エンタープライズAIは新たな局面を迎えています。エージェントはもはや、質問に答えるだけの賢いチャットボットやアシスタントではありません。データと対話し、意思決定を自動化し、一部の業務フローを実行し、適切なタイミングでビジネスの専門家と連携するシステムへと進化しています。この変化は非常に魅力的である一方で、従来からある問い(英語)に新たな視点が加わります:自社で構築すべきか、それとも購入すべきか?
生成AIアシスタントが登場した当初、「構築」か「購入」かという議論は、主に価値実現までのスピードやシステム統合のしやすさに焦点が当たっていました。しかしエージェントにおいては、より高いハードルが存在します。重要なのは、エージェントが動作するかどうかだけではなく、それが信頼できるか、どのシステムと接続するか、そして実際にビジネス価値を生み出すかどうかです。
そこには新たなリスクも伴います:それが「エージェントの乱立」です。多くの組織は数個のコパイロットやスクリプトで実験を始めたものの、最終的には統合されていない多数のツールが散在し、中央での管理ができず、技術的負債だけが膨らんでしまいます。いまの課題は、単にエージェントを動作させることではなく、エージェント同士が連携し、スケールに対応し、そしてビジネスにとって信頼できる形で機能するようにすることなのです。
本記事では、「購入すべきタイミング」「構築すべきタイミング」、そしてなぜ多くの企業がその中間に落ち着くことになるのかを解説します。
AIエージェントがこれまでと異なる理由
AIエージェントは、ダウンロードしてすぐに使えるアプリのようなものではありません。データ、セキュリティー層、業務プロセスとの深い統合が必要です。その有用性は、どのシステムと接続され、どのアクションを実行する権限が与えられているかによって完全に決まります。
多くの企業が壁に直面するのはまさにこの点です。あらかじめパッケージ化されたアシスタントであれば、Salesforceのレポートを表示したり、ServiceNowのワークフローを円滑にしたりといった短期的な成果は得られるかもしれません。しかし、エージェントに元のシステムの枠を超えた動きを求めるようになると、それだけでは不十分になります。
違いは理論的なものではなく、実践的なものです。エージェントに何を、どこでさせたいのかによって、そのアプローチ方法は決まります。
購入を選ぶべきケース
エージェントの世界における「購入」とは、通常、Salesforce、ServiceNow、SAPといった基幹システムにパッケージとして組み込まれている既製のアシスタントに依存することを意味します。
メリット:
- スピード:エージェントはすぐに使える状態で提供され、初期設定もほとんど必要ありません
- ネイティブ統合:親システムのワークフローと密接に連携しています
- 初期コストが低い:専任チームやインフラの構築が不要です
デメリット:
- 限定された範囲:これらのエージェントは、親システムの外ではほとんど機能しません
- 標準的な性能:競合他社も同じ機能を利用できます
- 拡張性に限界:自社独自のプロセスや意思決定手法に合わせたカスタマイズが困難です
購入は、対象業務が限定的で迅速に完結し、かつ特定のシステム内で完結する場合に適しています。単一のアプリ内で素早く回答を得たい場合には有効な選択肢です。しかし、全社的なワークフローや他社と差別化されたビジネス価値の創出を目指すのであれば、それだけでは不十分です。
構築を選ぶべきケース
構築により、柔軟性と主体性が得られます。競争優位を生み出すエージェントを構築するには、これがエンタープライズの選択肢です。
メリット:
- コントロール:データ、セキュリティー、意思決定ロジックをすべて自社で管理できます
- 幅広い連携性:エージェントは、単一ではなく複数のシステムと連携できます
- 差別化:競合他社が模倣できない独自の機能を備えたエージェントを構築できます。自社固有の強みに適合します
デメリット:
- 多くのリソースが必要:時間、人材、インフラの確保が求められます
- 乱立のリスク:ガバナンスがなければ、重複したエージェントが生まれ、品質が不安定になり、運用負荷が増大します
- 保守の負担:カスタム構築したエージェントの運用維持にはコストがかかります
創造性とコントロールが重視される場面では、構築が大きな効果を発揮します。しかし、そこにはリスクも伴います。強固なガバナンスがなければ、「構築」はたちまち多数のサイロ化したプロジェクトに分裂し、適切なIT管理のないまま乱立状態になります。それはもはやイノベーションではなく、単なるスプロール(拡散)です。
ハイブリッドという現実
多くの組織にとって、現実は「構築」か「購入」かではなく、「その両方」です。
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チケット対応を迅速化するために、ServiceNowのコパイロットを購入することもあるでしょう
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一方で、稼働時間の予測に使う回帰モデル、保守履歴、生産スケジュール、技術者の稼働状況、部品在庫データベースなどから情報を取得する、独自の保守スケジューリングアシスタントを構築することもあるでしょう
この組み合わせは理にかなっています。購入により、迅速な回答と実績のある統合が得られ、構築により、自社に最適化された機能と複数システム間での連携が可能になります。この両方を活用することで、小さく始め、素早く学び、自信を持ってスケールすることができるのです。
ただし、ハイブリッド戦略は、ガバナンスが機能してこそ効果を発揮します。そうでなければ、再び場当たり的なツールの寄せ集めに逆戻りしてしまいます。そのため、中央で統制されたオーケストレーションプラットフォームの存在が重要になるのです。
最新のAIプラットフォームには、次のような機能があります:
- 中央集約型の開発環境を提供:アナリストにはノーコードツールを、開発者にはPythonによる柔軟な開発環境を提供し、両者に共通のセキュリティーと監査ルールを適用します
- モデルやエージェントをまたいだオーケストレーション:LLMプロバイダーの切り替えや複数のエージェントの接続も、ゼロから書き直すことなく対応できます
- ガバナンスと可観測性を内蔵:パフォーマンスを監視し、すべてのツール呼び出しを追跡し、本番環境へのドリフトやバイアスの混入を防ぎます
- 自社の業務とプロセスの独自性を活かす:ビジネスの専門知識とAIの専門スキルを掛け合わせ、複合的なアプローチによって意思決定を支援するエージェントを構築することで、企業に真の変革をもたらす可能性を引き出します
これこそが、エージェントの乱立を防ぎ、ハイブリッド戦略を現実的にスケーラブルなものにするための土台です。
判断基準
エージェントの構築か購入かを検討する際は、次の4つのシンプルな質問から始めましょう:
- エージェントに何をさせたいのか?それは特定のシステム内で完結する狭い業務なのか、それとも複数のプロセスにまたがるものなのか?
- 処理はどこで行われるのか?1つのアプリケーション内なのか、それとも複数のデータやシステムを横断するのか?
- 優先すべきは何か?即時の価値実現か、それとも長期的な差別化か?
- どの程度のコントロールとガバナンスが必要か?ベンダーのロードマップに依存してもよいのか、それとも初日からの自社管理が必要なのか?
実践的なアドバイス:スピードが最重要な限定的なユースケースでは購入を選びましょう。ただし、本質的なビジネス変革が目的であれば、構築を視野に入れる(あるいは、構築と購入を組み合わせる)ことが望ましいです。
今後の指針:プラットフォーム型アプローチ
エージェント導入における「構築」か「購入」かという議論は、どちらかを選ぶことが目的ではなく、自社の目的に合った適切な組み合わせを見つけることが本質です。
- 購入によって、迅速な回答やスピーディーなパイロット導入が実現できます
- 構築によって、創造性、コントロール、そしてビジネスへのインパクトが得られます
- 適切な基盤があれば、ハイブリッド戦略により両方の利点を享受できます
その基盤となるのが、プラットフォーム型のアプローチです。Dataikuでは、有望なAIの取り組みであっても、エージェントの乱立によってすぐに失敗へとつながる現場を何度も見てきました。だからこそ私たちは、ガバナンスと柔軟性を備えた形で、AIエージェントの構築、接続、制御を大規模に行えるよう、プラットフォームを拡張してきました。
この旅路のどの段階にいても、重要なのは目新しいツールに目を奪われるのではなく、真にビジネス価値を生み出す要因に注目することです。AIエージェントで成功を収める組織とは、「購入のみ」「構築のみ」に依存するのではなく、その両方を組み合わせて全社的に機能させている組織です。
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より大規模なデータエコシステムを活用し、最大限のビジネスインパクトを実現するAIエージェントを構築しましょう。ITチームにとっても、完全な可視性とコントロールが確保されます。単一タスクに特化したエージェントから、複雑なマルチエージェントのワークフローをオーケストレーションするケースまで、コードによる構築も、完全なノーコード構築も可能です。
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