モバイルゲーム開発者の皆様、こんにちは。
市場に投入されるモバイルゲームの品質を左右するリリース前の検証プロセスは、多岐にわたる機能と多様なプラットフォームへの適応性を考慮する必要があり、その重要性は論を俟ちません。
本稿では、リリースを迎えるモバイルゲームにおいて、品質保証の観点から特に注力すべき機能群、検証カテゴリ、そしてそれらが重要となる根源的な理由と背景について、以下に整理しました。
最も気をつけなければならない機能と検証カテゴリ
その1 ゲームプレイの根幹機能
検証カテゴリ
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操作性
- 意図した操作ができるか
- レスポンスは良いか
- 誤操作が起きないか
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ゲームルールとロジック
- ゲームのルールが正しく実装されているか
- 意図しない挙動や矛盾がないか
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ゲームバランス
- 難易度、敵の強さ、アイテムの出現率、成長要素などが適切に調整されているか
- 序盤、中盤、終盤で飽きさせないバランスになっているか
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バグとクラッシュ
- ゲーム進行を妨げる重大なバグ、グラフィックの崩壊、強制終了などが起こらないか
モバイルゲームの根幹であり、面白さやユーザー体験に直結します。これらの機能に問題があると、ユーザーはすぐに離れてしまう可能性が高いため、最優先で徹底的に検証する必要があります。
その2 課金・ストア連携機能
検証カテゴリ
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課金処理
- 意図したアイテムや通貨が購入できるか
- 決済は正常に完了するか
- 購入履歴は正しく反映されるか
- 異なる決済手段(クレジットカード、キャリア決済、電子マネーなど)での動作確認
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通貨・アイテム管理
- 購入した通貨やアイテムが正しくアカウントに付与され、消費されるか
- 残高表示は正しいか
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ストア連携 (App Store/Google Playなど)
- アプリのダウンロード、インストール、アップデートが正常に行えるか
- ストアページの情報(タイトル、説明、スクリーンショットなど)は正確か
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広告表示
- 広告が正しく表示されるか
- 意図しないタイミングで表示されないか
- 広告視聴後の報酬は正しく付与されるか
モバイルゲームの収益源であり、不正な課金や決済エラーはユーザーからの信頼を失い、経済的な損失に繋がります。ストアの規約に違反するような実装は、アプリの公開停止やアカウントBANのリスクがあります。
その3 アカウント・認証機能
検証カテゴリ
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ログイン・ログアウト
- スムーズにログイン・ログアウトができるか
- 異なるアカウントでの切り替えは可能か
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アカウント連携
- SNSアカウントやプラットフォームアカウントとの連携が正しく機能するか
- 連携による特典は正しく付与されるか
- 連携解除ができるか
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パスワードリセット・アカウント復旧
- パスワードを忘れた場合の再設定可能か
- アカウントがロックされた場合の復旧手段が用意されているか
ユーザーがゲームを安全に利用するための基盤です。アカウント情報が漏洩したり、ログインできなくなったりする問題は、ユーザーに大きな不利益を与え、ゲームの信頼性を損ないます。
その4 ネットワーク機能
検証カテゴリ
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オンライン対戦・協力プレイ
- 他のプレイヤーとの対戦や協力プレイがスムーズに行えるか
- ラグや切断が発生しないか
- マッチングは適切に行われるか
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ランキング
- スコアが正しくランキングに反映されるか
- 不正なスコアの登録を防ぐ仕組みがあるか
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データ同期
- ゲームの進行状況やアカウント情報がサーバーと正しく同期されるか
- 異なるデバイス間でのデータ移行は可能か
近年、多くのモバイルゲームがオンライン要素を取り入れています。不安定なネットワーク環境はユーザーの不満に繋がりやすく、オンライン対戦での不正行為はゲームバランスを崩壊させる可能性があります。
その5 ローカライズ・言語対応
検証カテゴリ
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テキスト表示
- ゲーム内のテキストが正しく表示されるか
- 翻訳は自然で正確か
- フォントやUIレイアウトは各言語に対応しているか
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音声・効果音
- 音声や効果音が正しく再生されるか
- 言語設定に応じて音声が切り替わるか
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データ同期
- ゲームの進行状況やアカウント情報がサーバーと正しく同期されるか
- 異なるデバイス間でのデータ移行は可能か
グローバル展開を視野に入れる場合、多言語対応は必須です。不自然な翻訳や表示のずれは、ユーザー体験を大きく損ない、ゲームの印象を悪くする可能性があります。
その6 パフォーマンス・安定性
検証カテゴリ
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動作速度
- ゲームがスムーズに動作するか
- 処理落ちやカクつきがないか
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ロード時間
- 画面遷移やゲーム開始時のロード時間が適切か
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バッテリー消費
- バッテリーの消費量が過剰でないか
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データ通信量
- 通信量が過剰でないか(特にモバイルネットワーク環境下)
モバイルデバイスはスペックに限りがあるため、最適化が重要です。動作が遅かったり、バッテリーをすぐに消費したりするゲームは、ユーザーにストレスを与え、プレイをやめてしまう原因になります。
その7 アクセシビリティ
検証カテゴリ
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字幕表示
- 字幕のオン・オフ機能
- 表示サイズ
- 色の調整などが可能か
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コントロールのカスタマイズ
- ボタン配置や操作方法をユーザーがカスタマイズできるか
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色覚サポート
- 色覚特性を持つユーザーにもプレイしやすいように、色の調整や代替手段が用意されているか
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データ通信量
- 通信量が過剰でないか(特にモバイルネットワーク環境下)
より多くのユーザーがゲームを楽しめるようにするための配慮です。近年、アクセシビリティへの意識が高まっており、対応することでユーザー層を広げることができます。
その8 ソーシャル機能
検証カテゴリ
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友達招待
- 友達をゲームに招待できるか
- 招待による特典は正しく付与されるか
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シェア機能
- ゲームの成果や情報をSNSなどに共有できるか
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コミュニティ機能
- ゲーム内でのチャットやギルド機能などが正常に動作するか
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データ通信量
- 通信量が過剰でないか(特にモバイルネットワーク環境下)
ユーザー間の交流を促進し、ゲームの拡散や継続率向上に貢献します。
そのほか考慮すべき点
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プラットフォーム固有の機能や制約
- iOSのGame CenterやAndroidのGoogle Play Gamesとの連携など、各プラットフォームが提供する機能との連携も検証が必要です
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利用規約・プライバシーポリシー
- ゲーム内から利用規約やプライバシーポリシーが確認できるか、内容に問題がないかなども確認しましょう
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アップデート機能
- アプリのアップデートがスムーズに行えるか
- アップデート後のデータ移行や互換性に問題がないかなども検証が必要です
これらの機能やカテゴリを網羅的に検証することで、ユーザーに高品質で快適なモバイルゲーム体験を提供できるようになります。検証の際には、ユーザー視点を持ち、様々なプレイスタイルや環境を想定することが重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回の記事が、これからモバイルゲームのQAに携わる方や、より深く理解したい皆様にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
皆様の業務にわずかながらでも貢献できたなら、筆者としてこれ以上の喜びはありません。
いろんなチームが一丸となってサービスを作り上げる、その後半戦に検証業務はあります。
いずれのカテゴリの検証も大事ですが、中でも「その2 課金・ストア連携機能」について掘り下げていこうと思います。
いっぱいあって大変だ〜‼️
っていうのをポジティブ変換して、色とりどりのパフェで〆たいと思います。