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Nano Pi M4でファンレスシングルボードSATA NASを作る

Last updated at Posted at 2019-06-15

はじめに

 きっかけは些細なことで。

 自宅の模様替えをしていたんですが、ふと今使っている古いReady NASが目に入りましてね。

 長らく自宅用NASとして活躍してくれたんですが、ちょっと大きいなぁと。

 で、これの代わりにNUCを使ってNASの構築を試してみたんですが、どうも電源周りに問題があるらしくて安定稼働しなくて。

 どうしようかなぁと思っていたら、LinuxシングルボードでNASを構築した事例がいくつか聞こえてきたので、せっかくだから遊びがてら組んでみようかな、と思った次第です。

ボード選び

 いくつか選択肢があって。俎上に挙げたのはこの辺です。

Linuxボード URL
Raspberry Pi 3 B+ https://www.raspberrypi.org/products/raspberry-pi-3-model-b-plus/
RockPro64 https://www.pine64.org/rockpro64/
NanoPi M4 https://www.friendlyarm.com/index.php?route=product/product&product_id=234

Raspberry Pi

 Raspberry Piは手軽だけあって、NASを作っている人も多かったのですが、USB 2.0というボトルネックがあるんですよね。

  • Gigabit Ethernetの最大速度がUSB 2.0に制約される
  • ストレージ接続先もUSBしかないので、同様にUSB2.0に制約される

RockPro64

 他の事例を探していて見つけたのがRock64で、Raspberry Piに次いで事例が多かったんですが、さらに強力なRockPro64が出ているという話を聞いて。

 このボード、Rockchip RK3399という特徴的なSoCを積んでいます。Raspberry Pi 3B+が搭載しているBCM2837よりも格段に速く、かつPCIeをインタフェースとして持っています。しかもGigabit Ether付きなので、これも悪い選択肢ではありません。

Nano Pi M4

 RK3399のボードが何枚か出ていたので探していたら見つけたのが『NanoPi M4』でした。

 私はこのボードを選択することになったのですが、決め手は以下でした。

1. Raspberry Piと同一サイズ。

 RockPro64はRaspberry Piの2倍ぐらい大きいんですが、Nano Pi M4はRaspberry Piと同一サイズです。

(ただしPCIe用のPINが追加されているので、Raspberry Piのケースは使えない)

2. SATA I/Fを追加できる。

 今回のストレージはHDDなので、USB 3.0でつないでも十分な速度とは思うのですが、最近発売されたこんなHATを見つけてしまったのです。

4x SATA HAT for NanoPi M4
https://www.friendlyarm.com/index.php?route=product/product&product_id=254

 RK3399のPCIeをSATAに展開することができるHATが出ていまして。

 これを見て『楽しそうだなぁ』と思ってしまったのです。

購入

 購入自体はFriendly Elecのサイト(先ほど記述したURL)から行うことができます。

 ここから先は英語必須なので頑張りましょう。

 Raspberry Piと違って、機器構成についてもいろいろ気を付ける必要があります。私は以下のオプションを付けて購入しました。

選択したオプション 備考
DDR3 4GB RAM RAM不足で困りたくなかったので奮発。
HeatSink 底面に貼り付ける巨大なヒートシンクです。RK3399の発熱はかなりあるので必須。
32GB eMMC Module for NanoPi eMMCスロットを持っているので、買っておくとSDカードなしに起動することが可能。
4x SATA HAT for NanoPi M4 バラで買うこともできますが、一緒に購入可能です。
5V 4A Power Adapter 後述の通りSATAを使う場合は不要だが、単体で使う場合のために。
High-Power Type-C to USB-A Male 2.0 Cable - 30cm 同上。

 その他はお好みで。ただし、電源には注意が必要です。

電源アダプタ

 Nano Pi M4は通常USB TypeC(5V/3A)で動作しますが、SATA Hatを使う場合は別途ACアダプタが必要です。

 最低でも12V/2A電源が必要ですが、SATA4つを3.5Inch HDDで動作させる場合は12V/5Aが必要となります。

 コネクタにも注文がついていて、5.5 * 2.1 mmのロック機構が付いたアダプタであることを求められます。

 一応PCのATX電源等でも代用はできるのですが、せっかく小さいNASを作るのであればアダプタにしたいところです。

 細かいことはここに書いてあります。

 私は手元に12V/2Aのアダプタがあったので、合わなければ別途調達するか、位の認識で注文しませんでしたが、2AでよければFriendly Elecでも売っているので、一緒に買うという手もあります。

発送

 私はEMS(発送料が$40ほど割高)で頼んだのですが、DHL預かりになって、6/2注文->6/7着荷でした。

 集荷が6/6だったので(注文から4営業日ぐらいで発送と書いてある)、発送だけ見るとだいぶ早く届きました。

 ChinaPostを使うともう少し遅いかもしれません。

現物

IMG_20190608_091617.jpg

盛りだくさんで届きました。

本体

IMG_20190608_092643.jpg

eMMC

IMG_20190608_091734.jpg

ヒートシンク

IMG_20190608_091742.jpg

USBアダプタ

IMG_20190608_092652.jpg

SATA Hat

IMG_20190608_092747.jpg

組み立て

 それほど迷わないとは思います。

 ヒートシンクは、付属のパッドをNano Pi M4のRK3399に貼り付けてから固定しましょう。

 あと、eMMCはHATを挿す前に固定しておきましょう。

 おそらく技適を通っていないと思うので、日本国内で使う場合、Wifiは使わない方がよいでしょう。このためアンテナを付ける必要はそれほどありません。

OS

 6/15時点でNano Pi M4がサポートしているOSは7種類ありますが、SATA Hatがサポートしているのは3種類だけです。

 が、実はこれ以外のOSを使うことができるのを耳にしていまして。

 実はArmbianでもSATA Hatを使うことができる、と聞いたので、なるべく汎用のディストリビューションを使いたく思っていた私はArmbianを使うことにしました。

Armbian?

Raspbianばかり使っていた私も詳しく知らなかったのですが。

 Armbianは、主としてArmのSBC(シングルボードコンピュータ)向けに作られているDebian/UbuntuベースのLinuxディストリビューションのことです。NanoPi M4に限らず、多くのシングルボード上で動作します。

Armbianのインストール

SDカードへの書き込み

 Armbianはボードごとにサポートステータスがあって、Nano Pi M4は『Suitable for testing (WIP)』なのだそうですが、構わずダウンロードします。

 6/15時点ではBionicとStretchがあって、一応どちらでもSATA Hatは動きますが、今回はStretchを使うことにしました。

 『Armbian Stretch』をダウンロードし、Balena Etcher等でSDカードに書き込みます。

SDカードからの起動

 最終的にはSDカードからではなくeMMCから起動するので、SDカードはインストールメディア替わりなのですが、まずはSDカードを挿して電源を投入し、SDカードから起動します。

 起動するとrootアカウントでのログインを求められます。Armbianのデフォルトに従ってrootログインします。

 次に通常ユーザの登録を行うよう指示が出るので、ユーザ名、パスワードを設定。

 ユーザ登録が完了すると、初めてログインできるようになります。

 この辺はSDカードさえ挿せばウィンドウまで出るRaspbianとはまるで違うので気を付けましょう。

SDカードからの起動

 ログインしたら、eMMCへArmbianをインストールするため、以下のコマンドを実行します。

$ sudo nand-sata-install

 するとメニュー画面が出てきてインストール先を聞かれるので、"Boot from eMMC - System on eMMC"を選択します。

 その後、大きく赤字でWARNINGが表示され、eMMCの内容が消去される旨の確認が出るので、"Yes"を選択。

 後はしばらく待っていると、Power offするか確認のダイアログが出るので、いったんPower offした後ACアダプタを抜き、SDカードを抜いて再度電源を投入しましょう。

 首尾よくいっていれば、SDカードを挿していない状態でもeMMCからArmbianが起動するはずです。

ファイル共有/DLNAサーバのインストール

 ここまで来てしまえば、後は他のLinuxディストリビューションとさほど差はありません。

 ネットワーク設定を行ったのち、各種サーバのインストールをしましょう。

OpenMediaVaultの罠

 単にNASとして使うだけなら、OpenMediaValutを入れてしまう、という手もあるのですが。

 私が使った際にはどうも安定して動作しなくてですね。アクセス中に突然NASサービスが止まってしまい、ファイルにアクセスできなくなる、という現象が多発しまして。

 代わりにSambaでファイル共有したら、まったく止まらなくなったので、おそらくOpenMediaVaultが悪さしていたのだと思っています。

 今は治っているかもしれませんので試すのも一興ですが、私はSambaでファイル共有しています。

(2019/9/18)

 OpenMediaVaultが動いたという報告を受けました。

 今からこのNASを作るなら試してみてもいいかもしれません。

Sambaのインストール

 これは特段代わり映えしないので、ここでは紹介しません。

 事例はたくさんあるかと思いますので探してみてください。

DLNAサーバのインストール

 シングルボードNASのパワーだと、基本的にはminidlna(Readymedia)を使う所ですが。

 トランスコード機能がなかったりとか、多少不便なところがあって、どうしようかと考えていたら、ServiioというDLNAサーバ実装があることを知りました。

 今手元にあるのはRaspberry Pi 3B+の数倍の性能を持つNano Pi M4だし、メモリも4Gあるし、Java実装だけどここはパワーで押し切るか、とインストールを試みました。

 Java8をインストールした後、Version 2.0をダウンロードしてインストールしたところ、特段問題なく動作しています。

RAIDの構成

 ここまでの操作は、旧NASサーバからバックアップしたExt4の2.5Inch HDDをSATAでつないで構成していたのですが。

 やはり2.5Inch HDDだと、

  • 容量が少ない(今回は2T)
  • 処理速度が低下する(最初は80MB/Sでコピーしていたが、しばらくすると10MB/Sぐらいに落ちる)

 という現象が見られたのです。

 旧NASサーバはRAID1構成していて、ReadyNASのFSはbtrfsだということが分かっているので、

ReadyNAS102のHDDをサルベージする
https://qiita.com/houmei/items/04edaf436e9bb2428fb9

NETGEAR Readynas 102 のディスクをPCでデータ吸出し
https://qiita.com/abeshi01/items/33588fd36b2f22f7cdf7

 この辺の情報を元に、旧NASサーバのHDDをそのまま使えないかと考え始めました。

mdadmのインストールとRAIDの稼働

 旧NASサーバでRAID1していたHDDを2台接続して起動後、

 ソフトウェアRAIDをLinux上で使うために、mdadmをインストールします。

$ sudo apt install mdadm

 mdadmからRAIDの構成を試みます。Ready NASのRAID0ディスクは3パーティションあって、3つ目に実データが入っています。

sudo mdadm —assemble /dev/md127 /dev/sda3 /dev/sdb3

 構成できたらRAID0を起動。

sudo mdadm -R /dev/md127 

mountとfstab

 この状態で適当に作ったフォルダ(ここでは/nas)にマウントします。

sudo mount /dev/md127 /nas

 とやってみたら、/nasから旧NASが保持していた実データにアクセスできたので、所有者を変更して、

sudo chown [ユーザ名]:[グループ名] /nas

 SambaとServiioに共有してやったら、どちらもデータの共有ができるようになりました。

 最後に、起動時に自動マウントするよう、/etc/fstabを変更。

/dev/md127                                      /nas            btrfs   defaults        0       0

 btrfsでマウントするよう指示して再起動し、再起動後自動マウントと、NAS/DLNAからのアクセスを確認して終了です。

完成図

 ちょっとケーブルが汚いですが。

IMG_20190615_205507.jpg

IMG_20190615_205131.jpg

 旧NASと違ってファンレスで、体積も小さくなり、小回りが利くようになったので置き場所が自由になりました。

 HDDからの熱についてはそれほどでもなかったので、後はケース等衝撃保護について考える予定です。

おわりに

 楽しそう、という探求心に乗っかって作ってみたら、実用品を作りながら、いろいろと知らないことを学ぶことができ、大変良い経験になりました。

 若干のLinuxの知識と、Raspberry Piの一つ先へ進む勇気があれば、こうした強力なシングルボードを使ったNASに挑戦してみるのも、また一興かもしれません。

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