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重要データはどこにある?Microsoft PurviewとAWS Macieで始めるDSPM実践入門

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Last updated at Posted at 2026-06-16

はじめに

クラウド・SaaS・生成AIの普及で、機密データは社内サーバの中だけにとどまらなくなりました。OneDrive、SharePoint、S3、各種SaaS、社員のローカルPC、そして生成AIへ貼り付けた入力データへと拡散し、「そもそも機密データがどこにあるのか分からない」状態に陥りがちです。

DSPM(Data Security Posture Management=データセキュリティ態勢管理) は、この“見えないデータ”を起点に、機密データの所在・アクセス権・露出リスクを継続的に可視化・評価する仕組みです。

この記事では概念の整理にとどめず、追加製品を買わずに手持ちのクラウド標準機能(Microsoft Purview / AWS Macie)で実際にスキャンを動かす手順と、運用上のつまずきどころをまとめます。


DSPMがやること(4ステップ)

DSPMは一度きりの点検ではなく、次のサイクルを回し続けるのがポイントです。

STEP 内容 具体例
1. 発見 機密データを自動スキャンして洗い出す クラウド/SaaS/オンプレを横断
2. 分類 個人情報・カード番号・営業秘密などを判定し重要度を付与 自動分類ルール
3. 評価 誰がアクセスできるか・公開設定・暗号化を確認 過剰共有・公開バケット検出
4. 対処・監視 リスクを直し、変化を継続監視 公開解除・権限是正

重要なのは、STEP4(直す運用)まで含めて初めて効果が出る点です。「見える化」だけでは1件も守れません。


DLP / CSPM との役割分担

導入前に既存対策との切り分けを整理しておかないと、機能が重複します。

仕組み 守る対象 DSPMとの関係
DLP データの「出口」(持ち出し・流出を止める) 補完:DSPMは出口の手前で所在とリスクを可視化
CSPM クラウドの「設定ミス」 補完:DSPMはデータそのものの所在・分類・露出を点検
DSPM データそのもの(所在・分類・露出)

「壁(境界・端末)を守る」従来型に対し、DSPMは「データ一つひとつ」に視点を移すアプローチ、と捉えると整理しやすいです。


実践1:AWS Macie でS3の機密データをスキャンする

Macie は S3 バケット内の個人情報・機密データを機械学習で検出し、公開設定ミスを警告するマネージドサービスです。従量課金で、まず1バケットから小さく試せます。

有効化と検出ジョブ作成(CLI例)

# 1. リージョンを指定して Macie を有効化
aws macie2 enable-macie --region ap-northeast-1

# 2. バケット単位の機密データ検出ジョブを作成
#    scheduleFrequency を付けると定期実行、外すと一度きり
aws macie2 create-classification-job \
  --job-type SCHEDULED \
  --schedule-frequency '{"dailySchedule":{}}' \
  --name "dspm-scan-sensitive" \
  --s3-job-definition '{
    "bucketDefinitions":[{
      "accountId":"123456789012",
      "buckets":["my-target-bucket"]
    }]
  }' \
  --region ap-northeast-1

結果(検出された機密データ)の確認

# 機密データ検出のうち重大度が High のものだけ件数集計
aws macie2 list-findings \
  --finding-criteria '{"criterion":{"severity.description":{"eq":["High"]}}}' \
  --region ap-northeast-1

つまずきどころ

  • リージョンごとに有効化が必要enable-macie を実行したリージョン外のバケットは対象外になります。複数リージョンに資産があるなら、それぞれで有効化するか組織管理アカウントで集約します。
  • コストは「スキャンしたオブジェクト量」に比例。いきなり全バケットを SCHEDULED で回すと費用が膨らみます。まず ONE_TIME +対象バケットを絞って規模感を掴むのが安全です。
  • マネージドのデータ識別子で日本固有の項目(マイナンバー等)が拾えるかは要確認。足りなければ**カスタムデータ識別子(正規表現)**を追加します。

実践2:Microsoft Purview で M365 内の機密情報を可視化する

Microsoft 365(SharePoint / OneDrive / Teams / Exchange)を使っているなら、Purview の機密情報の種類(SIT: Sensitive Information Types)とコンテンツエクスプローラーで、追加製品なしに「どこに何があるか」を可視化できます。

進め方

  1. Microsoft Purview ポータル(旧:コンプライアンスポータル)にグローバル管理者または該当ロールでサインイン
  2. データ分類 → 機密情報の種類で、検出したい項目(クレジットカード番号、各種個人情報など)を確認・カスタム作成
  3. コンテンツエクスプローラーで、その種類が「どの場所に・何件」存在するかを一覧化
  4. 過剰共有や外部共有リンクが付いた機密ファイルを特定し、是正

つまずきどころ

  • 高度な機能はライセンス依存。コンテンツエクスプローラーの全閲覧や自動ラベル付けなどは上位ライセンス(例:Microsoft 365 E5 / E5 Compliance 系)が前提になることが多く、保有プランで何ができるかを先に確認してください。
  • 自動分類は精度のチューニングが必須。SITは正規表現+キーワード+確信度(confidence level)で判定するため、初期は誤検知・見逃しが出ます。確信度のしきい値や対応キーワードを調整して運用に乗せます。
  • 反映にはクロール/分類の時間差があります。設定直後は件数が出そろわないことがあるので、数時間〜の待ちを見込みます。

※ライセンス要件・機能名はMicrosoftおよびAWSの仕様変更で変わります。導入時は必ず公式ドキュメントで最新を確認してください。


専用DSPM製品はいつ検討するか

クラウドとSaaSを広く横断する専業ベンダー製品(Cyera / Sentra / Varonis / BigID など)は分類精度やマルチクラウド対応に強みがありますが、いずれも中堅〜大企業向けで年額は高めです。中小企業がいきなり導入するものではありません。

中小企業の現実的な道筋

  1. 手持ちの標準機能(Purview / Macie)で機密データの所在マップを作る
  2. ファイルサーバー/NASの共有フォルダのアクセス権・公開範囲を手動点検(専用ソフトの前にこれが効く)
  3. 生成AIに機密を貼らないルール+ SASE / CASB で入口を管理
  4. 規模が大きくなったら専用DSPM製品を検討

メリットと注意点

メリット

  • 機密データの「所在不明」を解消し、リスクの高い箇所から先に塞げる
  • クラウド・SaaS・生成AIをまたいで横断的に可視化できる
  • 過剰なアクセス権や意図しない公開設定を是正できる
  • 個人情報保護法やISMS運用での棚卸し・説明責任に役立つ

注意点

  • 「見える化」だけでは守れない。発見したリスクを直す運用が前提
  • 各データソースへの接続・読み取り権限の設計が必要
  • 自動分類は精度のチューニング(誤検知・見逃しの調整)が要る
  • DLP・CSPMなど既存対策との役割分担を整理しないと重複する

まとめ

  • DSPMは「データそのもの」を起点に、所在・分類・露出を継続的に可視化する考え方
  • 専用製品を買わなくても、AWS Macie や Microsoft Purview の標準機能から小さく始められる
  • リージョン有効化・コスト・分類精度のチューニング・ライセンス要件が実務上のつまずきどころ
  • 「見つける」だけでなく「直す運用(STEP4)」まで回して初めて効果が出る

まずは主要なクラウドとファイルサーバの棚卸しから。公開設定や過剰なアクセス権を可視化するだけでも、漏えいリスクは確実に下げられます。


当社(株式会社ブレインディレクション)は、ITソリューション・生成AI・クラウド・セキュリティ(ISMS / ISO/IEC 27001:2022 取得)を軸に、機密データの棚卸しと統制を小さな範囲からご支援しています 👉 https://www.brain-d.jp

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