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はじめに:この議論、何度目だろう

プロダクト開発やサービス設計の現場で、
「ペルソナって本当に必要?」 という問いを耳にすることがよくあります。

特にエンジニアの方々からは、

「作るのに時間がかかるし、結局使ってないよね?」
「“○○さん(仮名)”に共感できないんだよね…」

といった声が上がることもしばしばです。

この記事では、BIPROGY株式会社でUXデザインに携わる私が、
「ペルソナは必要か?」という問いに対し、立場や目的に応じた使い方と限界を整理し、
納得感ある使い分けの方法を提案します。

※筆者の業務背景については、以下の記事をご参照ください。


1. ペルソナは必要か?不要論 vs 必要論

この議論には、真っ向から対立する意見が存在します。
ですが実は、両者には共通点もあります

❌ 不要論の主張

  • 作って満足する「ペルソナ芸」に終わる
  • 現実と乖離していて、意思決定に使えない
  • 仮説ベースで作っても結局検証されない
  • 使い道がわからない・使えない

➕ さらに、こんな声もあります

  • 「ユーザーは一人じゃない。ペルソナで代表できるの?」
    → 実ユーザーが多様すぎて、1人の像に集約するのが不自然に感じるケース
  • 「数字(データ)で語るべき。感覚的すぎる」
    → 定性的なペルソナより、定量分析に信頼を置く文化
  • 「マーケ用のツールでしょ?UI設計に使うのは違うのでは」
    → マーケティングとUXの混同からくる誤解
  • 「ユニバーサルデザインすればいいのでは?」
    → 特定ユーザーに最適化するアプローチへの違和感

✅ 必要論の主張

  • チーム内の認識を揃える 共通言語 になる
  • 「この人のために作る」 という指針になる
  • ユーザー像に基づく 判断の基準 になる
  • 機能やUIの 優先順位判断 に使える

❗ 不要論も必要論も、“使い方次第”という点では一致しています。
だからこそ、目的やフェーズに応じた使い分けが鍵になります。


2. こんな時にペルソナは必要:目的とスコープを定義せよ

✅ ペルソナが有効なケース

  • 多様なステークホルダー間でユーザー像を共有したいとき
  • 機能の優先順位を議論する材料が必要なとき
  • ユーザージャーニーや体験設計を行うとき
  • 仮説ベースで市場セグメントを定義する初期フェーズ

🎯 目的ベースの例

目的 スコープ ペルソナ活用のポイント
新規サービスの方向性を議論したい 仮説に基づいた簡易ペルソナ チームの共通言語として活用する
既存機能の改善点を整理したい リサーチベースの詳細ペルソナ 優先度判断の基準として使う
プロダクトの軸がブレている 1人の象徴的なユーザー像 判断基準としてぶれを防ぐ

3. ペルソナは不要? それでも「簡易版」はアリ

❌ ペルソナ作成の優先度が低いケース

  • リリースまで1〜2週間の小規模改善
  • A/Bテストなど、定量データ中心の検証が主軸
  • 対象ユーザーが1タイプに限定されている場合
    例:業務システムなど、ユーザーが固定化されているケース

💡 それでも役立つ「簡易ペルソナ」

詳細なペルソナが作れない場合でも、最低限のユーザー像(簡易ペルソナ)を共有することで設計の軸を持つことができます。たとえば“新人オペレーター”のようなざっくりした像でも、設計判断の助けになります。

<簡易ペルソナ例>

属性 内容
名前(仮) サトウ ユカ(22歳・女性・契約社員)
職務経験 社会人1年目、コールセンター勤務は2ヶ月目
スキルレベル 電話対応やCRM操作にまだ不慣れ。タイピング・操作速度は標準レベル
主な業務 リストに基づいた電話発信・簡単なヒアリング・スクリプトに沿った初期対応
課題 対応フローやシステム画面の複雑さに戸惑う

業務歴や慣れの度合いといった習熟度(熟練者/新人/中堅など)の定義の他、「誰のための最適化か?」を明示するスコープ付き簡易ペルソナも有効です。


4. 「作ったけど使わなかった」人をどう説得する?

💬 よくある声と、その返し

「作っても使わなかった」

実際、使われなかった背景には、“使う設計”が事前に考慮されていなかったケースが多く見られます。
ペルソナは、“使う前提で作る”ことによって初めて効果を発揮します。

「共感できない」

“共感”ではなく、“判断軸”として使う視点もあります。
感情よりも、ユーザーの行動や課題に焦点を当てた活用が効果的です。

「どうせ独りよがりな仮説でしょ?」

仮説ベースから始めることはよくありますが、そのままにせず検証・更新を続けていくことが重要です。
プロトタイピングと同様に、ペルソナも繰り返し改善することが前提となります。


5. ペルソナがうまく機能しなかった理由

❌ よくある失敗例①:ペルソナの“作り方”が間違っている

  • 「課金意欲が高く、何でも使ってくれる理想的ユーザー」
    現実にはいません。白馬の王子様でもないですし…。

  • 「中年のサラリーマン男性」
    ごまんといすぎて、どんな人だかわかりませんね

📌 こんなときに起こりやすい悪循環

  1. 理想や空想のペルソナを机上で作成
  2. そのペルソナに基づいて設計
  3. 実ユーザーが期待通りに動かない
  4. 「やっぱりペルソナって意味ないよね」となる

✅ 防ぐには?

  • 実際のユーザー調査をベースに作る(インタビュー/ユーザビリティテストなど)
  • 「架空の理想像」や「妄想」ではなく「観察された行動と課題」にフォーカスする
  • 仮説ベースの場合も、検証・更新を前提に作成する

💡 ペルソナは“願望”や"想像"ではなく、“観察されたリアル”から出発すべきです。


❌ よくある失敗例②:ペルソナの“使い方”が間違っている

  • 作った直後に一度共有して終わり
  • PDFに保存して誰も見ない
  • 意思決定の場で参照されない
  • UIレビューで活用されない

✅ 活用するための工夫

  • 優先順位や仕様決定のたびに該当するペルソナを参照する
  • 常に「この人にとってどうか?」を問い直す文化をつくる
  • Miro/Notion/Figmaなど、普段使うツールに埋め込む。壁に貼って、いつでも見れるところに貼っておくのもアリです。
  • 変更や学びを反映し、“育てるペルソナ”として定期更新する

🛠️ ペルソナは“作って終わり”ではなく、
判断の共通基準として“使い倒す道具”です。


6. 結論:「必要か」ではなく「どう使うか」

「ペルソナは本当に必要なのか?」という問いに対して、
単純に「Yes」や「No」で答えることは難しいのが現実です。

なぜならペルソナは、プロジェクトのフェーズや目的、チームの文化によって
その「必要性」や「使いどころ」が大きく変わるツールだからです。
正しく設計され、適切に活用されたペルソナは、ユーザー視点をチームに根付かせる強力な手段となります。

ただしそれは、万能な正解ではなく、
目的・スコープ・プロジェクトフェーズに応じて柔軟に調整すべき設計道具でもあります。


おわりに:ペルソナは「使われてこそ価値がある」

「ペルソナは使えない」と切り捨ててしまうのは簡単です。
しかし多くの場合、それは道具のせいではなく、“使い方”や“作り方”の問題です。

UXや設計の現場では常に、「誰のために」「なぜこの選択をするのか」が問われます。
そのとき、感覚や声の大きさに左右されず、意思決定を支える道具が求められます。

だからこそ、ペルソナは“共感の対象”ではなく、
「判断の土台」として捉え直すことが重要です。

そして、 育て、使い倒し、アップデートし続ける「チームの資産」 として、
もう一度ペルソナを見直してみませんか?


🗣️ みなさんのチームでは、ペルソナは「使える道具」になっていますか?
コメント欄で、現場での工夫や活用方法をぜひ教えてください!

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