2023年6月、DataikuとDatabricksは、世界中の大企業の人工知能(AI)の経験豊富な専門家400人を対象に調査を実施しました。この調査ではもちろん、生成AIに対する彼らの考え方と採用動向にも注目しました。調査項目では、最新のデータスタック、AI ツールとサービスに対する支出、AIユースケースへの取り組みなどについても質問しています。この AI調査で得られた統計のうち注目すべき5点を以下に示します。調査レポートでさらに多くの洞察についてお読みいただけます。
→「AIの今: 400人の経験豊富なAI専門家を対象とした調査レポート(英語)」をダウンロード
回答者の45%がすでに生成AIを実験中
一見すると、これは驚くほど高い数字のように見えるかもしれません。経験豊富なAI専門家の45%が、すでに生成AIのユースケースに積極的に取り組んでいると回答しているのはなぜでしょうか?
このテクノロジーが普及してまだ1年も経っていないのに、これは驚くべきことです。さらに、回答者の60%以上が、今後1年間の内に生成AIを使用すると回答しています。これには、生成AIのユースケースの筆頭である大規模言語モデル(LLM)が含まれます。
生成AIにより、私たちはAIの転換点に到達しました。ただし、企業がテクノロジーを積極的に採用しようとする考えと、テクノロジーを活用する準備ができている状態は、一夜のうちに実現されたわけではありません。
過去5から10年にわたって、あらゆる業界の組織の人々が基礎を築いてきました。彼らはセルフサービス分析に取り組んでおり、より高度なデータ利用を全社的に導入することを奨励しています。彼らは、AIの安全な利用拡大を可能にするために、ガバナンスとMLOpsシステムを導入してきました。彼らはゆっくりと、しかし確実にAIの成熟度とケイパビリティーを向上させてきました。そして、ちょうど生成AIの波に間に合ったのです。
経験豊富なAI専門家の75%がAIによるROIはプラスであると報告
当社のAI調査によると、圧倒的多数の回答者がAIによる投資収益率(ROI)がプラスになったと報告しています。これは、全体的な成熟度の向上を示す主要な指標です。AIが成熟し、進化し続けるにつれて、企業はこの革新的なテクノロジーに対する投資の成果を享受しています。
業界や地域によって多少の違いはありますが、全体的には基礎構築が成果を上げているサインです。すでに、”一度だけ概念実証(PoC)をやってみる”という世界を超えました。データチームがサイロで作業をするという段階も超えて(これについては後述します)、大規模なAIの展開の段階に移行しました。
世界的に見るとこの統計は、AI専門家が次のような基本事項をすべて理解していることを示しています。
- AIおよびデータプロジェクトでは、具体的で測定可能な短期目標を設定しなくてはなりません。その好例として、当社のAI調査では、回答者の37%がROIの計算と追跡能力に優れていることがわかりました。
- 同時に、AIとデータが価値とイノベーションをどう継続的に推進できるかについての長期的なビジョンも維持する必要があります。サイロを打破して統合されたデータエコシステムを構築し、より迅速でより多くの情報に基づいた意思決定を可能にします。
- AIを活用して反復的なタスクとプロセスを自動化します。これにより、人的リソースをより戦略的な作業に振り向けるできるという大きなメリットが得られることがよくあります。
1/3の組織がAIの『ハブアンドスポーク』運用構造を活用
ほんの2‐3年前は、誰もがAIの取り組みのための集中型センターオブエクセレンス(CoE: Center of Excellence)について話題にしていました。このモデルは組織内でのAIモデルの導入を促進するためのものであり、これは当然のことと言えるでしょう。
→ AI取り組みの5つの運用モデル:インタラクティブなインフォグラフィックはこちら(英語)
それから数年たった今、AIの成熟度を反映させてか、組織を進化させるリーダーが増えています。現在、AIの専門家の3分の1が、ハブアンドスポークモデルを活用していると述べています。私たちの調査結果では、製造業ではこの数字が最大42%に達しています。ハブアンドスポークモデルは、CoEの自然な進化です。
とはいえ、CoEは依然として最も人気のあるモデルであり、回答者の39%がそれを使用しています。しかし、ハブアンドスポークが注目を集めているという事実は、世界中の組織において、全体的な成熟度が高まっていることを示しています。
企業内のチームがそれぞれに、AIを使用して独自に実験行っています。
インフラストラクチャー、データ、ベストプラクティス、人財の共有がほとんど、あるいは、まったくありません。
ほとんどの場合、一時的に運用するモデルであり、その目標は、さらにAIに投資に値する価値が十分にあるかを判断することです。
CoEとして知られるこの運用モデルは、組織内でのAIの採用を促進するために設計されています。
一元化されたチームが、複数の事業部や部門のためにAIプロダクトを開発し保守します。
CoE機能が、組織全体に分散された状況です。AI専門家(高度な大学院卒レベルのデータサイエンティスト)がハブに配置され、事業部や各部門がスポークとなります。彼らは協力してAIプロダクトを開発しています。
CoEと同様に、ハブはインフラストラクチャー、標準を担当し、業界のイノベーションを追っています。
ただし、AIプロダクトの所有権はスポークに移ります。
中央で管理され共有されるようなリソースやルールをほとんど持たず、責任あるAIガイドライン、インフラストラクチャー、あるいは使い回し用の共通のデータセット数種でさえも中央では管理されません。
最も分散化され、機敏で革新的な構造と言えます。多くの事業部が参画しているものの、ルールとリソースによって緩やかに結びついています。
半数以上がAIの将来について興奮よりも不安を感じている
私たちの調査によると、さまざまな業界の人々がAIの将来について不安を抱いていることがわかりました。生成AIの台頭により、私たちがいま、さまざまな不確実性を伴う領域にいることは確かです。
AIおよび機械学習の経験豊富な専門家がAIの将来について懸念しているのはなぜでしょうか?
私たちの調査結果では、AI専門家がデータの民主化において、依然としていくつかの非常に現実的な課題に直面していることを明らかにしています。たとえば、とくに膨大な量のデータの場合、データ品質は依然として速度の向上に影響を及ぼしているようです。この課題は、より成熟したAI組織にも、それほど成熟していない組織にも同様に当てはまります。
一方、明るい面であり、また、肝心なこととしては、成功と進歩の兆候も数多くあるということです。たとえば、回答者の55%は、データ品質を管理するための明確な担当者がいると回答しています。また、45%は、最前線の人々が必要なときに高品質のデータを利用できると回答しています。
3/4が複数のバックグラウンドの人々から成るチームで高度な分析とAIを開発していると回答
急速に進化するAIの状況では、分野の垣根を超えたメンバーから成るチーム内での協力がパワーとなり、プロジェクトを成功させる原動力となります。
Dataikuでは、データ専門家とデータ以外の専門家の間での真のコラボレーションについて、10年以上も提唱を続けています。ツールやテクノロジーが少数の人々の手に渡ったままでは、データ(そして現在の生成AI)の民主化は実現しません。
分野の垣根を超えたアプローチは、AI開発において、責任あるAIをどのように実現していくかという点でも重要です。多様な視点を取り入れることで、組織は潜在的なバイアスを見極め、AIソリューションの広範な影響を考慮し、責任あるAIのための基準を守ることができます。
良い面としては、今日では分野の垣根を超えたチーム(つまり、データ担当者と協力するビジネス部門の人々)が当たり前の現状になりつつあることです。圧倒的多数の回答者(77%)が、次のAIの波に間に合うよう、部門を超えて連携して働いていると回答しました。
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私たちは、生成AIに関するプランをはじめ、ROI見積もりなど、業界で最も注目されているトピックについて400人の経験豊富なAIプロフェッショナルにアンケートを実施しました。Dataiku+Databricksが提供する、AIの今について理解するために、調査レポート全体(英語)をご覧ください。