はじめに
もし私がアジャイル開発にシフトしていなかったら…
昭和の体質を残すパラレル世界に転移したら…
そんな時に火消し術として使っただろう手法が紹介されています。副題は「小さな問題から大炎上まで使えるプロの火消し術86」です。
ポイント
PMBOK
- PMBOK(第6版)を知っているだけでは、トラブルプロジェクトには太刀打ちできないことが多くある。
小さな火種
- 小さな火種を放置してはいけない。小さな火種のうちに、一つひとつをタイムリーに潰していく。課題対応を後回しにしたり、放置したり、課題として扱わずに埋もれさせると、大炎上に至る。
火消しリーダ
- 腹をくくって、覚悟を決めて、火消しに当たる。腹をくくれていないと、責任回避的な言い回しが出て、メンバが付いてこない。
状況把握
最初に見るべき4つの資料
- プロジェクト計画書
- 体制図。一人のメンバよりも、リーダや主要メンバに要因があることが多い。
- 課題管理表
- 進捗報告資料
- 資料が信じ切ってはいけない。炎上するプロジェクトでは、古かったりメンテされていないことが多い。間違っていることもある。対外的に差し障りのない報告になっていて、実態と異なることもよくある。
ヒアリング
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4つの資料を読み込んでプロジェクトを俯瞰してから、メンバに質問する。
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仮説を持っていく。
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全体像も、詳細も聞く。
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ヒアリングは事実ではない場合もある。主観が入っている。
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トヨタの「なぜなぜ5回」をっ使って、真因に辿り着く。
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単身乗り込んでも局面は変わらない。優秀なメンバを連れて行く。
対処
人
- 犯人探しには意味はない。
- 炎上プロジェクトには、スペシャルなキャラクターがいる。取りうる策は、「排除する」、「影響力を弱める」、「我慢する」
- トラブルプロジェクトではむやみに人を増やさない。プロジェクトに足りないスキルやパーツがある場合のみに限定する。
計画
- 課題は重要度と難易度で優先順位をつけて、絞り込む。
- やらないことを決める。
- 計画は、見積りの「-10%」で組む。見積もり通りに計画を建てると失敗する。このバッファをメンバには秘密とする。バッファは各作業に分散させずに1つにまとめる。
無駄の切り捨て
- 「それで本当にできるの?」というダメ質問をしてくる奴は、聞き流して相手にしない。そんなこと、誰にもわからない。実質的な意味がない。
- 機能しない会議を見直す。不毛な社内報告は、空気が読めないフリをして減らす。建設的な議論がされていない会議は無駄。
リカバリ開始
- リカバリをスタートする際にも、キックオフ会議を行う。
作業場所
- メンバーの座席をまとめて、見渡せるようにする。フリーアドレスはダメ。クイックにできる会議スペースも設置する。ホワイトボード(相当)も置く。
- 部屋の証明は明るくする。
状況の把握
- 問題提起をした人を自動的に担当者にしてはいけない。問題提起をすると損と捉えられるので、課題が報告されなくなる。課題に適した人に割り当てる。
- 毎日、朝会を実施する。状況をタイムリーに把握し、新たな課題に即応する。
- タスクの遅延は、それが分かった時点で報告する。仕事が期限に遅れたときは、なぜ遅れたのかと、毎回問いただす😱。ビジネスパーソンが仕事の期限を守る動機は、プロ意識か、怒られたくないから。9割は後者だから。
- 悪い情報が上がりやすい環境を作る。受け止める。事実をヒアリングする。自分が受け取るか、メンバに戻すかを決める。悪い報告を上げてきたことを評価する。
- 1日2回のパトロールをする。現場の小さな異変に気づく。気軽に相談を受ける場にする。雑談もする。現場に緊張感をもたせる。現場・現物を確認する。
特別な対処
- 危険なところはマイクロマネジメントする。ただし、モチベーションを下げ成長の妨げとなる面もあるので、2点に注意する。
- 早目に始めてはいけない。
- ずっとやり続けてはいけない。
- コミュニケーションのミスを防ぐ。
- 相手が日本人であっても、口頭だけでは、伝わらないことが多い。
- 図表を使ってコミュニケーションする。
- トラブル解決
- ミラクルはない。
- 飛び道具はない。
- 地味なことを地味にやるしかない。
- 請負契約で、うかつに謝れない場合の話法😱
- 「すみません」というと、「全量見直しててね」など火が大きくなる。
- 「お手数を取らせてすみません」、「ご心配をおかけしてすみません」
- 「追って報告します」と期限を言わない。言われなければ報告もしない。
- 原因がわからないうちに、原因の可能性に言及すると余計なアクションを課せられることがある。
- リーダの威厳とオーラを醸し出す😱
- リーダは走ってはいけない。ゆっくり歩く。
- 背筋をまっすぐにする。
- 身だしなみを整える。
- 炎上プロジェクトのリーダは9割が苦しいこと。理不尽な目に遭うことも給与の内。
- チェックリスト
- 「マズい秘伝のタレ」にしてはいけない。
- ムダなチェック項目を増やさない。多すぎると形骸化して意味をなさなくなる。
書誌情報
- 書籍名:プロジェクトのトラブル解決大全
- 著者:木部智之
- 出版社:KADOKAWA
- ISBN:978-4-04-605531-6