はじめに
システムの安定稼働は、多くのプロジェクトにおける至上命題です。しかし、日々の運用業務が特定の担当者の経験や勘に依存してしまう「属人化」は、多くの現場で課題となっています。
この属人化を防ぎ、誰が担当しても一定の品質で運用業務を遂行できるようにするために不可欠なのが運用設計のドキュメント体系です。
本記事では、安定したシステム運用を実現するためのドキュメント体系と、その中でも特に重要な「運用項目一覧」の作り方について、具体的な項目を交えながら解説します。
1.運用設計ドキュメントの全体像
運用設計で作成されるドキュメントは、システムのライフサイクル全体にわたって整備されます。 各ドキュメントは目的や作成フェーズに応じて、以下のように分類できます。
| ドキュメント分類 | 概要 | 主な作成フェーズ |
|---|---|---|
| 運用設計書 |
各運用項目の方針や概要を記載 方針決定の理由や採用しなかった方針も明記 |
基本設計 |
| 運用項目一覧 | システムで実施する全運用項目、作業項目、役割分担、関連ドキュメントを一覧化したもの | 要件定義 |
| 運用フロー図 | 複数の担当者が関わる作業において、情報の伝達方法やタイミングを図で示したもの | 基本設計 |
| 運用手順書 | 各運用項目や作業を具体的に実行するための手順をまとめたもの | 詳細設計 |
| 申請書 | 運用フロー図内の情報連携に必要な項目をまとめたもの | 詳細設計 |
| 台帳 | 運用中に定期的に変更されるデータを集めたもの | 詳細設計 |
| 一覧 | 運用中によく参照するパラメータ値などをカテゴリごとにまとめたもの | 詳細設計 |
2.運用項目一覧の作り方と必須カラム
ドキュメント体系の中でも、運用の全体像を把握するための基礎となるのが「運用項目一覧」です。 ここですべての運用タスクを洗い出すことが後続のドキュメント作成の質を決定します。
- 2-1. 作り方のステップ
- 1.業務の洗い出し
- ● まずは、システム運用に関わる全ての業務を洗い出します。定常的な作業(監視、バックアップ)から非定常的な作業(障害対応、メンテナンス)まで、思いつく限りリストアップします。
- 2.分類と整理
- ● 洗い出した業務を、頻度(毎日、毎週、毎月、不定期)やカテゴリ(監視、ジョブ管理、データ更新など)ごとに分類・整理します。
- 3.詳細情報の付与
- 分類した各項目に対して、後述する「必須カラム」を埋めていきます。
- 2-2. 運用項目一覧の必須カラム
- EXCELやスプレッドシートで管理することを想定し、以下のカラムを設けることをお勧めします。
| カラム名 | 説明 | 記載例 |
|---|---|---|
| 大項目 | 業務の大きなカテゴリ | 監視、バックアップ、定例作業 |
| 中項目 | 大項目をさらに細分化したカテゴリ | サーバーリソース監視、DBバックアップ |
| 運用項目名 | 具体的な作業内容がわかる名称 | CPU使用率の閾値監視 |
| 概要 | その作業が「何を」「何のために」行うのかを簡潔に記載 | サーバーのパフォーマンス低下を未然に防ぐため、CPU使用率を監視する |
| 実施頻度 | 作業を行う頻度 | 毎日、毎週月曜日、障害発生時 |
| 担当部署/担当者 | その作業の主担当となる部署や役割 | 運用チーム、開発チームリーダー |
| 作業時間(目安) | 作業にかかるおおよその時間 | 10分、30分 |
| 関連ドキュメント | 対応する「運用手順書」や「運用フロー図」などへのリンク | 手順書_XX.xlsx、障害対応フロー.vsdx |
| 備考 | 注意事項や特記事項など | 閾値超過時はアラートメールが自動送信される |
3.ドキュメントを「活きた」ものにするためのポイント
ドキュメントは作って終わりではありません。常に最新かつ利用しやすい状態に保つことで、その価値を最大限に発揮します。
- 1. 継続的な更新の徹底
- システムの変更や障害対応の経験を経て、手順や構成は変化します。 変更があった際は、必ず関連ドキュメントを更新するルールを徹底しましょう
- 2. 一元管理とアクセス性の確保
- 共有フォルダ等で一元管理し、誰もが最新版にアクセスできるようにします。
- 3. シンプルに保つ努力
- 長大で複雑なドキュメントは読まれなくなります。図や表を効果的に使い、要点を簡潔にまとめることを心がけましょう
おわりに
優れた運用設計ドキュメントは、システムの安定稼働を支えるだけでなく、チームの知識レベルを底上げし、業務を引き継ぐ際の大きな助けとなります。 本記事を参考に、ぜひご自身のプロジェクトでもドキュメント体系の整備に取り組んでみてください。