラボ型契約など)。
自社(受注側)デメリット
- 労働集約型ビジネスになりやすく、収益の上限が見えやすい。
- 指揮命令権は自社にあるものの、客先常駐などの場合は社内に技術資産が蓄積しづらい。
補足
準委任契約には「準」と付いている通り、ベースとなる「委任契約」があります。こちらは弁護士や税理士などに「法律行為」を依頼する際、用いられる契約です。
派遣契約とは
派遣契約とは、派遣会社に雇用された労働者が、客先(派遣先企業)の指揮命令のもとで業務を行う契約形態です。準委任契約との大きな違いは、業務の指揮命令を客先が直接行える点です。契約上は「準委任契約」であっても、実態として客先が自社の社員へ直接指示を出している場合は「偽装請負」と判断され、法律違反となるリスクがあります。
派遣は民法ではなく「労働者派遣法(第 2 条第 1 号)」に基づいています。
自己の雇用する労働者を、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人のために雇用する労働者を他人に従事させることを含まないものとする。
自社(受注側)メリット
- 稼働時間ベースのため、収益が安定しやすい。
- 業務の指揮命令は客先が行うため、マネジメントの負担が軽い。
自社(受注側)デメリット
- 契約上の立場が弱くなりやすい。
- 労働集約型ビジネスになりやすく、収益の上限が見えやすい。
- 社内に技術資産が蓄積しづらい。
- 派遣業の許可申請や、法律に基づく社内管理・整備の負担が発生する。
おわりに
プロジェクトに応じた契約形態を選択しましょう。気付きがあれば、随時追記します。