■はじめに
こんにちは!モバイルゲームのカスタマーサポートをおもに十何年間対応していたY.Oと申します。
ここでの投稿は去年から2回目となりますが、現在の業務も変わらずNativeアプリなど、CSを担当領域としております。
今回取り上げるテーマはLooker Studio(旧Google Data Portal)活用によるデータドリブンの推進です。
去年もデータドリブンに関して触れたのですが、今回はデータドリブンを進める中での取り組みの一つとして、Looker Studioの活用に関してお話ししたいと思います。
■Looker Studioの概要
前段
前置きとして、、、Looker Studioをみなさんご存じでしょうか!?私はまだこの名称にしっくりきていないのですが、以前はGoogle Data Portalという名称でサービスされており、最近になって上記名称へ変更となりました。
名称の変更によって、以前からあったLookerと今回のLooker Studioが並立することになり、名称の似たシステムが混在する形となっておりますが、今回は後者に関して説明をいたします。
なお、Looker Studioは何のシステムかはご存じの方が大半だと思いますが、様々なデータを可視化するBI(ビジネスインテリジェンス)となります。
特徴
Looker Studioの大きな特徴として下記があげられます。◆各ツールやDBとの多彩な連携
・Googleアナリティクスやスプレッドシート、BigQuery、MySQLなどのDBやデータ等との連携が可能
◆利用可能なデータソースが450種類以上
・コーディングがほぼ不要なユーザーライクなUI
・大半がコードの記述不要で、ドラッグアンドドロップやメニュー操作で設定可能なユーザーライクなUI
◆柔軟な権限設定
・グループ/個人単位、閲覧/編集機能有無、などケースに応じた権限設定が可能
・Google スプレッドシートやドキュメントと同じような権限、公開設定が可能
◆利用料が無料
・グーグルのアカウントがあれば無料で利用が可能
その他にも色々な特徴がありますが、詳細はこちらの公式webをご参照ください!
■利用に至る経緯/背景
現職のCS組織にジョインした際、スプレッドシートでデータを管理していたものの、BIを用いて、見やすくするようなビジュアル化ツールがCSでは存在せず、事業サイドからの質問や各種フィードバックレポートにおいて、メンバーが個別にグラフや数値を作成することが多く、主に下記のような欠点がありました。◆工数面
・レポートやデータをもとにした検討時における都度の工数発生
・各個人がそれぞれアレンジすることでの対応工数の増加
◆データ管理面
・必要な尺度(期間、費用換算等)によってのデータ再集計、データクリーニングの必要性
・管理データ規則の不統一(タイトル名の正式名称 or コード名表記等)
◆分析面
・数字の羅列で視認性を欠くことでの気づきの低下
・事業間など横断したデータの推移、分析が困難
さらに、CSではBIを構築できるようなエンジニアリング技術を持ったメンバーが不在であることも含め、それらの解決する一つの方策として、コーディングが不要、且つ、無料でトライアルできるBIのLooker Studioの導入を進めるに至りました。
■導入時のポイント
導入にあたっての設定方法など細かいプロセスは多数の方が発信されているため、そのあたりは省き、準備に際しての前処理にポイントに絞ってご紹介します。
主な準備ポイント
①横断分析のためのマスター管理について
上段で少し触れた通りタイトル名であっても、費用や問い合わせ件数、アサインなど管理粒度によって国内海外、国内海外統合、対応言語毎にまとめる尺度が異なっていたり、さらにはその管理毎に同じタイトル名ではなく、正式名称や略称、コード名など用いる名称が微妙に異なっていました。結果として、必要な粒度で集計しなおすことが多い状況でした。。。そららの課題に対して対照表の「マスター」を用意し、柔軟に名寄せできるように管理した一例が以下となります。
使い方としては、例えば問い合わせ件数と費用管理を組み合わせて分析したい場合、各スプレッドシートで管理している各名称に対して、こちらのマスターから関数で参照し、括りたい名称を新規に集計スプレッドシート列へじどうで追加する形で運用します。活用例は以下となります。
◆目的
・【A】問い合わせ件数に対する【B】アサイン係数の算出/集計
・国内/海外別での算出/集計、タイトル全体での算出/集計
◆対応
・【A】【B】へ連結タイトル名①②を追加
・国内/海外別のアサイン係数は①をキーにし、タイトル全体は②をキーとして算出
【A】問い合わせ件数
【B】アサイン
上記運用により、連結タイトル名をキーとしてLooker Studio上で、上記以外の異なるデータも組み合わせて横断的に分析することが可能となります。
また、新しい粒度のデータやシートが生じた場合でもマスターを参照する関数列を組むことで、都度の手動更新や調整が不要となります。
さらにLooker Studio自体の設定にて、日付などもキーとし異なるデータソースを横断分析することも可能です。
※参照元となるスプレッドシートでのデータ統合が不要で横断分析が可能
このあたりの詳細は今回割愛いたしますが、機会があれば別途詳しくご紹介したいと思います。
②参照元のデータ容量および分散化について
それぞれで管理しているスプレッドシートがdailyベースの場合、セル数が肥大化し、スプレッドシートの1000万セルの上限を超える、ないしは、シート自体が重くなり、運用や更新がしづらくなります。 加えて、Looker Studio側での表示動作にも影響がでることから、以下の対応を実施して回避していました。◆Looker Studio読み込み専用のスプレッドシートの作成
・IMPORTRANGEやQUERY関数を利用してレポートに必要なデータのみ抽出
・一つのシート内に複数シートを保存管理しない
◆新規更新シートとbackupシートとの分離
・前者を最新1年分、後者をそれ以前のデーターとして、スプレッドシートを分けて管理
・前者は関数を利用した動的なシート運用に対し、後者は数値固定の静的なデータとして保存
その他の軽減策として、セル毎の関数を避け、ARRAY FORMULAも活用します。
■Looker Studioの活用したCS分析について
ここではLooker Studioを用いて、CSで横断分析した際の活用の一例や効果について説明いたします。活用例
CS費用やアサインに関する最適化のラインを把握するため下記に関するデータやグラフを作成し、分析に利活用しています。◆CS費用割合
・プロダクトの売上に対して、CS応対や各種運用等に関する費用割合
◆1件当たりの問い合わせ費用
・お客さまの問い合わせ1件あたりにかかる、業務委託、人件費等の総額費用
◆アサイン工数
・プロダクトへエスカレーションするチケットや、問い合わせ件数に対するアサイン割合
効果
上記を出すことにより、下記の効果が見受けられました。◆費用、アサインの適正把握
・タイトル別での比較や事業内比較が主だったものが、他事業と比較して適正なKPIを把握
・事業特性に応じて数値が大きく変わるなど傾向把握や打ち手検討にも貢献
◆中長期方針の明確化
・最適な傾向を把握することで、人員計画やアサインなどの改善課題を見える化
・課題に対する優先順位付けの重要な判断材料として寄与
◆データおよび費用意識の向上
・データを可視化することでデータ自体に対する意識向上に加え、費用に関する意識も向上
・メンバーからの上記に関する改善提案も増加
■まとめ
CSグループでのデータドリブンを進めるために、横断で共通のデータや切り口で分析できるようになったことに加えて、ビジュアライズされたグラフを見ることにより、各メンバーで様々な気付きが生まれ、ボトムアップでの提案や議論に至りやすい環境になったものと思います。あわせて、メンバーそれぞれでデータを都度作成していた工数を減らせたことにより、日々のデータに向き合う機会と時間を増やせることに貢献できたと思います。
一方課題として、他のBIと比較してLooker Studioの利用ハードルは低いものの、駆使できるには、習熟のため多少時間を要します。また、よりシステムを利活用するには、細かい設定の把握や関数の活用など、ある程度の知見向上も求められます。そのため、ある程度以上の運用や保守が求められる場合、できるメンバーが限定されます(属人化)。
加えて、深い統計的な分析やAIなどの予測分析を行いたい場合など、Looker Studioの機能だと、有料のBIよりも機能面で若干劣ることから、上記が求められる場合は他のBIが必要になると考えます。
現在のCSグループにおいては、現時点ではそこまで高度な分析の優先度は高くないため、前者の属人化抑制が優先度の高い課題となっています。今後、より自在に扱えるメンバーを増やし、且つ、データ分析のできる人材を増やすことによって、個々のCSメンバーだけでなくCSグループ全体の付加価値をさらに高めて行きたいと思います。