はじめに
業務改善や自動化の現場では、次のような流れが非常に多く見られます。
- 最初は自分用に作った
- 少し便利だったので共有した
- いつの間にか業務で使われている
この流れ自体は自然です。
問題は、「個人利用」と「業務利用」の境界を明確にしないまま進むことにあります。
本記事では、
アプリケーション・システム選定以前に必ず確認すべき判断基準として、
「個人利用」と「業務利用」を分ける境界線を整理します。
結論を先に
次のいずれかに当てはまった時点で、それは 個人利用ではありません。
- 他人が使うことを前提にしている
- 自分が不在でも業務を回す必要がある
- ミスしても「自分だけが困る」状態ではない
- 結果が業務判断・金銭・顧客対応に影響する
この時点で、
「とりあえずExcelで作る」「個人ツールだから問題ない」
という判断は成立しません。
個人利用とは何か
個人利用とは、次の条件をすべて満たすものです。
- 使用者が自分一人
- 結果の責任を自分だけが負う
- 壊れても自分が困るだけ
- 使わなくなっても業務が止まらない
要するに、
失敗しても自己責任で回収できる範囲
これが個人利用です。
業務利用に変わる瞬間
次のいずれかが発生した瞬間、性質は完全に変わります。
① 他人が使い始めた
- 使い方を聞かれる
- マニュアルを求められる
- 「これ動かない」と言われる
この時点で、
ツールはあなたの私物ではありません。
② 業務フローの一部になった
- 使わないと作業が完結しない
- 定期業務の工程に組み込まれた
- 「今日はこれを回す日」と認識されている
これはすでに業務システムの一部です。
③ ミスが業務事故になる
- 数値が違えば報告内容が誤る
- 処理漏れがあればトラブルになる
- 顧客・取引先に影響が出る
ここまで来ると、「個人の工夫」で済む話ではありません。
境界を曖昧にすると危険
理由① 責任の所在が消える
個人ツールの延長で作られたものは、
- 管理者が決まっていない
- 仕様が定義されていない
- 想定外の使われ方をする
結果として、問題が起きたとき、誰も責任を取れない状態になります。
理由② 修正・改善ができなくなる
- 開発者しか分からない
- 開発者ですら「昔の自分」が分からない
- 触ると壊れそうで誰も触れない
これは技術力の問題ではありません。
判断基準を誤った結果です。
よくある誤解
❌「最初は個人利用だったから問題ない」
→ 使われ始めた時点で再判断が必要
開始時点の目的は、判断基準になりません。
❌「小規模だから業務利用ではない」
→ 規模は関係ない
影響範囲と責任の有無が基準です。
判断のためのチェックリスト
以下に1つでも当てはまれば、
それは個人利用ではありません。
- 他人が操作する
- 手順書が必要
- 実行忘れが問題になる
- 結果が記録・報告に使われる
- 開発者が不在になると業務が止まる
対策
- 個人利用 → 個人ツールでよい
- 業務利用 → 業務として設計し直す
ここで初めて、
どのアプリケーション・システムで開発するか
といった選択の議論が意味を持ちます。
まとめ
大前提として 「個人利用」と「業務利用」は明確に分けるべき
- 境界線は 人数や規模ではなく、責任と影響
- 境界を越えた瞬間、ツール選定はやり直さなければならない
- 技術の問題ではなく、判断の問題