Virtuozzo Hybrid Infrastructure(VHI)のネットワーク要件と構成
Virtuozzo Hybrid Infrastructure(以下VHI)は、OpenStackベースのハイパーコンバージドインフラ(HCI)製品であり、仮想化、ソフトウェア定義ストレージ(SDS)、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)を統合的に提供します。
本記事では、VHIの導入および運用に必要なネットワーク構成や運用上のポイントを解説します。
インストール時のネットワーク要件について
最低限、以下の2つのネットワークが必要です。VLANを利用するのも問題ないです。
- Privateネットワーク:内部クラスターの通信用
- Publicネットワーク:外部トラフィック用
注意:「Public」ネットワークも、外部から直接アクセスできないプライベートネットワークを利用することを推奨します。外部アクセスが必要な場合は、NATの利用を推奨します。
検証環境や冗長化を考慮しない本番環境では、まず2つのネットワークから構成するのが無難です。ネットワークトラフィックの割り当ては、以下の例が参考になります。
推奨ネットワーク設定
推奨されるネットワーク構成として、4つのネットワークインターフェース(25G×2、10G×2) をボンディングして使用する方法があります。
- 25G×2 をボンディングしてPrivateネットワークとして利用
- 10G×2 をボンディングしてPublicネットワークとして利用
- VLANを利用してネットワークを細分化
詳しくは以下の表をご覧ください。
ネットワークバンディング(チーミング)
高可用性とスループット向上のために、NICバンディング(bonding)やVLANによる仮想インターフェース構成が推奨されています。
- 複数NICをbond(例:LACP/802.3ad)で構成し、単一NICの障害に備える
- VLANを併用することで、複数の論理ネットワークを物理的に分離せずに共存可能
詳細な設定手順は以下をご参照ください:
🔗 VHI管理者ガイド(ネットワーク設定)
仮想ネットワークと物理ネットワーク
下図で説明しているようにVHIの中で仮想ネットワークと物理ネットワーク両方利用可能です。物理ネットワークは管理画面から作成可能になっています。ユーザー画面は物理ネットワークの作成ができませんが、割り当てられた物理ネットワークを利用することができます。
仮想ネットワーク(VXLANベース)
- VXLANによりプロジェクト単位の分離が可能
- 推奨構成:VMは基本的に仮想ネットワーク上で作成
- VM1からVM2へのアクセスの流れ(サブネットが同じ):
VM1 → 仮想ネットワーク1 → VM2
- VM2からVM3へのアクセスの流れ(異なるサブネット):
VM2 → 仮想ネットワーク1 → 仮想ルーターと物理ネットワーク → 仮想ネットワーク2 → VM3
- VMが外部アクセスの流れ(googleなどのウェブサービス):
仮想ネットワーク → 仮想ルーター → 物理ネットワーク → 外部サービス
物理ネットワーク(管理者用)
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物理NICが接続されたL2ネットワークでインストール時に設定される。修正と追加する場合、管理者画面から行うことが可能。また、下記の図のように設定ファイルから変更することも可能。
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管理者画面のネットワーク設定画面にて「VM Public」に割り当てた物理ネットワークのみが、VM用の物理ネットワークとして使用可能
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1つの物理ネットワークでは、タグなしのVM用の物理ネットワークは1つのみ作成可能。複数の場合はVLANタグが必要。もしくは複数の物理ネットワークを用意すること
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VM1が物理のネットワークをそのまま利用して外部へアクセスの流れ(上記の図に記載なし):
VM1 → 物理ネットワーク → 外部サービス
物理ネットワークのIPアドレス管理(IPAM)
- IPアドレス管理(IPAM)が有効なネットワークでは、複数のサブネットを定義可能
- クラウドユーザーは定義済みのサブネットからIPを自動取得
ルーティングモードとフルアクセスモードの違い
VHIでは、物理ネットワークの使い方は下記2種類があります。
デフォルトのネットワーク動作(ルーティングモード)
- VHIでは、デフォルトで全テナントが共有する物理ネットワークが「ルーティングモード」で提供されます。
- IPアドレスは仮想ルーターに自動割り当てされ、フローティングIPとして利用されます。
- 初期状態では1つのサブネットのみが構成されています。
- IPアドレスが不足した場合は、ISPから新しいサブネットを取得して追加可能です(ノードのポートに割り当て)。
専用パブリックIPが必要なケース(フルアクセスモード)
- 特定の顧客に専用のパブリックIPを提供するには、物理ネットワークを「フルアクセスモード」で作成します。
- このネットワークは、対象顧客のプロジェクトまたはドメインに専用で割り当てることができます。
Trunkモードによる迅速なネットワーク展開
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専用ネットワークを素早く展開したい場合、インフラの物理ネットワークを「Trunkモード」に設定します。
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Trunkモードでは:
- VLANタグ
- サブネット情報
を指定するだけで、新しい物理ネットワークを迅速に構成・展開可能です。
補足:Trunkモードは、ほとんどのクラウド基盤で標準的に採用されている構成方式です。
✅ まとめ
VHIは、柔軟かつスケーラブルなネットワーク構成を可能にするHCIプラットフォームです。
- 仮想ネットワークと物理ネットワークを使い分けることで、セキュアで拡張性のある環境が実現
- バンディング構成やTrunkモードにより、大規模なクラスタでも高可用性と管理性を維持可能
- 適切なルーティングモードの選定により、ユースケースに応じたネットワーク最適化が可能です