はじめに
業務改善の現場では、次のような判断がよく行われます。
- 「最初は一人で使っていただけ」
- 「人数が増えたら少し調整すればいい」
- 「同時利用といっても大したことはない」
しかし、複数人・同時利用は
単なる「利用者数の増加」ではありません。
それは、
システムに求められる前提条件そのものが変わる瞬間です。
本記事では、
複数人・同時利用が発生した時点で
なぜ既存の仕組みが破綻しやすくなるのかを判断基準として整理します。
改善が必要になる瞬間
次のいずれかが発生した時点で、
システムは 「一人用の作り」では耐えられません。
- 複数人が同じデータを扱う
- 同じファイル・同じ仕組みを共有する
- 実行タイミングを利用者が選べない
- 他人の操作結果に影響される
この時点で
「今まで動いていたから大丈夫」とは行かなくなります。
なぜ複数人・同時利用は危険なのか
① 排他制御が前提になっていない
個人利用の仕組みは、暗黙的にこうなっています。
- 使うのは自分だけ
- 実行タイミングは把握できる
- データは自分が最後に触る
複数人になると、この前提がすべて崩れます。
- 同時に処理が走る
- 途中状態を別の人が上書きする
- 「誰がいつ触ったか分からない」
排他制御を考慮していない仕組みは、
偶然動いているだけの状態になります。
② 再現性のない不具合が発生する
複数人・同時利用で起きる不具合は、次の特徴を持ちます。
- 条件が揃わないと再現しない
- 人の操作順に依存する
- 環境やタイミングで挙動が変わる
結果として、
- 原因が特定できない
- 修正しても直ったか分からない
- 「たまに起きる」が放置される
これでは業務システムとしては致命的です。
③ 「自分のミス」ではなくなる
個人利用では、
- ミス=自分が困る
で完結していました。
複数人になると、
- 他人の作業を止める
- 他人の成果を壊す
- 業務全体に影響が出る
ミスの性質が 個人責任から業務事故へ変わります。
よくある判断
❌「人数が少ないから問題ない」
→ 人数は関係ありません
2人でも、同時利用が発生すれば条件は同じです。
❌「同時に使わないようルールで縛る」
→ ルールは必ず破られます
- 忙しい
- 知らなかった
- 急ぎだった
こうした理由で、前提は簡単に崩れます。
❌「壊れたら直せばいい」
→ 壊れるまでの経緯がわからない
再現しない不具合は、直すこと自体が困難です。
また、直しようのないデータの破損もありえます。
判断のためのチェックリスト
以下に1つでも当てはまれば、
複数人・同時利用前提の設計が必要です。
- 同じデータを複数人が扱う
- ファイルや仕組みを共有している
- 実行タイミングを制御できない
- 他人の操作結果が影響する
- 利用者が今後増える可能性がある
ではどう判断すべきか
-
個人・単独利用
→ 単純な仕組みでも成立する -
複数人・同時利用
→ 排他制御・データ管理を前提に設計する
これもまた、
- Excel VBAで限界か
- Accessに切り替えるべきか
- RPAや別システムに委ねるか
といった判断において重要な意味を持ちます。
まとめ
- 複数人・同時利用は「条件の変化」
- 利用者が増えた時点で前提は崩れる
- 不具合は再現不能・特定不能になりやすい
- 技術の問題ではなく、判断の問題