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毎週の自主企画Lighting Talkから逃げた男の末路

Last updated at Posted at 2024-12-05

はじめに

 この記事はマナビDX Questで得たもの Advent Calendar 2024 5日目の記事です。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)は、単なる技術取り入れることにとどまりません。それは、私たちの暮らし、働き方、そして社会全体を根本から変革する可能性を秘めた動きです。

 しかし、DXの推進には、単なる技術の導入や企業の努力だけでは不十分です。少子高齢化や人口減少といった日本社会が抱える深刻な課題に対処するためには、政府、企業、そして個人が手を取り合い、アプローチしていく必要があります。

 そんな中で注目されるのが 「DXにおけるボランティア」の役割です。

 DX活動に関するボランティア活動は、政府や企業が届きにくいところに手を差し伸べ、市民一人ひとりの力を集めることで、社会の隅々にまでDXの恩恵を行き渡らせる可能性を持っています。DXをただの概念に留めず、人々の日常に溶け込ませるのは、ボランティアの主体的な行動とつながりがカギなります。

 本記事では、私がボランティアとして経済産業省主催の「マナビDXクエスト」取り組んだ実体験をもとに、成功したことや課題となった点を詳しく紹介します。
そして、ボランティアがどのようにDXの推進力となり得るのか、その可能性を探っていきます。

「技術は人を幸せにできるのか?」という問いを胸に、私たちが共に未来を築くヒントを見つけられることを願っています。

日本で起こっていること、求められていること

求められるDX社会

 日本社会が直面する課題は年々複雑さを増しています。その中でも特に深刻なのが「少子高齢化による生産年齢人口の減少」です。労働力の中心となる20代から60代の人口は年々減少しており、それに伴い社会全体の経済活動が縮小するリスクが高まっています。現状のままでは、労働力不足が企業の成長を阻み、持続可能な社会の実現が困難になることは避けられません。こうした状況に対処するため、デジタル技術を活用して業務を効率化し、限られた人材で最大限の成果を生む必要があります。

 さらに、日本が直面するもう一つの課題は「労働生産性の向上」です。国際的に見ても、日本の労働生産性は主要国の中で低い水準にあります。多くの企業が属人的な業務に依存し、非効率的なプロセスが長年にわたって続いていることが要因です。DXを通じて業務プロセスを抜本的に見直し、AIやロボット、自動化ツールを導入することで、人間がより創造的な業務に集中できる環境を整えることができます。
 これにより、労働力が減少しても、社会全体の生産性を維持し、さらには向上させることが可能になります。

 これらの課題に対応するためには、単に新しい技術を導入するだけでなく、 社会全体の意識改革と制度の再構築が必要です。DXは、技術とともに人々の働き方や価値観を根本から変える可能性を秘めています。それは、少子高齢化の課題を克服し、日本経済を再び活気づける大きな鍵となるでしょう。

しかし、進まないDXの現状

 デジタルトランスフォーメーション(DX)が日本社会において進展していません。この現状は、経済学的視点で見ると「市場の失敗」の一形態として考えられます。
 「市場の失敗」とは、市場メカニズムだけでは効率的な資源配分が達成されない状況を指します。DX推進における市場の失敗は、主に外部性、情報の非対称性、公共財の性質といった要因によって説明できます。

1. 外部性の存在

 DXは、単なる企業内部の効率化にとどまらず、社会全体に大きな影響を及ぼします。たとえば、AIやITを活用した業務自動化によって、個々の企業が生産性を向上させることは、他の企業や社会全体の競争力の向上にもつながります。
 しかし、こうした利益(正の外部性)は企業だけでは十分に評価されておらず、そのために各企業が自社内でDX推進のコストを正当化するのが難しい状況に陥っています。

2. 情報の非対称性

 DXに必要な技術や知識は、専門性が高く理解が難しいため、企業や個人が十分な情報を持たない場合があります。特に中小企業では、どのような技術を導入すればよいのか、具体的な効果は何か、といった情報が不足しているため、リスクを恐れて投資を控える傾向があります。
 この情報の非対称性は、DXの導入を妨げる大きな要因となっています。

3. 公共財としてのDX推進

 DXは、成功事例の共有などをすることで個々の企業や組織の利益を超え、社会全体の進化に寄与する性質を持っています。この意味で、DX推進は公共財に近い性質を帯びています。
しかし、公共財は「無償で利用できる」「排他性が低い」といった特徴を持つため、誰もが恩恵を受ける一方で、誰もDXの恩恵を受けるだけにとどまり、主体的に進めることをしないとしないという「フリーライダー問題」が発生しがちです。
 このため、DX推進のための投資が社会全体で不足している現状が生じています。

DXを進めるための施策
  「マナビDXクエスト」

 そのような背景のもと、この現状を打開する政策施策として「マナビDXクエスト」が開催されています。
 本事業は、受講料無料でDXの担い手になるスキルを身につけることができる経済産業省の事業です。この事業の魅力の一つは、ケーススタディ教育プログラムです。これは、実際の企業事例をもとにしたケース スタディ教材を用いて受講生が 架空の企業へのデジタル技術導入を疑似 体験するオンライン学習プログラムです。

 このプログラムでは、自分の考えた企業課題の特定や、その解決策を意思決定者にプレゼンするという形でコンペが開催されます

「マナビDXクエスト」2年生として

 去年から引き続き参加したことにより、勝手がわかってきたこともあり、今年度参加するには、DXを広めるためのボランティアとして何ができるかを考え、望むことにしました。結果、今回は2つのことを実施することにしました。

SNS(X)での広報活動し、学びを広める

 マナビDXクエストでは、DXの基礎から実践的な課題解決までを学べる様々なプログラムが提供されています。それらからどのようどのようなものを学べるかを簡潔に紹介しました。
 マナビDXクエストでは、Signate様のオンライン講義を利用することで、様々なスキルがありますが、どれをどう学べばいいかがなかなかイメージがつきにくいです。そのため、学習して得られたものを概要発信しました。


ライトニングトーク(LT)の開催:PBLを題材にした交流の場作り

 DX推進のためには、個々の学びやスキルを共有し合う場が必要です。そこで私は、PBL(Project-Based Learning)を題材にしたライトニングトーク(LT)を企画・開催しました。LTは短時間で行うプレゼンテーション形式のイベントで、参加者がお互いの知識や経験を共有する場として機能します。

PBLを題材に選んだ理由

DXに関する知識やスキルは、実践を通じてこそ本物になります。PBLは、実際の課題を題材にしたプロジェクト形式で学ぶ方法であり、DXの現場で求められる課題解決能力を磨く絶好の機会を提供します。

ライトニングトークの進行

各参加者が5〜10分のプレゼンテーションを行い、自身のPBLの成果や学びを共有しました。たとえば、「データ分析による地域商店街の売上向上施策」や「AIを活用した地域交通問題の解決」といった具体的な事例が取り上げられました。

交流の仕組み

プレゼン後は質疑応答の時間を設け、他の参加者が抱える課題についてアドバイスを提供するなど、双方向の意見交換が活発に行いました。特に、Signate様が提供するコンテンツで使えそうな内容を共有し、楽手を促すなどの活動を行いました。

ボランティアに挑戦して見えた成功と課題

【うまくいったこと】
アウトプットによるPBL課題の深堀

 ライトニングトークを成功させるために、ChatGPTをはじめとするAIを活用してLT用の資料を毎週作成するようにしました。選んだテーマは、「文化資産(日本庭園等)の展示を中心に店舗運営事業を行う企業における、来客数減少等の課題について検討を実施」というPBLの題材であり、日本庭園を運営する企業の施策を調査しました。

 この内容のライトニングトークを実施するためんじ業界の料金体系や施策を調べ、データを整理しました。このプロセスを通じて、料金設計の基本的な考え方や顧客層の違いによる施策の変化を理解しました。

 そして調べた内容について、プレゼン用スライドを効率的に作るために、AIツールを使用し、調査結果を分かりやすくビジュアル化しました。

 この活動により、調査から資料作成、発表練習まで一貫して行うため、非常に学びが深く、成果物も納得のいくものでした。

【見えてきた課題】
孤独な発表と負担の大きさ

しかし、成功の影には課題もありました。特に、以下の点が反省材料として挙げられます:

1. 参加者の少なさ

 ライトニングトークは「誰でも参加できる場」として企画しましたが、私自身の誘い方が弱かったため、毎週私一人だけが発表するという奇妙な状況になりました。本来は、他の参加者の発表を通じて互いの知見を共有することが目的でしたが、それを達成できず、孤独な場となってしまいました。

2. 作業負担の大きさ

 1回の発表のために、AIを活用しても週に4~5時間の準備時間が必要でした。調査や資料作成に多くの時間を費やした結果、他の活動、特にSNS発信を一時中断せざるを得なくなりました。これは、一人で運営し続けることの負担がいかに大きいかを実感するきっかけとなりました。

3. エンパワーメントの不足

 他の人を巻き込むための工夫が足りず、参加者を増やすことができなかった点も反省です。LTの魅力をもっと積極的に伝えたり、そこまで調査や資料作りせず、簡単なテーマでも参加できるような雰囲気づくりをすべきでした。

おわりに

 マナビDXクエストも三年目に突入し、参加者の間で新たな文化や伝統が少しずつ形成されています。

 その中でも特に印象的なのが、「逃げれば一つ、進めば二つ」という名言です。もともとは、「機動戦士ガンダム 水星の魔女」で使われていた言葉ですが、これは、マナビDXクエストでは、この言葉を大切にしているという文化があります.

参考記事:「翔んでマナビ受講生、進めば2つ」

 挑戦を躊躇したとしても何かを得ることがあり、逆に前進すればさらに多くの経験や成果が得られるという、私たちの実践を象徴する言葉です。この観点から、今回の活動について、逃げた結果と進んだ結果の両方の観点から、振り返りたいと思います。

逃げた結果、得られたもの

 今年、私が「逃げた」と言えるのは、SNSの本格運用や他の参加者への積極的な働きかけを躊躇した場面です。当初、SNSでの情報発信を継続することや、コミュニティ内で他のメンバーを巻き込むことに自信が持てず、結果的にその取り組みを断念してしまいました。

 しかし、この「逃げた」経験からも学びがありました。例えば、次のような成果を得られたのです:

1.課題の深掘り
 自分自身で取り組む時間が増えたため、課題についてより深く考え、解決策をじっくり練ることができました。結果として、ライトニングトークでの発表内容は質の高いものとなり、評価を受けることができました。

2.他者の支援への信頼
 私が主導する場面が多かったにもかかわらず、活動の中では、Signate様が提供するコンテンツで使えそうな教材の紹介や、自分が直接対応できないときでも有益な記事を共有することで、PBLを進める上で役立ったというコメントを頂きました。このようなフィードバックを通じて、間接的であっても他者のプロジェクト推進を支援できたことに大きな意義を感じています。

進んだ結果、得られたもの

経験値の向上

 課題に取り組み、毎週ライトニングトークを開催する中で、知識やスキルが確実に向上していることを感じました。特に、プレゼンテーションスキルや課題解決能力は大きく成長しました。

プライドの補強

 毎週トークを継続的に開催する中で、「どんな状況でもやり抜く」という自己信念が強まりました。たとえ周りの参加者が少なくても、自分自身でできる限りの準備をすることで、自信と誇りを持つことができました。

信頼関係の構築

 今年度の最終的な優秀者発表において発表したところ、LT参加メンバーから「あなたが発表してくれると思っていた」と言ってくれたことで、自分が築いた信頼の重みを感じました。これこそが、進み続けることで得られた最大の成果だったと感じています。

「逃げても進んでも得るものがある」というマナビ

 今回のボランティアの経験を通じて、「逃げれば一つ、進めば二つ」という言葉の意味を実感しました。逃げたとしても何かを学び、進めばさらに多くの成果が得られる。どちらも成長につながるのだと気づいたのです。
 これから参加する皆さんには、ぜひこの精神を大切にしていただきたいと思います。失敗を恐れず、一歩でも半歩でも前に進むことが、必ず新たな気づきや成長につながります。DX推進という大きなテーマの中で、私たちが共に学び、成長できることを楽しみにしています。

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