概要
JavaScriptはシングルスレッドで動作するが、非同期処理の制御は不可欠であり、
その選択肢として Promise, async/await, Generator の3構文が存在する。
しかし、これらは単なる文法の違いではなく、
非同期の抽象度・制御粒度・フロー制御の設計方針を表現するものだ。
本稿では、各構文の設計的意図と選定基準、統一戦略としてのガイドラインを提示する。
1. Promise構文：非同期処理の基本形
fetch('/api/user')
.then(res => res.json())
.then(data => console.log(data))
.catch(err => console.error(err));
- ✅ チェーン構造で非同期フローを設計
- ✅ 複数ステップの非同期処理を構造化できる
2. async/await：同期的な見た目で非同期制御
async function loadUser() {
try {
const res = await fetch('/api/user');
const data = await res.json();
console.log(data);
} catch (err) {
console.error(err);
}
}
- ✅ コードの読みやすさが向上（直線的な制御フロー）
- ✅ try/catch による例外ハンドリングが自然
3. Generator関数：中断可能な非同期フロー構築
function* process() {
const val1 = yield fetchData();
const val2 = yield transformData(val1);
return yield storeData(val2);
}
- ✅ 中間状態を持ちながら一時停止と再開が可能
- ✅ Redux-Sagaなどで複雑な副作用制御に用いられる
4. 特性の比較表
| 観点 | Promise | async/await | Generator |
|---|---|---|---|
| 読みやすさ | △（ネストしがち） | ◎（同期風） | ◯（制御構造が複雑） |
| 例外処理 | .catch() |
try/catch |
呼び出し側で制御 |
| 並列処理 |
.all() で管理 |
await Promise.all() |
制御が煩雑 |
| 中断と再開 | ❌ | ❌ | ✅ yield により可能 |
| フレームワーク採用 | 汎用（全て対応） | 汎用（主流） | 一部（Redux-Sagaなど） |
5. 実装選定の戦略指針
✅ async/await を基本構文として採用
- 非同期の直列処理を読みやすく、明確な順序で書ける
- try/catch による例外処理が直感的
✅ Promiseは「並列処理」や「即値としての返却」に使う
await Promise.all([
fetch('/a'),
fetch('/b')
]);
- ✅ 並列時のフロー制御に優れ、コレクションベース処理に最適
✅ Generatorは「副作用の段階的実行」や「コルーチン設計」に限定
- Redux-Sagaなどで、状態遷移や非同期副作用制御に用いる
設計判断フロー
① 単一の非同期処理か？ → async/await で十分
② 連続した非同期処理か？ → async/await + try/catch で構造化
③ 複数の非同期を同時に？ → Promise.all / Promise.allSettled を併用
④ 非同期状態の段階的制御が必要？ → Generatorの検討
⑤ 外部ライブラリとの親和性（例：Saga, RxJS）は？ → 専用構文へ寄せる
よくあるミスと対策
❌ async 関数内でエラーを throw したが、catch されない
→ ✅ try/catch で囲み、await は逐次例外処理すべき
❌ Promiseチェーンが深くなり、ネスト地獄に
→ ✅ async/await で順次処理に展開し直す
❌ 非同期処理を forEach で処理してしまう
→ ✅ for...of + await を使用（forEach は await を待たない）
結語
非同期構文の選択は「書きやすさ」ではなく、
**“フローの意味と制御の意図をどれだけ明確に表現できるか”**が判断基準となる。
- async/await をベース構文として採用し、読みやすく保守性の高い制御へ
- Promise で並列処理を整理し、全体構造を最適化
- Generator は高度な状態制御が必要な場合に限定して採用
JavaScriptにおける非同期設計とは、
“流れと例外を制御構造として設計することで、信頼性のある非同期システムを構築する戦略である。”