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📊連載第17回!初心者のためのExcel VBA入門:辞書型(Dictionary)って何?🤔 超入門!キーと値でデータ管理を楽にしよう✨

Last updated at Posted at 2025-06-03

Excel VBAにおける辞書型(Dictionary)の活用と応用テクニック

私はVBAの活用経験を通じて得た知識を整理し、共有する目的で記事を作成しているプログラミング歴1年半になるエンジニアです。前回は、Excel VBAにおけるコレクションの活用と応用テクニックについて詳しく説明しました。今回は、前回予告した「辞書型(Dictionary)」の活用と応用テクニックについて解説します。特に実務での大量データの高速処理、複雑なデータ構造の管理、キーと値のペアによる効率的なデータアクセスに焦点を当て、実践的な活用例を紹介します。

目次

はじめに

前回は、Excel VBAにおける「コレクション」について解説し、要素の動的な追加・削除が可能なデータ構造の基本と応用テクニックを解説しました。今回紹介する「辞書型(Dictionary)」は、コレクションと似た機能を持ちながらも、より高速な検索や豊富なメソッドを備えたデータ構造です。

辞書型は、キーと値のペアでデータを管理できるため、大量データの高速処理やデータベースのように複雑なデータ構造を扱う際に非常に役立ちます。特に、実務では重複のないユニークな値(商品コード、顧客ID、社員番号など)をキーとして使用し、関連する詳細情報を値として持たせる場面が多くあります。

辞書型(Dictionary)とは

辞書型(Dictionary)は、キーと値のペアでデータを格納・管理するデータ構造です。実生活で例えると、国語辞典のように「単語(キー)」に対して「意味(値)」が関連付けられているイメージです。Pythonの辞書型やJavaScriptのオブジェクトに類似した機能を持ち、VBAプログラミングでより強力なデータ管理を可能にします。
辞書型オブジェクトは、Microsoft Scripting Runtimeライブラリに含まれるコンポーネントで、VBAで使用する際には参照設定が必要です。これは、標準のVBAライブラリには含まれていないためです。

辞書型の基本的な特徴

  1. キーと値のペア: それぞれの要素はキーと値のペアで構成されます
  2. 高速アクセス: キーを使った要素へのアクセスが非常に高速です
  3. 多様なキータイプ: 文字列だけでなく、数値やオブジェクトなど様々な型をキーとして使用できます
  4. 豊富なメソッド: Exists、Keys、Items、Removeなど、便利なメソッドを多数提供します
  5. 大文字小文字の区別: キーの大文字小文字を区別するかどうかを設定できます

辞書型の主なユースケース

  • マスターデータの高速検索: 商品マスター、顧客マスターなど、頻繁に参照される大量データの管理
  • データの関連付け: 異なるデータセット間の関連付け(例:社員コードと社員情報)
  • 複雑なデータ構造の管理: 階層的なデータ構造(組織図、製品カテゴリなど)の実現
  • 集計・統計処理: キーごとの集計値を保持し、リアルタイムに更新
  • キャッシュデータの管理: 頻繁にアクセスされるデータを一時的に保存し、処理速度を向上
  • 重複排除: ユニークな値の管理や重複の検出

コレクションと辞書型の違い

前回解説したコレクションと辞書型は似ていますが、いくつかの重要な違いがあります。

特性 コレクション 辞書型
参照設定 標準で利用可能 Microsoft Scripting Runtimeが必要
キー値のチェック Existsメソッドなし Existsメソッドあり
全キー取得 直接的な方法なし Keysメソッドで一括取得可能
全値取得 直接的な方法なし Itemsメソッドで一括取得可能
キーの型 文字列のみ 多様な型に対応
大文字小文字の区別 常に区別する CompareMode設定で変更可能
アクセス速度 要素数が多いと遅い ハッシュテーブル方式で高速 
(キーと値のペアで管理するデータ方式)
メモリ効率 高い やや低い
コード可読性 シンプル より柔軟で機能的

パフォーマンス面の比較

特性 コレクション 辞書型
アクセス速度(少量データ) 速い 速い
アクセス速度(大量データ) 要素数が増えると遅くなる ハッシュテーブル方式で常に高速
メモリ効率 高い やや低い(ハッシュテーブル管理のオーバーヘッド)
要素追加速度 非常に速い やや遅い(ハッシュ計算が必要)
要素検索速度 線形検索(O(n)) ハッシュ検索(O(1))

これらの比較から、辞書型は特に「要素の検索・参照が頻繁に行われる大量データ」の処理に向いていることが分かります。一方、シンプルなデータ構造や、追加順序が重要な場合にはコレクションが適しています。

辞書型とコレクションの選択基準

辞書型を選ぶべき場合

  1. データ量が多い場合(数百〜数千件以上)
    辞書型はハッシュテーブルを利用した高速検索ができるため、大量データに適しています。

  2. 頻繁に要素の検索・参照を行う場合
    Existsメソッドで要素の存在確認が簡単かつ高速です。

  3. 複雑なデータ構造を扱う場合
    辞書型内に辞書型や配列を入れ子にできるため、複雑なデータ構造の実現に適しています。

  4. キーと値のペアとしてデータを管理したい場合
    データが自然にキーと値のペアとして表現される場合(例:社員ID→社員情報、商品コード→商品詳細など)、辞書型の方が直感的です。

コレクションを選ぶべき場合

  1. シンプルな実装が必要な場合
    追加の参照設定なしで標準で利用可能なため、導入が簡単です。

  2. 少量のデータを扱う場合(数十件程度)
    少量データなら処理速度の差は実用上問題になりません。

  3. メモリ効率が重要な場合
    辞書型よりもメモリ使用量が少ないです。

  4. 要素の順序が重要な場合
    追加順序を保持したり、特定の位置に要素を挿入したりする必要がある場合は、コレクションが適しています。

辞書型の参照設定方法

辞書型を使用するには、最初に「Microsoft Scripting Runtime」への参照設定が必要です。この設定はVBEのツールメニューから行います。

Excel VBAで「Microsoft Scripting Runtime」を使用するための参照設定方法について、スクリーンショット付きの設定手順を見たい方は第10回: Excel VBAにおけるFileSystemObjectを活用した高度なファイル操作をご覧ください。
ここでは同じライブラリに含まれるFileSystemObjectを解説しています。

参照設定の手順

  1. VBEエディタを開きます(Alt + F11)
  2. メニューから「ツール」>「参照設定」を選択します
  3. 表示される一覧から「Microsoft Scripting Runtime」にチェックを入れます
  4. 「OK」をクリックして設定を完了します

参照設定が完了すると、VBAコード内で辞書型オブジェクトを宣言できるようになります。

' 参照設定後に辞書型オブジェクトを宣言
Dim dict As New Dictionary  ' 辞書型変数を宣言

参照設定の確認

参照設定がされていないマクロブックで辞書型を使用すると、「ユーザー定義型は定義されていません」というエラーが発生します。

image.png

辞書型の基本操作

辞書型はシンプルですが強力なメソッドとプロパティを持っており、これらを使いこなすことで効率的なデータ管理が可能になります。

要素の追加方法(2種類)

辞書型に要素を追加するには、主に2つの方法があります。

  1. Addメソッド:新しいキーと値のペアを追加します。既に存在するキーを指定するとエラーになります。

    ' Addメソッドでの追加
    Dim productDict As New Dictionary
    productDict.Add "A001", "ノートPC"     ' キー "A001" に値 "ノートPC" を関連付け
    
  2. Itemプロパティによる設定:キーが存在しない場合は新規追加、存在する場合は値を更新します。

    ' Itemプロパティでの追加または更新
    productDict("B002") = "プリンタ"       ' キー "B002" に値 "プリンタ" を関連付け
    

これら2つの方法は、既存キーへの対応が異なります。安全に要素を追加または更新したい場合は、Existsメソッドと組み合わせて使うことが推奨されます。

要素の取得と更新

辞書型の要素にアクセスするには、キーを指定します。

' 要素の取得
Dim productName As String
productName = productDict("A001")        ' "ノートPC" が取得される

' 別の書き方(Itemプロパティを明示的に使用)
productName = productDict.Item("A001")   ' 同じく "ノートPC" が取得される

' 要素の更新
productDict("A001") = "高性能ノートPC"    ' 値を更新

存在しないキーにアクセスするとエラーが発生するため、安全にアクセスするにはExistsメソッドでキーの存在確認を行うことが重要です。

要素の存在確認(Exists)

辞書型の最も強力な機能の一つが、Existsメソッドによるキーの存在確認です。

' キーの存在確認
If productDict.Exists("A001") Then
    ' キーが存在する場合の処理
    Debug.Print "商品A001: " & productDict("A001")
Else
    ' キーが存在しない場合の処理
    Debug.Print "商品A001は登録されていません"
End If

コレクションでは同様の機能が提供されておらず、エラーハンドリングを使って間接的に確認する必要がありますが、辞書型ではこの単純なメソッドで簡潔に記述できます。実務ではこの機能が非常に重宝します。

要素の削除(Remove, RemoveAll)

辞書型からの要素削除には2つのメソッドが用意されています。

' 特定の要素を削除
productDict.Remove "A001"           ' キー "A001" の要素を削除

' すべての要素を削除
productDict.RemoveAll                ' 辞書内のすべての要素を削除

存在しないキーを指定してRemoveを呼び出すとエラーになるため、安全に削除するにはExistsメソッドとの組み合わせが推奨されます。

要素数の取得(Count)

辞書型内の要素数はCountプロパティで取得できます。

' 要素数の取得
Dim itemCount As Long
itemCount = productDict.Count        ' 辞書内の要素数を取得

これらの基本操作を組み合わせることで、多様なデータ管理シナリオに対応できます。特にExistsメソッドを活用することで、安全で効率的なコードを書くことができます。

辞書型の高度な機能

辞書型は基本操作だけでなく、より高度なデータ管理を可能にする機能も提供しています。これらの機能を活用することで、より洗練されたアプリケーションの開発が可能になります。

キーと値の一括取得(Keys, Items)

辞書型の大きな特長の一つは、すべてのキーと値を一括で取得できることです。これにより、辞書内のすべての要素に対して処理を行うことが容易になります。

' すべてのキーを取得
Dim allKeys As Variant
allKeys = myDict.Keys           ' キーの配列を取得

' すべての値を取得
Dim allValues As Variant
allValues = myDict.Items        ' 値の配列を取得

取得したKeysとItemsは配列として返され、同じインデックスの要素が対応するキーと値のペアになります。これらは0から始まるインデックスを持つため、辞書型のCount-1までループさせる必要があります。

これらの機能を活用すると、次のようなことが可能になります。

  1. 辞書内の全要素の列挙:報告書やログ出力などに使用
  2. キーまたは値に基づいたソート:特定の順序でデータを表示
  3. 複数辞書間のキー比較:差分抽出や同期処理

大文字小文字の区別設定(CompareMode)

辞書型ではキーの比較方法をCompareMode プロパティで設定できます。これにより、大文字小文字を区別するかどうかを制御できます。

' 大文字小文字を区別する設定(デフォルト)
myDict.CompareMode = BinaryCompare   ' "ABC" と "abc" は別のキーとして扱われる

' 大文字小文字を区別しない設定
myDict.CompareMode = TextCompare     ' "ABC" と "abc" は同じキーとして扱われる

この設定は辞書型の作成直後、要素を追加する前に設定する必要があります。既に要素が追加された後では変更できません。

実務では、例えば以下のようなケースでTextCompareが役立ちます。

  • ユーザー入力のキーワード検索(大文字小文字の違いを無視)
  • コード体系が大文字・小文字混在している場合のマスタ参照
  • ファイル名やURLをキーとする場合(Windowsはファイルパスで大文字小文字を区別しない)

複雑なデータ構造の構築

辞書型の値として、配列や別の辞書型、さらにはオブジェクト参照を格納できます。これにより、複雑な階層構造のデータを表現することが可能です。

例えば、部署ごとの社員データを管理する入れ子辞書構造。

' 部署データ(キー:部署名、値:社員辞書)
Dim departments As New Dictionary

' 営業部の社員データ(キー:社員ID、値:社員情報配列)
Dim salesDept As New Dictionary
salesDept.Add "S001", Array("山田太郎", 35, "営業部長")

' 部署辞書に社員辞書を追加
departments.Add "営業部", salesDept

このような構造により、部署→社員→詳細情報 という階層アクセスが可能になります。

' 営業部の山田太郎さんの名前にアクセス
Dim employeeName As String
employeeName = departments("営業部")("S001")(0)   ' "山田太郎" が取得される

このような複雑なデータ構造は、JSON形式のデータに似ており、次のようなシナリオで威力を発揮します。

  1. 組織構造の表現:部門、チーム、メンバーなどの階層構造
  2. カテゴリ分類:商品カテゴリとその下位カテゴリ、商品の階層
  3. 設定情報の管理:グループ化された設定値の管理

階層構造を持つデータは、扱いが複雑になりがちですが、辞書型を使うことで直感的に操作できるようになります。

辞書型の主なメソッドとプロパティ一覧

メソッド一覧

メソッド 説明 基本的な使い方
Add キーと値のペアを辞書に追加します dict.Add "キー", "値"
Exists 指定したキーが辞書に存在するかどうかを確認します dict.Exists("キー")
Items すべての値を配列として取得します values = dict.Items
Keys すべてのキーを配列として取得します keys = dict.Keys
Remove 指定したキーの要素を削除します dict.Remove "キー"
RemoveAll すべての要素を削除します dict.RemoveAll

プロパティ一覧

プロパティ 説明 基本的な使い方
Count 辞書内の要素数を取得します elementCount = dict.Count
Item 指定したキーの値を取得または設定します value = dict.Item("キー") または dict("キー") = "新しい値"
CompareMode キー比較の方法を設定または取得します dict.CompareMode = TextCompare

辞書型の基本的な使用例

' 新しい辞書を作成し、基本操作を行う例
Sub DictionaryBasicUsageExample()
    ' 新しい辞書オブジェクトを作成します
    Dim userSettings As New Dictionary
    
    ' CompareMode を設定します(辞書作成直後に設定する必要があります)
    userSettings.CompareMode = TextCompare  ' 大文字小文字を区別しません
    
    ' 要素を追加します
    userSettings.Add "username", "山田太郎"  ' キー "username" に値 "山田太郎" を関連付けます
    userSettings.Add "theme", "dark"        ' キー "theme" に値 "dark" を関連付けます
    userSettings.Add "fontSize", 12         ' キー "fontSize" に値 12 を関連付けます
    
    ' 値を取得します("山田太郎" が表示されます)
    Debug.Print "ユーザー名: " & userSettings("username")
    
    ' 値を更新します(テーマを "light" に変更します)
    userSettings("theme") = "light"
    
    ' キーの存在を確認してから操作します
    If userSettings.Exists("language") Then
        Debug.Print "言語設定: " & userSettings("language")
    Else
        ' キーが存在しない場合は追加します
        userSettings("language") = "日本語" ' 新しいキーと値のペアを追加します
        Debug.Print "言語設定を追加しました: " & userSettings("language")
    End If
    
    ' 要素の数を取得します(4が表示されます)
    Debug.Print "設定項目数: " & userSettings.Count
    
    ' すべてのキーと値を一覧表示します
    Dim keys As Variant
    Dim values As Variant
    keys = userSettings.Keys              ' すべてのキーを配列として取得します
    values = userSettings.Items           ' すべての値を配列として取得します
    
    Debug.Print "--- 現在の設定一覧 ---"
    Dim i As Long
    For i = 0 To userSettings.Count - 1   ' インデックスは0から始まります
        ' キーと値のペアを表示します
        Debug.Print keys(i) & ": " & values(i)
    Next i
    
    ' 特定の要素を削除します
    userSettings.Remove "fontSize"       ' "fontSize" キーとその値を削除します
    
    ' 全要素を削除します
    userSettings.RemoveAll
End Sub

このように辞書型には様々なメソッドとプロパティがあり、これらを組み合わせることで効率的なデータ管理が可能になります。特に、Existsメソッドとキー操作を組み合わせたパターンは実務でよく使用されます。

辞書型のエラーハンドリング

辞書型の操作で発生しやすいエラーとその対処法について解説します。適切なエラーハンドリングは、堅牢なアプリケーションを構築するために不可欠です。

一般的なエラーと対策

1. キーの重複エラー

同じキーを使って複数回Addメソッドを呼び出すと、「このキーは既にこのコレクションの要素に割り当てられています。」というエラー(実行時エラー '457')が発生します。

image.png

エラー発生コード
dict.Add "キー1", "値1"
dict.Add "キー1", "値2"    ' エラー発生!
安全な実装
' 既存キーかどうかを確認してから追加
If Not dict.Exists("キー1") Then
    dict.Add "キー1", "値1"    ' 新規追加
Else
    dict("キー1") = "値2"      ' 値の更新
End If

このパターンは、辞書型でデータを管理する際の基本的なアプローチです。特に外部データを取り込む場合など、キーの重複可能性がある場面では必須のテクニックになります。

2. 存在しないキーへのアクセス

辞書型に存在しないキーを指定すると、Empty 値(数値型の場合は0、文字列型の場合は"")が返されます。

不適切な実装
value = dict("存在しないキー")    ' エラー発生!
安全な実装
' キーの存在を確認してからアクセス
If dict.Exists("キー") Then
    value = dict("キー")         ' 安全にアクセス
Else
    ' キーが存在しない場合の代替処理
    value = "デフォルト値"        ' デフォルト値を使用
End If

このパターンは特に、外部から指定されたキーや動的に生成されたキーを使用する場合に重要です。

3. 辞書オブジェクトの未初期化

辞書型変数を宣言した後、Newで初期化せずにメソッドを呼び出すと、「オブジェクト変数または With ブロック変数が設定されていません。」というエラー(実行時エラー '91')が発生します。

image.png

エラー発生コード
Dim dict As Dictionary    ' 宣言のみ
dict.Add "キー1", "値1"   ' エラー発生!
安全な実装
' 辞書オブジェクトを初期化してから使用
Dim dict As Dictionary
Set dict = New Dictionary   ' 初期化
dict.Add "キー1", "値1"     ' 正常に動作

または、宣言時に初期化する方法もあります:

Dim dict As New Dictionary   ' 宣言と同時に初期化
dict.Add "キー1", "値1"      ' 正常に動作

エラーハンドリングのベストプラクティス

  1. キー操作前の存在確認
    キーにアクセスする前に必ずExistsメソッドで存在確認を行いましょう。これにより、実行時エラーを防ぎ、プログラムの堅牢性が向上します。

  2. データ投入時の重複処理方針の明確化
    データを辞書に投入する際は、キーの重複があった場合にどう処理するかをあらかじめ決めておきましょう(例:上書き、スキップ、エラー記録など)。

  3. 辞書操作のラッパー関数の作成
    頻繁に使用する操作(安全な取得、安全な追加など)はラッパー関数として実装すると、コードが簡潔になり、ミスも減ります。

    ' 辞書型から安全に値を取得するための関数
    ' dict: 値を取得したい辞書型オブジェクト、key: 取得したい値のキー、
    ' defaultValue: キーが存在しない場合に返す初期値
    Function SafeGetValue(dict As Dictionary, key As Variant, _
                Optional defaultValue As Variant = "") As Variant
                
       ' 辞書内にキーが存在するか確認する
       If dict.Exists(key) Then
           ' キーが存在する場合はその値を戻り値とする
           SafeGetValue = dict(key)
       Else
           ' キーが存在しない場合はデフォルト値を戻り値とする
           SafeGetValue = defaultValue
       End If
       
    End Function
    
  4. エラー状態の管理
    On Error Resume Nextを使用してエラーを無視する場合は、必ずエラー状態をチェックし、Err.Clearでリセットしましょう。また、処理が終わったらOn Error GoTo 0で通常のエラーハンドリングに戻すことも重要です。

  5. トランザクション的な操作
    複数の辞書操作を一連の処理として行う場合は、失敗時に元の状態に戻せるよう、変更前の状態を保存しておくことも検討しましょう。

まとめ

Excel VBAにおける辞書型(Dictionary)は、キーと値のペアでデータを管理する非常に強力なデータ構造です。この記事では、辞書型の基本概念から始まり、コレクションとの違い、参照設定方法、基本操作(追加・取得・更新・削除など)、高度な機能(Keys・Items・CompareMode)、複雑なデータ構造の構築、そして適切なエラーハンドリングまで詳しく解説しました。これらの知識を身につけることで、大量データの高速処理や複雑なデータ構造の効率的な管理が可能になります。

これらの辞書型活用テクニックを、以前に解説した条件分岐、繰り返し処理、配列、コレクション、関数などと組み合わせることで、より高度で実用的なExcel VBAアプリケーションを開発することができます。特に、高速なデータ検索、キーと値のペアによるデータ管理、階層的なデータ構造の実現など、辞書型の強みを活用することがポイントです。

もし記事の内容で不明な点や、より詳しく知りたい部分がありましたら、コメントでお知らせください。また、実務での辞書型活用例や、より効率的な実装方法など、皆様のノウハウもぜひ共有していただければ幸いです。

次回の記事では、Excel VBAにおけるEnum型を活用した関数設計について解説します。列挙型(Enum)を使った整理された引数設計と関数の実装方法を理解し、より可読性が高く保守しやすいコードを書く方法を学んでいきましょう。ぜひご期待ください!

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