はじめに
私は機械知能研究室に所属し,CV分野の研究に取り組んでいます.機械知能研究室では,ロボットの視覚機能や,自律的に行動するための知能システムに関する研究が行われています.
研究室の詳細は以下をご覧ください.
研究を進める中で,自分の研究テーマに近い論文を1本見つけた後に,「次にどの論文を読めばよいのか」と迷うことがあります.
キーワード検索でも関連論文を探すことはできますが,検索語によって結果が変わるため,ある論文を起点としてその前後の研究や類似した研究を追いたい場合には,引用関係を利用した探索も有効です.
そこで本記事では,1本の論文をSeed Paperとして,ResearchRabbitを使って引用ネットワークをたどりながら関連論文を探索します.
単にResearchRabbitの使い方を紹介するのではなく,「分野の基礎となる論文を探す」「最新の研究を探す」「類似した研究を探す」という目的ごとに探索方法を変え,候補から次に読む論文を絞るところまで試します.
目次
- はじめに
- Seed PaperとCitation Snowballing
- 今回使用するSeed Paper
- ResearchRabbitで引用ネットワークを確認する
- 目的1:分野の基礎となる論文を探す
- 目的2:最新の研究を探す
- 目的3:類似した研究を探す
- 候補から次に読む論文を絞る
- まとめ
Seed PaperとCitation Snowballing
Seed Paperとは,関連論文を探索する際の起点として利用する論文です.
自分の研究テーマに近い論文や,すでに内容をある程度把握している論文を起点にすることで,その論文と引用関係のある研究をたどることができます.
また,ある論文の参考文献や被引用論文をたどりながら関連研究を広げていく方法は,Citation Snowballingと呼ばれます.
Citation Snowballingには,大きく分けて以下の2方向があります.
- Backward Snowballing:対象論文の参考文献をたどり,それ以前の研究を探す
- Forward Snowballing:対象論文を引用している論文をたどり,その後の研究を探す
Backward Snowballingでは,対象論文がどの研究を土台としているのかを確認できます.
一方,Forward Snowballingでは,対象論文がその後どのような研究に利用・発展しているのかを確認できます.
このような引用関係を利用した探索は,キーワード検索とは異なる方向から関連論文を探す方法として利用できます.
今回使用するSeed Paper
今回は,以下の論文をSeed Paperとして使用します.
AIGC Image Quality Assessment via Image-Prompt Correspondence
Fei Peng et al.
CVPR Workshops 2024
https://doi.org/10.1109/CVPRW63382.2024.00644
この論文は,AI生成画像の品質評価を扱った研究です.
従来の画像品質評価では画像の歪みやぼけなどを評価しますが,AI生成画像では,生成画像が入力されたプロンプトの内容と対応しているかという観点も重要になります.
本論文では,CLIPの画像エンコーダとテキストエンコーダを利用し,画像とプロンプトの対応関係を考慮してAI生成画像の品質を評価する手法が提案されています.
今回は,自分の研究分野に関連しており,内容もある程度把握しているこの論文を起点として,周辺の研究を探索していきます.
ResearchRabbitで引用ネットワークを確認する
今回は,論文の引用関係を可視化して探索できるResearchRabbitを使用します.
ResearchRabbitでは,論文をSeedとして指定すると,その論文と関連する論文をネットワークとして確認できます.
ネットワーク上では,論文同士の引用関係が線で結ばれており,横軸には発表時期,縦軸に引用数を用いて論文が配置されています.
今回は先ほど紹介した
「AIGC Image Quality Assessment via Image-Prompt Correspondence」
をSeed Paperとして指定しました.
ResearchRabbitでは,選択した論文から主に以下の3方向に探索できます.
- Refs:その論文が引用している論文を確認する
- Cited By:その論文を引用している論文を確認する
- Similar:関連性の高い論文を確認する
単に関連論文を一覧で確認するだけでなく,どの論文同士に引用関係があるのかをネットワーク上で確認できるため,研究のつながりを見ながら探索できます.
目的1:分野の基礎となる論文を探す
まず,Seed Paperより前の研究をたどり,分野や手法の基礎となる論文を探してみます.
ResearchRabbitでは,論文を選択して Refs を確認することで,その論文が参考文献として引用している論文をたどることができます.これはBackward Snowballingに相当します.
今回はSeed Paperである「AIGC Image Quality Assessment via Image-Prompt Correspondence」からReferencesを確認し,どのような研究を土台としているのかを調べます.
ResearchRabbitでSeed Paperの References を表示すると,
今回は98本の参考文献が表示されました.
Referencesから過去の研究をたどる
Referencesのネットワークを見ると,Seed Paperより前に発表されたさまざまな研究を確認できます.
今回の例では,AIGCの生成モデルに関する論文や,画像・テキストを扱う基盤技術,画像品質評価に関する論文などが含まれています.
ネットワークでは,横方向に発表時期,縦方向に被引用数が配置されているため,過去の研究がどの時期に発表され,どの程度引用されているかも確認できます.
ただし,古く被引用数の多い論文が必ずしも今回読むべき論文とは限りません.
そこで,最終的にどの論文を読むかについては,References,Cited By,Similar Articlesから得られた候補をまとめた後に,目的に応じて絞り込んでいきます.
目的2:最新の研究を探す
Seed Paperを引用している後続研究をたどることで,Seed Paper以降にどのような研究が行われているのかを確認します.その中から発表年の新しい論文を確認することで,最近(もしくは最新)の研究を探すこともできます.
ResearchRabbitでは,論文を選択して Cited By を確認することで,その論文を引用している後続研究をたどることができます.
これはForward Snowballingに相当します.
今回はSeed Paperである「AIGC Image Quality Assessment via Image-Prompt Correspondence」の Cited By を確認し,この研究がその後どのような研究で引用されているのかを調べます.
Cited Byから後続研究をたどる
Cited By を表示すると,Seed Paperを引用している論文を確認できます.
今回はSeed Paperを引用している論文が64本表示されました.
ReferencesではSeed Paperより前の研究をたどりましたが,Cited Byでは反対にSeed Paperから後の研究を確認できます.
そのため,Seed Paperで提案された考え方がその後どのような研究で利用されているのか,また,同じ課題に対してどのような新しい研究が登場しているのかを調べる際に利用できます.
今回の結果では,2025年や2026年に発表された論文も多く表示されており,Seed Paper以降にどのような研究が行われているのかを追うことができます.
ただし,Cited By に表示されるのはSeed Paperを引用している論文に限られます.そのため,この方法だけで分野の最新研究をすべて確認できるわけではありません.
また,新しい論文は発表から時間が経っていないため,被引用数が少ない場合があります.最新の研究を探す場合は,被引用数だけではなく,発表年やタイトル,アブストラクトを確認し,自分が調べたいテーマとどの程度関係しているかを判断する必要があります.
目的3:類似した研究を探す
最後に,Seed Paperと類似した研究を探してみます.
ReferencesやCited Byでは,Seed Paperとの引用関係をもとに過去・後続の研究をたどりました.
一方,ResearchRabbitの Similar では,Seed Paperと関連性の高い論文を確認できます.
引用関係だけでは見つけにくい周辺研究や,同じ課題・手法を扱っている研究を探したい場合に利用します.
Similar Articlesから周辺研究を探す
Seed Paperの Similar を表示すると,関連性の高い論文が一覧とネットワークで表示されます.今回は715本の論文が表示されました.
今回の結果では,「AGIQA-3K: An Open Database for AI-Generated Image Quality Assessment」のようにSeed Paperと同じAIGC画像品質評価を扱う研究だけでなく,CLIPなどの画像・テキストを扱う基盤技術や,さらに広い画像認識分野の論文も表示されました.
このように,Similar ArticlesにはSeed Paperと関連するさまざまな種類の論文が含まれます.
そのため,表示された論文をそのまま順番に読むのではなく,「Seed Paperと何が似ているのか」を確認しながら候補を選ぶ必要があります.
類似した研究を探す場合は,例えば以下の点を確認します.
- 同じ研究課題を扱っているか
- 同じデータセットや評価指標を使用しているか
- 類似したモデルや手法を利用しているか
- Seed Paperとどの部分が共通しているか
特にSimilar Articlesでは候補数が多くなりやすいため,タイトルだけで判断せず,アブストラクトも確認しながら候補を絞ります.
候補から次に読む論文を絞る
ここまで,Seed Paperを起点として,
- References:過去の研究
- Cited By:後続研究
- Similar Articles:類似した周辺研究
の3方向から論文を探索しました.
今回の例では,Referencesが98本,Cited Byが64本,Similar Articlesが715本表示されました.
すべての論文を確認することは難しいため,ここから実際に次に読む論文を絞ります.
ResearchRabbit上で候補を見つけた後は,タイトルだけで判断せずアブストラクトも確認します.
例えば,タイトルが似ていても,扱っている評価対象やデータセット,手法が異なる場合があります.
逆に,タイトルからは直接関係がなさそうでも,Seed Paperで利用されている手法の基礎となる研究の場合もあります.
そこで今回は,以下の点を確認して読む候補を絞りました.
- 自分が調べたい研究課題と一致しているか
- Seed Paperとどのような関係があるか
- 使用しているデータセットや評価指標が関係しているか
- 類似した手法やモデルを使用しているか
- 最新研究を探す場合は発表年が新しいか
3方向から得られた候補についてタイトルとアブストラクトを確認し,次に読む論文候補を決めるようにしています.
まとめ
本記事では,1本の論文をSeed Paperとして,ResearchRabbitを使って関連論文を探索しました.
References,Cited By,Similar Articlesを使い分けることで,基礎となる研究,Seed Paper以降の研究,類似した周辺研究という異なる方向から論文を探すことができます.
キーワード検索で良い論文を1本見つけた後に,そこから関連研究を広げたい場合の選択肢として,ResearchRabbitを活用してみてください.



