はじめに
セキュリティ担当者や情シスのみなさん、毎月の確認作業や未対応者へのリマインドに時間を取られていませんか?
私たちの部門では、月次セキュリティチェックにおいて、セキュリティ担当者がまとめて複数の提出物や申請状況を確認し、未対応者へ個別にTeamsでリマインドする運用を行っていました。
その結果、毎月の確認・リマインド対応に 15時間55分 かかっていました。
そこで、Power Automate と Power Apps を活用し、
- 未対応者への自動リマインド
- 提出状況を一覧で確認できるアプリ
- アプリ上からの手動リマインド
- 申請内容と管理情報の自動突合
を実装しました。
結果として、確認・リマインド対応時間は 15時間55分から8時間へ短縮 され、7時間55分削減、削減率49.7%(約50%) を達成しました。
この記事では、実際にどのような課題があり、Power Automate と Power Platformでどのように改善したのかを紹介します。
月次セキュリティチェックの中で確認すること
自動化対象にした業務は、主に以下の3つです。
全体では平均で約15時間55分 かかっていました。
1. モバイルPC持ち出し申請の確認
モバイルPCを社外に持ち出すための申請が正しく行われているかを、対象メンバー分確認します。
確認内容は、単に「提出済みか」だけではありません。
申請内容に記載された機器情報や管理番号が正しいかも確認する必要があり、不備や未提出があれば対象者へ個別に連絡していました。
2. モバイルPC設定の確認(第三者チェック)
社内で定義しているモバイルPC設定とセキュリティ対策が正しく実施されているかを確認します。
対象者が指定フォルダにPC設定ログを提出し、セキュリティ担当者がその提出有無と内容を確認します。
未提出や内容不備があれば、こちらもTeamsで個別リマインドを行っていました。
3. 作業品質・セキュリティチェックシートの提出確認
対象メンバーが作業品質やセキュリティに関するチェックシートを提出しているかを確認します。
提出状況を確認し、未実施者がいればTeamsで個別にリマインドします。
現状調査で分かった課題
セキュリティ担当者へのヒアリング調査の結果、負担の原因は大きく3つに整理できました。
課題1:情報が分散している
確認対象の情報が、Box、Excel、Power Apps、SharePoint Onlineなど複数の場所に分散していました。
そのため、担当者は毎月、複数ツールを行き来しながら提出状況や内容を確認する必要がありました。

課題2:リマインドが個別対応に依存している
未提出者や未実施者を見つけた後、Teamsチャットで個別に連絡していました。
対象者が多い月は、誰に送ったか、誰が対応済みかの確認にも手間がかかります。
課題3:提出有無と内容確認が重複している
「提出されているか」を確認した後に、「中身が正しいか」を確認する必要がありました。
特にモバイルPC持ち出し申請では、申請内容と管理情報の照合が必要で、確認作業が重複していました。
従来は、セキュリティ担当者が複数のツールを行き来しながら提出状況や内容確認を行い、未対応者へ個別にリマインドしていました。
解決方針:自動化と一元管理
これらの課題に対して、以下の方針で改善しました。
- Power Automate で未対応者へのリマインドを自動化する
- Power Apps で提出状況を一覧表示するアプリを作る
- アプリ上からTeamsチャットを送れるようにする
- 申請内容や提出ファイルへの導線をアプリに集約する
使用した主なツールは以下です。
| ツール | 用途 |
|---|---|
| Power Apps | 月次セキュリティ状況確認アプリ |
| Power Automate | 提出状況確認、自動リマインド |
| SharePoint Online | ユーザーマスター、対象者管理 |
| Excel Online | 提出チェック結果の保存 |
| Box | モバイルPC設定ログ格納先 |
| Microsoft Teams | リマインド通知 |
全体構成
Power Automate が各データソースから提出状況を取得・判定し、提出チェックシートを更新します。
Power Apps はその結果を一覧表示し、担当者が内容確認や追加のリマインドを実施できるようにしました。
Power Automateで実装したこと
Power Automateでは、実行時期と役割が異なる4つのフローを作成しました。
月次運用の実行タイミングと各フローの役割は以下のとおりです。

1. 月初提出チェックシート更新フロー
毎月1日の朝7時に実行されるフローです。
このフローでは、SharePoint Online上のExcelファイルを対象に、提出チェック用のテーブルを初期化します。
その後、ユーザーマスターから対象ユーザーを取得し、提出チェック列を「未提出」としてセットします。
この処理により、毎月の確認対象者を手作業で作り直す必要がなくなります。
2. モバイルPC設定ログ提出確認フロー
締め切り2週間前から、土日を除いて朝8時に実行されるフローです。
指定したBoxフォルダに、モバイルPC設定ログ出力スクリプトの結果ファイルが提出されているかを確認します。
ポイントは、Boxフォルダ内のファイル名に含まれるユーザーIDをもとに提出状況を判定している点です。
ファイル名に対象者のIDが含まれていれば、該当者を「提出済み」としてExcelの提出チェックシートを更新します。
この仕組みにより、セキュリティ担当者がBoxフォルダを開いて、1人ずつ提出ファイルを探す手間を削減できました。
3. 作業品質・セキュリティチェックシートの提出確認フロー
こちらも締め切り2週間前から、土日を除いて朝8時に実行されます。
SharePoint Onlineリスト上のSE品質リマインダー(社内で運用している品質・セキュリティ確認チェックリスト)結果を確認し、対象ユーザーが完了しているかを判定します。
ステータスが Done のユーザーを抽出し、提出チェックシートを「提出済み」に更新します。
4. リマインドフロー
締め切り1週間前から、土日を除いて朝9時に実行されるフローです。
提出チェックシートを参照し、「未提出」のユーザーに対してTeamsチャットでリマインドを送信します。
Power Appsで実装したこと
Power Appsでは、月次セキュリティ状況を一覧で確認できるアプリを作成しました。
アプリのデータソースは以下です。
| データソース | 用途 |
|---|---|
| Microsoft Teams | チャット通知 |
| SharePoint Online | 申請データ、対象ユーザー、ユーザーマスター |
| Excel Online | モバイルPC設定ログ、作業品質・セキュリティチェックシートの提出結果 |
アプリ内では、ユーザーマスターやチェック対象ユーザーをコレクションとして保持し、画面表示や絞り込みに利用しています。
画面1:トップメニュー
トップメニューには、以下3つのボタンを配置しました。 ユーザーは確認したい項目を選択するだけで、対象画面へ遷移できます。
- 継続使用機器申請 提出チェック画面 (前章で記載の「モバイルPC持ち出し申請の確認」を指します)
- 第三者チェックスクリプトログ 提出チェック画面 (前章で記載の「モバイルPC設定の確認(第三者チェック)」を指します)
- SE品質リマインダー 実施チェック画面 (前章で記載の「作業品質・セキュリティチェックシートの提出確認」を指します)
ユーザーは確認したい項目を選択するだけで、対象画面へ遷移できます。

画面2:継続使用機器申請提出チェック
対象月と組織を選択し、「チェック」ボタンを押すことでモバイルPC持ち出し申請の提出状況を一覧表示します。
一覧には、以下の情報を表示します。
- 氏名
- メールアドレス
- 所属組織
- PC管理番号
- 提出済み/未提出
- 申請内容確認用アイコン
- 個別リマインド送信ボタン
提出済みの場合は、ファイルアイコンにカーソルを合わせると申請内容が確認できます。
また、未提出者に対しては、個別または一括でTeamsチャット通知を送信できます。

画面3:第三者チェックスクリプトログ提出チェック
組織を選択すると、対象者ごとのモバイルPC設定ログの提出状況を表示します。
提出済みの場合は提出ファイルのURLを表示し、クリックするだけで対象のBoxファイルを確認できます。

「提出ファイルへの直接リンク表示機能」が特に効果的でした。
従来は、Boxフォルダ内から対象者のファイルを探す必要がありました。
しかし、アプリ上で対象者の横にBoxリンクを表示することで、確認対象のファイルへ直接アクセスできるようになりました。
その結果、モバイルPC設定ログの確認・リマインド時間は、4時間から50分へ短縮 されました。削減率は 79.17% です。
画面4:SE品質リマインダー実施チェック
組織を選択すると対象者の実施状況を一覧表示します。
未実施者に対しては、アプリ上から個別または一括でTeamsチャット通知を送信できます。

画面の役割はシンプルですが、担当者がSharePoint OnlineリストやExcelを開いて確認する手間を減らせる点が大きなメリットです。
実装で工夫したポイント
1. 一覧性を重視した
担当者が知りたいのは、最終的には「誰が未対応か」です。
そのため、画面上では対象者ごとの提出状況を一覧化し、未提出者にすぐリマインドできるようにしました。
アプリ上では、組織の複数選択や、提出状況の確認、個別・一括リマインドが可能です。
2. 申請内容やファイルへの導線をアプリに集約した
提出状況だけでなく、提出済みの場合に内容確認へ進める導線も用意しました。
たとえば「継続使用機器申請提出チェック画面」では、ファイルアイコンから申請内容を確認でき、「第三者チェックスクリプトログ提出チェック画面」では、提出ファイルのBoxリンクを表示します。
3. 自動リマインドと手動リマインドを併用した
すべてを自動化するのではなく、以下のように役割を分けました。
| 種別 | 用途 |
|---|---|
| 自動リマインド | 締め切り前の定期通知 |
| 手動リマインド | 担当者判断で個別または一括通知 |
これにより、通常運用は自動化しつつ、状況に応じた柔軟な対応も可能にしました。
効果
今回の仕組みを利用した結果、月次セキュリティ確認・リマインド対応時間は以下のように削減できました。
| 指標 | Before | After |
|---|---|---|
| 確認・リマインド対応時間 | 15時間55分 | 8時間 |
| 削減時間 | 7時間55分 | |
| 削減率 | 49.7% |
特に効果が大きかったのは、モバイルPC設定ログの確認作業です。
| 項目 | Before | After | 削減率 |
|---|---|---|---|
| モバイルPC設定ログ | 4時間 | 50分 | 79.17% |
利用者の反応
利用者アンケートでは、自動リマインド機能や月次セキュリティ状況確認アプリについて、高い評価が得られました。
一方で、改善要望としては以下のような声もありました。
- 提出済み/未提出でフィルタリングしたい
- ログのOK/NG判定でも絞り込みたい
- ファイルURLだけでなくファイル名も表示したい
- 対象部署の選択状態を保持したい
ハマりどころ・注意点
Box URLの指定方法に注意
モバイルPC設定ログの提出確認では、BoxフォルダURLからフォルダIDを取得する仕様にしていました。
そのため、共有URLではなく、folder/xxxxxxxxxxxx のようにフォルダIDが含まれるURLを指定する必要があります。
共有URLを指定してしまうと、フロー側で対象フォルダを正しく特定できない可能性があります。
ファイル名ルールを統一する
モバイルPC設定ログの提出判定では、ファイル名に含まれるユーザーIDをもとに対象者を判定しています。
そのため、ファイル名にユーザーIDが含まれていない、または欠損している場合は、提出済みでも未提出と判定されます。
運用開始前に、提出ファイルの命名ルールを明確にしておくことが重要です。
フロー実行タイミングのズレに注意
提出確認フローは朝8時、リマインド送信フローは朝9時に実行されます。
8時から9時の間に提出された場合、リマインド送信時点では未提出扱いになる可能性があります。
この点は、利用者に事前周知しておくと問い合わせを減らせます。
今後の改善案
今回の仕組みは一定の効果がありましたが、まだ改善余地があります。
今後は以下のような改善を検討しています。
- 提出済み/未提出のフィルタ機能強化
- ログ内容のOK/NG判定表示
- ファイル名表示への対応
- データ更新頻度の柔軟な変更
- 部門ごとの確認プロセス差異への対応
- 運用マニュアルとトラブルシューティングの整備
まとめ
Power AutomateとPower Appsを活用することで、月次セキュリティ確認・リマインド業務を大きく効率化できました。
Power Platformは、こうした「毎月発生する確認・リマインド業務」と非常に相性が良いと感じました。
特に、以下のような業務がある場合は、今回のような仕組みが効果を発揮しやすいです。
- 確認対象者が決まっている
- Teamsやメールを利用している
- ExcelやSharePoint Onlineで作業管理している
同じような業務に悩んでいる方の参考になれば幸いです。
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