先月、数百名のデータおよびAIリーダー、ビジネスエグゼクティブがニューヨーク市に集結し、Dataikuが主催するフラッグシップイベント「Everyday AI New York」が開催されました。このイベントは、とくにエージェンティックAIの台頭を背景に、企業AIの複雑で急速に進化する世界に明確さと勢いをもたらすことを目的としています。今年のテーマは「カオスから制御へ」。この日、2025年以降のAI成功には好奇心以上のもの――構造、責任、そして共有ビジョンが必要であるという緊急のメッセージが発信されました。
イベントに参加できなかった方も、あの熱気をもう一度味わいたい方も、ここでは「Everyday AI New York 2025」のハイライトをご紹介します。
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1. エージェンティックAI発表:ビジョンから現実へ
最も注目されたセッションのひとつは、DataikuのエージェンティックAI対応に向けたプロダクト進化の発表でした。Dataikuは、企業内でビジネスプロセスを一定の自律性をもって自動化するAIエージェントの未来ビジョンを共有しました。
Dataiku共同創業者兼CEOのFlorian Douetteauは、組織がAIエージェントを活用しようとしたときに直面する3つの主要な課題を提示しました。それは、システムとの脆弱な接続、障害発生時の診断困難、そして責任の所在の欠如です。DataikuのAIエージェントなら、チームはエージェントを拡張しつつ制御を維持できます。エンタープライズオーケストレーションにより、エージェントは既存の全データ、分析、モデルに接続可能。エージェントは継続的に監視、最適化、ガバナンスされます。
これを実現するために、共同創業者兼CTOのClément Stenacから以下の主要なプロダクト発表がありました:
- ユニバーサルエージェント作成:ビジネスユーザー向けのビジュアルインターフェースと、開発者向けのコードベースツールを両立。
- エージェントツール:Jira、Salesforce、ServiceNow、Model Context Protocol(MCP)などとの拡張性と統合をサポート。
- ガードサービス:AIエージェントの品質、安全性、コスト効率を監視。
- トレースエクスプローラー:エージェントの意思決定過程を完全に可視化するデバッグ・監査機能。
- 生成AI ガバナンス:組織全体でエージェントを登録・監視可能。
これらのアップデートにより、Dataikuはガバナンス、拡張性、柔軟性を備えたAIエージェント構築プラットフォームの先駆者となり、理論上の概念だったものを、安全で実用的な企業向けソリューションへと変革しました。
余談ですが、基調講演中にはDataikuのField CDOでありEveryday AI DJでもあるCatalina Herreraが生成AIを使って作曲した音楽も披露されました。Catalinaは生成AIツールと協働し、人間がテクノロジーで力を得ることの意味を表現したサウンドトラックを制作。ChatGPTでリズムや歌詞を作り、SUNOで音楽化しました。混沌から始まったものが、力強く意図的なセットへと変貌――生成AIが創造性を解放し、アイデアを没入体験へと昇華できることを示しました。プレイリストはこちら!
2. 多様な顧客の声と業界
30社以上のDataiku顧客が実例を発表し、金融、ヘルスケア、製造、バイオテクノロジー、物流など多様な業界のリーダーが登壇しました。主な事例は以下の通りです。
- Prologis:DocuSignとSnowflakeベースの契約データベースを統合し、法務ワークフローの一部を自動化するAIエージェントを構築。
- Solidigm:ServiceNowと連携したヘルプデスクエージェントを開発し、IT一次対応を自律的に解決。
- Moderna:AIのオーナーシップを全事業部に浸透させ、迅速なイノベーションやワークフロー変革、新たなAI駆動型運営モデルを推進。
- Eaton:2日間で生成AI契約分析ツールをプロトタイプ化し、94%の精度で3万件以上の契約書を処理。
- FINRA:Dataikuを活用したAIエージェント開発の人材育成センターを設置。
これらの多様なユースケースから、エージェンティックAIは未来の目標ではなく、すでに現場で業務を変革していることが明らかになりました。
また、ハーバードロースクールのJonathan Zittrain教授による基調講演「AIの海で浮かび続ける」も大きな話題に。教授は機械学習の基本や、その驚くべき能力、時に見せる奇妙な挙動や失敗例をユーモラスに解説。組織や個人がAI活用の混乱の中でどう生き抜くかについても提言しました。要点は、新しい技術を追いかけるだけでなく、今あるものを理解し、リスクを見極め、具体的な成果に集中することです。
「Everyday AIでは、業界や学術界からの優れた成功事例や思考のきっかけとなるアイデアが数多く紹介されました。考えるべきポイントは、最も効果的なエージェンティックなユースケースは、強固なプロセスと知識のマッピングから始まることです。」
— Arun Nandi, Chief Data & AI Officer, Carrier
3. Exec Connectで戦略的議論
2年目となるExec Connectでは、各業界のシニアエグゼクティブが集い、AI変革やAIエージェントの実験・拡張について戦略的な議論を展開。業界リーダーやDataiku経営陣も参加し、C-suite限定のインタラクティブなピアラーニングや意見交換が行われました。
Zittrain教授とCEOのFlorian DouetteauによるQ&A、FINRA、Perdue Farms、FLOAのリーダーによるパネル、各種分科会など、AIの最先端トピックが幅広く議論されました。
4. AIエージェント駆動の未来設計:分科会、ライトニングトーク、デモ
イベントの主要トラックでは、「将来に備えたテックスタックの構築」、すなわち生成AI、構造化分析、ビジネスアプリケーションをシームレスに統合するための要件に焦点が当てられました。Bread Financial、Cox Automotive、Thermo Fisher、Eaton、Sage Therapeutics、Moderna、Nationwideなどの登壇者からは以下のような洞察が共有されました。
- シンプルなままスケールすることはない:単一のAIエージェント構築は容易でも、数が増えるとシステム統合の脆弱性やデバッグ困難な非決定的挙動など、複雑性が急増。
- オーケストレーションは不可欠:エージェントがアプリやモデル、ガバナンスツールと堅牢に連携するための枠組みが必要。
- 最適化は継続的:エージェントのパフォーマンス監視・改善は一度きりでなく、継続的に必要。
- アカウンタビリティ(責任)は組み込み必須:エージェントの行動に明確な責任体制を持ち、リスク管理と成果の整合性を確保。
このトラックから、「AI(とくにAIエージェント)は従来型インフラストラクチャーに後付けできるものではなく、リアルタイムかつ動的なAIの特性に合わせてアーキテクチャーを再設計する必要がある」と明確になりました。
「オーディエンスの反応は素晴らしく、セッション後の会話やいくつかの“なるほど!”という瞬間が、この仕事の意義を改めて感じさせてくれました。先進的なイベントを開催してくださったDataikuの皆さま、そしてご参加いただいたすべての皆さまに心から感謝いたします。」
ー Raja Lanka, Executive Director of Data, Analytics, AI/ML, Morgan Stanley
別トラック「AI変革をリードする」では、AIの混乱を乗り越え、リスクを緩和し、ROIを最大化するための実践的戦略が共有されました。Bepensa、Novartis、ExxonMobil、Zeus、Merkのほか、以下の事例も紹介されました。
- 武田薬品工業:データプライバシーワークフローの自動化と、生成AIによる臨床プロトコルデータの構造化で年間4万時間以上の患者時間を節約、約800万ドルのコスト削減効果を創出。
- モルガン・スタンレー:Dataikuを活用し、ビジネスユーザーが安全にAIソリューションを構築・展開できる事例。
- SAIC:政府向けAIの実例(自動化された人員計画やシグナルインテリジェンス強化)と、他業界にも応用可能な教訓。
さらに、ライトニングトークやライブデモでは、
- One Acre FundやMemorial Hermann Health Systemsなど顧客の事例
- AWS、Deloitte、NVIDIA、Snowflake、Aimpoint Digitalなどパートナーの講演
- DataikuによるAgentOpsやビジネス効果の高いAIエージェント構築、Dataiku LLM Mesh、エージェンティックAIのためのデータ品質運用化などのライブデモ。
「Dataikuで最初の生成AIユースケースを実現しました。データ探索、アノテーション、ビジネスリーダーへの提案まで、驚くほど迅速に進みました。Everyday AIでこの価値あるプロジェクトを発表できて光栄です。」
— Abhishek Sinha, Senior Director, Head of AI, Sage Therapeutics
AIのカオスに制御をもたらす
経営陣の洞察、最先端のプロダクト発表、実践的な顧客事例――参加者はAIを業務現場に落とし込むためのビジョンとロードマップを手に入れました。これからAIを始める方も、既存の取り組みを拡大したい方も、ひとつ確かなことがあります。それは、エージェンティックAIの時代が到来し、Dataikuがその最前線にいるということです。
最後に、Everyday AI New Yorkにご参加いただいたお客様、パートナー企業、アナリスト、カスタマーアドバイザリーボードメンバー、そしてDataiku経営陣に心より感謝申し上げます。オンデマンド配信もぜひご覧いただき、また来年お会いしましょう!
原文:From Chaos to Control: Top Moments From Everyday AI New York 2025