はじめに
2026年におけるRed Hat Enterprise Linux (RHEL) の学習では、もう横で教えてくれるLinuxエンジニアは不要かもしれません。
Red Hatが提供する 生成AI(RHEL Lightspeed) が代わりに答えてくれます。
本記事では、できるだけ費用を抑え、RHEL9.7〜10.xをターゲットとした、AIアシスタント活用のための環境構築とそれを利用した学習法をご紹介します。
学習環境構築のステップ
- ハードウェアの準備(Windows機 想定)
- Markdownエディタの用意(VSCode拡張機能やChrome拡張等)
- Red Hat Developer Subscription for Individuals の取得
- VMware Workstation Pro の導入
- RHEL9.7〜10 のインストール
- RHEL Lightspeed のセットアップ
各ステップの補足と注意点
1. ハードウェア
一般的なWindows機上に、仮想環境を構成してRHELを動かすことを想定しています。学習に焦点をあてていますのでWSL2などよりは、インストールから試せる環境をおすすめします。メモリは、最低8GB以上あると良いでしょう。ただ、特段Windows固有の機能を使っているわけではないので、Ubuntu + VMware Workstation Proでもよいですし、KVMなどでも良いかと思います。
2. Markdownエディタ・ビューワー
必須ではありませんが、RHEL Lightspeedは基本的にMarkdown形式で回答を返してくれますのでこういったツールに貼り付けて閲覧すると見やすく分かりやすいです。
3. サブスクリプション取得の注意
学習にはAlmaLinuxなどの互換ディストリビューションではなく、正規のRHELを使用しましょう。基本的な理由は、後述するAI機能「RHEL Lightspeed」がRed Hat提供のRHEL上のツールだからですが、タイトルの通り、RHELを学習ターゲットとしているので、可能な限りRHELを選択すべきです。
Red Hatでは、個人開発者向けに Red Hat Developer Subscription for Individuals という無償サブスクリプションが取得可能ですので、ライセンス条件を確認の上利用してください。ライセンス条件をクリアできるのであれば、わざわざ互換ディストリビューションを選択する意味がありません。
※通常のサブスクリプションと異なり更新はできませんので、1年おきに再取得が必要です。
ライセンス条件の確認
重要なことですので 「個人利用ならOK」 というようにざっくりと解釈せず、Red Hat公式の利用条件を必ず確認しましょう。
参考
4. 仮想化環境(VMware Workstation Pro)
デスクトップ向けのWorkstation Pro(執筆時25H2)は、2024年11月、商用利用を含め無償化されましたのでこちらの利用をオススメします。VirtualBoxなどでも構いませんが、その場合は、Extension Packの商用利用は有償ですのでライセンス違反にならないように気をつけてください。
-
ハイパーバイザーに注意
Workstation Pro 15.5.5より前のバージョンでは、仮想マシンの起動にVMwareのハイパーバイザーしか使えませんでした。その場合は、WindowsのHyper-Vのインストールが不可でしたので、Hyper-Vを利用するコンテナ管理アプリケーションなどは使うことができませんでした。こちらにあるように現在のWorkstation ProではHyper-Vも利用可能ですので(合わせてWindows Hypervisor Platformも必要)、利用予定のアプリケーションに合わせてハイパーバイザーを選択すると良いと思います。 -
Workstation Proの入手とインストール
ダウンロードにはBroadcomのアカウントが必要です。アカウントの取得やどこからダウンロードするかなど、分かりづらいので以下の記事を参考にしてください。アカウントの取得からインストールまで解説してくれています。
参考
5. RHELのインストールとアクティベーション
- バージョン
AI機能を利用するため、RHEL9.6以降またはRHEL10以降を選択してください。ただしRHEL9系では、AI機能周りの更新も入っているのでRHEL9.7以降か、最新にアップデートすることが望ましいです。 - ネットワーク
アクティベーションにインターネット接続が必要なため、仮想マシンの構成はNATを推奨します(ブリッジは避けたほうが無難です)。 - コマンド
sudo subscription-manager registerを使用してアクティベーションを行い、dnfを使用可能な状態にします。
参考
SUBSCRIPTION-MANAGER COMMAND CHEAT SHEET for Red Hat Enterprise Linux
アクティベーション状態にも注意
現在、アクティベーションは、 Simple Content Access という仕組みになっています。この仕組みの注意点として、30日間アクセスがない場合にRed Hat側での登録情報が解除されてしまいます。RHEL Lightspeedが使えなくなった場合は一度アクティベーションのステータスを確認してみてください。
6. RHEL Lightspeedのセットアップ
- アクティベーション済みのRHEL上で行ってください。アクティベーション直後では、RHEL Lightspeedを利用できない場合があるので(経験では1日程度)間を空けてから試してください
-
sudo dnf upgradeを使って最新にアップデートしておきましょう -
sudo dnf install command-line-assistantでパッケージを導入します - プロキシを経由する必要がある場合は、以下を参照してください
参考
RHEL Lightspeed を搭載したコマンドラインアシスタントとの対話 6.1. プロキシー設定のセットアップ
「Red Hat Ansible Lightspeed」などは別物なので、間違えないよう注意してください。
RHEL Lightspeedを活用した学習
RHEL Lightspeedは、CLIから利用できる生成AI機能です。Red HatのRAG(検索拡張生成)を活用しているため、他の汎用AIに比べRHELや製品ドキュメントに関する精度が高いです。ただ、RAGの関係からかRHEL9とRHEL10をターゲットした回答になっていますので、念頭においておくと良いかと思います。
利用時の重要な注意点
- 言語設定
基本的に英語で回答が返ってくるため、プロンプトに 「日本語で回答してください」 と含めるのがコツです - プライバシー
使用許諾に基づき、個人情報や機密情報の送信は厳禁です
参考
活用のTips(コマンドは c)
RHEL Lightspeed(コマンド名 c)は、パイプやファイル指定をプロンプトと併用すると便利です。
- 直接質問する
c "起動時のエラーメッセージの調べ方を日本語で教えてください"
- ログファイルを解析させる
sudo journalctl -p err -xe | tail -5 > /tmp/error.txt
c -a /tmp/error.txt "エラーメッセージを日本語で解説してください"
- パイプで渡す
sudo journalctl -p err -xe | tail -5 | c "エラーメッセージを日本語で解説してください"
参考
まとめ
RHEL10時代の学習は、わからないことを検索エンジンで探すのではなく、OS上のAIアシスタントに直接聞くスタイルへと進化しています。回答は、基本Markdown形式で返ってくるため、VSCode等Markdown対応ツールに貼り付けて閲覧すると見やすいです。そして、Obsidian1などに整理することで自分だけのナレッジベースにするのも良いかと思います。
また、挙げた RHEL Lightspeed の利用例は、簡単なものですが、WebサービスやDNSなどミドルウェアの設定に関する質問もできますので、色々と試してみると良いかと思います。
ただ、やはりAIですのでハルシネーションには気をつけましょう。また、正しい情報を返答してくれたとしても、OSSはバージョンとともにパラメータ仕様が変わったりすることもよくありますので、
「そのコンフィグって、このバージョンで正しく動くのだろうか?」
という意識は常に持っておくと良いかと思います。
その他のRed Hat AI情報
We Are Hiring!