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暗記アプリを渡り歩いた末に、自分で暗記カードアプリを作った話

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Last updated at Posted at 2026-09-03

はじめに:海外駐在の3年間、ずっと暗記していた

海外で仕事をしていた3年間、とにかく覚えることが多かった。

英語はもちろん、現地で使う言い回し、仕事で出てくる IT 用語、社内システムの用語、資格の勉強。「調べる → わかった気になる → 1週間後に忘れている」を延々と繰り返していた。

当然、暗記学習系のアプリはひととおり試した。オープンソースの定番から、国産のシンプルなものまで。どれもよくできているし、実際に助けられた。

ただ、どれも痒いところに手が届かなかった

それも「機能が足りない」ではなく、「毎日使うには、この一手間が地味にしんどい」という種類の引っかかりだった。積み重なると、結局アプリを開かなくなる。

そこで自分で作り始めたのが暗記カードアプリ キオクSync だ。この記事では、そのときに感じた不満と、それをアプリでどう解決したかを基本編として書く。

ブラウザで https://app.kiokusync.com を開けばそのまま使える。インストールは要らない。もちろんネイティブアプリもある。マルチデバイス対応で常にデータは同期されているので、パソコンとスマホどちらでも使える。


痒いところに手が届かなかった5つのこと

1. 広告が集中を切る

暗記は集中力の勝負なのに、カードをめくった直後に広告が出る。数秒とはいえ、思い出そうとしている最中に割り込まれると学習のリズムが崩れる。

2. UI がわかりづらい

高機能なアプリほど、設定項目が多く、用語も独特だ。「今日これをやればいい」までたどり着くのに何回もタップする。勉強を始める前の摩擦が大きいと、その摩擦を避けるために勉強しなくなる。

3. 数式の入力が面倒

IT 系や理系の内容を覚えようとすると数式が出てくる。プレーンテキストしか入らないと、そもそもカードにできない。

4. 会社の PC にアプリを入れられない

これが個人的には一番大きかった。仕事中に「あ、この用語覚えておきたい」と思っても、会社の PC にはアプリをインストールできない。メモに書き溜めて、家に帰ってから登録し直す——そんな二度手間は続かない。

5. 調べたその場でカードにできない

ChatGPT や検索で調べて、「なるほど」と理解した瞬間が一番カード化に向いている。でも、そこから別アプリを開いて、コピーして、1問ずつ整形して……とやっているうちに熱が冷める。


で、どう解決したか

上の5つに、それぞれこう対応した。

不満 キオクSync での解決
広告が集中を切る 広告は入れていない。学習画面に割り込むものを置かない
UI がわかりづらい ホームに「今日の復習」だけを出す。押すのは基本1回
数式が入力できない LaTeX 形式の数式入力に対応(プレビュー・よく使う数式のプリセット付き)
会社の PC に入れられない ブラウザだけで動く Web 版がフル機能。インストール不要
調べたその場で登録できない コピーしたテキストの貼り付け一括登録と、テキストからの AI 生成

以下、実際の画面で紹介する。


基本:今日やる分だけが出る

ログインして最初に出るのがホーム画面だ。
home.png

ここに出るのは今日やるべき枚数だけ。「まとめて復習」を押せば、複数のデッキをまたいで今日の分を一気に消化できる。

復習タイミングは忘却曲線ベースで自動的に決まるので、「そろそろあれを復習しないと」と自分で管理する必要はない。アルゴリズムの詳細は別記事に書いた。

「今日は何をやろう」と考える時間をゼロにすること。ここを最優先で設計している。


カードを作る:入口を多くする

カードの束を「デッキ」と呼ぶ。資格ごと、科目ごとなど好きな粒度で作れる。

my_decks.png

一番面倒な「カードを作る」工程には、入口を複数用意した。

方法 向いているケース
1枚ずつ手入力 数枚だけ足す。画像・音声・数式も入れられる
貼り付けアップロード ChatGPT や web からコピーしたテキストを流し込む
テキストから AI 生成 文章やテーマを渡してカード案を作らせる
CSV アップロード 既に表で持っている単語リストを一括投入
画像・動画・YouTube から AI 生成(アプリ版) 教科書やノートの写真、学習動画をカード化する

数式は LaTeX で入力でき、入力中にプレビューが出る。\frac{a}{b} のようによく使う形はプリセットから挿入できるので、記法をいちいち思い出さなくていい。

AI 生成は Gemini を使っている。「4択で」「資格試験向けに」と指示すれば誤答選択肢まで作られる。ただし生成結果がそのまま保存されるわけではなく、レビューしてから保存する形にしてある。AI の出力を無条件に信じる作りにはしていない。

そして、これらが会社の PC のブラウザでもそのまま使える。仕事中に出てきた用語を、その場でカードにして、帰りの電車でスマホで復習する。これがやりたかった。


おすすめの使い方:AI と話した内容を、そのまま問題集にする

自分が毎日やっている使い方を紹介する。5つ目の不満「調べたその場でカードにできない」に対する、実際の答えでもある。

1. 朝の通勤中、ChatGPT と英会話練習をする

車での通勤時間は、音声で英会話を練習するのにちょうどいい。仕事で実際に起きそうな場面を想定して、声に出して話す(運転中は音声だけ。画面は触らない)。

このとき必ず「言えなかった表現」が出てくる。「お客様に料金を請求する、って何て言うんだっけ」みたいなやつだ。以前はここで終わっていた。そして次の日にはきれいに忘れている。

2. 会社に着いたら、会話の要点をカードにする

キオクSync の「貼り付けアップロード」画面には、生成AI に投げるためのプロンプトが最初から用意してある

image.png

これをコピーして、さっきの会話の続きで ChatGPT にそのまま投げる。「今の会話に出てきた表現でカードを作って」と添えるだけでいい。

image.png

フォーマットは question(問題)/ answer(回答)/ reference(補足)/ choice_wrong1〜3(四択の誤答選択肢)/ displayvoiceicon(読み上げアイコンの表示)。誤答選択肢と解説まで AI 側に作らせているので、こちらは中身を確認するだけで済む。

3. 貼り付けて完成

返ってきたテキストをコピーして、貼り付けアップロードに貼る。これだけで、四択・補足・読み上げ付きのカードが一括で登録される。

image.png

displayvoiceicon は「音声で読み上げたほうが学習効果が高いか」を AI に判断させている項目だ。語学・単語・発音まわりは true、数式や図形のカードは false になる。だから語学のカードには自動で読み上げボタンが付き、数式のカードには付かない。

まとめると、こういう流れになる。

通勤中: ChatGPTと英会話練習
   ↓ 言えなかった表現が溜まる
到着後: プロンプトをコピーしてAIに投げる
   ↓ タブ区切りのカードデータが返る
貼り付けアップロードに貼る
   ↓
夕方以降: 忘却曲線に従って復習カードとして出てくる

AI と話した内容が、その日のうちに自分専用の問題集になる。 市販の単語帳では絶対に手に入らない、自分が実際に詰まった表現だけが集まったデッキができる。これが一番やりたかったことだった。


学習する:始めるまでを短く

デッキを選ぶと「学習の準備」画面が出る。

学習の準備画面。出題枚数・所要時間の目安と、四択形式/暗記曲線/ランダムなどの出題設定が確認できる

決めるのは主に3つだけだ。

  • 出題形式: 四択形式か、答えを見て自己採点するフラッシュカード形式か
  • 出題範囲: 暗記曲線に従って今日の分だけか、全部か、お気に入りだけか
  • 順序: 順番どおりかランダムか

「約4分」のように所要時間の目安が出るので、スキマ時間に合わせて始めやすい。
learning_card.png

四択のときは、PC ならキーボードの数字キーで回答できる。地味だが、回答のテンポが落ちると1日の学習量がそのまま落ちるので手を入れた部分だ。

学習した内容は進捗として記録される。

学習進捗画面。今日の学習状況、連続学習記録、直近30日の学習時間推移

カードは「未着手 → 学習中 → 習得済み」といった段階で管理され、段階が進むほど次の復習が先送りされる。覚えたカードを何度も見せられて飽きる問題は、これで避けている。


覚えた教材を、他の人に渡せる

もうひとつ、既存アプリで不便だったのが共有だ。せっかく作った教材を人に渡すのに、ファイルを書き出して、相手も同じアプリを入れて、インポートして……という手順が必要だった。

キオクSync では、リンクひとつで配れる

共有スペース一覧。デッキをリンクで生徒やグループへ配布でき、進捗も確認できる

受け取る側は、リンクを開くだけでいい。インストールも要らない。

共有リンクを開いたときの着地画面。インストール不要でそのまま受け取りへ進める


技術構成(ざっくり)

Qiita なので中身にも触れておく。

  • Flutter で iOS / Android / Web を1つのコードベースから出している
  • 読み書きはすべてローカル SQLite。クラウドは同期先という位置づけで、オフラインでも学習できる
  • Web でも SQLite を諦めていない。sqflite_common_ffi_websqlite3.wasm をブラウザ内で動かし、モバイルと同じデータ層をそのまま使っている
  • バックエンドは AWS Amplify(Cognito + AppSync GraphQL + DynamoDB + S3)
  • AI カード生成は Gemini、数式描画は flutter_math_fork

Flutter のクロスプラットフォーム性が一番効いたのは UI ではなく、データ層を3プラットフォームで丸ごと共有できたことだった。Web 版の実装まわりは別途詳しく書く予定。


料金について

基本機能は無料で使える。デッキ作成、学習、進捗管理、共有デッキの受け取りは無料プランで完結する。もちろん広告は無料プランでも出ない。

有料プランで開くのは主に「教える側」と「AI をたくさん使う側」の機能だ。

  • AI 生成の月間上限(無料プランには上限がある)
  • カードへの画像添付など一部の作成機能
  • 生徒の進捗分析、共有デッキのパスワード保護、テスト用紙の透かしなし印刷

最新の内容はアプリ内のプラン画面で確認してほしい。


資格学校・塾に通っている方へ:ぜひ先生に薦めてほしい

最後にひとつお願いがある。

もし今、資格学校や塾、社内研修に通っているなら、このアプリを先生に薦めてもらえたら嬉しい。教える側のための機能をひととおり用意してあるからだ。

  • テスト用紙を印刷できる: デッキのカードから問題用紙と解答用紙を組んで印刷できる。小テストをその場で作れる(レイアウトの都合で PC 専用)
  • カードを生徒にリンクで配れる: 生徒側はリンクを開くだけ。インストールもファイルのやり取りも要らない
  • 生徒の学習進捗が見える: 誰がどこまで進んでいるかを一覧で確認できる
  • 参加時に学籍番号・社員番号の登録を必須にできるパスワードで入室を制限できる

授業で配ったプリントは、配った時点で復習の管理が生徒任せになる。カードで配れば、先生側が「誰がどこで止まっているか」を見ながら教材を運用できる。ここが紙との一番の違いだと思っている。


まとめ

  • 駐在中に暗記アプリを渡り歩いて感じた「痒いところ」を、自分で作って解決した
  • 広告なし・今日の分だけ・数式が入る・ブラウザだけで動く・調べたその場で登録できる
  • AI と話した内容を、その日のうちに自分専用の問題集にできる
  • 作った教材はリンクひとつで配れる。教える側は進捗まで見られる
  • 中身は Flutter + AWS Amplify + ローカル SQLite(Web は wasm)のオフラインファースト構成

試せるURL

個人開発なので、使ってみた感想や「ここが使いにくい」がそのまま次の実装につながる。コメントでもらえたら嬉しい。

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