はじめに
世の中にはいろんな AI 系サービスがあふれてますが、実課題に応じて合理的に選択したいものです。
そのあたりの考えをまとめました。
やっぱり銀の弾丸はない
最初から身もふたもないですが、やっぱり**銀の弾丸(=これをやれば万事解決する)**はありません。
AI モデルはあくまで「ツール」であり、「目的」を設定して価値を見出すのは「ユーザー」です。
こればかりはどんなサービスを選ぶにしても避けて通れない考え方です。
ビジネスの場で全く同じ目的はないですからね。
まずは目的を整理しよう
データ分析の目的は以下3種に大別されます。どれかに該当するはず。
||目的|主な利用主体|仮定は必須?|技術難易度|備考|
|:--|:--|:--|:--|:--|:--|:--|:--|:--|
|#1|効率化/属人性排除|営利企業|〇|★★★|・プロセスの改善が進むことでコストの低下や合理化が見込めるようなケース
・ex.発注業務の一部を代替可能な AIモデル
・ex.有人で検知していた異常を一定の精度で検出するAIモデル
・業務設計や組織的な課題が関係してくる|
|#2|付加価値向上|営利企業|〇|★★★|・ユーザーへの付加価値が向上することで売上向上が見込めるようなケース
・LVT(生涯顧客価値)など手法が確立されている分野も多い
|
|#3|データマイニング|研究開発|×|★★★★★|・集めたデータから何らかの傾向を発見する=データマイニング
・アカデミックな研究やそもそも仮説設定ができないケースが該当
・「データがあれば何かできそう」もこれに該当
・目的が不明瞭なまま進行した場合、実証検証が失敗することが多い|g|h|i|
ビジネスの場で成功している実証検証のほぼ 100% が #1 省人化 もしくは #2 付加価値向上 に該当します。
具体的な経営課題の解消をテーマに掲げる以上は、目的の明確化が必須です。
そのうえで仮設立案と検証のサイクルを回し、データ分析の結果をビジネス成果にに紐づけていきます。
注意しなくてはいけないのは、精度指標の類はモデルの状態を表すものであるという点です。
実際にモデルが活用される業務フローを踏まえたうえで、プロジェクト全体を評価する指標は別途設ける必要があります。
よってプロジェクトを進める前に以下をしっかり検討すべきでしょう。
- 自社で取り組もうとしている課題は 1-3 どれに該当するのか?
- 1 or 2 であれば AI モデルは自社の業務のどの部分に組み込まれるか?
- 3 であれば仮説を立てて、1-2 の課題に昇華できないか?
- モデルが業務に組み込まれた結果、業務プロセスはどのように変化するか?
- モデルの出力結果は、何らかの形で既存 KPI と紐づけ可能か?
ツール種別
市場にあるサービスは大きく以下 3 種に分けられます。
- #1 ピンポイント SaaS 型
- 特定の課題解決のために開発された SaaS 型アプリ
- 既存 SaaS に AI がアドオンされる場合も多い
- #2 のように外部に API の口出してることも
- #2 API 連携型
- いわゆる「マネージドAI」と呼ばれるクラウド型のサービス
- API で連携してモデルの結果を取得
- 従量課金型が多い
- 自社で管理しているアプリケーションがある場合、すぐに組み込み可能
- #3 分析基盤 SaaS 型
- データ分析基盤と提供する SaaS 型アプリ
- プラットフォームによっては従量課金型
- 自社でごりごりモデルを開発する場合
- ETL や MLOps の連携性高いサービス多し
ざっと特徴を整理します。
||AIツール種別|モデル
実装難易度|アーキテクチャ設計
/システム導入難易度|汎用性
(ex.モデルを別のシステムから利用)|拡張性
(ex. 外部システムと連携)|
|:--|:--|:--|:--|:--|:--|:--|:--|:--|
|#1|ピンポイント SaaS 型|-|★|ベンダー/課題に依存|ベンダーに依存|
|#2|API連携型|-|★★|★★★|周辺アーキテクチャの拡張性次第|
|#3|分析基盤 SaaS 型|★★★|★★★|★★|実装者の能力とアーキテクチャの拡張性次第|
じゃあどれを選ぶ?
個人的に重要視している点は以下の通りです。
-
ナレッジ蓄積
- 中長期的な組織活性には不可欠
- 使うだけ、ではなく、その結果をどう見るかが重要
- 人材育成にも直結
- 中長期的な組織活性には不可欠
-
拡張性
- 拡張性や汎用性が自社の要件に沿うか
- 将来的に自社の優先度高い要件がベンダーのそれに合致するとは限らないことは留意
- 開発コスト/運用コスト
以下のようなケースは #1 特化アプリケーション組み込み型の課題解決がフィットします。
- 特定の職務領域における課題
- 地域やコミュニティで個別最適されている課題
- #2 API 型で代替されにくい
そうでない場合には、
-
#2 API 連携型と #3 自社開発 の併用
- モデルの開発工数次第でスイッチ
- 便利な API はどんどん使う
-
過度にパートナーやベンダーに依存しない
- 足りないところだけうまく補う
- 補った分はうまく自社に取り入れる (うまく盗む)
が最もバランスが良いと考えてます。
まとめ
私もそうですが、データ分析やAIのプロジェクトはどうしても手法に焦点が当たりがちです。
折に触れてこれらの点は見直すようにしたいところです。