こんにちは、Assieです。
先日の前編(1~5)に続いて、今日は後編いきます!
6.日本のオペレーター、インフラで海外へ
去年は2月にオープンRANを世界で推進するNTT DocomoとNECの合弁、OREX SAIが発表になり、Rakuten Symphonyに加えてついにDocomoもモバイルインフラで海外に勝負に出ましたね!!今のところ発表されているのはカンボジアの5G向けですが、カンボジアでORANはいつ始まるのか楽しみです。ちなみにカンボジアは2023年12月末に日本政府がカンボジア国立データセンターに最大23億円相当の無償資金協力することが発表され、25年稼働開始目標だったのでORAN/DC共に日本勢の今年のカンボジアに関する発表が待たれるところです。
もう一つの大きなニュースはSoftbankのAI-RANでしたね!!SoftbankはMWCでAI-RAN Alliance発足を発表し、その後NVIDIAのイベントでAITRASを発表したのですが、NVIDAのGH200上にvRANとエッジAIを配置させて、Far-EdgeのRAN設備をマネタイズにも活用する攻めの姿勢がいいなと思っておぉっと驚いた発表でした。こちらはまずは日本での導入のアナウンスが待たれるところですが、海外にも打って出るとのことで今後の動きに注目です。
(グローバルのアライアンス団体設立→まずは日本で導入→海外展開というシナリオがNTTのIOWNと似ているなぁとちょっと思ったりしました。)
(https://www.softbank.jp/corp/technology/research/story-event/057/)
7.レジリエントなネットワークへ~災害・障害対応~
2024年は元旦から能登での大地震に見舞われました。災害時のネットワーク復旧は人命にも関わるのですが、Starlinkはもちろんですが、NTTとKDDIが船上基地局を即座に共同運用を開始したことに驚きました。Softbankのドローン基地局もすごかったですね。
光ファイバーの復旧も早かったですが、個人的にはNTT西・NTTフィールドテクノさんのネットワーク見える化ツール(プローブ)の説明が「そんなに細かい単位でプローブ置いて通信状況見てるんだ」と思って常日ごろからの備えに驚いたり、基地局のつながる・つながらない状況がリアルタイムで見えるのも驚き、普段からの各事業者さんの運用モニタリングも素晴らしいなと思いました。
しかし今回の大地震では船上基地局を共同運航したのはもともと「つなぐ×かえる」プロジェクトで共同協力関係にあったNTTとKDDIの2社だけだったので各社の協力体制に課題が残ったわけですが、ついに年末にNTTグループ5社とKDDI、Softbank、楽天モバイルの8社が災害時に協力体制を引くことが発表されましたね!できれば直近で使う機会がないといいなとは思うのですが、災害時に通信事業者が一丸となってくれる体制が引かれたのは嬉しい限りです。
(https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2412/18/news141.html)
ここまでは災害対応の話ですが、ネットワークは災害だけでなく大規模障害でも落ちます。2022年・2023年は大規模ネットワーク障害が多発しましたがその対策として事業者間ローミングが検討されてきましたが、昨年2025年末頃に「フルローミング」「緊急通報のみ」それぞれを2025年末までに導入目標と発表されました。あわせて3GPPでも4社合同でSignalling Storm対応の奇書を書いているみたいなので、根本原因の対応のほうも待たれるところです。
少し話が飛びますが、緊急通報・緊急呼といえばアメリカで昨年は緊急呼用のネットワークとしてT-Mobileがネットワークスライシングを活用した「T-Priority」を9月に発表しましたね!!ネットワークスライシングってイベント以外ユースケース出てこないなと思いましたが、遂に本命ユースケースだと思いました。(AT&T中心のアメリカのPublic Safety NWのFirstNetに真っ向勝負を仕掛けた感じに思えました。)日本はPublic Safety網ちょっと遅れ気味なのでこのユースケースが近く実現されるかはわかりませんが、他の国は気になるところです。
8. 非通信事業の加速~各キャリアの経済圏強まる~
昨年の2月、三菱商事・KDDI・ローソンの3社が資本業務提携を発表し、ローソンの株主が三菱商事(50%)とKDDI(50%)となりローソンが上場廃止になるとの発表があり驚きましたよね。auがすっかりポンタワールドに!さっそくどんどんローソンとのシナジーが発表され、auスマートパスはpontaパスになり、ローソン来店でデータが無料でもらえるpovo Data Oasisが発表されたり、前述したドローンの実証実験が発表されたり。今後KDDI×ローソンが実現する「未来のコンビニ」を含めて小売りと通信のシナジーがどうなるか、とても楽しみな所です。
もう一つの大きなニュースは、ドコモの社長交代による非通信への注力の発表でした。ドコモで注目はやはり唯一銀行を持っていないこともあり、銀行業にどう参入するかですね。2024年度内にめどをつけたいという前田社長の発表があった気がしたのですが、通信品質問題に追われて遅れているのか、それとも他の理由で遅れているのか…いずれにせよ近いうち発表があるはず!!
ちなみに経済圏とは少し離れますが、非通信という意味ではネットワークをどうマネタイズさせるかというところでOpen APIが昨年は海外の発表が活発だったのも注目ポイントです。GSMA Open Gatewayでのグローバル化に加えて、昨年はGlobal Telecom APIアライアンスのCAMARAが最初の仕様をリリースし、Ericssonが通信事業者12社とジョイントベンチャーを立ち上げたり、例えばBridge Alliace(APACのMobile Operator Alliance)とSingtelのBridge API Echangeの発表のようなRegional API Exchangeという新しい概念も出てきました。今年はAPIの連携に加えて、Open APIを使ったアプリがどんどん出てくるといいですよね。
(Bridge AllianceのBridge Alliance API Exchange, https://www.bridgealliance.com/baex/)
9.通信事業者へのセキュリティ攻撃の加速・多角化
年末のみずほ銀行・お正月のNTT DocomoのDDOS攻撃で既に今年のセキュリティ市場はとても心配な状況ですが、昨年はアメリカの通信事業者は歴史上で最も深刻といわれるセキュリティ攻撃に見舞われました。最初の事件はSnowflakeのデータ漏洩によるAT&Tの1億1千万人分の通信履歴漏洩で、AT&Tは370KUSDをハッカーに支払ってデータ消去しました。このSnowflake事件のインパクトを受けた企業はAT&Tだけではなく、クラウドに機密情報を保存する危険性が露呈した事件だと感じました。続いての事件が更に大きなインパクトを与えたSalt Typhoon事件です。Salt Typhoonは中国のハッカー集団だといわれており、アメリカ9事業者へのハッキング事件でした。Firewallを設定変更してネットワークに侵入し、警察が犯罪捜査時に使う通信記録データをハッキングしていきました。今後このSalt Typhoonの動きが更に活発化するか動向を注視する必要があると思います。
アメリカはこういった非常事態な一年で今年もハッカーとの闘いが続くと見込まれますが、昨年末は海外でもう一つ通信事業者への大規模ハッキングがありました。Telecom Namibiaです。Hunters Intenationalというハッカー集団に40万ファイルの機密データをハッキングされたこの事件は、アメリカだけでなく世界中のどの通信事業者でもハッキングされる可能性があることが示された事件だと思いました。日本に関しては、ただでさえAIの活用でサイバー攻撃が高度化しているうえ、今年は大阪万博で世界が日本に注目する年なのでサイバー攻撃には日々最新の対策をいれながらしっかり対策必要がありますね…。
ここまではハッキングの話でしたが、物理のレイヤーでも昨年は衝撃的な事件がありました。中国船と見られる船舶によるバルト海の海底ケーブルの切断です。バルト海はロシア・NATO各国が海を囲むかなり緊張度の高い海ですが、リトアニア-スウェーデン間のケーブルとフィンランド-ドイツ間の2ケーブルが昨年11月に切断されました。継続して各国政府が事件を調査中ですが、悲しいですが海底ケーブルの物理線断を通してインターネットに攻撃を与える手法が出てきたと見れますかね…。アジアだと敷設ルートも含めてベトナムが米中対立に挟まれているので緊張度が高い気がします。
(https://www.theguardian.com/world/2024/nov/19/baltic-sea-cables-damage-sabotage-german-minister)
10. トランプ政権と各国の法整備
最後は政治と通信に関わる所の話です。去年の政治での大きなニュースはやはりトランプ政権復活です!以前に強烈な対中施策・中南米施策等をとったトランプ氏が今政権でも強権施策をとるか、特に通信業界ではHuawei・ZTEを中心にした中国企業に何か制裁を加えるのか気になるところです。(対ドルで円が上がるかも気になりますけど…)アメリカ内の政策でいえば、バイデン政権で強烈にアメリカへの通信ベンダの誘致を仕掛けたBEAD(Broadband Equity Access and Deployment Program)が何か転換をするか気になってます。固定光インターネットの普及施策であるBEADプログラムは計42.5 Billion USDの助成金に州等の地域コミュニティが応募して獲得する助成金ですが、Build America, Buy Americaを掲げていて使用製品はアメリカ産製品ではないといけません。よって各ベンダが工場をアメリカに建設しまくる通信ベンダゴールドラッシュ?が一昨年頃起こりました。このBEADはトランプの影響を何か受けるのでしょうかね?あと通信品質保証をめぐる通信の公平性の議論も影響を受けるのかも気になるところです。
かなり厳しいGDPR等規制が独特の欧州も、去年は世界に先駆けてEU AI法が出てきましたね!AI適用へのリスクを規定したこの法案は今後3年をかけて施行されていくと発表され、インフラ運用へのAI適用は2番目のリスクの"High Risk"と分類されました。これがどうインパクトが出るのか、、ちなみに罰金が「それぞれの会社の昨年度のグローバルの売上に対してのパーセンテージ」で決めるというのも個人的にはおぉっとなりました。
https://aibusiness.com/responsible-ai/deep-dive-how-the-eu-ai-act-will-affect-you
さて肝心の日本は、、、言わずもがなNTT法改正の行方ですね!私も今「NTTの叛乱」の本を読みながら学び中なのであまり深く書けないのですが、撤廃なのか部分改正ならどの部分を改正するのか。(日経BP堀越記者のファンなのでちょっと宣伝)
その他、先日完全に書き忘れたのですがデータセンター周りで年末に発表のあったIIJ・Preffered Networks・三菱商事が今年1月設立のPreffered Computing、各社買収含めて力を入れてる再エネ、Digital Bridgeが買収するJTower含め外資(特にInvestor Fund)による買収の動き、等々今年も気になるポイントが盛りだくさんです。
今年も面白い通信業界になりそうですね!
以上、皆さんにとって何か役に立つ内容があったなら嬉しいです:)
今年も皆さん&通信業界にとって実りあふれる年になりますように♪
(何かあまり楽天モバイルのことが書けなくてすみませんでした!)